埋蔵文化財包蔵の相続税評価方法!該当する土地の要件や手続き方法を解説!
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埋蔵文化財包蔵地とは?
埋蔵文化財包蔵地は、遺跡(例:貝塚、古墳、土器等)が土中に埋もれている土地のことであり、それが地域社会で認識されている土地を呼びます。
もし、自分の所有している土地に埋蔵文化財が存在すると、発掘調査をしなければなりません。
埋蔵文化財包蔵地として評価するには、次の3要件を全て満たす必要があります。
- 相続した土地に埋蔵文化財の存在が確実である
- 発掘調査費用は相続した所有者が負担する
- 路線価に埋蔵文化財包蔵地の減額補正が考慮されていない
上記の要件を満たせば、減額補正(土地の相続税評価を下げる)が適用でき、相続税評価が下がれば相続税負担の軽減を図れます。
ただし、発掘調査費用を公費で行った場合は減額補正の適用外になり、すでに埋蔵文化財包蔵地の減額補正がなされた土地も同様に減額補正は認められません。
埋蔵文化財包蔵地かどうかを確認する方法!
相続した土地が埋蔵文化財包蔵地に該当するかどうか確認したいならば、各市区町村の教育委員会に保管されている「遺跡地図」「埋蔵文化財包蔵地図」等で確認できます。
窓口で担当者に地図の閲覧を伝えましょう。
なお、東京都教育委員会ではホームページにて「東京都遺跡地図情報インターネット提供サービス」を提供していますので、そちらで確認しましょう。
埋蔵文化財包蔵地の相続税評価方法を解説
こちらでは埋蔵文化財包蔵地に該当した場合の評価方法、そして実際に具体例をあげ土地評価額の計算について解説しましょう。
埋蔵文化財包蔵地の評価額の求め方
埋蔵文化財包蔵地としての要件を満たした場合は、基本的に発掘調査費用を8割減額できる控除が受けられます。その控除が適用できれば、次の計算式で評価額を求めます。
埋蔵文化財包蔵地外の相続税評価額–発掘調査費用相当額(見積額80%)= 埋蔵文化財包蔵地相続税評価額
なお、埋蔵文化財包蔵地外の相続税評価額は、固定資産税の納税通知書(地方自治体から4月~5月頃に送付される書類)で土地の面積を確認し、財産評価基準書「路線価図・評価倍率表」で路線価または倍率方式を確認し計算します。
埋蔵文化財包蔵地の評価額を計算してみる
【事例】相続した畑(300㎡)が埋蔵文化財包蔵地外で、相続税評価額8,200万円である。
(1)相続人が相続した土地は埋蔵文化財包蔵地であり、自費で発掘費用を負担した場合
必要な発掘費用を見積もると2,700万円となっており、費用の80%にあたる2,160万円が評価額から減額されます。
相続税評価額8,200万円-発掘調査費用相当額2,160万円(見積額2,700万円の80%)=6,040万円
埋蔵文化財包蔵地の相続税評価額は6,040万円です。
(2)埋蔵文化財包蔵地である事実を知らず、相続税申告を済ませていた場合
相続人は、相続した土地300㎡を一般的な「畑」として評価し、相続税評価額8,200万円で申告しました。
しかし、その後、埋蔵文化財包蔵地である事実を知った相続人は、税務署に返金を希望します。
この土地にかかる税率は30%なので
- 一般的な畑としての相続税評価額:8,200万円×30%=2,460万円
- 埋蔵文化財包蔵地としての相続税評価額:6,040万円×30%=1,812万円
2,460万円-1,812万円=648万円
税務署からの還付額は648万円です。
このように、埋蔵文化財包蔵地とは知らず、高い評価のまま申告してしまった場合、被相続人が亡くなってから5年10ヵ月以内であれば申告内容を修正でき、税金を払い過ぎていたなら税務署に返金してもらえます。
相続財産が埋蔵文化財包蔵地に該当する場合の注意点とは?
埋蔵文化財包蔵地を相続した場合の注意点は主に2つあります。
出土した物は都道府県のもの
相続した土地から、かなり昔の土器や埴輪、遺跡の一部のような物が出土した場合は、自分で勝手に掘り進めたり、逆に放置したりしてはいけません。
まず出土品はその土地を管轄する警察署へ提出、文化財のような物なら、今度は教育委員会の鑑査が必要です。
たとえ相続した土地から出土した物であっても、所有者が判明しない物は、原則として都道府県に帰属します。つまり、土地所有者は出土品の所有権を主張できません。
相続した土地で建築等をする場合、大幅な制約を受ける
埋蔵文化財が存在する場合には発掘調査をしなければならず、その費用はその土地所有者が基本的に負担するものの、公費で賄われるケースもあります。
いろいろな調査や手続きを経てから、ようやく土地の利用が開始できます。当該土地内で建築・土木工事をする場合、着工は大幅に遅れる可能性があるので注意しましょう。
なお、埋蔵文化財包蔵地から出土した物が「重要な遺跡」と認定・保存される場合は、工事自体を中止せざるを得ない事態も想定されます。
相続財産が埋蔵文化財包蔵地に該当していた場合の作業手順
埋蔵文化財包蔵地で建築や土木工事を行う場合、様々な確認作業を経てようやく着工が可能となります。
こちらでは確認作業の手順と、手続きの方法について説明します。
埋蔵文化財包蔵地の確認作業の手順
埋蔵文化財包蔵地内の確認作業の手順は次の通りです。
- 当該土地で建築や土木工事を行う場合、工事着手の60日前までに都道府県または指定都市の教育委員会に届出する
- 届出後、教育委員会の調査員が現地を確認・調査
- 確認調査:工事着手前に試掘調査を実施、遺跡に影響があると判断されたら、計画変更を要求される場合もある
- 本格的な発掘調査の実施:計画変更が難しい場合は発掘調査を実施する
- 工事立合:教育委員会の職員が工事に立会う
- 工事開始
本格的に発掘調査が必要となった場合、工事着工まで1年以上かかる可能性もあります。
遺跡の有無を確認等の手続きに必要な書類
遺跡かどうかを確認しなければ、その後の相続土地の利用すら難しくなります。こちらでは、教育委員会への確認願および埋蔵文化財発掘を届け出るための提出書類について説明します。
(1)遺跡の有無を確認届
- 埋蔵文化財確認願:主に申請日・申請者・確認したい場所・確認目的を記入
- 工事箇所の位置図
(2)埋蔵文化財発掘の届出・通知
- 埋蔵文化財発掘の届出書:土木工事等をしようとする土地の所在および地番・面積等を記入
- 届出物件の位置図
- 建物等の配置図
- 基礎の掘削状況がわかる図面(基礎伏図・基礎仕様書等)
- 浄化槽埋設等がある場合はその概要図
建築業者等と話し合い、作成された図面を届出書に添付し、埋蔵文化財包蔵地を管轄する教育委員会に提出しましょう。
発掘調査にかかる費用の相場はどのくらい?
こちらでは発掘費用の目安、そして埋蔵文化財包蔵地の相続に関する相談先を説明します。
発掘費用の内訳と目安
土地所有者が発掘費用を負担しないと、土地の減額補正は適用されません。しかし、どのくらい発掘費用がかかるのか心配な方々は多いことでしょう。
発掘費用の内訳は主に以下の通りです。
- 発掘作業員の人件費
- 発掘する重機のレンタル料金
- 測量費用
- 発掘調査を運営する施設費(例:プレハブハウス等)および撤去費用
- 工事現場の警備費用
費用は地域や担当する業者によって大きく差があります。概ね1㎡あたり3万円〜10万円程度が目安です。例えば100㎡の埋蔵文化財包蔵地ならば、300〜1,000万円程度かかってしまいます。
埋蔵文化財包蔵地の相続の悩みはプロに相談しよう
埋蔵文化財包蔵地を相続する予定だが、土地の利用に大きな制約を受けないか不安な相続人は、土地問題に詳しい弁護士や司法書士に相談してみましょう。
弁護士や司法書士は法律のプロであり、相続人の事情や埋蔵文化財包蔵地の現状を踏まえ、的確なアドバイスを提供します。
また、埋蔵文化財包蔵地の相続をはじめ相続全般に疑問や不明な点があれば、相続の身近な専門家である「相続診断士」へ相談するのも良いでしょう。相続診断士は様々な相続の質問・疑問に応えてくれる有資格者です。
埋蔵文化財包蔵地の相続に関する対応を相続診断士とよく話し合えば、事前に注意すべき点等を把握できます。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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