仮想通貨やNFTなどのデジタル資産は相続できる?注意点も解説!
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デジタル資産とは?仮想通貨やNFT、ビットコインについても解説!
デジタル資産とは、インターネットを介してオンライン上に所有している無形の資産です。つまり、建物・土地の不動産資産、現金・預金をはじめとした金融資産のように、実際の現物を手で触れることができる資産ではありません。
デジタル資産である暗号資産の取引は急拡大し、2014年1月時点の暗号資産全体の時価総額は約1兆円でしたが、2021年12月は250兆円となっています。
デジタル資産の種類は主に次のような種類があります。
仮想通貨
暗号資産とも呼ばれ電子的に記録され移転でき、かつ代金の支払いや円・ドル等に交換も可能な資産です。ビットコインやイーサリアムが代表的です。
NFT
「Non-Fungible Token」の略で、代替不可能なデジタルデータを意味します。このデジタルデータ自体がいきなりお金として流通するわけではありません。
デジタルデータは誰でも作成・取引ができ、転売されるとデジタルデータの作者に報酬が還元される仕組みとなっています。
ネット系金融機関の預金等
インターネットを介して預金・取引等ができる金融機関です。ネット銀行の預金や、ネット証券で行う投資信託や株取引、FXとよばれる外国為替保証金取引による利益もデジタル資産です。
電子マネー
利用前にチャージするプリペイド方式の電子的な決済手段を指します。代表的な電子マネーとして鉄道会社の他、小売流通企業が発行したカード等を介して使用可能です。
デジタル資産(遺産)とデジタル遺品の違いとは?
デジタル資産(遺産)とデジタル遺品の違いは、金銭的な価値があるかないかです。
以下に、それぞれの例を示します。
例 | |
デジタル資産(遺産) | 仮想通貨、NFT、ネット系金融機関の預金、電子マネー、ウェブサイトやブログ 等 |
デジタル遺品 | フォトアルバム、パスワード、データ 等 |
デジタル資産(遺産)は、オンライン上に所持している財産や情報を指し、お金に関わる資産です。
一方、デジタル遺品は、家族や友人との個人的な関係に関連するデジタルコンテンツを指し、感情的な繋がりを持っています。
デジタル資産(遺品)と通常の相続遺産の違いとは?
デジタル資産(遺品)と通常の相続遺産とでは、形態と管理、アクセス方法が異なります。以下に詳しく解説します。
形態
通常の相続財産は、物理的な資産や財産であり、不動産や車、現金などが含まれます。
一方、デジタル資産(遺産)は、デジタルデータやアプリケーションに関連し、物理的な存在を持たないことが多いです。
管理・アクセス
通常の相続財産は、一般的に知られているように法的手続きを通じて相続人に譲渡されます。
しかし、デジタル資産(遺産)の管理やアクセスには、パスワードやアクセス情報が必要となります。そのため、相続人がデジタル資産を相続するには、これらの情報を知っている必要があるため、注意が必要です。
デジタル資産(遺産)も相続することが可能?デジタル資産(遺産)と通常の相続財産の異なる点とは?
不動産資産・金融資産と同様に仮想通貨やNFTなどのデジタル資産は相続の対象となります。このようなデジタル資産はパソコンやスマートフォンで管理や取引を行います。
つまり、不動産資産ならば権利証や登記事項証明書等、金融資産の場合は預金なら預金通帳というように書面で記録されるわけではありません。そのため、相続発生のときデジタル資産の存在を相続人達に気付かれないおそれもあります。
また、デジタル資産の存在を相続人へ伝えていても、そのデジタル資産は「マイページ」のような保有者専用の管理画面で管理されており、確認するためにはPW等も必要となります。
そのため、仮想通貨等では相続人が資産額等を確認したり出金を希望したりする場合には、取引所へ連絡し手続きを行う必要が出てきます。
デジタル資産(遺産)も相続税は発生する?
被相続人の財産に属した一切の権利義務は相続の対象となります。そのため、デジタル資産も相続の対象となり、相続税が課される可能性はあります。
デジタル資産の評価方法
デジタル資産は需給に大きく影響され、価格が常に変動しています。そこで、基本的に相続発生時のタイミングで被相続人の有するデジタル資産の価値を評価する必要があります。
ビットコインをはじめとした活発な仮想通貨の市場ならば、課税時期の取引価格を参考に資産額を算定します。相続した時点で被相続人の利用していた取引所が公表している取引価格に、引き継いだ数量を乗じます。例をあげて計算してみましょう。
(例)被相続人は3BTC購入しているが、取引していた取引所の取引価格は相続時1,000,000円となっている。
1,000,000円×3BTC=資産額3,000,000円
デジタル資産を含めた税金を抑える方法
相続が発生したからと言って、必ず相続税が課せられるわけではありません。主に次のような方法で相続税の控除・軽減ができます。
被相続人の債務等を差し引くことが可能
遺産総額から被相続人が負った生前の債務(借金・未払金等)や非課税財産、葬式費用を差し引けます。そのため不動産資産や金融資産、デジタル資産のようなプラスの財産ばかりでなく、マイナスの財産である債務も財産調査で把握する必要があります。
なお、非課税財産とは墓地や仏壇、国等への寄付財産、生命保険金・死亡退職金の一定額等があげられます。被相続人が購入した墓地や仏壇の領収証、保険契約をした際の保険証券等がないか確認しておきましょう。
相続税の基礎控除の利用が可能
遺産総額から債務や非課税財産、葬式費用を差し引いた各相続人の課税価格の合計額から、更に基礎控除額「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」を差し引くことができる。
基礎控除は法定相続人(民法に規定された相続人)に適用され、基礎控除内に課税遺産総額が収まれば、相続税の申告・納税は不要です。
生前に贈与する
被相続人が生前のうちに不動産やデジタル資産を現金化し、配偶者や子供たちに贈与する方法も有効です。受贈者(贈与される人)1人につき原則として毎年110万円まで、贈与税の基礎控除が適用されます(暦年贈与)。
将来、相続人となる方々に相続税が課せられる可能性のある場合、資産を少しずつ贈与しコツコツ減らしていけば、相続開始時に大幅な税負担の軽減が期待できます。
申告を忘れるとペナルティが課せられることも
デジタル資産の存在を把握していないまま、相続税を申告してしまうケースも想定されます。相続税の申告漏れの場合、税務署から税務調査の通知があり修正申告を要求されます。
修正申告は原則として、相続申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)~税務署から調査の通知が来る前に自主的に修正できれば、追徴課税はありません。
しかし、税務署から調査の通知以降に修正をする場合、過少申告加算税として5%~15%が課せられてしまいます。
デジタル資産(遺産)の相続人になった場合の相続手続きの方法を解説!
デジタル資産を引き継いだ人は、まずは被相続人が利用していた取引所へ連絡します。こちらでは相続手続きの流れと必要書類についてみてみましょう。
相続手続きの流れ
相続が開始され、被相続人がデジタル資産を所有していた事実がわかれば、速やかに次のような流れで出金のための手続きを行います。
1.取引所に電話またはメールで連絡をとる
2.取引所の担当者の指示に従う
3.必要書類を提出する
4.口座を解約し、出金する
デジタル資産の存在は、生前の被相続人からの指摘の他、遺言書に明記されて判明する場合もあります。遺言書で誰に引き継ぐかを明記していない場合や遺言書自体がない場合は、相続人間で協議し、誰が引き継ぐのかを決めなければいけません。
必要書類について
取引所の担当者から必要書類について詳しい指示があるはずです。概ね次のような書類を求められることでしょう。
・相続届:取引所所定の用紙またはホームページから取得
・相続人全員の印鑑証明書:それぞれの住所地の市区町村役場から取得
・相続人全員の戸籍謄本:それぞれの本籍地の市区町村役場から取得
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍):本籍地の市区町村役場から取得
・被相続人の住民票の除票:最後の住所地の市区町村役場から取得
・遺産分割協議:遺産分割協議をした場合に準備
・遺言書:遺言があった場合に準備
・申請者の本人確認書類:運転免許証、マイナンバーカード等
相続人がデジタル資産(遺産)を調べる方法を解説!
もしご自身が相続人になった場合、デジタル資産の存在を調べる方法を解説します。
暗号資産取引所を調べる
暗号資産取引所を調べるのが、もっとも王道な方法です。もし、スマートフォンに暗号資産管理のアプリがあれば確認しましょう。
また、メールや郵便物にもデジタル遺産の情報が含まれている可能性がありますので、確認しましょう。
専門家へ依頼する
デジタル遺産を調査するのに、パスワードが分かっていれば相続人ご自身でも問題なく手続きができます。
ですが、パスワードが分からない場合は、専門作業が必要なため専門家に依頼すると良いでしょう。
また、暗号資産取引所が海外の場合も専門的な知識が必要となるため、暗号資産やデジタルに詳しい専門家に依頼しましょう。
デジタル資産(遺産)を相続する際の注意点や放置するリスクとは?
デジタル資産が相続税申告後に発覚した場合、修正申告を税務署から要求されたり、追徴課税を受けたりするおそれもあります。その他、次の2点に注意する必要があります。
デジタル資産の存在は発覚しにくいこと
被相続人がデジタル資産の存在を書面等で明らかにしなかった場合、相続人達が気付かないまま、相続手続きを進めてしまうおそれもあります。
もしも、被相続人がパソコンやスマートフォンをよく使用していたならば、デジタル資産を運用していたかどうかの確認が必要です。例えば次の4点を確認してみましょう。
・インターネットブラウザでデジタル資産に関する閲覧履歴をチェック
・本人がインストールしたアプリをチェック
・ブックマークされたデジタル資産取引所のサイトの有無をチェック
・送受信メールでデジタル資産に関するやり取りをチェック
これらが確認できた場合、無理に被相続人のマイページ等へアクセスする必要はなく、取引所の問合せ窓口に連絡しましょう。被相続人の死亡・相続人と確認できるならば情報の開示等に応じてくれるはずです。
デジタル資産の発覚で遺産分割協議やり直しの可能性もあること
相続人間でデジタル資産の存在を知らないまま遺産分割協議し、協議後にデジタル資産を発見した場合、協議を行い誰が引き継ぐのか決定しなければいけません。
しかし、遺産分割協議書に「新たな相続財産が見つかった場合は、被相続人〇〇〇〇の妻〇〇〇に相続させる。」と明記すれば、再度の協議は不要です。
デジタル資産(遺産)の相続時のトラブルを防ぐためにやっておくべき相続対策とは?
相続人の中にはデジタル資産とは何なのか、よくわからない人もいるはずです。デジタル資産に関してトラブルが発生する恐れも十分想定されます。トラブル回避のため次の相続対策を講じておきましょう。
エンディングノートを有効活用
遺言書でデジタル資産の存在を明確にするのも良い方法ですが、より詳細にデジタル資産の内容を明記しておくため、エンディングノートに記載しましょう。
エンディングノートとは人生の終末について記したノートであり、遺言書のような法的強制力はないものの、遺産相続に関する希望や情報を明記できます。
エンディングノートには次の6つの情報を記載しましょう。
・デジタル資産がどのくらいあるのかを示した一覧表
・取引で使用していたパソコンやスマートフォンのパスワード
・デジタル資産にアクセスできる専用ID・パスワード
・取引所情報:取引所名、住所、電話番号、メールアドレス等
・ネット銀行情報:銀行名・支店名、住所、電話番号、口座番号
・ネット証券情報:証券会社名・支店名、住所、電話番号、口座番号
仮想通貨やNFTの情報の他、ネット銀行・ネット証券も利用していた場合は、漏れなく記載しておきます。
生前に現金化しておく
相続人がデジタル資産の手続きで手間取ることの無いように、生前に売却や円やドル等へ交換しておくのも良い方法です。そうすれば通常の金融資産として、相続人は安心して相続手続きが行えるはずです。
なお、デジタル資産として残すべきか、生前に現金化して残すべきか、判断に悩んだときは「相続診断士」へ相談してみましょう。相続全般の専門知識を有する相続診断士は、無料で相談に応じ、相談者の事情に合わせた的確な助言を行ってくれるはずです。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
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この記事を監修したのは…
税理士/中小企業診断士/MBA/認定経営革新等支援機関 ケーティーエムジー株式会社 代表取締役
菅野 浩司(かんの こうじ)
世田谷区・目黒区・大田区を中心とした東京西部及び横浜市・川崎市にて相続税申告・相談をしています。
相続の事前対策を得意としており次の支援を行います。
・家族信託の相談及び契約の対応:争続とならないよう事前に家族間で財産管理する方法について相談対応します。
・事業承継税制の対応:事業承継については、事業承継をする世代のほか事業承継をする次世代の視点に立った支援を行っています。