遺産相続の問題は裁判所で解決するのがよい?方法や流れ・判例もご紹介
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遺産相続で争いとなった場合、どのように解決するのでしょうか。
遺産相続で争いになった場合、弁護士を通じての話合い、それでまとまらない場合は調停・審判で解決を図ります。また、相続財産の範囲や相続人の範囲等、相続の前提問題に争いがある場合は、裁判をして相続の前提問題を解決してから、再度、遺産分割について調停・審判等で解決を図ります。
遺産相続で争いになるのはどのような場合か
遺産相続で争いの多くは、遺産分割の内容について、相続人が納得いかない場合です。また、遺言書の有効性に疑義がある場合や、相続財産の範囲や相続人の範囲が争いとなる場合もあります。
相続人の範囲に争いがある場合
相続人の範囲が争いとなる場合とは、例えば、①遺言によって、特定の相続人を廃除しているケースや、②被相続人が死亡直前に、被相続人の意思によらず認知届が出されて認知がされているような場合等が考えられます。
①の場合、まずは多くの場合、遺言にて遺言執行者が定められているはずですので、当該遺言執行者が、家庭裁判所に推定相続人の廃除の審判申立てをすることになります。その上で、審判において、廃除が認められた場合、その相続人は相続権を失うことになります。
また、②の場合、まずは認知無効の調停申立てを行い、調停手続きにおいて認知無効の合意が成立し、その無効原因に争いがない場合、家庭裁判所は必要は事実調査をした上で、合意を正当と認めるときは、認知無効の審判を行います。認知が無効であることについて合意が成立しない場合は、認知無効の訴訟を提起することになります。
前提問題をクリアした後に遺産分割協議をすることになるでしょう。
遺言の有効性に疑義がある場合
遺言の偽造が疑われる場合や、遺言をした時点で遺言者の遺言能力に問題がある等、遺言の有効性に疑義がある場合、遺言無効確認訴訟を提起することができます。
なお、遺言無効確認請求事件は調停を経なければならない事件(調停前置)とされていますので、遺言無効確認訴訟を提起すると、原則、調停に付されることになりますが、裁判所の判断によっては調停に付さないまま審理を進めることも可能とされています。
また、遺言無効確認請求訴訟は通常の訴訟ですので訴訟上の和解により終了することができますが、遺言が有効か無効かによって、相続財産の分配額に大きな差が出ることが多いため、和解による解決が困難な場合が多いです。
そのため、判決に至ることが多く、判決によって遺言が無効とされた場合は、遺言書が存在しなかったものとして相続人間で遺産分割協議が必要となり、遺産分割協議が調わなかった場合は遺産分割調停を申し立てて解決を図ります。
遺産分割協議(書)の効力に争いがある場合
例えば、相手方の虚偽の説明により遺産の範囲に誤解をしたまま遺産分割協議に同意した場合や、相続人の一部を除外してなされた遺産分割協議については、遺産分割協議が無効となる可能性がありますので、このような場合、遺産分割協議無効確認訴訟を提起することができます。
なお、遺産分割協議無効確認請求事件は調停を経なければならない事件(調停前置)とされていますので、遺産分割協議無効確認訴訟を提起すると、原則、調停に付されることになりますが、裁判所の判断によっては調停に付さないまま審理を進めることも可能とされています。
また、遺産分割協議無効確認請求訴訟は、通常の訴訟ですので、訴訟上の和解により終了することができます。このあたりは遺言無効確認訴訟と同様です。
遺産の帰属に争いがある場合
例えば、ある不動産が被相続人の相続財産に属するかどうかが問題となることがあります。この場合、遺産確認請求訴訟を提起することができます。
なお、遺産確認請求事件は調停を経なければならない事件(調停前置)とされていますので、遺産確認訴訟を提起すると、原則的に調停に付されることになりますが、裁判所の判断によっては調停に付さないまま審理を進めることも可能とされています。
ところで、判例(最高裁判所大法廷決定昭和41.3.2民集20・3・360)は遺産分割の前提問題に争いがある場合、常に民亊訴訟による判決の確定を待って遺産分割の審判をすべきものというのではなく、家庭裁判所が、審判手続において前提事項の存否を審理判断した上で、分割の処分を行うことも差し支えないとしています。
しかし、実務では、遺産の帰属に争いがある場合には、家庭裁判所としては、審判には既判力がないので、遺産の帰属について民亊訴訟(裁判)で確定するよう促されます。
遺産分割調停の流れや期間
遺産分割において、相続人間で協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所に、遺産分割の調停の申立てをすることができます。
遺産分割調停の申立てすることができるのは、各共同相続人、包括受遺者、相続分の譲受人、包括遺贈の場合の遺言執行者です。また、申立先は、相手方のうちの一人の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所となります。
遺産分割調停の大きな流れは、概ね、遺言書の有無の確認、相続人の範囲の確定、遺言書の有無の確認、遺産の範囲の確定などの前提問題をまず確定し、その後、遺産の評価、特別受益、寄与分の主張を踏まえて具体的な分割方法の話合いを行います。そして、遺産分割について、合意に至れば調停が成立します。
なお、調停にかかる期間は、争点、相続財産の価格、相続財産の種類等によって違いがあり、一概には言えませんが、概ね、半年から1年以内が多いようです。当事者の都合に合わせ、おおよそ1~2か月に1回(2時間程度)のペースで開かれます。
遺産分割調停が不成立となった場合
遺産分割調停が不成立になった場合には、審判手続に移行し、裁判官が、遺産に属する物又は権利の種類及び性質その他一切の事情を考慮して、審判によって結論を示すことになります。
なお、遺産分割が不成立となる場合とは、合意に至らない場合、合意する見込みがない場合、相手が出頭してこない場合等です。
遺産分割審判において、裁判所に有利な判断をしてもらうためにどうしたらいい?ポイントをチェック
遺産分割審判において、有利な判断をしてもらうためにはどうしたらいいのか、さらにそのポイントについても見てみましょう。
遺産分割審判で、裁判所に有利な判断してもらうためにはどうしたらいい?
遺産分割審判において、裁判所に有利な判断をしてもらうには、証拠にもとづいて、具体的な主張をすることが重要です。
事実関係を裏付けるために、例えば、メモ、日記、手紙、写真なども重要な証拠となりえます。
遺産相続にかかる費用と裁判に負けた際の弁護士費用
遺産分割調停の申立てをした場合、収入印紙や予納郵便切手代がかかります。
また、遺産分割に関する資料を取得するに際し、戸籍関係の書類を揃える費用(実費)、固定資産評価証明書(1通200円~400円)、登記簿謄本(1通500円~800円)などの費用がかかります。ただし、発行手数料は自治体によって異なります。
遺産相続で裁判になるケースとは?よくあるトラブルや裁判の判例をご紹介!
遺産相続で裁判になるケース、そして、遺産相続でよくあるトラブルや裁判の判例について見てみましょう。
遺産相続で裁判になるケースとは?
遺産相続で裁判になるケースは、以下①ないし④のような、遺産分割をするにあたって、その前提が問題となるケースで、前述のとおりです。
また、⑤のように、遺留分が侵害されている場合も裁判となりえます。
①相続人の範囲に争いがあるケース
②遺言の有効性に争いがあるケース
③遺産分割協議(書)の効力に争いがあるケース
④遺産の帰属に争いがあるケース
⑤遺留分の侵害額に争いがあるケース
遺留分の侵害が認められる場合、遺留分侵害額請求訴訟を提起することができます。もっとも、遺留分侵害額請求事件は、調停を経なければならない事件(調停前置)とされていますので、遺留分侵害額請求事件は、原則調停に付されることになりますが、裁判所の判断によっては調停に付さないまま審理を進めることも可能とされています。
遺産相続でよくあるトラブルや裁判の判例をご紹介!
遺産相続でよくあるトラブル
遺産相続でよくあるトラブルとしては、遺産相続で裁判になるケースで掲記した①から⑤の場合があります。そして、特に、❶遺産の中に、被相続人以外の者の名義のものや、所有者について争いがある財産がある場合、❷相続人の一人が無断で被相続人名義の預貯金を解約・引き出し等をし、使途不明金がある場合には、民亊訴訟(裁判)での解決を待つことになります。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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この記事を監修したのは…
京都弁護士会所属 伸晄法律事務所
岩本 貴晴(いわもと たかはる)
相続問題は発生してしまうと、親族間の感情的対立が激化し、長期化する傾向にあります。また、実際に相続が発生した場合に紛争化しないよう、事前に防止策を講じることも重要です。当事務所では、実際の紛争処理から、事前の紛争防止まで、幅広く対応可能です。
依頼者様のニーズに沿って丁寧にかつ迅速に解決するよう心掛けております。
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