換価分割とは?不動産を売って現金で分ける方法|協議書の書き方と税金を計算例で解説
弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。 事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。 法律をはじめ、記事執筆やコンテンツ制作のご依頼がございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。
実家を相続したものの、相続人が複数いて誰も住まない。そんなときに使うのが換価分割です。売って現金にしてから分ければ、1円単位まで公平に分けられます。
ただし、登記の名義をどうするか、譲渡所得税を誰が払うか、どの特例が使えるかで結果が変わります。この記事では、国税庁の質疑応答事例とタックスアンサーで確認できる内容に絞って、実務の判断どころを整理します。
Contents
換価分割とは何か?
換価分割とは、遺産を売却して現金に換え、その代金を相続人で分ける遺産分割の方法です。読み方は「かんかぶんかつ」です。
遺産分割には次の4つの方法があります。
| 方法 | 分け方 |
|---|---|
| 現物分割 | 自宅は長男、預金は長女、というように財産そのものを分ける |
| 換価分割 | 遺産を売却して、その代金を分ける |
| 代償分割 | 1人が現物を取得し、他の相続人に代償金を払う |
| 共有分割 | 複数人の共有名義のまま持ち続ける |
換価分割が向いているのは、分けにくい財産が遺産の中心を占めていて、誰もそれを使う予定がないケースです。 典型は、相続人が全員持ち家を持っていて、誰も実家に住まない場合です。

代償分割との違いはどこ?
代償分割は自分の財布から代償金を出す方法、換価分割は売れた代金を分ける方法です。
| 比較点 | 換価分割 | 代償分割 |
|---|---|---|
| 現物 | 売却して手放す | 1人が取得して残る |
| 必要な手元資金 | 不要 | 代償金を払う人に必要 |
| 分配額 | 売れた金額で決まる | 評価額をもとに決める |
| 譲渡所得税 | 売った相続人に発生 | 原則として発生しない |
代償分割は、代償金を払う人にまとまった資金が必要です。 その資金がない、あるいは不動産を残す理由がないなら、換価分割のほうが現実的です。
なお代償分割では、現物を取得した人が他の相続人に交付した代償財産の価額を差し引いて相続税の課税価格を計算します(出典:国税庁)。
共有分割と何が違う?
共有分割は持ち続ける、換価分割は売って終わらせる方法です。
共有のまま持ち続けると、固定資産税の負担、修繕の合意、次の相続での持分の細分化といった問題が先送りになります。換価分割は、その場で精算して関係を清算できるのが利点です。
換価分割のメリットは?
公平に分けられること、手元資金がなくてもできること、維持費から解放されることの3つです。
1円単位で公平に分けられる
売却代金は現金なので、法定相続分どおりにきれいに分けられます。
不動産を評価額で分けようとすると、路線価・固定資産税評価額・不動産会社の査定額のどれを使うかで金額が変わり、もめる原因になります。換価分割なら実際に売れた金額という動かしようのない数字が基準になります。
手元資金がいらない
代償分割と違い、誰かがお金を用意する必要がありません。 売却代金からそのまま分配するためです。
維持費と管理の負担がなくなる
空き家を持ち続けると、固定資産税、火災保険料、草刈りや通風などの管理が続きます。 売却すればこれらは不要になります。遠方に住んでいる相続人にとっては大きな差です。
相続税の納税資金をつくれる
相続税は原則として現金一括納付です。 遺産の大半が不動産だと納税資金が足りなくなりますが、換価分割なら売却代金を納税に充てられます。
ただし、相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています(出典:国税庁)。不動産が期限までに売れるとは限らないため、早めに動く必要があります。
換価分割のデメリットは?
財産が残らないこと、売却に時間と費用がかかること、譲渡所得税がかかることです。
財産そのものは手放すことになる
思い入れのある実家でも、売却すれば他人のものになります。 あとから「やはり残しておけばよかった」と思っても戻せません。相続人の1人でも残したい意向があるなら、代償分割を検討する余地があります。
売れるまで分配できない
買い手が見つからなければ、分配は始まりません。 立地や築年数によっては1年以上かかることもあります。相続税の納税資金を売却代金に頼る計画は、期限との勝負になります。
売却費用が差し引かれる
売却には次の費用がかかります。
| 費目 | 内容 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 不動産会社に支払う |
| 印紙税 | 売買契約書に貼る |
| 登録免許税 | 相続登記に必要 |
| 測量費・解体費 | 必要に応じて |
仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などは「譲渡費用」として売却代金から差し引いて譲渡所得を計算します(出典:国税庁)。手取りは売却価格そのものではありません。
譲渡所得税がかかる
売却益が出れば、所得税と住民税がかかります。 これが換価分割の最大の注意点で、次の章で詳しく扱います。
換価分割の手順は?
遺産分割協議 → 相続登記 → 売却 → 代金の分配 → 確定申告、の順です。
STEP 01
相続人と遺産を確定する(戸籍収集・財産調査)
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STEP 02
遺産分割協議で換価分割に合意し、協議書を作る
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STEP 03
相続登記をする(共有名義または代表者名義)
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STEP 04
不動産会社に依頼して売却する
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STEP 05
売却代金から費用を差し引いて分配する
▼
STEP 06
翌年に各自が譲渡所得を確定申告する
手順2を飛ばして売却を進めることはできません。 登記名義が被相続人のままでは売却できないためです。
相続登記は義務になっている
相続登記は、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する義務があります。 換価分割の場合も同じで、売るつもりでも登記は必要です。
正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります(出典:法務省)。さらに、遺産分割によって不動産を取得した場合には、遺産分割の日から3年以内にその結果に基づく登記をしないと、これも過料の対象になります(出典:法務省)。
相続登記にかかる登録免許税は、不動産の価額の1,000分の4(0.4%)です(出典:国税庁)。評価額2,000万円の不動産なら8万円です。
共有名義と代表者名義、どちらで登記する?
どちらでもできますが、手続きの手間と税務上の注意点が変わります。
| 登記の方法 | 利点 | 注意点 |
|---|---|---|
| 相続人全員の共有名義 | 贈与税の疑いが生じにくい | 売買契約や決済に全員の関与が必要 |
| 代表者1人の単独名義 | 手続きが1人で進められる | 協議書に換価分割である旨の記載が必須 |
遠方に住む相続人がいる、高齢で外出が難しい相続人がいる場合は、代表者名義のほうが現実的です。 ただし、次の章の記載を協議書に必ず入れてください。
代表者名義にすると贈与税がかかる?
「単に換価のための便宜」であり、代金が実際に分配されるのであれば、贈与税の課税は問題になりません。 これは国税庁の質疑応答事例で明示されています。
国税庁の質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」は、換価の都合上、共同相続人のうち1人の名義に相続登記をしたうえで換価し、その後に換価代金を分配する場合について、次のように回答しています。
「便宜のもの」であることを書面で示す
この回答のポイントは「便宜のもの」であることと「実際に分配される」ことです。
裏を返すと、協議書に何も書かずに代表者名義にして、あとから他の相続人にお金を渡すと、代表者からの贈与と見られるおそれがあります。 防ぐには次の2つを協議書に明記します。
・換価分割のための便宜上の登記であること
・売却代金を誰にどの割合で分配するか
分配は「実際に」行う
回答は「実際に分配される場合」としています。 協議書に書いてあっても、代表者の口座に入れたまま分配しなければ、この前提を満たしません。売却代金が入金されたら、速やかに各相続人の口座へ送金し、振込記録を残してください。
遺産分割協議書はどう書く?
「換価分割であること」「売却して代金を分配すること」「分配の割合」「費用の負担」を書きます。
共有名義で登記する場合の記載例
第1条 相続人 甲野一郎、甲野花子及び甲野次郎は、 下記不動産を各3分の1の割合で共同して相続する。 【不動産の表示】 所 在 ○○市○○町一丁目 地 番 ○番○ 地 目 宅地 地 積 ○○○.○○平方メートル 第2条 相続人らは、前条の不動産を売却し、 売却代金から仲介手数料、登記費用、測量費その他 売却に要する一切の費用を控除した残額を、 各3分の1の割合で取得する。
代表者1人の名義で登記する場合の記載例
第1条 下記不動産は、換価分割のため、 便宜上 相続人 甲野一郎が取得し相続登記を行う。 【不動産の表示】 所 在 ○○市○○町一丁目 地 番 ○番○ 地 目 宅地 地 積 ○○○.○○平方メートル 第2条 相続人 甲野一郎は、前条の不動産を速やかに売却し、 売却代金から仲介手数料、登記費用、譲渡所得税その他 売却に要する一切の費用を控除した残額を、 甲野一郎、甲野花子、甲野次郎の各人が 3分の1ずつ取得するものとし、 売却後速やかに各人に分配する。
「換価分割のため」「便宜上」という文言を入れることが要点です。 これがあることで、代表者への財産移転が最終的なものではないと示せます。
書いておくと後でもめない項目
最低売却価格と期限を決めておくと、意見の食い違いを防げます。
・売却の最低価格(この金額を下回る場合は再協議する)
・売却活動の期限(○年○月までに売れない場合は再協議する)
・売却を担当する相続人と、その権限の範囲
・費用をいったん立て替える人と、精算方法
値下げの判断は必ずもめます。 「早く売りたい人」と「少しでも高く売りたい人」で意見が割れるためです。あらかじめ決めておいてください。
譲渡所得税は誰がいくら払う?
売却代金を受け取った相続人が、それぞれ自分の取得割合に応じて申告・納税します。代表者1人がまとめて払うのではありません。
登記の名義が代表者1人になっていても、税務上は各相続人が売ったものとして扱われます。
取得割合が決まっている場合
協議書で決めた取得割合で申告します。 割合を決めていない場合は法定相続分になります。
国税庁の質疑応答事例は、換価時に換価代金の取得割合が確定している場合について、次のように整理しています(出典:国税庁「未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等」)。
| 状況 | 譲渡所得の申告割合 |
|---|---|
| 特別の事情がなく法定相続分で取得する場合 | 所有割合(=法定相続分) |
| あらかじめ換価時までに取得割合を定めている場合 | 換価遺産の所有割合(=代金の取得割合) |
協議書で「3分の1ずつ」と決めていれば、譲渡所得も3分の1ずつ申告します。
取得割合が決まっていない場合
遺産分割が終わらないまま売却した場合は、原則として法定相続分で申告します。
質疑応答事例は、遺産分割審判における換価分割の場合や換価代金を遺産分割の対象に含める合意をするなど特別の事情がある場合に、換価後に代金を分割したとしても、譲渡所得は換価時における換価遺産の所有割合(=法定相続分)により申告することになる、としています(出典:国税庁)。
ただし、所得税の確定申告期限までに換価代金が分割され、共同相続人の全員が取得割合に基づいて申告した場合には、その申告は認められます(出典:国税庁)。
あとから分け方が変わっても更正の請求はできない
ここは見落としやすい点です。
申告期限までに代金の分割が行われていない場合は法定相続分で申告することになりますが、法定相続分により申告した後にその代金が分割されたとしても、法定相続分による譲渡に異動が生じるものではないため、更正の請求等をすることはできないとされています(出典:国税庁)。
つまり、分け方を決めるなら確定申告期限までに決める必要があります。 後から変えても税金は戻りません。
譲渡所得の計算方法は?
売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
計算式
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡所得 | 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用) |
| 課税譲渡所得 | 譲渡所得 − 特別控除額 |
| 税額 | 課税譲渡所得 × 税率 |
取得費とは、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や購入手数料などに、その後支出した改良費・設備費などを加えた合計額です。建物の取得費は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します(出典:国税庁)。
なお、相続や遺贈により取得した不動産を購入したときに納めた登録免許税(登記費用を含む)、不動産取得税、印紙税は取得費に含まれます(出典:国税庁)。相続登記でかかった登録免許税を忘れず計上してください。
取得費が分からないときは5%
古い実家では購入時の契約書が見つからないことがよくあります。
土地や建物の取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます(出典:国税庁)。
ただしこれは不利な扱いです。 3,000万円で売れた場合、取得費はわずか150万円とされ、2,850万円近くが譲渡所得になります。売買契約書、当時の領収書、通帳の記録は、家の中を徹底的に探す価値があります。
税率は所有期間で決まる
| 区分 | 所有期間(譲渡した年の1月1日時点) | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 所得税15%+住民税5% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 所得税30%+住民税9% |
相続した不動産は、被相続人が取得した日から所有期間を計算します。 相続や贈与により取得したものは、原則として被相続人や贈与者の取得した日から計算することになっています(出典:国税庁)。
親が30年前に買った家なら、相続直後に売っても長期譲渡所得です。 「相続してすぐ売ったから短期で30%」ということにはなりません。
なお、平成25年から令和29年までの各年分については、復興特別所得税を所得税と併せて申告・納付します。復興特別所得税額は基準所得税額に2.1%の税率を掛けて計算します(出典:国税庁)。
計算例:3人で3,000万円の実家を売った場合
条件:親が40年前に取得(取得費不明)、売却代金3,000万円、譲渡費用120万円、相続人3人が3分の1ずつ
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 譲渡価額 | 3,000万円 |
| 概算取得費(5%) | 150万円 |
| 譲渡費用 | 120万円 |
| 譲渡所得 | 2,730万円 |
| 1人あたり(3分の1) | 910万円 |
| 1人あたりの税額(20%) | 182万円 |
特例を使わない場合、1人あたり180万円前後の税負担になります。 次の章の特例が使えるかどうかで、手取りが大きく変わります。
使える税金の特例は?
空き家特例(最高3,000万円控除)と、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例があります。
空き家特例(3,000万円の特別控除)
相続した被相続人の居住用家屋とその敷地を売った場合、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できます(出典:国税庁)。
主な要件は次のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 建築時期 | 昭和56年5月31日以前に建築されたこと |
| 建物の種類 | 区分所有建物登記がされている建物でないこと |
| 同居者 | 相続開始の直前に被相続人以外に居住していた人がいなかったこと |
| 売却期限 | 相続開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 売却代金 | 1億円以下であること |
| 売却先 | 親子や夫婦など特別の関係がある人でないこと |
(出典:国税庁)
控除額は、令和6年1月1日以後に行う譲渡で、家屋および敷地を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円までとなります(出典:国税庁)。
また、この特例が使えるのは平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間の売却です(出典:国税庁)。
上の計算例で相続人3人がこの特例を使えれば、1人あたり910万円の譲渡所得から2,000万円まで控除できるため、税額は0円になります。 使えるかどうかで結果が180万円変わります。
売却代金1億円の判定は合算
注意が必要なのは1億円の判定です。
一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合や他の相続人が売却している場合の1億円判定は、分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金により行います(出典:国税庁)。
さらに、いったん特例を受けたあとで残りの部分を売却して合計額が1億円を超えたときは、その売却の日から4か月以内に修正申告書の提出と納税が必要です(出典:国税庁)。
取得費加算の特例
相続税を納めた人が、相続財産を一定期間内に売った場合、相続税額のうち一定金額を取得費に加算できます(出典:国税庁)。
要件は次の3つです(出典:国税庁)。
・相続や遺贈により財産を取得した者であること
・その財産を取得した人に相続税が課税されていること
・相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること
「相続開始から3年10か月以内」と覚えられている期限です。 換価分割で売却が長引くと、この期限を過ぎてしまいます。
空き家特例と取得費加算は併用できない
ここが実務で最も間違えやすい点です。
空き家特例の要件には、「売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと」が含まれています(出典:国税庁)。
どちらか有利なほうを選ぶ必要があります。 相続税を多く納めていれば取得費加算、相続税が少ないか無税なら空き家特例が有利になりやすいですが、金額を出して比べてください。判断に迷う場合は税理士に確認することをおすすめします。
換価分割で失敗しないための注意点
期限、名義、分配の3つを押さえてください。
期限が3つある
| 期限 | 内容 |
|---|---|
| 相続開始から3年以内 | 相続登記の申請義務 |
| 相続開始から10か月 | 相続税の申告・納付 |
| 相続開始から3年10か月 | 取得費加算の特例が使える期限 |
| 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日 | 空き家特例が使える期限 |
不動産はすぐには売れません。 相続が始まったら、遺産分割協議と並行して不動産会社への相談を始めてください。
売却代金を代表者の口座に置いたままにしない
協議書どおりに分配してこそ、贈与税が問題にならないという前提が成り立ちます(出典:国税庁)。入金を確認したら速やかに送金し、記録を残してください。
譲渡所得税を分配前に確保する
分配してから「税金が足りない」となるケースがあります。
代表者名義で売却した場合、代表者は自分の取得分に対する譲渡所得税を払うことになります。分配前に、各人の税額の見込みを計算して差し引いておくか、税額分を別に確保しておいてください。協議書の第2条に「譲渡所得税」を控除項目として書いておくのは、このためです。
遺言書で換価分割を指定することもできる
遺言で「不動産を売却して代金を○対○で分ける」と定めることもできます。 この場合、遺言執行者を指定しておくと、相続人全員を集めなくても売却手続きを進められます。
ただし、遺言の内容と実際の手続きが食い違うと執行が止まります。遺言で換価分割を指定する場合は、公正証書遺言で作成し、遺言執行者を定めておくのが安全です。
よくある質問(FAQ)
Q. 換価分割の読み方は?
A. 「かんかぶんかつ」です。遺産を売却して現金に換え(換価)、その代金を分ける(分割)方法を指します。
Q. 代表者1人の名義で登記すると贈与税がかかりますか?
A. 単に換価のための便宜であり、代金が実際に分配される場合には、贈与税の課税が問題になることはないとされています(出典:国税庁)。遺産分割協議書に「換価分割のため便宜上」取得する旨と分配割合を明記し、実際に分配してください。
Q. 譲渡所得税は誰が払いますか?
A. 売却代金を受け取った相続人が、それぞれ自分の取得割合に応じて申告・納税します。あらかじめ換価時までに取得割合を定めている場合は、その割合に応じて申告します(出典:国税庁)。
Q. 換価分割で3,000万円控除は使えますか?
A. 相続した被相続人の居住用家屋とその敷地を売る場合、要件を満たせば空き家特例として譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。ただし相続人の数が3人以上の場合は2,000万円までです(令和6年1月1日以後の譲渡)。また、昭和56年5月31日以前の建築であることなどの要件があります(出典:国税庁)。
Q. 遺産分割が終わる前に売ってもいいですか?
A. 売却自体は可能ですが、譲渡所得は換価時における所有割合(=法定相続分)で申告することになります。確定申告期限までに代金が分割され、相続人全員が取得割合に基づいて申告した場合はその申告が認められますが、申告後に分け方を変えても更正の請求はできません(出典:国税庁)。
Q. 相続登記の登録免許税はいくらですか?
A. 相続による所有権移転登記の登録免許税は、不動産の価額の1,000分の4(0.4%)です(出典:国税庁)。評価額2,000万円なら8万円です。
Q. 取得費が分からないときはどうなりますか?
A. 取得費が分からない場合や、実際の取得費が譲渡価額の5%より少ない場合は、譲渡価額の5%を概算取得費とすることができます(出典:国税庁)。ただし税負担は重くなるため、購入時の契約書や領収書を探すことをおすすめします。
換価分割は「書き方」と「期限」で結果が変わる
換価分割は、分けにくい遺産を公平に分けられる有効な方法です。ただし、うまく進めるには次の3点が欠かせません。
1. 遺産分割協議書に「換価分割のため便宜上」と分配割合を書く — これが贈与税を防ぐ前提になります
2. 譲渡所得は各自が取得割合に応じて申告する — 代表者がまとめて払うものではありません
3. 期限内に売る — 空き家特例も取得費加算も、期限を過ぎると使えません
特に、空き家特例と取得費加算は併用できません。 どちらが有利かは金額次第なので、売却の見通しが立った段階で計算して比較してください。
(本記事は制度の一般的な解説です。税額の計算や特例の適用可否は個別の事情により異なります。具体的な判断は税務署または税理士にご確認ください。)
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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この記事を監修したのは…
弁護士・ライター
中澤 泉(なかざわ いずみ)
弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。
事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。
法律をはじめ、記事執筆やコンテンツ制作のご依頼がございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。