第三者に遺贈を行う場合税金はどうなる?計算方法や注意点を解説!
Contents
第三者に財産を残すことができる遺贈とは?
遺贈とは遺言で自分の財産を受遺者に無償で譲渡する方法です。
遺言者(被相続人)が遺言書で指定をすれば、法定相続人(例:配偶者や子供等)の他、法定相続人以外の人(例:事実婚や同性婚のパートナー、お世話になった友人・知人等)にも財産を無償譲渡できます。
なお、遺贈以外では生命保険で下りる生命保険金の受取人を、法定相続人以外の人(例:法定相続人の対象外となっている孫)に指定できます。また、生命保険の一部では事実婚や同性婚のパートナーを受取人にできる商品も販売されています。
遺贈を行うメリットとデメリットとは?
遺贈を行う場合、遺産の譲渡に関する遺言者(被相続人)の意思が反映できる反面、遺言内容によっては受贈者間でトラブルが発生する可能性もあります。
遺贈を行うメリット
自分の財産を受け取ってもらいたい人がいれば、遺言書で指定し取得させることができます。
受贈者には法定相続人の他、生前に可愛がっていた孫や、事実婚・同性婚のパートナー、生前お世話になった知人・友人の指定も可能です。
遺贈では受贈者の誰にどんな財産を取得させるか、遺言者の意思で決められます。亡くなった後、遺産分割でトラブルにならないように、受贈者に配慮しながら遺産の分与ができます。
遺贈を行うデメリット
遺言は所定の方法で作成しないと無効になる可能性があります。自筆証書遺言の場合は基本的に遺言者本人が自筆で作成しなければいけません。
また、公正証書遺言は公証人という公務員が作成してくれる遺言で、偽造・変造の心配はありませんが、証人2人が必要となります。作成に手間取る可能性もあるでしょう。
その他、法定相続人が予想もしなかった第三者を受贈者に指定すると、トラブルになる可能性もあります。事前に法定相続人となる家族に、第三者も受贈者に含める旨を伝えておいた方が良いでしょう。
相続人以外の第三者に遺贈した場合の相続税の計算方法を解説!
基本的に法定相続人以外の第三者へ遺贈した場合、相続税の計算は法定相続人が遺産を取得した場合の計算方法と変わりません。
計算方法は「法定相続分に応じた取得金額×税率-控除額」です。
ただし、相続税の基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に、法定相続人以外の第三者は含まれないので注意しましょう。
相続税の税率・控除額に当てはめて相続税額を計算します。下表をご覧ください。
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
~1,000万円以下 | 10% | 0円 |
~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
~1億円以下 | 30% | 700万円 |
~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超~ | 55% | 7,200万円 |
法定相続人以外の第三者だけに被相続人の全財産を遺贈した場合、次のような計算方法となります。
(例)身寄りのなかった被相続人は、色々と介護の世話をしてくれた友人に全財産(2,000万円)を遺贈した。
友人の取得金額は2,000万円なので税率15%、控除額50万円で計算します。
取得金額2,000万円×税率15%-控除額50万円=250万円
ただし、友人は法定相続人以外の第三者なので相続税が2割加算となります。
250万円×20%=50万円(2割加算分)
250万円+50万円=300万円
300万円が友人に課せられる相続税額です。
相続人以外の第三者に遺贈した場合の相続税の計算例
被相続人が法定相続人の他に法定相続人以外の第三者へ遺贈する場合、やや相続税の計算は複雑になります。こちらでは例をあげ、STEPごとに分けて説明しましょう。
STEP1:遺言書で遺贈の内容を確認
遺言者(被相続人)の遺言を確認すると、遺産総額が7,000万円で、受贈者は被相続人の法定相続人2名(配偶者・子供)の他、法定相続人以外の第三者1名が含まれていました。それぞれの遺贈の内訳は次の通りです。
- 配偶者:3,500万円
- 子供:2,800万円
- 第三者:700万円
受贈者たちは納得し、それぞれ遺産を取得することになりました。
STEP2:相続税の基礎控除を利用する
例では被相続人の法定相続人の配偶者・子供が受贈者になっています。そのため、相続税の基礎控除が適用されます。しかし、法定相続人の数に第三者は含まれないので次のような計算となります。
3,000万円+600万円×2人=4,200万円
遺産総額7,000万円から基礎控除額4,200万円を差し引くと
遺産総額7,000万円-基礎控除額4,200万円=2,800万円
2,800万円が相続税の対象です。
STEP3:全体の相続税額を計算
まずは法定相続人(配偶者・子供)の法定相続分に応じた割合で計算します。
- 配偶者の法定相続割合50%:2,800万円×50%=1,400万円
- 子供の法定相続割合50%:2,800万円×50%=1,400万円
双方とも法定相続分に応じた取得金額は1,400万円なので、税率15%、控除額50万円で計算します。
- 配偶者:1,400万円×税率15%-控除額50万円=160万円
- 子供:1,400万円×税率15%-控除額50万円=160万円
配偶者と子供の相続税額は合計で320万円です。
STEP4:それぞれの受贈分に割り当てる
相続税額の合計で320万円を、それぞれ受贈分に従って割り振ります。
- 配偶者の取得額3,500万円(遺産総額の50%):320万円×50%=相続税額160万円
- 子供の取得額2,800万円(遺産総額の40%):320万円×40%=相続税額128万円
- 第三者の取得額700万円(遺産総額の10%):320万円×10%=32万円
ただし、第三者は相続税が2割加算となるので
32万円×20%=6.4万円(2割加算分)
32万円+6.4万円=相続税額38.4万円
第三者の相続税額は38.4万円です。
相続人以外の第三者に遺贈した場合の注意点とは?
被相続人が法定相続人以外の第三者へ遺贈を希望する場合、次の注意点を良く考慮して、遺贈するべきかどうかについて検討しましょう。
第三者は相続税の基礎控除や非課税枠に含めない
第三者は、相続税の基礎控除「3,000万円+600万円×法定相続人の数」、生命保険金や死亡退職金の非課税枠「500万円×法定相続人の数」に含まれないので注意しましょう。
法定相続人の他に第三者も受贈者となる場合は、第三者を除いた人数で計算しなければいけません。
特定遺贈を選ぶと債務や葬式費用の控除はできない
遺贈には、一定の割合で包括的に財産を指定して行う「包括遺贈」、遺言で財産を特定して行う「特定遺贈」の2種類があります。
特定遺贈ならば、遺言者が受遺者ごとに細やかな遺産配分を行えます。ただし、包括遺贈と異なり特定遺贈の受遺者は「債務控除」を利用できません。
債務控除は遺言者(被相続人)の債務(借金等)や葬儀費用が該当します。債務控除ができない分、相続税が多く課せられる可能性もあります。
不動産取得税・登録免許税がかかる場合もある
遺贈で不動産を取得した人は、所有権が移転したので法務局に登記しなければなりません。その際に登録免許税を納付します。ただし、税率は第三者の方が重くなります。
受贈者 | 登録免許税額 |
法定相続人 | 0.4% |
法定相続人以外の第三者 | 2% |
また、特定遺贈により第三者が不動産を取得した場合、不動産取得税が課されます。現在のところ税率は下表の通りです。
不動産 | 不動産取得税額 |
土地・家屋(住宅) | 3% |
家屋(住宅以外) | 4% |
負担を軽くするための節税方法をご紹介!
自分がどうしても法定相続人以外の第三者に財産を譲りたい場合は、遺贈以外の方法も検討してみましょう。
暦年贈与という方法がある
自分が生きているうちに、法定相続人以外の第三者へ贈与する方法があります。それが「暦年贈与」です。
暦年贈与は1月1日〜12月31日までの1年間の贈与額が、受贈者1人につき110万円を超えなければ、贈与税が非課税となります。
いっきにまとまった贈与ができなくても、110万円以内に抑えて贈与すれば、基本的に受贈者の重い税負担とはなりません。
受贈者は自分の家族の他に第三者でも良いので、遺贈の相続税負担が気になったら、この方法を考えてみましょう。
遺贈するか悩んだら専門家に相談しよう
遺贈で第三者に財産を譲渡したい際、いろいろな疑問点・不明点が出てくるかもしれません。そんな時は「円満相続ラボ」を利用しましょう。円満相続ラボでは「相続診断士」の紹介を無料でサポートしてくれます。
相続診断士は相続全般に深い知識を有する専門資格者なので、相談者の遺贈に関する悩みへ適切なアドバイスを行ってくれることでしょう。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください