自筆証書遺言の検認は必要?不要なケースや申立方法を徹底解説!
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そもそも自筆証書遺言とは何?
自筆証書遺言とは、遺言者自らが自筆で作成する遺言を指します。作成後は遺言者が保管場所を決定します(自宅はもちろん、法務局での保管も可能)。
遺言者が遺言内容の全文と日付、氏名を自書し、これに印を押せばいいので、自宅で気軽に作成できます(民法第968条)。
遺言書さえ作ればそのまま机の引き出しに保管しても構いませんし、書き直したいならば、新たな紙面で遺言書を作成すればよいのです。
なお、法律上は封筒に入っていないことのみをもって、遺言書が無効になることはありませんが、相続人に見つかると破棄されたり、改ざんされたりするリスクもあるので、封筒等に入れ封をしておくのが一般的です。
また、遺言者の死亡後に自筆証書遺言を発見した場合には、原則として家庭裁判所に検認してもらう必要があります。
自筆証書遺言の検認は必要?不要なケースとは?
自筆証書遺言を発見した際は、原則として家庭裁判所で「検認」する必要があります。自筆証書遺言が封筒等に入れられていてもいなくても、検認は遺言書の偽造・変造を防止するため、申立てしなければいけません。
ただし、遺言者が「自筆証書遺言保管制度」を利用していた場合は、検認は不要です。
なぜなら「自筆証書遺言保管制度」では法務局に遺言書が保管されるため、相続人等の利害関係者が破棄・隠匿したり、改ざんしたりする危険性がないからです。
検認を受けずに遺言書を開封した場合はペナルティの可能性も!
自筆証書遺言が封筒に入れられ封をした状態で保管されていた場合、家庭裁判所以外で勝手に開封してしまうと、5万円以下の過料になります(民法第1005条)。
ただし、遺言書を勝手に開封したからといって、直ちに相続人の地位を失う事態とはなりませんし、遺言書自体が無効になることもありませんので安心してください。
自筆証書遺言が見つかった場合には、慌てて開封せず、速やかに家庭裁判所へ検認申立てを行いましょう。
自筆証書遺言の検認を申し立てるのに期限はある?
検認申立ての期限は法定されておらず、発見後「遅滞なく」申立てを行うよう規定されているだけです。自筆証書遺言を発見したら、なるべく早く家庭裁判所で手続きを行いましょう。
検認手続きは申立てから数週間〜1か月程度かかるので、早めに申立ての準備を始めないと、遺言書に従った相続手続きが進まなくなります。
自筆証書遺言の検認申し立てにかかる費用や手数料
検認の申立てに必要な費用は遺言書1通につき収入印紙800円分です。その他、連絡用の郵便切手が数百円〜数千円ほど必要です。
なお、弁護士や司法書士のような法律の専門家に、家庭裁判所に申し立てる準備をしてもらうと、報酬として3万〜10万円程度が申立費用とは別にかかりますが、相続人が検認申立ての準備をすることが難しい場合には、弁護士・司法書士に依頼した方がスムーズに手続きを進められるはずです。
自筆証書遺言の検認申し立てに必要な書類とは?
法定相続人が誰かによって、検認の申立てに必要な書類が決まります。
共通して必要な書類
基本的には申立書、遺言者、相続人の戸籍謄本等を準備します。
共通の書類 | 取得先 | 手数料 |
申立書 | 家庭裁判所の窓口にて取得 | – |
遺言者の出生~死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍) | 遺言者の本籍地の市区町村役場 | ・戸籍謄本:450円 ・除籍、改製原戸籍:750円 |
相続人全員の戸籍謄本 | 相続人の本籍地の市区町村役場 | 450円 |
【遺言者の子や代襲者が死亡】 出生~死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍) | 子や代襲者の本籍地の市区町村役場 | ・戸籍謄本:450円 ・除籍、改製原戸籍:750円 |
ケースに応じて必要な書類
次のようなケースにおいては、それぞれ次の書類を追加で提出します。
(1)相続人が遺言者の配偶者と直系尊属(父母・祖父母等)の場合
共通して必要な書類の他に、遺言者の直系尊属で死亡している人がいるならば、その直系尊属の死亡記載のある戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)が必要です。
(2)遺言者の兄弟姉妹が相続人となる場合
共通して必要な書類の他に、遺言者の父母の出生~死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)と遺言者の兄弟姉妹で死亡している人がいる場合、その兄弟姉妹の出生〜死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)と、代襲者としてのおいめいで死亡している人がいる場合、そのおい又はめいの死亡記載のある戸籍謄本(除籍,改製原戸籍)を用意します。
(3)相続人が不存在の場合
共通して必要な書類の他に、遺言者の父母や兄弟姉妹の出生〜死亡時までのすべての戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)と死亡したおい又はめいの死亡記載のある戸籍謄本(除籍,改製原戸籍)を用意します。
(4)遺言者の配偶者のみが相続人となる場合
共通して必要な書類の他に、(3)と同様の戸籍が必要です。
自筆証書遺言の検認申し立ての手続き方法!問題が発生した場合の対処法
こちらでは検認申立ての流れ、検認の過程で問題が発生した場合の対応を解説しましょう。
検認申立ての流れ
申立ての手順は次の通りです。
- 申立てのため必要書類を揃える:相続人が複数いる場合は協力しながら書類を収集する。
- 検認申立てを行う:遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に書類を提出、なお郵送も可能。
- 検認期日の通知:家庭裁判所から検認期日の通知が届く。
- 検認開始:家庭裁判所で検認が実施される。相続人全員が出席する必要はない。相続人・裁判官が立ち会い、遺言書を開封し確認する。所要時間は15分〜20分程度。
- 検認済証明書を申請:検認済証明書が交付されれば相続手続きを進められる。検認を欠席した相続人には家庭裁判所から「検認済通知」が送付される。
なお、申立人が検認期日に欠席すれば検認は行われないので注意しましょう。事前に希望日を伝えるときは、必ず出席できる日を選んでください。
検認の過程で問題が発生した場合
検認中、遺言書を開封し確認したところ、明らかに内容がおかしい(例:偽造・変造された形跡がある、遺言者の真の意思に基づかないと考えられる等)と気付くケースもあるでしょう。
検認は、遺言書が有効か無効かを確定する手続きではありません。そのため、遺言の無効を主張したい場合は、検認後にあらためて家庭裁判所に調停を申し立てます。
調停では、調停委員が相続人の主張を公平に聴き取り、解決案を提示する等して、遺言無効に関する紛争の解決を図ります。調停が不成立となった場合には、遺言無効確認請求訴訟を提起します。
自筆証書遺言の検認を専門家に依頼すべき?メリット・デメリットを解説!
弁護士や司法書士へ検認の申立てに関する依頼をすれば、手続きがスムーズに進むはずです。状況に合わせて上手に利用しましょう。
弁護士や司法書士に依頼するメリット
弁護士や司法書士に依頼すれば申立書の作成はもちろん、戸籍謄本等の必要な書類の収集を任せられます。
弁護士に頼んだ場合は、検認時、相続人の代わりに裁判官に説明してもらうことが可能です。
また、弁護士に依頼しても、司法書士に依頼しても、検認後の具体的な相続手続きについても法的なアドバイスが受けられることが多いので、その後の手続きもスムーズに進むはずです。
弁護士や司法書士に依頼するデメリット
弁護士や司法書士に依頼すれば、報酬を支払わなければいけません。司法書士は検認の際に同席等をする機会はほとんどないため、報酬は安く3万円〜5万円程度が目安です。
しかし、弁護士は相続人の代わりに裁判官に説明も行える分、報酬は高く10万円程度が目安となります。
相続人で手分けして検認の準備ができそうなら、無理に専門家へ依頼する必要はありません。
検認については専門家に相談しよう
検認について不明点や疑問点があれば弁護士・司法書士に相談してみましょう。豊富な法律の知識を有する弁護士・司法書士は、相談者の質問にわかりやすく回答してくれるはずです。
また、検認をはじめ相続に関する悩みがあるなら「円満相続ラボ」を利用しましょう。円満相続ラボでは「相続診断士」の紹介を無料でサポートしてくれます。
相続診断士は、自筆証書遺言の方法や相続全般に深い知識を有する専門資格者なので、相談者の悩みへわかりやすくアドバイスを行ってくれるはずです。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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この記事を監修したのは…
司法書士さかい事務所
酒井 睦(さかい むつみ)
最大手の相続専門司法書士事務所において、面談担当として2000件以上の相続・終活手続きに携わりました。東京都中央区と中野区、埼玉県さいたま市、川口市、吉川市、千葉県柏市などで、無料相談会を定期的に行っております。お気軽にご利用くださいませ。
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