成年後見人は死後事務を行うことができる?業務範囲や手続きを解説!

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遺産相続

成年後見人は死後事務を行うことができる?

成年後見人は基本的に死後事務を行えません。その理由としては成年後見人の役割があげられます。

成年後見人の権限内容
財産管理財産を調査・把握し、日々の収入・支出を管理する。例:住居の確保、預貯金の管理、税金・公共料金の支払い等。
身上監護生活・療養監護に関する事務を処理する。例:医療・介護施設の入退所の手続き、介護・生活維持に関する契約の締結・解除等。

つまり、被後見人等(支援を受ける人)の生前のサポートを担うのが成年後見人です。死後の業務は成年後見人の業務範囲外なため、成年後見人は基本的に死後事務は行いません。

更に成年後見人は次の2種類に分かれます。

  • 法定後見人:本人の判断能力の著しい低下を確認したら、家庭裁判所に申し立てて選任してもらう。
  • 任意後見人:本人に判断能力があるうちに任意後見契約を締結し、後見人となってくれる人を決めておく。

死後事務は本人(委任者)と事務をしてくれる人(受任者)とが合意し、契約で締結する死後の作業です。

そのため、任意後見契約を締結する際、個別に任意後見人となってくれる人と「死後事務委任契約」を締結すれば、死後の作業を任せられます。

成年後見人が死後事務を行える業務範囲を例を挙げて詳しく解説!

自分の任意後見人に死後事務を依頼したいならば、死後事務委任契約を締結する際、次の事務範囲を設定できます。

  • 亡くなった際、親族や親戚友人等への連絡
  • 葬儀・火葬・埋葬の手配
  • 喪主代行
  • 法要(一周忌、三回忌等)の開催
  • 市区町村役場への死亡届や保険証返還、年金受給停止手続き等
  • 家賃や医療・入院費用等の清算手続き
  • 電気、水道、ガス等の解約
  • 携帯電話・プロバイダ契約の解除

お葬式の手配から電気、水道、ガス等の解約まで幅広い内容を自由に取り決めできます。

ただし、遺言内容を契約書に記載しても、法的効果はありません。遺言を残したい場合は法律に則った「遺言書」の作成が必要です。

成年後見人が死後事務を行うための要件は?

成年後見人(任意後見人)が死後事務の受任者となる場合には、次のような要件があります。

死後事務の受任者は基本的に誰でもなれる

任意後見契約の任意後見受任者(任意後見人になってくれる人)には、家族や親戚はもちろん、知人・友人・事業者(士業専門家・法人)いずれも就任が可能です。

死後事務委任契約も任意後見契約と同様、相手方の同意があれば個人・法人を問わず、自由に契約を締結できます。

委任者に判断能力のあるうちに死後事務委任契約は個別に締結する

死後事務委任契約を締結するには、本人(委任者)に判断能力が十分なければいけません。そのため、認知症等になる前に委任する相手方と話し合い、契約内容を取り決める必要があります。

死後事務委任契約は任意後見契約と個別に締結します。なぜなら、任意後見契約は生前の財産管理・身上監護のサポート内容に限定されるからです。

任意後見の他に死後事務も任せたいなら「任意後見契約公正証書」と「死後事務委任契約書」に分けて作成・保管します。

死後事務委任契約書は作成しておいた方が良い

死後事務委任契約は委任者・受任者の合意で成立するので、契約書を作成する必要はありません。

しかし、受任者は死後事務を行う際、どんな取り決めをしたか忘れてしまうかもしれないので、書面化しておいた方が良いでしょう。

任意後見契約の際は、公正証書(公証人が作成する書類)として書面化する必要があります。一方、死後事務委任契約の場合は、委任者が作成し、受任者が合意する形で、当事者だけで作成しても構いません。

ただし、死後事務を事業者と契約するならば、契約内容を公正証書にするよう要請される場合がほとんどです(公正証書の手数料は11,000円前後)。

成年後見人に死後事務を依頼するには報酬が必要?相場は?

死後事務の費用は契約で自由に設定が可能です。こちらでは報酬相場と支払方法を説明します。

事業者に依頼する場合は報酬が明記されている

死後事務サービスを扱う士業専門家・法人に依頼すれば、実績が豊富なので自分の死後も安心して事務を任せられるはずです。

ただし、事業者の料金設定に納得して依頼する必要があります。事業者に依頼する場合の報酬(目安)は下表の通りです。

死後事務項目報酬(目安)
葬儀・火葬・埋葬の手続き・手配20万円~30万円
遺品整理2万円~5万円
病院・介護施設の諸手続2万円~5万円
賃貸住宅明渡手続き2万円~4万円
市区町村役場への諸届出8万円~10万円
住民税・所得税の納税手続き2万円~5万円
公共料金精算・解約手続き1万円~6万円
デジタル遺品の整理・消去2万円~5万円
合計39万円~

報酬自体は概ね40万円以上からとなります。ただし、実費(例:お葬式等の費用等)も含めれば100万円を超えるケースがほとんどと言えるでしょう。

なお、入会費として1万円〜3万円が必要なところもあれば、遺言書やエンディングノートの作成アドバイス等をオプション・サービスとして追加できる事業者もあります。

いろいろな支払方法がある

死後事務では委任者の死亡後、契約に従い様々な作業が進められていきます。そのため、契約時に次のような方法で報酬等を支払います。

支払方法内容
預託金受任者へ事前にお金を預ける方法。事業者の場合、預託金による支払方法が主流。
遺言による清算死後事務委任契約の作成時、遺言書を併せて作成して、委任者の遺産で死後事務にかかった費用を清算する方法。
相続人から清算死後事務にかかった費用を相続人が肩代わりする方法。
預貯金口座本人の預貯金口座を解約し、その残金で清算する方法。
信託銀行信託銀行にお金を預け清算する方法。
生命保険事前に委任者が生命保険(死亡保険)へ加入し、下りた死亡保険金で清算する方法。

当然、支払方法も死後事務委任契約に明記しておく必要があります。

成年後見人が死後事務を行う際の流れを解説!

こちらでは、成年後見人(任意後見人)へ死後事務を委任する流れについて説明しましょう。

1.委任する死後事務を検討する

死後事務を委任したい委任者本人が、自分の死後どんな手続きを任せるのか、まず慎重に検討します。

自分の死後、どんな手続きをしてもらわないと困るのか、問題等をピックアップしていきましょう。

委任者に判断能力があれば、死後事務の内容の検討は任意後見契約の前後いつでも構いません。

2.成年後見人(任意後見人)となる人と話し合う

死後事務委任契約の内容について本人と成年後見人(任意後見人)となる人とが話し合い、契約内容を決定します。

本人が契約書を作成し、相手方が内容を確認、問題なければ契約締結へ進みます。

一方、事業者を受任者とする場合は、受任者側の方で契約書を作成し委任者が同意する、という方法が一般的です。

死後事務委任契約は個別に作成するので、任意後見契約と同時または任意後見契約の前後に契約を締結して構いません。

3.契約を取り交わす

死後事務委任契約内容を記載した契約書に、委任者・受任者双方が署名し、実印または認印を押印すれば、契約手続きが完了します。

契約書は委任者・受任者用をそれぞれ1通ずつ作成後、いずれにも双方が署名・押印します(更に割印をすれば確実)。署名・押印後はそれぞれが大切に保管しておきましょう。

一方、事業者と契約するならば契約書は公正証書にするケースがほとんどです。その場合は公証役場に出向き、契約内容を公正証書とします。

成年後見人に死後事務を依頼するために準備しておくべきこと!

死後事務を成年後見人に依頼する場合、準備するべき必要書類等は特に法定されていません。成年後見人(任意後見人)となる人が誰かによって、準備する書類等は異なります。

個人が任意後見人となる場合

親戚や友人・知人等の個人が任意後見人となるなら、取り立てて準備するべき書類はありません。

しかし、死後事務委任契約書に明記する契約内容の情報は、前もって収集しておくべきです。次の情報を一覧表にする等して、契約書作成時の参考にしましょう。

  • お葬式を依頼する葬儀社
  • 希望する火葬場
  • どこに埋葬してもらうか(菩提寺・霊園等)
  • 死亡後の届出先(市区町村役場等)
  • どこの介護施設の手続きを行ってもらうか(施設利用の契約解除等)
  • 水道光熱費の解約方法
  • 預金口座 等

事業者が任意後見人となる場合

任意後見人に士業専門家や法人を選びたいなら、死後事務サービスを提供しているかどうかも確認します。

任意後見契約・死後事務委任契約を締結する場合、本人確認書類として次の書類を準備する必要があります。

  • 住民票(本籍地記載のもの):お住まい市区町村役場で取得(手数料1通300円)
  • 戸籍謄本:お住まい市区町村役場で取得(手数料1通450円)
  • 印鑑登録証明書:お住まい市区町村役場で取得(手数料1通300円)

その他、死後事務委任契約前に契約申込書、企画書(例:葬儀形式、埋葬方法の指定等)等の提出を要求される場合があります。

死後事務に不安があるなら専門家に相談しよう

死後事務に関して悩みや質問があれば、死後事務サービスを提供する事業者に相談してみましょう。

特に死後事務サービスを扱う士業専門家(弁護士・司法書士・行政書士)は、死後事務に関する深い知識を有しています。

相談者の質問に関して、士業専門家はわかりやすく回答してくれるはずです。

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