成年後見制度とは?家庭裁判所の役割や手続き、注意点を解説!
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成年後見制度とは?仕組みや選任条件についてご紹介
成年後見制度、そして仕組みや選任条件について解説します。
成年後見制度とは?
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない方(以下「本人」といいます)を支援するための制度です。
成年後見制度には、大別して、法定後見制度と任意後見制度があります。法定後見制度は法律による後見制度であり、任意後見制度は契約による後見制度です。
そして、法定後見制度は、本人の判断能力に応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類に分かれています。
成年後見制度の仕組み
法定後見制度は、家庭裁判所が、判断能力が欠けているのが通常の状態と判断した場合には「後見」(民法7条)、判断能力が著しく不十分と判断した場合には「保佐」(民法11条)、判断能力が不十分と判断した場合には「補助」(民法15条)をつける制度を開始し、それぞれ成年後見人、保佐人、補助人とつけて本人を支援するものです。
任意後見制度は、十分な判断能力がある方が将来的に、判断能力が不十分と判断された場合に備えて、あらかじめ公正証書で任意後見契約を結んでおき、判断能力が不十分になったときに、その契約に基づいて任意後見人が本人を援助する制度です。家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、その契約の効力が生じます。
法定後見人や任意後見人の選任条件
【法定後見制度の場合】
家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族らの後見開始、保佐開始、補助開始の審判の申立てにより、本人の判断能力の程度に応じて最適者を人選し、「後見開始」には成年後見人(民法843条1項)、「保佐開始」には保佐人(民法876条の2第1項)、「補助開始」には補助人(民法876条の7第1項)を職権で選任します。
家庭裁判所は、基本的に本人の身上監護や財産管理を適正に行ってくれる方を、本人の判断能力の程度に応じて、成年後見人、保佐人、補助人に選任するのです。
このように、成年後見人、保佐人及び補助人は、家庭裁判所の職権で選任されます。
【任意後見制度の場合】
任意後見人には、任意後見契約を公正証書で締結する際に、委任者(本人)と契約した受任者がなります。
任意後見受任者は、任意後見監督人が選任された後に、任意後見人になります。
委任者(本人)は、信頼できる人であれば、身内の者でも、友人でも、特定の資格を問わず誰でも、任意後見受任者(任意後見人)にすることができます。
もしご自身で後見人を指定したいと思われたら、任意後見契約を選択されるのが良いと思います。
もっとも、下記は任意後見受任者になることができません(任意後見契約に関する法律4条1項3号)。
①未成年者
②家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
③破産者
④行方の知れない者
⑤本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族
⑥不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人に適しない事由のある者
成年後見人にはどんな人がなれる?保佐人や補助人との違いは?!
まず、法定後見制度の「後見」「保佐」「補助」がどのような場合に利用されるのかについて確認したうえで、成年後見人にはどんな人がなれるのか、保佐人や補助人との違いについて解説します。
「後見」が利用される場合
後見は例えば、老人性の認知症により判断能力が欠けているのが通常の状態の方がいたとします。介護の契約を結んだり、財産を管理したりする必要があるとき、成年後見人が代理してそのような契約や財産管理をしてもらいたい場合に、利用されることが考えられます。
「保佐」が利用される場合
保佐は例えば、老人性の認知症により判断能力が著しく不十分な方がいたとします。不動産その他の重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為や遺産分割等の一定の行為のほか、申立てにより家庭裁判所が定める行為をする必要があるとき、保佐人の同意を得なければならない場合や、保佐人が代理してそのような行為をしてもらいたい場合に、利用されることが考えられます。
「補助」が利用される場合
補助は例えば、認知症の症状により判断能力が不十分な方がいたとします。1人で契約等をすることはできますが、医師に言われるなどして、1人で契約等をすることに不安があるため、申立てにより家庭裁判所が定める行為をする必要があるとき、補助人の同意を得なければならない場合や、補助人が代理してそのような行為をしてもらいたい場合に、利用されることが考えられます。
成年後見人にはどんな人がなれる?
家庭裁判所は、申立書に記載された成年後見人候補者が適任であるかどうかを審理します。
その結果、候補者が成年後見人に選任されない場合があります。
本人(被後見人)が必要とする支援の内容などによっては、候補者以外の方、例えば、弁護士、司法書士、社会福祉士、税理士等の専門職や、法律又は福祉に関わる法人などを、成年後見人に選任することがあります。
なお、①未成年者、②家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人及び補助人、③破産者、④本人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族、⑤行方の知れない者は、成年後見人になることができません(欠格事由。民法847条)。
このように、本人(被後見人)が希望する方が必ずしも選任されるとは限りません。
成年後見人は、家庭裁判所が選任するわけですが、本人の身上監護、財産管理を適正に行い、本人を支援するのに適した方がなれるということになりましょう。
保佐人や補助人との違いは?
成年後見人は、全ての法律行為を本人に代わってしたり、本人がした全ての法律行為を取り消すことができます(ただし、日用品の購入などの日常生活に関する行為を除きます)。
保佐人は、家庭裁判所が定める行為を本人に代わってしたり、民法13条1項記載の行為(借金、相続の承認及び放棄、訴訟行為、新築や増改築など)や家庭裁判所が定める行為をする際に同意をしたり、本人がしたそれらの行為を取り消すことができます(ただし、日用品の購入などの日常生活に関する行為を除きます)。
補助人は、家庭裁判所が定める行為を本人に代わってしたり、家庭裁判所が定める民法13条1項記載の行為の一部をする際に同意をしたり、本人がしたそれらの行為を取り消すことができます(ただし、日用品の購入などの日常生活に関する行為を除きます)。
このように、成年後見人は、保佐人や補助人と違い同意権はなく、また、その代理権や取消権についても、日用品の購入などの日常生活に関する行為を除き、保佐人や補助人とは、範囲に違いがあります。
しかし、成年後見人と保佐人、補助人の間には、家庭裁判所が選任する基準に違いがあるわけではありません。
成年後見制度の手続き~必要書類や費用について
ここでは、成年後見制度の手続き、必要書類や費用について解説します。
成年後見制度の手続き
後見開始の手続きの流れは、下記のとおりです。
【申立て】
申立ては、本人が実際に住んでいる所(住民票上の住所ではありません)を管轄する家庭裁判所にします。
後見開始の申立ても、書面又は口頭でできるとされていますが(家事事件手続規則5条)、実務上は、申立ての趣旨及び申立ての理由、事件の実情を記載した後見開始申立書(同規則37条1項)を提出します。
申立書のほかには、管轄や申立権など申立ての要件を示す書類や事案の内容を明らかにする証拠書類となるものを提出することが必要です。
家庭裁判所によっては、申立ての手引きを発行し、またそれをウェブサイトで公表するなどして、必要書類を示しており、各種申立書もウェブサイト等で取り寄せることができます。
【審問・調査・鑑定等】
申立て後、裁判所の職員が、申立人、成年後見人候補者、本人から事情を聞いたり、本人の親族に成年後見人候補者についての意見を照会することがあります。また、必要に応じ裁判官が事情を尋ねること(審問)もあります。
本人の判断能力の程度を医学的に十分確認するため、医師による鑑定を行うことがあります。
【審判(後見開始、成年後見人の選任)】
家庭裁判所は、後見開始の審判をすると同時に、最も適任と思われる方を成年後見人に選任します。
事情に応じて、弁護士、司法書士、社会福祉士等の第三者を成年後見人に選任することもあります。
審判の内容は、家庭裁判所の嘱託により成年後見登記に記載されます。
審判は、不服申立てがなければ、成年後見人が審判書を受領してから2週間後に確定します。審判に不服がある本人、配偶者、4親等内の親族(申立人を除きます)は、この2週間の間に不服申立て(即時抗告)の手続きをとることができます。
誰を成年後見人に選任するかという家庭裁判所の判断については、不服申立てをすることはできません。
必要書類や費用
申立てに必要な書類や費用のうち、主なものは次のとおりです。
①申立書、②申立手数料(1件につき800円分の収入印紙)、③登記手数料(2,600分の収入印紙)、④郵便切手、⑤本人の戸籍謄本、住民票、⑥成年後見に関する登記事項証明書、➆診断書(成年後見用)などです。
なお、詳しくは家庭裁判所に用意されている一覧表などで確認するようにしましょう。
成年後見制度における家庭裁判所の役割とは
ここでは、法定後見制度における家庭裁判所の役割について解説します。
家庭裁判所の役割は、監視・監督方法にあります。その内容は、下記のとおりです。
家庭裁判所による監視・監督方法は、成年後見人に後見事務の報告や財産目録を提出させ、これを点検していくことを通じて行うことを基本としています(民法863条1項、家事事件手続法39条〔別表第1の14の項〕)。
しかし、家庭裁判所は、点検作業の過程で後見事務に問題があること、又は、問題が含まれている可能性があることを認識した場合には、金融機関に対する調査嘱託や、家庭裁判所調査官による事実関係の調査等を行って、問題の有無・対応などにつき検討したり、財産の管理その他後見事務について必要な処分を命じたりします(民法863条2項、家事事件手続法124条1項3項)。
そして、家庭裁判所は、場合によっては、家庭裁判所調査官の調査等を経ずに、直ちに専門職成年後見人の追加選任・権限分掌の措置を講じて、財産保全と後見事務の調査を行い、成年後見人を解任することもあります(民法843条3項、846条)。
また、家庭裁判所は、成年後見人の横領、背任等の不正事案については、刑事告発を行うことがあります。
さらに、家庭裁判所は、成年後見人に対する後見監督を行いますが、必要に応じて、家庭裁判所が選任した成年後見監督人に成年後見人を監督させる場合もあります(民法849条、851条)。
成年後見人の職務とは
ここでは、成年後見人の職務について解説します。
成年後見人の職務には、大別して、本人(被後見人)の身上監護と財産管理に関する事務があります(民法858条、859条)。そして、成年後見人は、身上監護及び財産管理に関する事務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないと規定されています(民法858条)。
成年後見人は、後見が終了するまで、行った職務の内容(後見事務)を定期的に又は随時に、家庭裁判所に報告しなければなりません。
そのほか、必要に応じて、家庭裁判所から書面による報告を求められたり、家庭裁判所に出向いて説明をするよう求められることもあります。
成年後見人には、上記の職務を遂行するために、様々な権限が与えられています。そこで、身上監護に関する事務と財産管理に関する事務に分けて見てみましょう。
身上監護に関する事務
成年後見人の身上監護に関する事務は、民法858条の「生活、療養看護に関する事務」がこれに当たります。
身上監護に関する事務としては、医療に関する契約、施設への入所契約、介護に関する契約等生活、療養看護に関する契約の締結等があります。
財産管理に関する事務
成年後見人には、財産に関する法律行為について包括的な代理権が与えられています(民法859条1項)。
成年後見人は、就任後、1か月以内に、本人の財産を調査して、本人の預貯金、有価証券、不動産、保険などの内容を一覧表にした「財産目録」を作成し、家庭裁判所に提出します(民法853条1項、863条1項)。
また、本人の生活のための費用を本人の財産から計画的に支出するため、本人の収入、医療費や税金などの決まった支出を把握して、年間支出額の予定と支払金確保の計画を立てます(民法861条1項
項)。
その後、成年後見人は、本人の財産と他人の財産を区別して、本人のために財産を管理します。適切な管理を行うために、収入や支出を金銭出納帳に記帳し、領収書等の資料を保管します。
成年後見制度の注意点を解説!
ここでは、上述した法定後見制度の中でも、主に成年後見人にどのような注意点があるのかについて解説します。
成年後見人は、本人の意思を尊重し、かつ本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人のために、本人の財産を適切に維持し管理する義務があります。その意味では、保佐人や補助人も、与えられた権限の範囲内で同様の義務を負っています。
そのため、任意後見人は、たとえ本人の家族であっても、本人の財産と自己の財産を混在させないように注意し、あくまで「本人の財産を預かり管理している」という意識を持ち、その職務に取り組まなければなりません。
成年後見人は、本人を借金の保証人としたり、本人名義の不動産に抵当権を設定したりすること、元本割れのリスクを伴う金融商品を購入するなど財産を投機的に運用すること、他の親族などに対し本人の財産を贈与したり貸し付けしたりするなど本人以外の者のために財産を使用することなど、一般的に本人の利益を損なう行為は、原則として許されません。
成年後見人は、後見事務を行うために必要な費用(民法861条2項)や家庭裁判所から審判を経て支払いを受ける報酬(家事事件手続法117条2項〔別表第1の13項〕)以外は、家庭裁判所の許可がない限り、本人の財産から報酬を受けることはできません。
成年後見人は、本人の財産を私的に流用するなど不正な行為をしたときは、任意後見人を解任される(民法846条)ほか、損害賠償責任を問われたり、業務上横領などの罪で刑事責任を追及されたりすることもあります。
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この記事を監修したのは…
笑顔相続サロン®静岡代表、FP事務所 LP想暖や代表、保険代理店 有限会社シー・フィールド代表取締役
栗原 久人(くりはら ひさと)
上級相続診断士・終活カウンセラー・ファイナンシャルプランナー(AFP)生前整理カウンセラー・住宅ローンアドバイザー
ファイナンシャルプランナー歴・保険代理店経営歴共に20年、ライフプランや家計の見直し等の相談件数は2000件以上。
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