民事信託と家族信託の違いとは?手続き方法や具体例を解説!

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家族信託

そもそも信託とは?信託を利用するメリット・デメリット

信託は大切な財産を信頼できる個人または団体に託して、運用・管理・承継してもらう制度です。信託を利用する場合は次のようなメリット・デメリットがあります。

信託を利用するメリット

信託は、基本的に委託者(財産の管理や運用をお願いする人)と受託者(財産の管理や運用を行う人)が契約を結びます。
信託の内容は契約で自由に定められ、委託者の希望に合わせた管理・運用・支払い等の取り決めが可能です。
また、管理・運用等の対象になるのは金銭をはじめ有価証券のような金融資産、土地・建物用のような不動産資産まで多岐にわたります。

信託を利用するデメリット

自分が信頼して託したい、という人がなかなか見つからない場合も想定されます。また、信頼して託した受託者が、期待通りの管理・運用等を必ず行ってくれるとは限りません。
信託を専門に扱う人や団体に託しても構いませんが、報酬や手数料は発生します。そのため、予想外に委託者側に重い負担となる場合があります。
契約前に相手方と費用についてよく話し合い、納得した上で契約締結を行いましょう。

信託の種類は?民事信託と家族信託の違いを解説!

実は民事信託も家族信託も、厳密に法律で違いが明記されているわけでは無く、同じ制度と言えます。
民事信託(家族信託)は自分が将来、適切に自己の財産を管理・運用・処分等ができなくなった場合(認知症になった、介護が必要となった等)を想定し、事前に所有している金融資産・不動産資産を信頼できる親族の誰かへ託す方法です。
本制度には次の3者が登場します。

  • 委託者:財産の管理・運用・処分を親族の誰かに託す人
  • 受託者:財産の管理・運用・処分を託された人
  • 受益者:財産権を有し、その財産から利益を受ける人

委託者はどんな財産の管理・運用・処分してもらうのか、更に受託者の選任の他、解任の権利も有しています。
受託者は委託者から財産の管理・運用・処分を託され、適正に対応する義務を負います。
受益者は、管理・運用・処分により利益を得る人です。基本的に委託者が受益者となるものの、自分・妻が利益を得るというように複数人で設定したり、孫へ利益を与えるというように委託者以外の特定の親族を受益者と決めたりしても構いません。
その他、任意で受託者を監督するため「信託監督人」の指定も可能です。

民事信託と家族信託のメリット・デメリット

民事信託(家族信託)は、委託者の自由に信託する財産の種類、管理や運用・処分方法を指定できますが、制度利用の際は注意すべき点もあります。

民事信託(家族信託)のメリット

民事信託(家族信託)のメリットは主に委託者の意思を強く反映した取り決めができ、信託した財産がしっかり保全できる点です。

委託者が自由に財産をどうするか取り決めできる

委託者はどんな財産を対象とするのか、受託者からどのように管理・運用・処分してもらうのか、誰に財産を承継してもらうのか、を細やかに指定できる点がメリットです。
委託者の判断能力が低下していなくても受託者へ任せられます。そのため、正常な判断ができるうちに受託者へ指示・監督を行っておきましょう。
そうすれば委託者の判断能力の低下後も、受託者は以前指示された内容に従い、適切な対応ができるはずです。

委託者が亡くなった後の対応を取り決めできる

委託者が亡くなった後、財産をどうするかを決めておけるのもメリットです。
受益者は委託者だけと限定されているわけでは無いので、「自分が亡くなったら孫を受益者として、財産の管理・運用を継続してもらいたい。」と、指定して構いません。
もちろん、複数の受益者(例:孫2人など)を指名する信託契約も有効です。

信託財産は保全される

信託財産の独立性が保たれる点がメリットです。
委託者から託された財産は受託者が管理・処分します。ただし、預金の場合なら受託者は自分の個人財産と分けて管理しなければいけません。その際に金融機関で開設するのが「信託口口座」です。
この信託口口座で受託者が管理すれば、委託者はもちろん受託者が倒産したり破産したりしても、債権者(お金を貸した人等)から差し押さえを受ける事態は回避できます。
このように、委託者・受託者いずれの債権者も強制執行ができない機能は「倒産隔離機能」と呼ばれています。

民事信託(家族信託)のデメリット

民事信託(家族信託)のデメリットは主に節税効果が期待できない点、財産の取り決めに限定されている点、必ず金融機関で信託口口座を開設できるわけではない点です。

節税に関する特例等は設定されていない

民事信託の場合、税制上の優遇措置が設けられていません。
民事信託(家族信託)は信託内容を自由に委託者が設定できるものの、例えば相続の際に相続税の基礎控除「3,000万円+(600万円×法定相続人)、贈与の際は贈与税の基礎控除(110万円)のような控除制度はありません。
そのため、民事信託をしても、信託財産で得られた利益を節税する効果は得られないので注意しましょう。

財産に関する取り決めが限定されている

民事信託は、委託者の金融資産・不動産資産をどうするかの取り決めに範囲が限定されています。
つまり、判断能力が低下した委託者に代わって、受託者が賃貸住居の確保や医療機関への入院手続き、介護契約の手続き等のような「身上監護」の権利はありません。
委託者が身上監護についてもサポートしてもらいたいと考えている場合、成年後見制度(成年後見人が判断能力の衰えた本人に代わり、財産管理・契約行為を担う制度)の利用も検討しましょう。

金融機関で信託口口座を扱わないところもある

信託口口座を開設すれば債権者の差し押さえはもちろん、受託者が死亡しても口座は凍結されません。
ただし、信託口口座はどんな金融機関でも扱っているわけではないので、口座を開設したい金融機関があれば、まず口座開設が可能か否かをよく確認しておきましょう。
なお、信託口口座と名称の似た口座として「信託専用口座」があります。この口座を開設しても受託者の個人口座として扱われるので、口座を凍結されるリスクもある点に注意しましょう。

商事信託とは?民事信託との違い

商事信託とは、信託銀行や信託会社が受託者となって委託者と契約を結び、営利目的で行う信託を指します。商事信託と民事信託の大きな違いは受託者が誰になるかです。下表をみてみましょう。

比較商事信託民事信託
受託者信託銀行・信託会社親族
報酬必要契約次第
※無報酬も可能
認可必要
※信託の受託を事業として行うため
不要

信託銀行・信託会社は信託を豊富に扱った経験があり、ノウハウもマニュアル化していますが、報酬が必ず発生します。
商事信託を利用したい場合は、自分のニーズを満足させる信託内容に関してどれくらいの報酬が発生するか、担当者によく確認したうえで契約を締結しましょう。

民事信託を利用できる具体例

民事信託は委託者が次のような事態を懸念していた場合、有効な対応策となります。

認知症となった後も円滑に施設入所を行いたい

委託者である親が受託者である子供と信託契約を締結し、自分の入所費用の支払いと財産の処分を希望するケースがあげられます。

例えば委託者が認知症となり介護施設へ入所し、自宅に住む人がいなくなる場合、受託者が委託者の自宅を代わりに売却し、そのお金で施設の入所費用に充てることが可能です。

自分が認知症になっても介護施設で受けられるサポートの費用が賄われ、空き家になるリスクのある自宅を処分できるので、委託者も安心です。

自分の死後も特定の親族を扶助したい

委託者が認知症をはじめとした判断能力の低下に応じ、受託者が財産に関する管理・決定へ対応するという方法の他、特定の親族のために利用する方法もあります。

例えば、委託者には可愛がっている相続人(例:息子や娘等)がいるものの、知的障害を持っており、自分の死後も生活費を支給するようサポートしてもらいたいときに有効です。

この場合は知的障害を持つ相続人に代わり、受託者が財産管理を行い、毎月の生活費を支給するよう信託契約を締結できます。

民事信託を利用する際の利用手順は?信託に必要な3ステップ

ここでは利用手順と必要書類について説明します。

民事信託の利用手順

民事信託を希望する場合、親族と信託契約を締結しなければいけません。次のような手順で進めていきます。

  1. 事前に士業専門家(弁護士・司法書士)へ相談:必須ではないが、助言を求めると作業が円滑に進む。
  2. 委託したい人がまず民事信託の目的を考える(例:認知症等で自分の意思判断能力が低下したら、信頼できる親族に自分の財産をどのように管理・処分してもらうか検討する)
  3. 自分と信頼のおける親族とが話し合い、互いに信託内容に合意する。
  4. 話し合って決定した内容を信託契約書へ記載する。
  5. 契約書作成後、委託者の金融資産・不動産資産の信託作業に移る。
  6. 金融資産は信託口口座を作成し、不動産資産は信託登記をする。

民事信託の必要書類

民事信託契約書を締結する場合は次の書類が必要です。

  • 信託契約書:基本的に委託者・受託者が合意して作成、公正証書で作成すると捏造や改竄等を防げる
  • 戸籍謄本・住民票:信託契約書を公正証書にするとき必要。委託者・受託者・受益者全員が用意する。戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で1通450円、住民票は現住所の市区町村役場で1通300円で取得。
  • 印鑑登録証明書:信託契約書を公正証書にする、信託財産で指定した土地・建物の登記をする場合に必要。現住所の市区町村役場で1通300円で取得。
  • 不動産登記事項証明書:不動産を対象とした信託契約の際に必要。地方法務局・支所等で取得、手数料1通600円。
  • 固定資産評価証明書:不動産を対象とした信託契約の際に必要。対象不動産の所在地を管轄する市区町村役場で取得、手数料1通300円。
  • 本人確認書類:信託契約書を公正証書にするとき、信託口口座開設・土地・建物の登記の際に必要。運転免許証、マイナンバーカード等が該当。

民事信託に関する相談先はこちら

民事信託は金融資産・不動産資産の把握や専用口座の開設・登記等、専門的な手続きが必要とされるケースもあります。

その際は、司法書士や弁護士という法律の専門家へ相談してみましょう。民事信託では士業専門家は受託者になれませんが、本制度の疑問点や不明点をわかりやすく解説してくれます。

民事信託の利用前にアドバイスを得ていれば、どんな内容の信託契約を締結するべきかがわかるはずです。

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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

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