財産調査は何からすべき?調査の流れや方法、費用についても解説!
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親が亡くなってしまった場合には何をする?相続財産調査について解説!
相続財産調査は故人(被相続人)が遺した財産を把握するための調査です。調査自体は1か月程度あれば完了します。
この調査では、遺産を引き継ぐ人たち(相続人)が、故人の所有する金融資産(預金等)や不動産資産(土地・建物)について、預金通帳や金融機関の残高証明書、不動産登記簿等を通して、財産の有無やその残高を把握する作業です。
財産調査が行われないと、相続人間で遺産分割をする際に、被相続人の遺産がどの程度あるのかを正確に把握できません。これでは、相続時に相続税が発生するか否かも判断しにくくなります。
また、把握している遺産だけを分割した後、新たな遺産が発見された場合、再び相続人同士でどのように分割するかを決め直す必要が出てきます。
さらに、相続放棄をするか判断する上でも全財産を把握しておく必要があります。相続放棄は、マイナスの財産だけでなく、資産などプラスの財産も一切相続できなくなります。
正しい財産調査が出来ていないと、相続放棄の判断も間違えてしまうおそれがあるのです。
つまり、財産調査を怠ると相続に関する手続きや作業に支障が出ることもあるのです。
財産調査で必要な資料や書類をチェック!
財産調査の方法や条件は法律で規定されていません。ただし、故人にどんな資産があるのかを調べるため、収集するべき資料・書類は概ね決まっています。
金融資産の有無を調査する場合
金融資産といえば、まず預貯金が思い浮かぶはずです。故人が生前に保有していた預貯金口座を、遺品の中から発見した通帳やカード、金融機関から届いたハガキや封筒を手掛かりに調査します。
銀行等に問い合わせを行い、指示された書類を持参すれば、被相続人の預金の有無や残高の照会に応じてもらえます。銀行等へ持参するのは主に次の書類です。
・故人の通帳やカード
・故人の死亡の事実がわかる戸籍謄本(除籍謄本)
・故人との関係がわかる調査する人の戸籍謄本
・調査する人の印鑑登録証明書・実印
・調査する人の本人確認書類(パスポート、運転免許証等)
戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で、印鑑登録証明書は住所地の市区町村役場で取得できます。なお、株式や債券の有無を確認するときは、証券会社から残高証明書を取り寄せます。
この場合も、預金の場合と同様に証券会社へ提示する書類(戸籍謄本、印鑑登録証明書・実印、本人確認書類)を準備します。
不動産資産の有無を調査する場合
故人の土地・建物を調査する場合、法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を受け取り、不動産の所有者や名義人が誰であるかを把握します。登記簿謄本は交付申請書に必要事項を記入すれば誰でも取得できます。
ただし、申請書には地番や家屋番号を記入するので、故人が保管していた土地の権利証(登記識別情報通知書)も準備します。
権利証が見つからない場合、不動産の住所地を管轄する市区町村役場から名寄帳を取得します。その場合は本人確認書類の提示が必要です。
法務局で登記簿謄本を申請するには次の書類が必要です。
・登記簿謄本交付申請書
・地番や家屋番号のわかる書類:土地の権利証(登記識別情報通知書)または名寄帳
その他の資産の有無を調査する場合
ここでは故人の所有していた動産、加入していた保険等の調査について解説します。
故人の所有していた動産
下記の動産で財産的な価値が残っているならば、相続財産に含まれます。
(1)自家用車
必要な情報には自家用車の車種・年式や購入年月日、所有者の名義が挙げられます。
・自家用車の所有の有無:注文書、請求書、領収書等
・自家用車の登録情報・車種・形式の把握:自動車検査証、自動車保険の保険証券
・自家用車の価額の把握:自動車税納税証明書(自動車税の算定基準から価額がわかる)
(2)貴金属・芸術品
骨とう品や美術品は、鑑定士に財産的価値を調査してもらった方が手間もかかりません。ただし、自分で評価額を調査したい場合は、落款(判子)、添付資料、署名等がないかを探して美術年鑑等を参考にします。
保険や死亡退職金等
故人の死亡時に支払われる生命保険金(死亡保険金)や死亡退職金は「みなし相続財産」として相続財産にカウントされます。
故人が加入していた生命保険金は、保険会社から送付された通知書、保管している保険証券をチェックすると、保険金額がわかります。
また、死亡退職金は勤務先の会社から支払われるお金です。その支払明細書には、支払った退職金の額が明記されています。見つからない場合は勤務先の会社へ問い合わせましょう。
相続財産の種類とは~プラスの財産・マイナスの財産~
財産調査をする場合は、プラスの財産だけではなく故人が残した債務等も把握する必要があります。相続財産の種類は大きく分けて2つあります。
・プラスの財産:金融資産(預貯金、株・債権、保険金等)、不動産資産(土地・建物)、動産(自家用車・骨とう品等)
・マイナスの財産:ローン(住宅ローン・自動車ローン等)、クレジット残債、未払金(賃借料、水道光熱費、通信費、管理費、リース料等)
マイナスの財産を調査すれば、これらの債務を遺産総額から差し引くことで、相続税が軽減できます。
また財産調査の結果、引き継ぐプラスの財産よりマイナスの財産が多い場合は、相続放棄(相続人が単独で相続を放棄する方法)または限定承認(相続人全員が共同し、相続で得た財産の限度で債務を受け継ぐ方法)をとることも可能です。
何から始める?財産調査の流れを解説!
ここでは財産調査の大まかな流れと、どんな財産から調査すればよいかを解説します。
財産調査の流れ
被相続人の生存中、本人以外の家族が勝手に財産調査を行うのは、本人のプライバシーを侵害する行為であり、原則として認められません。財産調査は相続発生時(本人の死亡後)に行います。
1相続発生
2プラスの財産・マイナスの財産を調査
3被相続人のプラスの遺産や負債等が分かったら、財産目録(財産の一覧表)を作成
4相続税の申告の必要性を判断
財産調査の手続きには期限は設けられていません。
しかし、財産調査はどんなに長くかかっても、10カ月以内に終わらせたいものです。なぜなら、相続税の申告期限は相続発生を知ってから10カ月以内であるためです。
もし、相続放棄をするか検討している場合は、2カ月以内に終わらせるようにしましょう。相続放棄の期限は3カ月であり、財産調査には、1〜2カ月かかるためです。
相続税がかかる場合、申告期限内に申告・納付をしなければ、税務署から税務調査をされたり、追徴課税をされたりするおそれもあります。
どんな財産から調査をするべきか
相続人が複数いるならば、手分けして被相続人の財産を調査した方が良いでしょう。その分、効率よく財産を把握することが可能です。
ただし、相続人が少ないならば、被相続人がどのくらいの負債を残しているのかを、プラスの財産よりも早く調べた方が無難です。
被相続人の借金等は基本的に相続人が引き継ぐこととなります。この負債の有無は、借用書や預貯金通帳、銀行・消費者金融からの通知等で把握できます。
負債を早く把握しておかないと、相続放棄または限定承認の申述期限(相続開始を知ったときから3カ月以内)を超過することがあります。
相続放棄や限定承認ができなければ、巨額の負債を相続人達が背負うリスクも想定されます。
遺産の種類別!財産調査の方法を解説!
上記では、おおまかな財産調査の流れを解説しました。ここでは、預貯金・不動産・有価証券・借金の調査方法について解説します。
預貯金の調査方法
預貯金の財産調査を行う場合は、自宅の被相続人名義の預貯金通帳、預貯金証書、キャッシュカードを確認しましょう。
カードや通帳から、取引のある金融機関を特定できたら、被相続人の死亡時の残高を確認します。預貯金の通帳がある場合は、記帳することで確認できますが、通帳がない場合は残高証明書を発行してもらうことで確認することができます。
不動産の調査方法
不動産の財産調査を行う場合は、固定資産税の納税通知書や登記済権利証、預金通帳の取引履歴などから不動産の地番、家屋番号を特定しましょう。
もし、上記の手がかりから不動産の地番や家屋番号を特定できない場合は、名寄帳を不動産が所在する市町村役場に申請し、不動産を特定しましょう。名寄帳とは、納税対象の不動産リストを所有者別でリスト化したものです。
不動産の地番と家屋番号が特定できたら、不動産の権利情報(持ち分や抵当権など)を確認するために法務局に登記事項証明書(登記簿謄本)を申請します。
不動産に関する情報が一通り揃ったら、不動産の評価額を調べましょう。正確な評価額を出したい場合は、専門家に依頼することをおすすめします。
有価証券の調査方法
有価証券の財産調査を行う場合は、被相続人の株券や証券会社等のノベルティ、郵便物、預金通帳の取引履歴から取引のある証券会社を特定します。
もし、上記の方法で取引のある証券会社を特定できない場合は、証券保管振替機構に問い合わせるという方法もあります。証券保管振替機構とは、有価証券取引の管理を行っている期間です。
取引している証券会社が特定できたら、有価証券の残高を確認しましょう。
借金の調査方法
借金の財産調査の場合は、契約書や借入先からの郵便物、預金通帳の取引履歴から取引のある借入先を特定しましょう。
借入先を特定した後、ローンやクレジットなどの借入情報を管理している信用情報機関に情報開示請求を行い、他に借金がないのかも確認しましょう。
借金は調査漏れがあると、後に発覚した場合はその借金を相続人が背負わなければならないため、注意しましょう。
財産調査の費用はどのくらい?自分でやる場合と専門家に依頼する場合と比較
自分(相続人達)で財産を調査する際の費用は、故人の遺産の数・種類によって大きく異なってきます。調査に必要な書類の費用は次の通りです。
・戸籍謄本:1通450円
・除籍謄本:1通750円
・印鑑登録証明書:1通300円
・名寄帳:1名義300円程度
・登記簿謄本(登記事項証明書):1通600円
各証明書を複数枚取得するならば、財産調査の費用は5,000円~10,000円程度が目安です。
一方、法律の専門家に依頼する場合、概ね費用は下表の通りです。
士業専門家 | 費用 | 備考 |
弁護士 | 20万円~60万円 | 財産調査の他、調停・裁判まで対応可 |
司法書士 | 10万円〜30万円 | 財産調査の他、財産・権利関係(不動産)の移転業務も可 |
税理士 | 10万円~30万円 | 財産調査の他、相続税の申告手続きも可 |
行政書士 | 5万円~6万円 | 財産調査の他、遺産分割協議書の作成も可 |
最も安い費用で対応してくれるのが行政書士です。相続人間で揉める事態は考えられず、相続税の申告や財産・権利関係の移転も自分たちで行えるが、財産調査だけは面倒という場合、行政書士に頼んだ方が良いでしょう。
財産調査は自分では難しい?弁護士などの専門家に依頼するのがおすすめ!
財産調査は被相続人の財産が多いほど、作業は煩雑になり手間もかかることでしょう。また、調査が不十分ならば遺産分割のやり直しが必要です。正確な財産を把握するために、専門家へ依頼した方が無難です。
ただし、財産調査の相続に関する作業等を、どんな専門家へ依頼したらよいかわからないなら、まず「相続診断士」へ相談してみましょう。
相続診断士は一定の相続に関する知識を有しており、いろいろな相続の悩みに助言をしてくれる有資格者です。その他、様々な士業専門職の方々への橋渡しにも対応します。
例えば財産調査の他に相続人間の紛争が心配なら弁護士、不動産の名義変更が手間なら司法書士、相続税の申告手続きもしてもらいたいなら税理士を紹介してくれます。
財産調査はもちろん相続の際のトラブルの解決や、諸手続きをスムーズに進めるため、相続診断士をはじめ法律の専門家は何かと役に立つ存在といえます。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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