成年後見人の権限とは?権限の範囲や具体的な活動内容について解説!
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成年後見制度とは?後見人が被後見人の財産管理や契約締結を行う制度!
認知症や精神的な障害で、思うように自身の契約や財産等の管理が難しくなるケースがあります。その本人の保護を図る制度が設けられ、成年後見人が本人を支援する役割を担います。悪徳業者等の不当な契約から、判断能力の不十分な人を守り、その財産の減少を予防する目的があります。
成年後見制度には大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。
法定後見
法定後見は家庭裁判所に後見等の開始の申立てをする必要があります。本人やその配偶者、四親等内の親族(子や孫、おじおばや甥姪、いとこ等)、検察官、市町村長等が申立てできます。
本人も申立ては可能なのですが、判断能力が衰えてしまい、手続きの進められない事態が考えられます。その場合は配偶者や家族が申立てをすることになります。
任意後見
任意後見は本人が十分な判断能力を有するうちに、判断能力が衰えたとき委任する事務の内容を定め、契約を締結する制度です。
任意後見契約成立後、本人の判断能力が不十分になった場合、家庭裁判所へ任意後見監督人の選任の申立てを行います。本人・配偶者、四親等内の親族、任意後見人となる人が申立てできます。
成年後見人の役割とは?被後見人の財産管理や生活のサポートを行う!
成年後見人には次の権限と義務があります。
成年後見人の権限
成年後見人には、身上監護に関する権利や財産を管理する権利があります。
身上監護とは生活・療養監護に関する事務処理です。具体的には医療に関する事項、施設の入退所、介護・生活維持に関する契約の締結・解除を行います。
財産管理とは財産を調査・把握し、日々の収入・支出の管理を指します。具体的には住居の確保、預貯金の管理、税金・公共料金の支払い等があげられます。
成年後見人の義務
成年後見人には、善良なる管理者の注意義務をもって行う「善管注意義務」が法的に義務づけられています。この義務には、通常払う注意以上に慎重な判断を必要とするという意味があります。
さらに成年後見人には「身上配慮義務」も課せられています。この義務は常に本人の意思を尊重しつつ、心身状態・生活状況に配慮しながら、職務を行わなければいけないという意味があります。
成年後見人にはどんな権限がある?任意後見人と法定後見人の権限の違いに注意!
任意後見の場合は本人と任意後見人となる人が合意し契約を締結します。一方、法定後見は判断能力の程度で更に「後見」「保佐」「補助」と分けられ、成年後見人等の権限が変わってきます。
・後見:事理を弁識する能力を欠く状況(例:現実にはありえない物をみる幻覚、何か大きな被害を被るのではないかという妄想が顕著となる、統合失調症等)
・保佐:事理を弁識する能力が著しく不十分(例:物忘れがひどく、お金の管理がかなり難しいという中程度の認知症等)
・補助:事理を弁識する能力が不十分(例:家事の失敗が目立つというような軽度の認知症等)
成年後見制度のそれぞれの権限については下表のとおりです。
権限 | 同意権 | 取消権 | 代理権 |
後見 | 同意しても日常生活以外の行為なら、後で取り消し可 | 日常生活に関する行為以外の行為全て | 財産に関する全ての法律行為 |
保佐 | ・日常生活に関する行為以外 ・原則として借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、家屋の新築等 ・家庭裁判所の審判で範囲拡張可 | 左と同じ | ・申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める特定の法律行為 ・借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、家屋の新築等 |
補助 | 本人の同意を得たうえ ・日常生活に関する行為以外 ・申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める特定の法律行為 | ・日常生活に関する行為以外 ・借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、家屋の新築等 | ・申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める特定の法律行為 ・借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、家屋の新築等 |
任意 | 契約内容の範囲内 | 契約内容の範囲内 | 契約内容の範囲内 |
成年後見人の活動内容は?具体例を挙げて解説!
具体的な活動内容の事例をあげ、それぞれ紹介していきます。
後見の具体的活動
[事例]統合失調症の本人の財産管理を適切に行いたい
・本人:統合失調症
・申立人:本人の妹
・成年後見人:司法書士
(1)経緯
本人は統合失調症を発症し入院中であり、申立人である妹が遠方に住んでいて後見事務は困難なことから、財産管理に不安を感じ、司法書士を成年後見人に選任しました。本人は退院後、利用しない自家用車の処分を望む一方、住み慣れた自宅での生活を希望しています。
(2)結果
成年後見人は自宅を売却せずに管理を継続しています。一方、維持費のかかる本人の所有自動車だけを売却し、本人の希望に沿う支援を行っています。
保佐の具体的活動
[事例]本人の身上監護を適切に行いたい
・本人:中程度の認知症
・申立人:本人の弟
・保佐人:申立人
(1)経緯
一人暮らしをしていた本人の認知症の症状が悪化し、物忘れがひどくなりお金の計算が困難となりました。日常生活に支障が出るとともに、怪しげな業者も本人宅へ訪れるようになります。弟は同居を決意し、それと同時に成年後見制度の利用を家庭裁判所へ申立てました。
(2)結果
保佐人となった弟は兄が安易に借金するのを避けるため、常に預貯金の流れをチェックし、単独で兄が借金の契約をしたら取り消せるように備えています。
補助の具体的活動
[事例]本人の身上監護を適切に行いたい
・本人:軽度の認知症
・申立人:本人の娘
・補助人:申立人
(1)経緯
本人は最近、米を研がずに炊いてしまうというような、家事の失敗が頻繁にみられます。また、知人の借金の保証人になると言い出し、娘は危機感を募らせます。娘は申立人となって補助開始・同意権付与の審判を決意しました。
(2)結果
審判後に補助人となった娘へ同意権が付与され、本人が断りなく貸金業者から借金をしたような場合、娘は契約を取り消すことができるようになりました。
任意後見の具体的活動
[事例]足腰が不自由な任意後見契約と現在の財産管理を締結
・本人:この頃身体機能が衰え、足腰が不自由に
・契約者:本人
・契約相手方:司法書士
(1)経緯
本人は年金・預貯金で不自由ない暮らしをしているものの、足腰が少し不自由で寝たきりになる不安を抱えています。そのため、将来の介護に関する契約と財産管理をまかせるため、司法書士と財産管理委任契約を締結しました。
(2)結果
本人はまだまだ正常な判断ができる状態で、家庭裁判所へ任意後見監督人の選任の申立ては行っていません。しかし、財産管理委任契約を締結したので、司法書士が通帳等を預かり、悪質商法の被害等で財産が減少する事態を未然に防いでいます。
成年後見人が行えない支援内容は?直接的な介護・生活支援は対象外!
成年後見人として選任されたら、何でもできるわけではありません。一定の制約があり、成年後見人ができない行為もあります。
事実行為
本人の生活、健康管理のために何らかの労務を直接提供する行為です。例えば本人の介護や入浴の介助、本人の健康に配慮した食事を作る等があげられます。このような行為は介護士や訪問介護員等が行うべき作業です。
身分行為
身分関係に関する法律効果を発生・変更・消滅させる行為です。例えば養子縁組や婚姻届、離婚届、子の認知等があげられます。
本人のために家族の誰かが成年後見人になる場合は、権限や義務について法律の専門家(弁護士・司法書士等)へ相談した方が良いでしょう。権利ばかりではなくどんな責任を負うかも、しっかりと聞いて就任することが大切です。
もし、契約手続きがかなり複雑でわかりにくく、成年後見人への就任が難しいと感じたら、家庭裁判所から法律の専門家を選任してもらう方法も可能です。
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この記事を監修したのは…
行政書士事務所Terroir 代表行政書士
鎌田 昂伺(かまた こうじ)
シニアのための法務サポートを展開しており、相続・成年後見をメイン業務とし、遺言・家族信託、超高齢化社会における、より手厚い「終活」サービスとして死後事務・身元保証業務も手掛ける。
グループ内の(一社)いきいきライフ協会南青山では、高齢者に対する死後事務・身元保証サービスに中心的に関与している。
サイトURL:https://www.terroir-aoyama.com/ https://ikiiki-life-minamiaoyama.com/