【実録】お墓の支払い損リスクと「死後事務委任」|「私が死んだら、誰が骨を拾うのか?」天涯孤独の70代男性
「身寄りがない私が死んだら、ゴミのように扱われるのでしょうか…」天涯孤独の70代男性が抱える、死後への切実な不安。おひとり様が陥りがちな「墓じまい費用の支払い損」というリスクを回避し、死後事務委任契約で“最期の安心”を手に入れた解決事例を紹介します。
「先生、私には身寄りが誰もいません。天涯孤独です」
相談室の扉を開けた70代の男性(Kさん)は、寂しげな笑みを浮かべてそう言いました。
Kさんはご両親を早くに亡くされ、ご兄弟も配偶者もおられません。
現在、ご両親のお墓は自宅から電車とバスを乗り継いで1時間以上かかる場所にあります。
Kさん自身も高齢になり、お墓参りに行くのが体力的に限界に近づいていました。
「足腰が立つうちに、遠くのお墓を『墓じまい』して、私が歩いて通える近くのお寺にご先祖様を移したいんです。そして……」
Kさんはそこで言葉を詰まらせ、震える声で続けました。
「そして、私が死んだ時のことです。私には葬儀を出してくれる人も、納骨してくれる人もいません。私は死んだら、無縁仏としてどこかへ投げ込まれてしまうのでしょうか……?」
自分の死後、誰にも看取られず、骨さえ拾ってもらえない恐怖。
それは、現代の「おひとり様」が抱える最も深く、切実な悩みでした。
この記事では、天涯孤独の方が陥りやすい「お墓の生前予約の落とし穴」と、それを解決するための「死後事務委任(しごじむいにん)」という仕組みについて解説します。
Contents
1. プロの診断:お金を払っても「供養」されない? 致命的な盲点
Kさんのご希望はこうでした。
「今のうちに、家の近くの『永代供養墓(えいたいくようぼ)』にお金を払って契約しておきたい。そうすれば、両親も私も、ずっとお寺に守ってもらえるから安心だ」
一見、完璧な計画に思えます。
しかし、私(専門家)はKさんの目を見て、あえて厳しい現実をお伝えしなければなりませんでした。
専門家の渡辺龍治さん:
「Kさん、その計画には致命的な欠点があります。もし今、お寺に大金を払って予約をしたとしても、Kさんが亡くなった時、誰がそのお寺に『Kさんが亡くなった』と連絡するのですか?」
Kさん:
「えっ……? それは、警察や役所が……」
専門家の渡辺龍治さん:
「いいえ、役所やお寺は自動的には動いてくれません。もしご自宅で孤独死された場合、発見が遅れれば、契約したお寺に連絡が行かないまま、行政の手によって『行旅死亡人(身元不明者)』等として処理されてしまうリスクがあるのです」
「支払い損」の恐怖
これが、おひとり様のお墓選びで最も恐ろしい「支払い損」のケースです。 生前に高い永代供養料を前払いしていても、「死亡の事実」をお寺に伝える人がいなければ、契約は履行されません。
結果、お金だけ払って、ご遺骨は契約したお墓に入れないという悲劇が起こり得るのです。
2. 解決のプロセス:ただの「墓じまい」ではなく「見守り」をセットに
Kさんの不安を本当の意味で解消するためには、単にお墓を引っ越すだけでなく、Kさんの「生前」から「死後」までを一貫してサポートする仕組みが必要でした。
私は、以下の3段階の解決策を提案しました。
ステップ1:お墓の引っ越し(改葬)と永代供養
まず、遠方の民間霊園を「墓じまい」し、ご両親のご遺骨をKさんの自宅近くの寺院へ改葬しました。
選んだのは、跡継ぎがいなくてもお寺が管理してくれる「永代供養墓(合祀タイプ)」です。これで、Kさんが元気なうちは毎日でも歩いてお参りに行けるようになりました。
ステップ2:契約の落とし穴を埋める「死後事務委任契約」
次に、私がKさんと「死後事務委任契約(しごじむいにんけいやく)」を結びました。
「遺言書」があれば大丈夫だと思われがちですが、実は遺言書は「財産」のことしか決められません。「体のこと(葬儀や納骨)」を第三者に頼むには、別の契約が必要です。
【遺言書と死後事務委任の違い】
- 遺言書: 「財産」を誰に渡すか決めるもの。
- 死後事務委任: 「体」の始末(葬儀・納骨・役所手続き・遺品整理)を頼むもの。
私はKさんと後者の契約を結び、「Kさんが亡くなったら、私が責任を持って火葬し、ご両親と同じお墓へ納骨する」ことを法的に約束しました。
ステップ3:生前の「見守り契約」
さらに、「いつ亡くなったか」をいち早く察知するため、「見守り契約」もセットにしました。
定期的に私たちがKさんに連絡を取り、安否確認を行います。もし将来、認知症になった場合に備えて「任意後見契約」も準備しました。
専門家の渡辺龍治さん:
「Kさん、これで安心してください。私たちが定期的にKさんの様子を伺います。そして、万が一の時は、私が責任を持ってKさんをご両親と同じお墓にお連れします」
3. 結末:「両親のそばで、安心して生きられます」
すべての契約を終え、ご両親の改葬が完了した日。
新しいお墓の前で手を合わせたKさんは、憑き物が落ちたような穏やかな笑顔を見せてくれました。
「先生、ありがとうございます。これで、毎日両親に会いに来られます。それに……私がいつお迎えが来ても、ちゃんと両親の元へ行ける。そう確信できただけで、これからの人生、安心して生きていけます」
孤独という暗闇の中にいたKさんに、「最期まで見守ってくれる人がいる」という灯りがともった瞬間でした。
4. 専門家の渡辺龍治さんからのアドバイス
おひとり様は「前払い」に注意!「誰が知らせるか」まで設計を
今回の事例からお伝えしたい教訓は、「お墓の予約とお金の支払いだけでは、片手落ちである」ということです。
お寺や霊園は、あなたの死を自動的に知る術を持っていません。
- 自分が死んだことを、誰がお寺に連絡するのか?
- 誰が火葬し、誰が遺骨をお墓まで運ぶのか?
ここまで具体的にシミュレーションしておかないと、せっかく支払った費用が「支払い損」になりかねません。
「死後事務委任」と聞くと大掛かりに聞こえますが、内容(葬儀の有無や納骨先)によって費用は調整可能です。
私たち専門家は、お墓の手配だけでなく、生前の見守りから死後の納骨まで、ワンストップでサポートできます。「立つ鳥跡を濁さず」で旅立つために、ぜひ一度ご相談ください。
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この記事を書いたのは…
特定行政書士・墓地管理士・お墓ディレクター1級
渡辺 龍治(わたなべ りゅうじ)
25年以上に渡り墓石産業に従事し、累計3万基以上のお墓に携わってきた実務による経験と知識。
行政書士として行政手続きだけでなく、墓地管理士とお墓ディレクター1級というお墓に関する専門資格も有し『お墓の購入』から『墓じまい』まで、誰に相談したら良いかわからないお墓のお困りごとをワンストップでサポートする『お墓の相談窓口』として、お気軽にご相談ください。
