保佐人とは何か?制度の仕組みや成年後見人との違い、選任手続きや職務内容を解説

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保佐人制度とは|成年後見制度における位置づけと基礎知識

保佐人とは、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方(被保佐人)を法律的に支援する役割を担う人のことです。本人が不利な契約を結んでしまうことや、財産を適切に管理できないリスクを防ぐために、法定後見制度の一類型として「保佐制度」が設けられています。

この制度は、家庭裁判所の審判を経て開始され、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門職が保佐人に選任されます。保佐人は、本人が自らの意思で行う法律行為の一部について「同意」や「取消」ができる法的な権限を持ち、財産や相続、契約、不動産の管理などをサポートします。

この記事では、保佐人の定義や制度の位置づけ、成年後見制度との違い、保佐人に与えられる権限、申立て手続き、費用、報酬の目安などについて、法律に基づいてわかりやすく解説します。

保佐人の役割と定義

保佐人は、本人の判断能力が不十分であることから、一部の重要な法律行為についてサポートや同意を行う役割を担います。保佐制度の対象となるのは、自分で日常生活を送ることはできるものの、重要な契約や財産管理において誤った判断をしてしまうおそれがある人です。

民法第11条では、本人の判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」という三つの法定後見制度が設けられており、保佐はその中間に位置づけられています。

法定後見制度の3類型と保佐の位置づけ

法定後見制度は、本人の判断能力に応じて3つの類型に分かれています。

成年後見・保佐・補助の制度比較

  • 成年後見制度:判断能力をほとんど欠く方(例:重度の認知症)を対象とし、後見人が全面的に財産管理や契約を代行します。
  • 保佐制度:判断能力が著しく不十分な方(例:中度の認知症など)が対象で、一定の重要な法律行為について保佐人の同意が必要になります。
  • 補助制度:判断能力が一部不十分な方(例:軽度の認知機能障害など)を対象に、必要な範囲だけ補助人の関与が認められます。

このように、保佐制度は本人の意思を尊重しつつも、重要な場面では法的な支援が必要とされる中間的な制度です。

判断能力の程度による違い

法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて「成年後見」「保佐」「補助」という3つの類型に分かれています。それぞれの制度は、本人の判断力にどの程度の支障があるかによって、家庭裁判所が医師の診断書などをもとに審理し、審判によって区分されます。

具体的には、次のような基準で判断されます。

  • 成年後見(成年後見人が選任される):判断能力をほとんど欠く状態。たとえば、意思表示がほとんどできない重度の認知症や知的障害などが該当します。すべての法律行為について、後見人による代理が原則必要です。
  • 保佐(保佐人が選任される):判断能力が著しく不十分な状態。たとえば、意思決定に著しい支障があり、預金や不動産などの重要な財産行為に関して自力での判断が困難な場合が該当します。本人が単独で法律行為を行うときは、一定の重要な行為について保佐人の同意が必要です。
  • 補助(補助人が選任される):判断能力が一部不十分な状態。たとえば、軽度の認知症などで、一部の行為について判断に不安があるケースが該当します。補助は本人の能力を前提に、必要な範囲だけ支援を行う制度です。

このように、判断能力の程度に応じて、支援内容の範囲や保護の強さが変わる点が、制度設計上の大きな特徴です。特に保佐制度は、本人の自己決定を尊重しつつも、重要な法律行為では法的保護を確保するための「中間的な支援制度」として位置づけられています。

保佐人に選任されるための条件と対象者

保佐人制度は、本人が重大な法律行為において誤った判断をしないよう支援するための制度です。しかし、誰にでも保佐人が付けられるわけではなく、本人の状態や家庭の状況に応じて、制度の利用が検討されます。ここでは、保佐制度の対象者や、保佐人になれる人の条件などを解説します。

保佐が必要とされる状況とは

保佐制度は、日常生活は自立して送れているものの、契約や財産の管理などにおいて「判断能力が著しく不十分」な方を対象としています。以下のような状況では、保佐人の選任が検討されます。

判断力が不十分な状態とは具体的にどのような場合か

「判断能力が著しく不十分な状態」とは、本人に法律行為を適切に判断・遂行する能力が十分でないと、家庭裁判所が認定した状態をいいます。

具体的には、以下のような事例が該当する可能性があります。

  • 銀行口座の管理や年金の受け取りなど、日常的な金銭管理が自分でできず、家族が代行している
  • 不動産会社や訪問販売業者との契約内容を正確に理解できず、不利な条件で契約を結んでしまう
  • 通信販売や投資商品などで、高額な支払いを繰り返し行ってしまう
  • 自身の収入や生活状況に合わない過剰な出費を続けている

このような状況では、本人が知らないうちに不利益な契約を結んだり、財産を損なったりするおそれがあります。

家庭裁判所は、医師の診断書などの客観的資料をもとに判断し、本人に保護が必要と認められた場合には、保佐制度の適用を審判によって決定します。保佐人が選任されることで、必要な法律行為について同意や取消が可能となり、本人の権利と財産を守る体制が整えられることになります。

保佐人選任の検討が必要なケース例

具体的には、以下のようなケースで、家庭裁判所への申立てが検討されます。

  • 認知症の親が不動産を勝手に売却しようとしている
  • 知的障害のある子が詐欺的な契約に巻き込まれた
  • 高齢の家族が金融商品を頻繁に購入してしまう

こうしたケースでは、保佐人による同意権や取消権によって、本人を不当な法律行為から保護する必要があるため、制度の利用が推奨されます。

保佐人になれる人・なれない人

保佐人には、家族や親族、あるいは第三者が選ばれることがあります。ただし、誰でもなれるわけではありません。適切な人物が選任されるよう、民法や家庭裁判所の実務で条件が定められています。

家族・親族・第三者の条件

保佐人には、原則として家庭裁判所の審判によって適切な人物が選任されます。制度の趣旨上、本人の権利と財産を守ることが目的であるため、保佐人となる人には一定の条件が求められます。

一般的に、次のような人が保佐人として選任されることが多いとされています。

  • 本人の配偶者や子ども、兄弟姉妹などの近親者で、本人との信頼関係が築かれている人
  • 日頃から本人の生活や財産管理に関わっており、状況をよく理解している家族や親族
  • 家庭裁判所が中立的で信頼に足ると判断した第三者(知人など)

ただし、以下のような事情がある人は、原則として保佐人には適さないとされ、家庭裁判所によって選任が見送られる可能性があります。

  • 過去に本人との間で金銭や相続などのトラブルがあった人
  • 本人の財産を私的に利用するおそれがあると認められる人
  • 重篤な病気や高齢、要介護状態などにより、継続的な職務遂行が難しい人

家庭裁判所は、本人の福祉を最優先に考え、保佐人としての適性を総合的に判断します。そのため、家族であっても上記に該当する場合には選任されないことがあります。

専門職(弁護士・司法書士等)の選任と役割

家族に適任者がいない場合や、財産の管理が複雑な場合には、家庭裁判所が専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士など)を保佐人に選任することがあります。

専門職の保佐人は、以下のような役割を果たします。

  • 預貯金や不動産などの財産の適正な管理
  • 契約内容の精査と同意の判断
  • 保佐監督人との連携や家庭裁判所への報告
  • 被保佐人の身上保護や生活支援に関する調整

専門的な知識と中立性が求められる場面では、専門職の関与が制度の適正な運用に不可欠です。

保佐監督人が必要な場合とは

保佐制度においては、状況に応じて「保佐監督人」が選任されることがあります。これは、保佐人がその職務を適切に遂行しているかを監督する役割を担うもので、制度の適正運用を確保するために設けられた仕組みです。

保佐監督人が選任されるのは、主に次のような場合です。

  • 保佐人に不適切な行為の懸念がある(たとえば、財産管理への不信感や利益相反の疑いがある)
  • 保佐人が専門職であり、管理すべき財産が高額または複雑である(たとえば、複数の不動産や信託財産がある場合)
  • 家庭裁判所が継続的な監督を必要と判断した場合(たとえば、本人の財産状況が頻繁に変動し、慎重な管理が求められるケース)
  • 保佐人が家族であり、家庭内での利害関係が強く、中立性の確保が難しいと判断された場合

保佐監督人が選任されると、保佐人の業務に対する報告を受け取り、必要に応じて家庭裁判所へ意見を述べることができます。これにより、被保佐人の利益が損なわれないよう、二重のチェック体制が整備されます。

家庭裁判所が職権で選任するため、申立人が希望しなくても、本人の保護のために選任されることがあります。選任された保佐監督人には、報酬が発生する場合があるため、その点も考慮して制度を利用する必要があります。

保佐人に与えられる4つの権限とその内容

保佐人には、被保佐人の法律行為を支援・制限するために、法律上明確に定められた4つの権限が与えられることがあります。これらの権限は、家庭裁判所の審判を通じて、被保佐人の保護と意思尊重のバランスを取る目的で付与されます。

同意権・取消権|特定行為に対する制限と保護

保佐人に与えられる代表的な権限が「同意権」と「取消権」です。これは、被保佐人が特定の重要な法律行為を行う際に、保佐人の関与を義務づけることで、被保佐人の財産や権利を守る仕組みです。

同意権の適用対象となる9つの法律行為

民法第13条第1項では、被保佐人が単独で行うにはリスクが大きいとされる法律行為を列挙しており、これらについては原則として保佐人の「同意」が必要です。代表的な行為は以下の9類型です。

  1. 不動産など重要な財産の売買
  2. 借金や金銭の貸借契約の締結
  3. 保証人となる行為
  4. 相続の承認や放棄
  5. 贈与、贈与の履行、遺贈の受諾
  6. 訴訟行為の提起や和解
  7. 財産の信託設定
  8. 贈与税や相続税の納税申告(関連する法律行為に伴い代理が必要となる場合)
  9. その他、財産上重大な法律行為

これらの行為を行う際に保佐人の同意がない場合、行為は原則として取り消すことが可能になります。

参考:民法第13条(保佐人の同意を要する行為等) e-gov法令検索

取消権によって無効にできる行為

保佐人には、民法第13条に定められた同意対象行為について、被保佐人が無断で行った場合にその行為を「取り消す」権限があります。これが「取消権」です。

たとえば、被保佐人が保佐人の同意なく高額な金融商品を契約してしまった場合、その契約は保佐人の取消によって無効にできます。取消権によって、悪質な業者や不利益な契約から被保佐人を保護できることが、制度上の重要な意義です。

代理権・追認権|家庭裁判所の審判に基づく付与

同意権・取消権に加えて、保佐人には必要に応じて「代理権」や「追認権」が付与されることがあります。これらは、家庭裁判所が審判によって個別に付与するものです。

限定された代理行為の範囲

保佐制度では、成年後見制度と異なり、保佐人が当然にすべての代理権を持つわけではありません。代理権を付与するには、家庭裁判所の審判が必要であり、その範囲は明確に限定されます。

たとえば、次のような行為について代理権が認められることがあります。

  • 定期預金の解約と管理
  • 不動産の売却契約書の締結
  • 相続手続きにおける遺産分割協議への関与
  • 賃貸借契約の更新手続きなど

これにより、被保佐人の重要な財産管理が滞ることなく、適切に進められるようになります。

追認権による契約の追認と効力の確保

保佐人には、被保佐人が単独で行った一定の法律行為について、内容に問題がないと判断した場合に「追認」する権限があります。追認とは、民法上の「取り消すことができる行為」を取り消さずに認める意思表示のことで、その結果、行為は最初から有効であったものとして法的効力を持つようになります。

対象となるのは、民法第13条第1項に定められた、同意権の対象となる法律行為です。たとえば次のようなケースです。

  • 被保佐人が保佐人の同意を得ずに、不動産の売買契約を締結した
  • 被保佐人が単独で金融機関から借入契約をした
  • 被保佐人が相続放棄の申述を行った

これらの行為は原則として取り消すことができますが、保佐人が「内容に問題がない」と判断し、追認した場合には取り消されず、有効な行為として確定します。

一方で、保佐人が追認を行わなければ、第三者との関係で不安定な状態が継続します。これを回避するため、追認または取消の判断は、行為から一定期間内に行うことが求められます(民法第126条参照)。

ただし、そもそも日常生活に関する軽微な契約(例:食料品や衣料品の購入など)は、同意権や取消権の対象外とされており、追認の必要もありません(民法第13条第2項、第9条ただし書)。

保佐人が担う具体的な支援内容

保佐人は、被保佐人の判断能力が不十分な状況において、本人の意思を尊重しながら財産や法律行為を適切に管理・補助することが求められます。実際の支援内容は、財産管理や法律行為の同意・取消、生活面の見守りなど多岐にわたります。

財産管理に関するサポート

保佐人の重要な役割の一つが、被保佐人の財産を安全に管理し、不利益が生じないよう保全することです。本人の資産状況や生活環境に応じて、きめ細かな支援が求められます。

預金・年金・不動産などの管理と保全

保佐人は、被保佐人の財産状況に応じて必要な管理業務を行います。主な対象には以下のようなものがあります。

  • 預貯金口座の管理や引き出しに関する助言・代行
  • 年金受給や給付金の受領手続きの補助
  • 不動産(土地・建物)の登記や契約の見直し、売却時の同意または代理
  • 賃貸物件の契約更新や家賃の受領・支払いの管理
  • 相続や遺産分割に関する手続きの補助

財産が適切に使われるようにすることで、将来の生活に必要な資金を守るとともに、不正な契約や浪費から本人を保護します。

第三者による浪費の防止策

保佐人の重要な役割の一つが、被保佐人の財産が第三者によって不当に使われてしまうのを防ぐことです。判断能力が著しく不十分な状態では、悪質な業者や知人などに高額な契約を持ちかけられても、その場で正しく判断できないことがあります。

たとえば、訪問販売で必要のない高額商品を買わされるケースや、投資話に乗せられて多額の現金を支払ってしまうケースが挙げられます。

保佐人には、こうした浪費を防ぐために以下のような対応が求められます。

  • 高額な契約や貸付行為について、事前に同意を与えず防止する(同意権の行使)
  • 契約書や請求書などを日常的に確認し、不自然な支出に気づいたときは早めに対応する
  • 被保佐人の郵便物・電話対応を家族と協力して見守り、詐欺的勧誘を遮断する

これらの対策により、本人の財産が不当に失われることを防ぎ、生活の安定を守ることが可能になります。保佐人の関与は、まさに「予防的な財産保護」として重要な役割を果たしています。

法律行為に関する支援

保佐人のもう一つの中心的な役割が、被保佐人が行う重要な法律行為に関与し、必要に応じて同意や取消、または代理を通じて支援することです。本人の意思を尊重しつつも、不利益な契約から守るため、法律行為の内容を見極めたうえで適切に関与する必要があります。

不動産売買・重要契約への同意・取消し

不動産の売買や高額な契約は、判断能力が不十分な方にとってリスクの高い法律行為です。民法第13条では、こうした行為は保佐人の同意が必要とされており、同意なしに行われた場合には、保佐人が取り消すことができます。

たとえば、以下のような場面が該当します。

  • 被保佐人が自宅を売却しようとしている
  • 高額な住宅リフォーム契約を結ぼうとしている
  • 保険や金融商品への加入契約を勧められている

保佐人は、こうした契約について内容を精査し、被保佐人にとって不利益がないかを確認したうえで、同意するかどうかを判断します。同意なしに結ばれた契約については、速やかに取消権を行使して被保佐人を保護します。

不当契約からの保護措置

被保佐人は、悪意のある第三者から不当に高額な商品を買わされたり、不利な条件で契約させられたりする危険があります。こうした被害を防ぐため、保佐人は以下のような保護措置を講じます。

  • 契約書・請求書・領収書などを定期的にチェックし、異常な支出がないか確認する
  • 本人からの相談や、家族からの報告をもとに、不審な取引について調査する
  • 問題のある契約が発覚した場合には、家庭裁判所と連携し、必要に応じて取消の申立てや法的対応を行う

また、訪問販売や通信販売など、被保佐人が一人で判断しづらい場面では、日頃から本人と連絡を取り合い、不審な話があったときにはすぐに確認・介入できる体制を整えることが重要です。

保佐人の適切な支援により、被保佐人は自分の財産を守りながら、安全に日常生活を送ることができます。

身上保護や家庭裁判所への報告義務

保佐人は財産管理や法律行為の支援だけでなく、被保佐人の生活環境や福祉の維持といった「身上保護」も重要な役割の一つです。身上保護とは、本人が安心して日常生活を送ることができるよう、生活状況に配慮して支援することを指します。

加えて、保佐人には職務の状況について家庭裁判所に報告する義務もあります。これは制度の透明性を保ち、本人の利益を守るために欠かせない仕組みです。

保佐人が行った支援内容や財産の収支状況などについては、原則として年1回、家庭裁判所へ報告書を提出しなければなりません。家庭裁判所はこの報告をもとに、保佐人の業務が適切に行われているかを監督します。

報告義務を怠ったり、内容に不適切な点があると、家庭裁判所が注意を行い、場合によっては保佐人の変更や保佐監督人の選任が検討されることもあります。

このように、保佐人の業務は財産管理だけでなく、本人の暮らし全体を支える視点が求められます。信頼できる保佐人の選任と、丁寧な対応が制度運用の鍵となります。

被保佐人が単独で行える行為とその範囲

保佐制度では、被保佐人の判断能力が著しく不十分であると認められた場合でも、すべての法律行為に制限がかかるわけではありません。本人の意思を尊重し、自立的な生活を妨げないようにする観点から、保佐人の同意が不要な行為も法律で定められています。

ここでは、被保佐人が単独で行える行為の範囲について解説します。

本人の意思で可能な法律行為

民法第13条第2項ただし書、第9条ただし書では、日常生活に関する行為については保佐人の同意を必要としないと明記されています。つまり、被保佐人であっても次のような法律行為は、自分の判断で自由に行うことができます。

  • 日用品の購入(食料品や衣類などの生活必需品)
  • 公共料金の支払い(電気・ガス・水道など)
  • 通院や通所サービスに関する契約(医療機関との通常の受診契約など)
  • 金額が少額で、社会通念上問題のない取引

これらは日々の生活に不可欠な行為であるため、保佐制度を利用しても原則として本人の自由が認められています。

保佐人の関与が不要な代表的ケース

被保佐人の生活状況や能力によっては、ある程度の判断や意思表示ができる場面もあります。たとえば、以下のようなケースでは、保佐人の関与が不要です。

  • 慣れ親しんだスーパーや商店での買い物
  • 通信販売での低価格な商品の注文
  • 金額の小さな贈答品の購入
  • 趣味に関する支出(書籍や文具など、一般的な価格帯のもの)

ただし、金額が高額だったり、被保佐人が勧誘により購入したような場合は「日常生活に関する行為」に該当しない可能性があるため、注意が必要です。実際には、家庭裁判所や保佐人の判断を仰ぐことが適切なケースもあります。

保佐人の選任手続きとその流れ

保佐制度を利用するには、本人の判断能力の状況や家族の意向を踏まえて、家庭裁判所に申立てを行い、審理と審判を経て保佐人が選任される必要があります。この手続きは法的な根拠に基づいて進められ、一般的には以下のような流れで行われます。

申し立ての準備と必要書類

保佐制度の利用を希望する場合、まずは家庭裁判所に対して保佐開始の申立てを行います。申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、市町村長などに限られており、事前の準備が重要です。

申立て書類の一覧と注意点

主な提出書類は以下のとおりです。

  • 保佐開始申立書(所定様式)
  • 申立事情説明書(なぜ保佐を必要とするかの具体的事情)
  • 代理行為目録(代理権の付与を希望する場合)
  • 本人の戸籍謄本・住民票
  • 申立人の戸籍謄本・住民票
  • 親族関係図
  • 本人の財産目録(預貯金・不動産・保険など)
  • 本人の収支予定表(月々の収入や支出の見込み)
  • 相続財産目録(相続に関連する申立てがある場合)
  • 後見人等候補者事情説明書(候補者がいる場合)
  • 本人情報シート(福祉関係者が作成)
  • 診断書・診断書付票(家庭裁判所指定様式)
  • その他、必要に応じて意見書や参考資料

これらの書類は、家庭裁判所が用意する「申立て書式セット」からダウンロードでき、パソコン入力にも対応しています。

また、以下のような注意点があります。

  • 鑑定が必要と判断された場合は、10万から20万円程度の費用がかかることがあります(ただし、本人の財産から精算可)
  • 申立書に候補者として記載された人物が必ず保佐人に選任されるとは限らず、必要に応じて専門職(弁護士・司法書士等)が選任される場合があります
  • 親族に対して意向照会が行われることがあります
  • 保佐人の職務は、申立てのきっかけ(たとえば遺産分割や保険金の受取)が終わっても継続します
  • 保佐人・保佐監督人に対する報酬は家庭裁判所が決定し、本人の財産から支払われます
  • 保佐人の職務には責任が伴い、不適切な事務処理があった場合には解任・損害賠償・刑事責任が問われる可能性もあります

これらの点を十分に理解したうえで、家庭裁判所の手引や様式に沿って申立てを行うことが重要です。

参考:申立てをお考えの方へ(成年後見・保佐・補助)東京家庭裁判所後見センター

家庭裁判所への申立てと審理の進行

保佐制度の利用を希望する場合、まずは本人の住所地を管轄する家庭裁判所に対して、保佐開始の申立てを行います。申立てができるのは、本人、配偶者、四親等内の親族、市区町村長、検察官などに限られています。

申立て後、家庭裁判所は提出された書類をもとに審理を進めます。必要に応じて、以下のような手続きが行われます。

  • 申立人や本人への面接
  • 家庭裁判所調査官による調査
  • 医師による鑑定(判断能力の程度を確認するため)

これらの手続きは、本人の判断能力の程度や生活状況を総合的に把握するために行われます。

審判確定から登記・保佐開始までの流れ

審理の結果、家庭裁判所が保佐開始の必要性を認めた場合、以下のような流れで手続きが進みます。

  1. 保佐開始の審判が下される
  2. 保佐人(および必要に応じて保佐監督人)が選任される
  3. 審判書が申立人や本人に送付される
  4. 審判が確定する(通常、審判書送達後2週間以内)
  5. 成年後見登記制度に基づき、東京法務局で登記が行われる
  6. 保佐制度が正式に開始され、保佐人の業務が始まる

審判が確定すると、その内容は東京法務局が管理する「成年後見登記ファイル」に登記されます。これにより、第三者に対しても保佐制度の利用が証明できるようになります。

保佐人の選び方と費用の目安

保佐制度を利用するにあたっては、誰を保佐人に選ぶか、そしてどれくらいの費用がかかるかをあらかじめ理解しておくことが大切です。保佐人の選任方法には大きく分けて「家族・親族による選任」と「弁護士などの専門職による選任」があり、それぞれの特徴や費用の負担が異なります。

家族を選ぶ場合と専門職を選ぶ場合の違い

保佐人には、本人の配偶者や子どもなどの親族が選任されることが一般的です。家族が保佐人となる場合、ふだんから被保佐人の生活や価値観を理解しているため、本人の意思を尊重しながら支援しやすいという利点があります。また、親族による保佐人には報酬が発生しないことも多く、経済的な負担が比較的少なく済むというメリットもあります。

一方、家庭裁判所は事案の内容によっては、弁護士や司法書士などの専門職を保佐人に選任することもあります。専門職の保佐人は、法律知識や財産管理に関する専門的なスキルを有しており、不動産の処分や相続対応など、複雑な法律行為が必要となる場面でも的確に対応することが可能です。ただし、専門職を保佐人とする場合には報酬が発生し、その金額は家庭裁判所の審判によって決められ、原則として本人の財産から支払われます。

なお、専門職が選ばれるのは、家族の間で意見が対立している場合や、被保佐人の財産が高額または複雑で、専門的な管理が求められるようなケースです。保佐制度を円滑に機能させるためには、事案ごとに適切な人材を選任することが重要となります。

保佐人に支払う報酬とその相場

専門職が保佐人に選任された場合、その報酬は家庭裁判所が審判によって決定します。保佐人自身が自由に報酬額を決めることはできず、年に1から2回程度「報酬付与の申立て」を行い、裁判所の判断を仰ぐ必要があります。報酬の支払いは、原則として被保佐人の財産から行われます。

報酬は大きく分けて「基本報酬」と「付加報酬」の2つがあります。

基本報酬は、保佐人が日常的に行う財産管理や法律行為の同意・取消、身上配慮などの通常業務に対して支払われるもので、以下のような金額が目安とされています。

  • 被保佐人の財産が1,000万円以下の場合は、月額1万から2万円程度
  • 1,000万円を超え5,000万円以下の場合は、月額3万から4万円程度
  • 5,000万円を超える場合は、月額5万から6万円程度

ただし、これは地域や家庭裁判所の運用によって異なり、あくまで一般的な相場である点に注意が必要です。

一方、付加報酬は、保佐人が通常の職務を超える対応を行った場合に加算されるもので、たとえば以下のようなケースが該当します。

  • 遺産分割協議や不動産売却などの複雑な手続きを行った場合
  • 被保佐人に対する詐欺被害について損害賠償請求訴訟を行い、回復を得た場合
  • 介護施設との契約や、転居に関わる調整などで相当な労力を要した場合

これらの場合、追加で5万円から数十万円程度の報酬が付与されることがあります。たとえば、不動産を売却して3,000万円を回収したような事例では、成果額の1から2%程度が目安とされることもあります。

報酬の可否や金額は、本人の財産状況、業務の内容、支援の難易度、本人の健康状態(余命など)を含めて、家庭裁判所が総合的に判断します。

なお、親族が保佐人を務める場合、報酬を受け取らず無償で行うケースも多く、申立時点でその意向を明記しておくとスムーズです。

保佐人の任務終了・辞任・変更の条件

保佐人の任務は、一定の条件を満たした場合に終了、辞任、または変更されます。これらの手続きは、家庭裁判所の審判を通じて行われ、被保佐人の利益を最優先に考慮して判断されます。

辞任・変更が認められる正当な事由とは

保佐人が辞任や変更を希望する場合、家庭裁判所に申し立てを行い、正当な事由があると認められる必要があります。以下は、一般的に正当な事由とされる例です。

  • 保佐人自身の健康状態の悪化や高齢化により、職務遂行が困難になった場合
  • 被保佐人との信頼関係が著しく損なわれ、適切な支援が困難となった場合
  • 保佐人が転居や転職などにより、被保佐人の支援が物理的に難しくなった場合
  • 保佐人が職務に対する責任を果たさず、被保佐人の利益を損なう行為があった場合

これらの事由が認められた場合、家庭裁判所は新たな保佐人の選任や、保佐人の交代を命じることがあります。

保佐人の任務が終了する主なケース

保佐人の任務が終了する主なケースは以下の通りです。

  • 被保佐人が死亡した場合
  • 被保佐人の判断能力が回復し、保佐開始の審判が取り消された場合
  • 保佐人が辞任し、家庭裁判所の許可を得た場合
  • 保佐人が解任された場合

任務終了時には、保佐人はそれまでの財産管理についての報告を家庭裁判所に提出し、必要に応じて新たな保佐人や相続人への引継ぎを行う必要があります

保佐人制度を検討している方へのアドバイス

保佐人制度の利用を検討する際には、以下のポイントを確認し、適切な支援を受けることが重要です。

制度利用前に確認すべきポイント

保佐制度を利用する前に、以下のことを確認しておきましょう。

  • 被保佐人の判断能力の程度を医師の診断書などで確認し、保佐制度の対象となるかを判断する。
  • 保佐人に選任される候補者の適格性や信頼性を確認する。
  • 保佐人の業務内容や責任範囲、報酬などについて理解し、必要な準備を行う。

相談先や支援機関の活用方法

保佐制度の利用にあたっては、以下のような相談先や支援機関を活用することが有効です。

  • 家庭裁判所:制度の概要や手続きについての相談が可能です。
  • 市区町村の福祉担当窓口:地域の支援制度やサービスについての情報提供を受けられます。
  • 専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士など):制度の利用に関する具体的なアドバイスや手続きの支援を受けられます。

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