老人ホーム入居後に小規模宅地等の特例は適用可能?要件や添付書類を解説!

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終活

被相続人が老人ホームに入居していても小規模宅地等の特例は使える?

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たすことで対象となる宅地の評価額を最大80%減額できる制度です。

適用するには複雑な要件をクリアする必要がありますが、被相続人が老人ホームに入居した状態でも、ケースによっては特例が適用できます。老人ホームに入居している=適用できないというわけではありません。

老人ホーム入居後に小規模宅地等の特例を使用するための条件!

被相続人の老人ホーム入居後に小規模宅地等の特例を適用するには、まず被相続人が要介護や要支援の認定を受けている必要があります。

さらに、入居している施設の種類や要介護認定などを受けた時期によって、適用できるかどうかが異なります。

誰が相続するかによっても要件が異なるため、遺産分割がまとまった時点で要件を確認したほうがよいでしょう。

なお、住民票記載の住所が自宅のままになっているなど住民票の住所と現住所に相違がある場合でも、小規模宅地の特例が使用できるかどうかを判定する際は自宅に住んでいるものとみなされるため、特例を受けることができます。

老人ホームに入居していて小規模宅地等の特例が使えるケース

ここでは、老人ホームに入居していても小規模宅地等の特例が適用できるケースを紹介します。

2つの前提条件を満たしている場合

老人ホームに入居していても、以下の2つの前提条件を満たしている場合は特例が適用できます。

  • 死亡の時点で被相続人が要介護認定や要支援認定、障害支援区分の認定などを受けている場合
  • 老人福祉法等が定める老人ホームに入居している場合

それぞれ解説します。

死亡の時点で被相続人が要介護認定や要支援認定、障害支援区分の認定などを受けている場合

要介護認定や要支援認定などについては死亡の時点で判断されるため、老人ホームに入居した時点で認定を受けていなくても構いません。

また、判断基準を満たす場合は過去にさかのぼって認定されるため、要介護認定などの申請中に死亡した場合であっても特例の適用は可能です。

老人福祉法等が定める老人ホームに入居している場合

入居している施設は、以下のような老人福祉法等に定められている施設でなければなりません。

  • 養護老人ホーム
  • 特別養護老人ホーム
  • 有料老人ホーム
  • 軽費老人ホーム
  • サービス付き高齢者用住宅
  • 介護医療院
  • 介護老人保健施設
  • グループホーム
  • 障がい者支援施設または共同生活援助を行う住居

ほとんどの施設が上記に該当しますが、都道府県に届け出ていない無許可の施設は該当しません。入居している老人ホームがどのタイプの施設にあたるかについては、念のため施設に確認しておいたほうがよいでしょう。

相続人が被相続人の配偶者、同居の親族、別居の親族である場合

小規模宅地等の特例を適用するには、対象の宅地を相続する人が被相続人の配偶者や同居していた親族、別居していた親族である場合に限られます。要件は誰が相続するかによって異なるため注意が必要です。

それぞれ解説します。

配偶者が相続する場合

配偶者が相続する場合、要件は不要です。前述した前提条件を満たしていれば、小規模宅地等の特例を適用できます。

被相続人と同居していた親族が相続する場合

被相続人と同居していた親族が相続する場合は、前述した前提条件を満たしたうえで、さらに以下の要件を満たす必要があります。

  • 被相続人が死亡した時点から相続税の申告期限までの期間内に対象の建物に居住していること
  • 対象の建物の敷地である宅地を、相続税の申告期限まで保有していること

上記の要件を満たしていれば、小規模宅地等の特例が適用できます。

被相続人と別居していた親族が相続する場合

被相続人と別居していた親族が相続する場合は、前述した前提条件を満たしたうえで、さらに以下の要件を満たす必要があります。

  • 被相続人、相続人ともに日本国内に住所があること
  • 被相続人に配偶者および同居の親族が存在しないこと
  • 相続人や配偶者が被相続人の死亡後3年以内に、自身もしくは配偶者が所有する居宅に居住していないこと

「被相続人、相続人ともに日本国内に住所があること」とされていますが、もし相続人が日本国内に住所を有していなくても、日本国籍があれば問題ありません。

長期間入院している場合も適用できる

被相続人が老人ホームに入居しているのではなく長期的に入院している場合も、小規模宅地等の特例は適用できます。なぜなら、自宅を離れた状態ではあるものの、生活の拠点は変わっていないと考えられるためです。

老人ホームに入居していて小規模宅地等の特例が使えないケース

以下のケースは、他の要件を満たしていたとしても小規模宅地等の特例が適用できません。

  • 建物の内部で行き来ができず、区分所有登記がされている二世帯住宅の場合
  • 被相続人が老人ホームに入居し、自宅が空き家になってから親族が住み始めた場合

建物の内部で行き来ができない構造になっていても、ひとつの建物として登記がされていれば特例の適用は可能です。

しかし、例えば1階部分が父親名義、2階部分が息子名義であるなど、分けて登記がされている場合は特例を適用できません。

また、自宅に親族が住み始めるタイミングは、被相続人が老人ホームに入居する前でなければなりません。自宅が空き家になってから住み始めた場合には、特例を適用できないことを覚えておきましょう。

小規模宅地等の特例が適用されるが減額率が下がるケースもある?

ケースによっては、小規模宅地等の特例が適用されても、減額率が下がってしまう場合があります。例えば、以下のようなケースが挙げられます。

  • 自宅に親族以外の人が住んでいる場合
  • 被相続人が自宅と賃貸アパートを所有していた場合

被相続人が老人ホームに入居したあと他人に貸し付けた場合は、評価額の減額率が下がります。なぜなら「貸付事業用宅地の特例」に該当するためです。

また、被相続人が自宅と賃貸アパートを所有していた場合も同様に、貸付事業用宅地に該当するため減額率が下がります。

貸付事業用宅地の特例は、200㎡までの貸付事業用宅地に対して評価額を50%減額できる制度です。例えば500㎡の土地の場合、そのうちの200㎡に関しては50%の減税が可能ですが、残り300㎡に関しては減税できません。

そのほか、場合によっては特例の適用自体ができなくなるケースもあるため注意が必要です。例えば、いくつかの施設を行き来していた場合が挙げられます。

特例を適用するためには老人福祉法等に定められた施設への入居が条件であると前述しましたが、たとえ最初に入居した施設や最後に入居していた施設が老人福祉法等に定められた施設でも、途中で無許可の施設に移った経緯がある場合は、特例の適用ができなくなります。

別の施設に移る場合は、移る予定の施設がどのような施設であるかをよく確認したうえで転居を決めましょう。

老人ホーム入所後に小規模宅地等の特例を申請するための添付書類

老人ホーム入居後に小規模宅地等の特例を申請する際は、共通して以下の書類を揃える必要があります。

  • 本人確認書類
  • 相続税の申告書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍
  • 被相続人の戸籍の附票
  • 相続人全員の現在戸籍
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書または遺言書のコピー
  • 特例を適用する人の住民票
  • 要介護認定や要支援認定を受けていたことがわかる書類のコピー
  • 介護保険の被保険者証のコピー
  • 老人ホームに入居した際の契約書のコピー

本人確認書類は、マイナンバーカードがある場合はマイナンバーカードを両面コピーしたものを提出します。

マイナンバーカードがない場合はマイナンバーが記載された住民票のコピーや通知カードのコピー、身元確認書類として運転免許証やパスポート、健康保険証のコピーなど、公的な証明書が1点必要です。

被相続人の戸籍の附票は、被相続人の死亡後に取得したものが必要です。

特例を適用する人の住民票については、申告書にマイナンバーを記載する場合は必要ありません。提出する場合はコピーしたもので構いません。

また、相続人が配偶者や同居の親族の場合は上記の書類だけで事足りますが、相続人が別居している親族の場合は、上記の書類に加え、相続開始前3年以内に相続人およびその配偶者が所有する家屋に居住したことがない旨を証明する書類が必要です。

「相続開始前3年以内に相続人およびその配偶者が所有する家屋に居住したことがない旨を証明する書類」とは、例えば相続する居宅の全部事項証明書や借家の賃貸借契約書などが該当します。

なお、戸籍や附票、住民票などは取得の際に手数料がかかります。

証明書の種類1通あたりの手数料
除籍・改製原戸籍750円
現在戸籍450円
戸籍の附票200〜400円
住民票200〜400円
印鑑証明書200〜300円

手数料額はおおむね上記のとおりですが、市区町村によって異なります。その都度確認することをおすすめします。

小規模宅地等の特例の手続き方法を解説!

小規模宅地等の特例の手続きをする前に、まず相続税の申告手続きを期限内に行わなければなりません。相続税の申告手続きは、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月です。

期限を過ぎてからでも申告できますが、その場合は延滞税や無申告加算税が課される可能性があるため注意が必要です。

また、遺産分割が完了している必要があります。

遺産分割が完了していない場合、小規模宅地等の特例を適用せずに相続税を納付しなければなりませんが、申告期限から3年以内に遺産分割が完了すれば特例の適用が可能です。遺産分割が完了した日の翌日から4か月以内であれば、納めすぎた相続税をあとから請求できます。

特例の手続きは、管轄の税務署に対して行います。申告から手続き完了までに日数を要すものではなく、必要書類を揃えて提出し、不備がなければ手続きはそこで完了です。何かしら不備があれば税務署から連絡がくることはありますが、連絡がなければ通ったと判断して問題ないでしょう。

小規模宅地等の特例が使えるか困ったら専門家に相談しよう!

老人ホーム入居後に小規模宅地等の特例が適用できるかどうかについてや要件、添付書類について解説しました。

小規模宅地等の特例は、適用できるかそうでないかによって評価額の減額率が大幅に変わります。特例が適用できるかどうかわからない場合は、専門家に相談することもひとつです。

相続診断士であれば、小規模宅地等の特例についてアドバイスをもらえるほか、必要であれば他の専門家も紹介してもらえます。ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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