死後事務委任契約を行っている銀行は?サービス内容や特徴を解説!
Contents
死後事務委任契約とは?死後事務の内容を解説!
死後事務委任契約とは、死後事務を委任したい人(委任者)が、委任をお願いする相手(受任者)と契約し、亡くなった後の葬儀・埋葬、死亡に関する手続きを行ってもらう方法です。
受任者には個人の他、法人を選んでも構いません。
契約内容は相続に関する取り決めを除き、委任者が自由に決定できます。
本契約で取り決めるのは主に次のような手続きがあげられます。
(1)委任者死亡後の手配・連絡等
- お葬式の手配
- 親族、親戚や友人等への連絡
- 喪主の代行
- 火葬の手配
- 納骨 等
(2)委任者にかかった費用の清算等
- 賃貸物件の家賃支払
- 医療機関への入院費用の清算
- 介護施設への入所費用の清算
(3)死後の行政への届け出等
- 市区町村役場への死亡届
- 年金受給停止手続き
- 保険証返還 等
(4)その他
- スマートフォン・プロバイダ契約の解除
- 電気、水道、ガス等の解約
成年後見制度や財産管理委任契約との違い
こちらでは、死後事務委任契約と似た制度である「成年後見制度」「財産管理委任契約」との相違点を説明しましょう。
死後事務委任契約と成年後見制度との違い
死後事務委任契約は本人が死亡後の手続き等を任せる方法で、成年後見制度は本人が生存中のサポートを任せる制度です。
成年後見制度は、判断能力がなくなった本人に代わり、後見人等が契約手続きや財産を管理する制度です。成年後見制度には「法定後見」「任意後見」の2種類があります。
成年後見制度の一つである「法定後見」を利用するならば、本人の判断能力が著しく低下した後、家庭裁判所に申し立てを行い、後見人等を選任してもらわなければいけません。
法定後見はあくまで本人が生きているときのサポートに限定されます。
一方「任意後見」は判断能力が著しく低下する前に、まず本人(委任者)と引き受けた人(任意後見受任者)が契約を締結します。
この点は死後事務委任契約と同じですが、任意後見契約は公正証書で作成する必要がある上に、本人の判断能力の低下後は、家庭裁判所に任意後見監督人選任申立てが必要です。
更に任意後見も、あくまで本人が生きているときのサポートに限定されます。
死後事務委任契約と財産管理委任契約との違い
財産管理委任契約とは、本人に判断能力はあるが介護等を必要とする場合、受任者へ本人の生活、療養看護や財産管理に関する事務に代理権を与える契約です。
本人が生きている間に財産管理等のサポートを行う制度なので、この点は死後の手続き等を任せる死後事務委任契約と異なります。
なお、死後事務委任契約も財産管理委任契約も、委任者と受任者とで契約を締結する他、公正証書で作成する必要が無い点は同じです。
死後事務委任契約を行っている銀行とは?
死後事務委任契約を任せたい信頼できる人がいない場合、法人に受任者を依頼しても構いません。こちらでは死後事務委任契約を扱う「銀行」を紹介しましょう。
主に次の銀行が死後事務委任契約の取り扱いを明示しています。
(1)三井住友信託銀行「おひとりさま信託」
三井住友信託銀行・三井住友トラストホールディングスが設立した「一般社団法人安心サポート」と契約し、死後事務サービスを提供する仕組みとなっています。
(2)十六銀行「未来よろしんたく」
十六銀行と直接、死後事務委任契約を締結します。十六銀行が死後事務受任者となり、委任者の死亡手続き等を実行する仕組みです。
死後事務委任契約を扱っている銀行の特徴・サービス内容
こちらでは、死後事務サービスを提供する三井住友信託銀行、十六銀行のサービス内容について紹介しましょう。
三井住友信託銀行「おひとりさま信託」
「おひとりさま信託」という死後事務・財産処分を委任するサービスです。
おひとりさま信託を利用したい場合、まず三井住友信託銀行の窓口で当該契約を締結します。そして、死後事務委任に関しては一般社団法人安心サポートと契約を結びます。
三井住友信託銀行と一般社団法人安心サポートの役割は下表の通りです。
三井住友信託銀行 | 一般社団法人安心サポート |
・おひとりさま信託の契約 ・「未来の縁-ingノート」(エンディングノート)を電子媒体で管理 ・SMS安否確認 ・死後事務に関する費用等の支払い ・一般社団法人安心サポートに個人情報の相互利用・書類取り次ぎ 等 | ・死後事務委任契約の締結 ・委任者の遺体引取 ・友人・知人への訃報連絡 ・葬儀、埋葬、遺品整理の実施 ・委任者のペット搬送 ・公共サービス解約・精算 ・行政官庁に対する諸届出事務 等 |
おひとりさま信託では死後事務の実行を安心サポートが行い、三井住友信託銀行自体はエンディングノートの管理や書類取り次ぎ等を担当します。
十六銀行「未来よろしんたく」
葬儀・死亡事務等に必要な資金の管理から、死後事務の実施、費用の清算まで十六銀行がワンストップで執り行うサービスです。
十六銀行は依頼者(委任者)本人が作成したエンディングノートの管理の他、死後事務のいろいろな手続き、死後事務にかかる費用の清算等を行います。
銀行で死後事務委任契約を締結するメリットとは?
銀行と死後事務委任契約を締結すれば、委任者が亡くなった後、死後事務を支障なく実施できます。
死後事務委任契約は本人(委任者)の親戚や友人・知人、士業専門家(弁護士、司法書士、行政書士等)とも締結が可能です。
ただし、個人が死後事務受任者になった場合、受任者が委任者より前に死亡したり、認知症を発症する等して判断能力が著しく欠如したりすると、再び受任者になってくれる人を探さなければいけません。
一方、銀行ならば複数人の担当者が死後事務を管理・実行します。そのため、委任者がどんなに長生きをしても、死後事務が行えなくなるという事態は考えられません。
受任者が銀行ならば、身寄りのない方々はもちろん「信頼のおける人は周りにいるけれど、自分の方が長生きするかもしれない。」と感じている方々も安心です。
死後事務委任契約を行っている銀行を使う際の注意点
銀行と死後事務委任契約を締結後、すみやかに預託金(銀行に預けるお金)を準備するのが一般的です。銀行が受任者になる場合は、数百万円に及ぶ預託金が必要となります。
その他にも、銀行から指定された生命保険を契約し、銀行が死亡保険金の請求や管理を行う方法があります。
死後事務に必要な費用・報酬を、預託金方式か生命保険方式のどちらか選べる銀行もあれば、預託金方式しか利用できない銀行もあるので、事前に資料等をよく読んで確認しましょう。
また、死後事務委任に関する管理を行うための年間手数料(例:運用報酬、期中管理報酬等)も必要です。こちらは年間数万円程度かかる場合があります。
死後事務委任契約の流れを解説!
日本国内居住の個人であれば、基本的に誰でも銀行と死後事務委任契約を締結可能です。契約のタイミングは依頼したい個人が自由に決められます。
自分が退職し余暇を楽しめるようになったら、終活の一つとして死後事務委任契約を締結するのも良い方法です。
こちらでは、死後事務委任契約の流れ、必要書類について説明しましょう。
死後事務委任契約の流れ
契約締結〜依頼者(委任者)死亡後の手続きの手順は次の通りです。
- 銀行に死後事務を相談
- 葬儀等に関する希望があれば、銀行側が提携業者(葬儀会社等)を紹介
- 担当者と話し合い納得の下で死後事務契約締結、自分の死後の希望を明記するエンディングノートも作成
- 契約後、預託金の入金または生命保険に加入
- 銀行がエンディングノートを保管・管理する
- 依頼者(委任者)死亡
- エンディングノートに基づき、死後事務を進める
死後事務委任契約を円滑に進めるために、銀行は依頼者(委任者)にエンディングノートの提出を求めるのが一般的です。
このエンディングノートに葬儀や埋葬方法、死亡の際の届け出等を記入していきます。
死後事務委任契約の必要書類
基本的に契約書等の作成と依頼者(委任者)の確認ができる書類を準備します。
- 死後事務委任契約:銀行の所定書類で作成
- エンディングノート:銀行の所定書類で作成
- 住民票(本籍地記載のもの):住所地の市区町村役場で取得、1通200円程度
- 戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得、1通450円
- 印鑑登録証明書:住所地の市区町村役場で取得、1通200円程度
その他、銀行のホームページにて、依頼者(委任者)のマイページの開設が必要となる場合もあります。
死後事務委任契約にかかる費用はどのくらい?
銀行の死後事務委任契約を締結後は、所定の期限内に預託金を入金するか生命保険へ加入する必要があります。
気になる費用の目安ですが、それぞれ概ね次の通りです。
- 預託金:最低預託金額200万円~300万円程度
- 生命保険:保険金設定金額250万円~
なお、年間手数料(例:運用報酬、期中管理報酬等)を、ホームページやパンフレット等で明記していない銀行が多いものの、年間数万円程度かかるとみて良いでしょう。
一方、預託金や生命保険(死亡保険金)は、全額がそのまま銀行の利益となるわけではありません。
死後事務に関する報酬・費用を差し引いて余ったお金は「帰属権利者」に支払われます。この帰属権利者は、依頼者が前もって推定相続人や、銀行が提携する寄付先法人の中から選びます。
死後事務委任契約を行う際の注意点を解説!
こちらでは死後事務委任契約の注意点や、契約を行う前にどこへ相談するべきかを説明しましょう。
死後事務委任契約の注意点
契約内容をよく確認し、自分の希望に即したものであるかを把握する必要があります。
そのため、死後事務委任契約は依頼者の判断能力が十分あるうちに、銀行と契約しなければいけません。
認知症等が進み、判断能力に著しい欠如が認められると、銀行側から契約を拒否される可能性が高いです。
また、依頼者の死亡後は前もって作成したエンディングノートをもとに、銀行側が死後事務を進めます。
もしも、依頼者の相続人がいる場合、死後事務委任契約の事実が知らされていないと「勝手に葬儀や遺品整理が行われた。」とトラブルになるケースも想定されます。
そのような事態にならないよう、相続人となる親族・親戚には、依頼者の方から事前に死後事務委任契約を行ったと報告しておきましょう。
死後事務委任契約に関し不明な点は相続診断士へ相談を
死後事務の相談は本サービスを取り扱う銀行窓口であれば、無料で対応してくれます。
しかし、死後事務委任契約のメリット・デメリットを中立的な視点から把握したいなら、相続全般の専門知識を有する「相続診断士」へまず相談してみましょう。
相続診断士は有資格者なので、相談者の悩みや不明点へ的確なアドバイスを行います。
相続診断士の助言を受けつつ、死後事務委任契約を締結すべきか否か冷静に検討しましょう。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください