成年後見制度の手続きに必要な診断書の取得方法や様式・書き方、費用を解説!

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成年後見制度とは?大きく2つの制度に分けられる!

成年後見は認知症・知的障害等の理由で判断能力が不十分な人を対象に、次のサポートを行うため設けられた制度です。

  • 身上監護:病院への入院・介護施設への入所をはじめ、各契約・手続き等の法律行為
  • 財産管理:財産の維持・流出防止

成年後見は「任意後見制度」「法定後見制度」の2つがあります。

任意後見制度

任意後見は後見を依頼する本人と、任意後見人になってくれる人が、契約を締結する制度です。身上監護・財産管理の枠内であれば、原則として自由にサポート内容を設定できます。

ただし、後見を依頼する本人の判断能力が十分な時に契約し、かつ契約書は「公正証書」(公証人という公務員が作成する公文書)で作成しなければいけません。

その後、後見を依頼した本人の判断能力が低下したら、任意後見人になってくれる人(任意後見受任者)等が、家庭裁判所に任意後見監督人選任を申し立て、監督人選任後に任意後見が開始されます。

法定後見制度

法定後見は本人の判断能力が低下した後で家庭裁判所に申し立て、その後見人を決める制度です。家庭裁判所は申立人の意見等を聴き、本人に必要なサポート内容を決めます。

なお、法定後見では本人の判断能力の衰えの程度で「後見」「保佐」「補助」に分けられます。

法定後見制度判断能力の衰えの程度
後見事理弁識能力を欠く常況(非常に深刻な判断能力の欠如)
(例)
現実にはありえない物をみる幻覚、被害妄想が顕著となった、統合失調症等
保佐事理弁識能力が著しく不十分(中等度以上の判断能力の欠如)
(例)
物忘れがひどい、お金の管理がかなり難しい等
補助事理弁識能力が不十分(軽度の判断能力の欠如)
(例)
家事の失敗が目立つ、買い物のとき釣り銭を忘れる等

本人の判断能力の状態によって、下表のように後見人の権限の範囲も変化します。

権限同意権取消権代理権
内容本人が契約するときに同意を与える権利本人の行った法律行為を取り消す権利本人に代わり法律行為・財産管理を行う権利
後見×
仮に同意しても後で取消可
保佐
原則として借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、家屋の新築等に限定も、範囲拡張可

原則として借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、家屋の新築等に限定も、範囲拡張可

借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、家屋の新築等
補助
本人の同意、かつ審判で定める特定の法律行為のみ

借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、家屋の新築等

借金、訴訟行為、相続の承認・放棄、家屋の新築等
※◎:全面的に認められる、〇:認められる(範囲拡張可)、△:限定的に認められる、×不可

なお、本人の日常生活に関する行為(例:日用品の購入等)は、いずれの場合も後見人の権限で取消等はできません。

成年後見人の申し立て手続き方法を解説!必要な書類とは?

任意後見制度・法定後見制度では、それぞれ手続きの流れ・必要書類が異なります。

任意後見制度の場合

任意後見の手順は次の通りです。

  1. 任意後見人となってくれる人を選び合意する
  2. 公証役場で任意後見契約の公正証書を作成
  3. 任意後見が必要な状態となった場合、家庭裁判所に任意後見監督人選任申立てを行う
  4. 任意後見開始

申立ては本人の住所地を管轄する家庭裁判所で行い、主に次の書類を提出します。

  • 申立書:家庭裁判所の窓口等で取得
  • 申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 財産目録
  • 相続財産目録
  • 収支予定表
  • 任意後見受任者事情説明書
  • 本人情報シート(任意提出)
  • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地の市区町村役場で取得
  • 任意後見契約公正証書の写し
  • 本人の成年後見等に関する登記事項証明書:法務局・地方法務局の本局で取得
  • 医師の診断書
  • 本人の財産に関する資料:不動産登記事項証明書、通帳の写し、残高証明書等

必要書類を収集し家庭裁判所へ申し立て後、約1ヶ月で任意後見監督人選任の審判が下ります。

法定後見制度の場合

法定後見の手順は次の通りです。

  1. 法定後見が必要な状態となった場合、家庭裁判所に申し立てる
  2. 裁判所が申立人事情を尋ねる等、審判を開始
  3. 後見等の開始の審判で、成年後見人等を選任
  4. 成年後見人等は選任後、本人の財産・生活状況を確認、財産目録と収支予定表を作成し家庭裁判所へ提出(原則1か月以内)

申立ては本人の住所地を管轄する家庭裁判所で行い、主に次の書類を提出します。

  • 後見・保佐・補助開始申立書:家庭裁判所の窓口等で取得
  • 申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 財産目録
  • 相続財産目録
  • 収支予定表
  • 後見人等候補者事情説明書
  • 親族の意見書
  • 本人情報シート(任意提出)
  • 代理行為目録:保佐人・補助人選任の場合
  • 同意行為目録:補助人選任の場合
  • 医師の診断書
  • 本人の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地の市区町村役場で取得
  • 本人・後見人等候補の住民票または戸籍の附票:住民票はお住いの市区町村役場、戸籍の附票は本籍地の市区町村役場で取得

必要書類を収集し家庭裁判所へ申し立て後、約1.5ヶ月〜3ヶ月で後見人選任の審判が下ります。

申し立てに必要な医師の診断書とは?なぜ必要?

任意後見の場合は任意後見監督人選任申立て、法定後見の場合は後見・保佐・補助開始申立ての際に、医師の診断書の提出が必要です。

医師の診断書には大きく分けて次の2つが明記されています。

  • 医学的診断:本人の診断名、各種検査結果
  • 医師の意見:本人の判断能力についての意見

もちろん、診断した医師から作成してもらいましょう。この診断書では本人の判断能力の衰えについて、医学的な観点からの診断結果・意見を明記します。

家庭裁判所はこの医師の診断書をもとに、本人の判断能力が衰えて、成年後見制度を必要とする状態なのかどうかについて判断します。

医師の診断書記載内容とは?書き方や様式、書式を紹介!

医師の診断書は家庭裁判所の窓口の他、裁判所のホームページで家庭裁判所提出用の用紙(書式)を取得できます。用紙は任意後見・法定後見共通です。

医師の診断書の記載内容には次の項目を記入します。

医師の診断書内容
医学的診断診断名
※判断能力に影響するもの
各種検査長谷川式認知症スケール(認知機能低下の診断法)、MMSE(神経心理検査法)、脳画像検査、知能検査の結果報告
短期間内に回復する可能性回復する可能性が高いか否かの私見を記入
判断能力についての意見判断能力が十分か否かの私見を記入
判定の根拠見当識の障害、他人との意思疎通の障害、理解力・判断力の障害、記憶力の障害の有無を記入

医師の診断書はどうやって取得する?取得方法を解説!

診断書は基本的に本人のかかりつけ医師へ作成を依頼しましょう。ただし、かかりつけ医師がいない場合や、何らかの理由で断られてしまったという場合は、他の内科医・精神科医に作成してもらいます。

なお、作成してもらう診断書については成年後見制度用の他、医療機関の中には成年後見制度へ対応する診断書をあらかじめ備え付けているところもあります。

医師の診断書の取得にかかる費用は?有効期限はある?

診断書の作成は有料で医療機関ごとに費用も異なり、約5,000円〜10,000円が目安です。診断書の作成は保険外診療なので保険診療の3割負担が適用されず、全額自己負担となります。なお、診断書の有効期限は発行してから3ヶ月以内です。

一方、裁判所の判断により医師の診断書だけではなく「鑑定」(より詳しく判断能力を判定する手続き)を要求されるケースもあります。

詳細な判定となる分、鑑定に要する費用は約50,000円〜100,000円と高額になります。

2019年に成年後見制度の診断書書式が改訂!何が変わった?

任意後見・法定後見制度いずれの場合も、診断書の書式改定で2019年から「本人情報シート」を作成・任意提出できるようになりました。

本人情報シートとは

診断書は本人の判断能力について医学的な所見を明記する書類ですが、本人の生活状況が反映されておらず不十分でした。そこで、医師が診断する際の補助資料として、本人情報シートの活用が追加されました。

本人情報シートは、 本人の生活場所や福祉に関する認定の有無、本人の日常・社会生活の状況、日常・社会生活上の課題への対応策等を記入します。

本人情報シートは、次の方々により作成してもらうのが望ましいとされています。

  • 社会福祉士や精神保健福祉士
  • 介護支援専門員や相続支援専門員
  • 医療機関等の相談員
  • 市町村が設置した地域包括支援センター職員 等

費用は無償・有償いずれでも構いません。本人情報シートを作成してもらう社会福祉士等と話し合って決めます。

本人情報シートは提出に追加できる書類で、必ず添付する書類ではありません。しかし、追加で提出した方が家庭裁判所の審理に役立ちます。

医師の診断書・本人情報シートの作成の際は専門家へ相談しよう

医師の診断書・本人情報シートに関して不明点や疑問点がある場合は、かかりつけ医師の他、ソーシャルワーカー、家庭裁判所の職員等へ相談してみましょう。

家族等が判断能力の低下した本人の状態について詳しく説明すれば、より正確な医師の診断書・本人情報シートの作成が期待できます。

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