親の遺品から給与ファクタリング?スマホでバレる「隠れ闇金」の調査方法と相続放棄の鉄則
親が亡くなり、悲しみの中で遺品整理を進めている最中、故人のスマートフォンに見慣れない通知が届く。「給料日合わせ」「精算」「先払い」……。 もし、通帳に不審な個人名義の入出金があったり、LINEでこのようなやり取りが見つかったりした場合、それは「給与ファクタリング」や「先払い買取」を装った闇金(ヤミ金)である可能性が極めて高いです。
「親が闇金に手を出していたなんて」と動揺してしまうのは当然ですが、ここで焦って業者に連絡をしたり、親の財布から少しでも返済をしてしまうことだけは絶対に避けてください。
なぜなら、たった1円でも遺産を使って返済してしまうと、民法上の「処分行為」とみなされ、正規の借金も含めて「相続放棄」ができなくなる(借金をすべて背負うことになる)恐れがあるからです。
この記事では、年間数多くの相続相談を受ける「円満相続ラボ」が、故人のスマホや通帳から「隠れ闇金」を見抜くプロレベルの調査方法(デジタル・フォレンジック)と、遺族の生活を守るために即座に取るべき対応策を徹底解説します。

Contents
【判例確定】給与ファクタリングは「違法闇金」!遺族が知るべき年利数千%の実態
まず大前提として、故人が利用していた「給与ファクタリング」は、正規の金融サービスではありません。
「給料の前借り」は嘘!最高裁が断罪した貸金業法違反の仕組み
業者は「給料をもらう権利(給与債権)を買い取って、給料日前に現金化するサービス」だと主張します。しかし、この主張は司法によって完全に否定されています。
2023年(令和5年)2月20日、最高裁判所は、「給与ファクタリングは貸金業法等の『貸付け』に該当する」という決定的な判決を下しました。 裁判所は、形式が債権譲渡であっても、経済的実質が「給与を担保にした貸付」であれば、それは貸金であると認定したのです。
つまり、業者の正体は「法定金利を大幅に超える違法な高金利貸付(闇金)」です。
手数料=年利2000%超の暴利
彼らが取る「手数料」を金利(年利)に換算すると、その異常さがわかります。
- よくある取引: 手取り3万円の現金を渡され、給料日に5万円を返す(手数料2万円)。
- 年利換算: これを年利に直すと、約2,433%になります。
利息制限法の上限(年20%)はもちろん、出資法の上限(年109.5%)すら20倍以上も超過する犯罪行為です。 法的には「不法原因給付(民法708条)」に該当し、元本を含めて返済義務は一切ありません。
最新の手口:「先払い買取」「後払い現金化」への変異
最高裁判決以降、給与ファクタリング業者は摘発を逃れるため、手口を変えています。スマホに残っている履歴が以下のサービス名であれば、実態は同じ闇金です。
- 先払い買取(Senbarai): 商品(スマホなど)の画像を送り、買取査定額を先払いしてもらうが、商品は送らずに「キャンセル料」を上乗せして返金する手口。
- 後払い(ツケ払い)現金化: 価値のないデジタル画像を後払いで購入し、即座に「キャッシュバック」を受け取る手口。

【調査】LINE・電卓アプリに潜む「隠れ闇金」!スマホから借金を暴く3つの手順
闇金業者は、自分たちが違法であることを知っているため、証拠を残さないように巧妙に立ち回ります。契約書が見つからない場合でも、以下の3つのポイントをチェックすることで「隠れ闇金」を炙り出すことができます。
①通帳の「個人名振込」と「給料日直後の出金」パターン
故人の通帳を確認してください。消費者金融のような会社名ではなく、不自然な「個人名」での振込はありませんか?
- チェックポイント:
- 振込名義が「サトウ」「タナカ」「カ)〇〇」などの個人名や怪しい法人名(トバシ口座と呼ばれます)。
- 1万〜3万円程度の少額が入金されている。
- その入金の1週間後〜1ヶ月後(特に給料日直後)に、3万〜5万円が出金または振込されている。
この「倍返し」のような短期取引は、闇金特有の資金移動パターンです。
②LINE検索でヒットする隠語リスト:「ジャンプ」「アルバム」「手元」
現在の闇金取引の9割はLINEで行われます。故人のLINEを開き、トーク履歴の検索窓に以下の「隠語」を入力してみてください。
- 「ジャンプ」: 元金は返さず、利息だけを払って支払日を延ばすこと。「今月はジャンプで」等の会話があれば確定です。
- 「手元」: 「手元にいくら残りますか?(=いくら借りられますか)」など、条件交渉に使われます。
- 「アルバム」: 契約時に「免許証を持った自撮り(IDセルフィー)」を送らせる際に使われます。
- 「チケット」「買取」: 先払い買取業者(新型闇金)との取引を示唆します。
- 「司法書士」「先生」: 「司法書士を入れたら会社に電話するぞ」といった脅し文句でヒットすることがあります。
③その電卓は金庫かも?「Calculator Vault(偽装電卓)」の探し方
これが最も見落としやすい、プロならではの調査ポイントです。 スマホの画面上に「電卓アプリ」はありませんか? もし、純正の電卓とは別の電卓アプリが入っていた場合、それは「偽装電卓アプリ(Calculator Vault)」である可能性があります。
- アプリの特徴: 一見ただの計算機ですが、特定のパスコード(数字)を入力して「=」を押すと、「隠しフォルダ」が開きます。
- 隠されているもの: 闇金とのLINE履歴、脅迫に使われるための画像、借用代わりの動画などが隠されているケースが増えています。
iPhone(iOS)での探し方
- ホーム画面に見当たらなくても、一番右までスワイプした「Appライブラリ」の検索窓で「Vault」「Secret」と入力してください。
- 写真アプリの「非表示」アルバム(iOS 16以降はFace IDでロックされています)に、免許証の画像などが隠されていることがあります。
Androidでの探し方
- 「設定」>「アプリ」からアプリ一覧を確認し、不自然に容量(ストレージ)を食っている電卓アプリがないか確認してください。
- Google Playストアの「アプリとデバイスの管理」>「管理」タブで、過去にインストールしたアプリ履歴を確認すると、偽装アプリの痕跡が見つかることがあります。

【警告】1円返済で「相続放棄」消滅!親の財布から払ってはいけない「法定単純承認」の罠
闇金の督促が来ると、怖さのあまり「とりあえず手元の1万円だけ払って落ち着かせよう」としてしまう方がいます。しかし、これは遺族が絶対にやってはいけない最大のNG行動です。
業者の「手切れ金でいい」は罠!支払うと借金全額を認めたことになる
民法921条には「法定単純承認(ほうていたんじゅんしょうにん)」という厳しいルールがあります。これは、相続人が故人の財産を使ったり、処分したりした場合、「借金も含めてすべて相続することを認めた(単純承認)」とみなされる制度です。
- 闇金の罠: 業者は「死んだ人の借金だから、香典代わりに利息分だけでいいよ」などと優しく近づいてきます。
- 結果: これに応じて故人の財布や口座(相続財産)から1円でも支払うと、法律上の「処分行為」とみなされ、家庭裁判所で相続放棄が認められなくなる(却下される)リスクが激増します。
もし、故人に闇金以外にも住宅ローンや連帯保証債務など数千万円の借金があった場合、その全てをあなたが背負うことになってしまいます。
「無効な闇金への返済」でも処分行為になる?
「闇金の契約は無効(返済義務なし)なんだから、払っても借金の弁済にはならず、処分行為にならないのでは?」という法的な反論もあり得ます。 しかし、実務上は「遺産(現金)を減少させた」という事実をもって処分行為とみなされるリスクが依然として高いのが現状です。
たとえ自分のポケットマネーから支払ったとしても、後から「債務を承認した」とみなされる可能性がありますし、何より「この遺族は脅せば払うカモだ」と認定され、別の業者からの請求が激化する(カモリスト入りする)二次被害を招きます。
結論:一切支払わず、連絡も絶つのが唯一の正解です。

【解決】死後の取り立てを即日停止!警察ではなく「弁護士」によるゼロ和解が必要な理由
では、鳴り止まない督促電話をどうすれば止められるのでしょうか。
警察は「民事不介入」?被害届受理のハードル
「まずは警察へ」と考えるのが一般的ですが、警察には「民事不介入の原則」があり、お金の貸し借り(民事トラブル)には積極的に介入できない場合があります。 「法外な金利だ」と訴えても、具体的な暴力行為などがない限り、「当事者間で話し合ってください」と返されてしまうケースも少なくありません。
弁護士の「受任通知」が最強の盾になる理由
最も確実で、即効性があるのは、闇金問題に強い弁護士や司法書士への依頼です。 専門家が依頼を受けると、業者に対して「受任通知(介入通知)」を送付します。
貸金業法21条および金融庁のガイドラインにより、受任通知を受け取った業者は、本人や家族への直接の取り立てが禁止されます。これに違反すると警察による摘発対象となるため、多くの業者は弁護士が出てきた時点で「回収不能(損切り)」と判断し、即日で手を引きます。
元金すら返さない「ゼロ和解」と弁護士費用の相場
専門家の交渉方針は、基本的に「ゼロ和解」です。 前述の通り、給与ファクタリングや闇金は不法原因給付であるため、元金(借りたお金)すら1円も返す必要はありません。
- 費用の目安: 闇金対応の相場は、1業者あたり4万〜5万円程度です。
- 費用対効果: 「高い」と感じるかもしれませんが、今後請求される数十万円の違法利息や、家族への嫌がらせリスク、何より「相続放棄ができなくなるリスク」を考えれば、最も安く、安全な解決策と言えます。
まとめ:遺品から闇金を見つけたら、スマホを操作せず「そのまま」専門家へ
親の遺品から「給与ファクタリング」や「闇金」の痕跡を見つけた時、あなたがすべきことは以下の3点だけです。
- 絶対に連絡しない・返済しない: 故人の財布から1円でも払えば、相続放棄ができなくなる可能性があります。
- 証拠を保存する: 通帳の記帳、LINEのスクリーンショット(隠しアプリ含む)、着信履歴を保存してください。スマホ自体は下手に操作せず(既読をつけず)、そのままにしておくのがベストです。
- 相続と借金に強い専門家へ相談する: 自分の判断で動く前に、弁護士・司法書士へ「親が闇金を使っていたようだ」と相談してください。
円満相続ラボでは、相続手続きだけでなく、こうした「負の遺産」の処理に強い専門家とも提携しています。故人が遺したトラブルを断ち切り、あなた自身の生活と正当な遺産を守るために、まずは無料相談をご活用ください。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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