亡くなった親のLINEに「個人間融資」の痕跡…遺品整理で見逃せない闇金の証拠と、相続放棄の「3ヶ月ルール」完全攻略
遺品整理の最中、亡くなった親のスマートフォンの通知画面を見て、背筋が凍るような思いをしたことはないでしょうか。 「個人融資」「即日」「ジャンプ」「手元返し」……。 もしLINEやSMSにこのような見慣れない言葉が並んでいたら、それは単なる知人間の貸し借りではありません。SNSを温床にする「個人間融資」=「闇金(ソフト闇金)」という犯罪組織と関わっていた可能性が極めて高い状況です。
「真面目だった親が、まさか闇金に?」 「怖いお兄さんが実家や、私の職場に取り立てに来たらどうしよう」 「この借金、子供である私が払わなければならないのか?」
突然の事態にパニックになり、恐怖で眠れなくなるのは当然の反応です。しかし、どうか少しだけ落ち着いてください。 この記事にたどり着いたあなたは、まだ間に合います。
ここで絶対にやってはいけないのが、「業者の脅しに屈して1円でも支払うこと」と、「証拠となるスマホを慌てて解約・初期化すること」です。これをしてしまうと、法的に守れるはずの家族の生活と財産が守れなくなる可能性があります。
この記事では、年間数多くの相続トラブルを見てきた「円満相続ラボ」が、スマホに残された「見えない借金」のデジタル調査方法から、家族を守るための「相続放棄」の期限管理、そして闇金との縁を完全に断ち切る法的ロードマップまでを徹底解説します。
Contents
1. 警告:親のLINEにある「個人間融資」は、なぜ危険な「闇金」なのか?

まず認識を改めてください。Twitter(X)やInstagram、掲示板にある「#個人融資」「#お金困ってます」というハッシュタグでつながる相手は、善意の個人投資家ではありません。その正体は、組織的な闇金融業者です。
「個人」を装う業者の手口と、家族に及ぶリスク
彼らが「個人」を名乗る理由はただ一つ、「貸金業法」の厳しい規制を逃れるためです。 正規の貸金業者が守るべき「年収の3分の1までしか貸せない(総量規制)」や「年利20%以下」というルールを無視し、法定金利の数十倍〜数百倍(トイチ、トゴなど)で貸し付けを行います 。
| 比較項目 | 正規の消費者金融(街金) | 個人間融資(闇金) |
| 金利 | 年利20%以下(法定内) | 年利1000%以上もザラ(トイチ等) |
| 連絡手段 | 固定電話、公式アプリ | 携帯番号(090)、LINE、Signal、テレグラム |
| 契約書 | 書面または電子契約書あり | なし(LINEのやり取りのみ) |
| 審査 | あり(信用情報機関を参照) | なし(「ブラックOK」「審査なし」と謳う) |
親が亡くなった後、彼らのターゲットは「遺族」であるあなたにシフトします。生前に親から入手した「緊急連絡先」である子供や実家の情報を使い、以下のようなリスクを家族に突きつけます。
- ネットへの晒し行為(デジタルタトゥー): 返済が遅れていた場合、親の運転免許証や顔写真をSNSにばら撒かれている可能性があります。これに「詐欺師の家族」としてあなたの名前や勤務先がタグ付けされる二次被害も発生しています 。
- 「ひととき融資」の闇: もし亡くなったのがお母様で、相手が男性の場合、「ひととき融資(性的関係を条件とした融資)」の被害に遭っていた可能性すらあります。これは貸金業法違反に加え、不同意性交等罪にも問われる卑劣な犯罪です 。
警察は動いてくれない?「民事不介入」の壁と実態
「警察に言えばすぐに逮捕してくれるはず」と考えるのは危険です。 警察には「民事不介入」という原則があり、単なるお金の貸し借り(金銭消費貸借)のトラブルには、たとえ相手が悪質でも介入できないケースが多いのです 。
もちろん、暴力や脅迫(刑法犯)があれば警察(生活安全課や#9110)は動きますが、最近のソフト闇金は法律を熟知しており、「返さないなら子供の会社に電話するぞ」といった、逮捕されないギリギリのラインで精神的に追い詰めてきます。
2. 【デジタル遺品調査】スマホと通帳から「見えない借金」を炙り出す全手順

闇金や個人間融資は、信用情報機関(CICやJICC)のデータには絶対に載りません 。なぜなら彼らは無登録の違法業者だからです。 したがって、遺族自らが「デジタル探偵」となり、スマホと通帳から証拠を掘り起こす必要があります。
(※記事公開時はここに、スマホ画面と通帳のチェックポイントを示した図解イラストを挿入します)
LINEの「非表示・ブロックリスト」と「隠語」のチェックポイント
親のLINEを開き、トーク履歴の一番上を見るだけでは不十分です。業者は証拠隠滅やアカウント凍結対策のために、巧妙に隠れています。以下の手順で「深層」を調べてください。
✅ 手順1:ブロックリスト・非表示リストを開く 設定(歯車マーク)>プライバシー管理、または友だち管理から確認します。返済に困った親が、執拗な取り立てから逃げるために業者をブロックしているケースが多々あります。ここに「個人名」や「金融」「サポート」といった名前があれば要注意です 。
✅ 手順2:トーク検索で「闇金隠語」を探す トークルームの検索窓に以下のワードを入れてみてください。ヒットしたら、その相手は業者です。
- 「ジャンプ」: 利息だけ払って元金の返済を先送りにすること 。
- 「手元返し」: 借りた金額の一部をすぐに手数料として返させる手口。
- 「先払い」「後払い」: 商品売買を装った新型の闇金手口。
- 「着金」「担当」: 事務的なやり取りの痕跡。
✅ 手順3:別アプリへの誘導を確認する LINEはアカウントがBAN(停止)されやすいため、業者はより秘匿性の高いアプリへ誘導します。スマホの画面に以下のアプリがないか探してください。
- Signal(シグナル)
- Telegram(テレグラム) これらはメッセージが自動消去される機能があり、犯罪によく使われます。インストールされているだけで警戒レベルはMAXです 。
✅ 手順4:偽装アプリ(電卓・家計簿)のチェック 一見すると「電卓」や「ゲーム」に見えるアプリでも、特定のパスコードを入力すると隠しフォルダが開く「偽装アプリ(Calculator Vaultなど)」があります。親が家族にバレないように借金の証拠や業者との連絡を隠している可能性があります。
銀行通帳の「個人名振込」と「不自然な少額入金」を見逃すな
通帳の入出金記録は、嘘をつきません。以下のパターンがあれば、ほぼ間違いなく「黒」です。
- 個人名義の送金: 「アコム」「プロミス」といった法人名ではなく、「ヤマダ」「タナカ」などの個人名で、1万〜3万円程度の入出金が短期間に頻繁にある 。
- 押し貸し(おしがし): 頼んでもいないのに勝手に口座に数千円〜数万円を振り込み、後から「貸した金に利息をつけて返せ」と脅迫する手口です。身に覚えのない入金があっても、絶対に手をつけてはいけません 。
- 給料日直後の不自然な動き: 年金支給日や給料日の直後に、コンビニATMで全額を引き出し、すぐに別の個人名口座へ振り込んでいる動きは、家族にバレないための自転車操業のサインです。
信用情報機関(CIC/JICC)には載らない「闇の負債」
「CICを開示したけど真っ白だったから安心」とはなりません。正規の借金がない人ほど、審査に通らず闇金に手を出している可能性があるからです。 ただし、「正規の業者からも借りていないか(多重債務)」を確認するために、信用情報機関(CIC、JICC、KSC)への開示請求は必ず行ってください。闇金と正規業者の借金が混在している場合、対応策(債務整理の方針)が変わってくるからです 。
3. 相続放棄の「3ヶ月ルール」を完全攻略!期限との戦い方

闇金の借金も、何もしなければ法律上は「相続の対象」となり得ます。放っておくと、子供であるあなたが「借金を受け継いだ」とみなされてしまいます。これを防ぐ最強の盾が「相続放棄」です。
カウントダウンはいつから?「相続の開始を知った日」の正しい定義
相続放棄は、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所に申し立てなければなりません 。
- 原則: 親が亡くなったことを知った日(死亡日)。
- 例外: 亡くなってから数年後に、突然業者からの督促状で借金の存在を知った場合、「借金の存在を知った日」から3ヶ月と認められる判例もあります。
- 注意点: 今回のように「スマホを見たら痕跡があった」場合、その時点で「借金の存在を知った」とみなされる可能性が高いため、猶予はありません。今日からカウントダウンが始まっていると考えてください。
調査が終わらない!そんな時に使える「熟慮期間の伸長」手続き
「スマホのパスワードが解除できない」「闇金の全貌が見えない」「他にも借金があるかもしれない」 このように、3ヶ月以内に相続放棄すべきか判断できない場合は、家庭裁判所に「相続の承認又は放棄の期間の伸長(熟慮期間の伸長)」を申し立てることができます 。これにより、期限を数ヶ月延長してもらえる可能性があります。
闇金借金は「相続財産」に含まれるのか?法的な判断基準
ここで、あなたを守るための重要な「二重の防壁」について解説します。
第一の防壁:不法原因給付(民法708条)
民法には「不法な原因のために給付をした者は、その返還を請求できない」という規定があります 。 闇金による超高金利(年利数百〜数千%)での貸付は、公序良俗に反する違法行為です。したがって、法律上、闇金からの借金は返済義務がなく、そもそも「相続すべき債務」として成立しないという強力な主張が可能です。
第二の防壁:相続放棄による関係遮断
「じゃあ、返さなくていいなら相続放棄しなくてもいいのでは?」と思うかもしれません。 しかし、現実はそう単純ではありません。業者は法律を無視して、嫌がらせや取り立てを行います。その際、「借金は無効だ」と口頭で争うよりも、「私は法的に相続人ではありません(相続放棄しました)」という裁判所のお墨付き(相続放棄申述受理通知書)を突きつける方が、圧倒的にトラブルを終わらせやすいのです 。
円満相続ラボとしては、「実質的な返済義務はないが、関わりを完全に断つための絶縁状」として、相続放棄を選択することを強く推奨します。
4. 悲劇を回避するために:絶対にやってはいけない「単純承認」の罠

「とりあえず1万円だけ払って落ち着かせよう」。 この親切心が、あなたの人生を狂わせる可能性があります。以下の行動を取ると、法的に「借金を相続する意思がある(単純承認)」とみなされ、後から相続放棄ができなくなります 。
🚫 NG行動1:業者の脅しに屈して「1円でも払う」のは命取り
「香典代わりに利息だけでも入れろ」と恫喝されても、絶対に払ってはいけません。一部でも返済すると「債務を承認した」ことになり、不法原因給付の主張も、相続放棄も極めて難しくなります。
🚫 NG行動2:遺品の処分・形見分けはNG?スマホ解約の落とし穴
- スマホの解約と処分: 通信契約の解約自体は保存行為とみなされることもありますが、スマホ本体(端末代金が残っている場合や市場価値がある場合)を処分・売却すると単純承認のリスクがあります。また、「証拠」を自ら消してしまうことになるため、専門家の判断を待つまでは契約を維持し、電源を切って保管してください。
- 遺品の売却: 親の車や貴金属を売ってお金に変えたり、親の預金を引き出して自分のために使ったり(葬儀費用など一部例外を除く)すると、単純承認(借金も全て引き継ぐこと)になります 。
5. 解決へのロードマップ:弁護士介入と相続放棄の併用戦略

最後に、個人間融資(闇金)トラブルを安全かつ確実に終わらせるための具体的なステップを示します。
ステップ①:闇金対応に強い弁護士・司法書士に依頼する
個人の力で闇金と戦うのは危険です。 「闇金対応」を専門に掲げる弁護士や司法書士に依頼し、業者に対して「受任通知(じゅにんつうち)」を送ってもらいます。 これにより、貸金業法(およびその趣旨に準じる規制)に基づき、業者からの取り立て・連絡は即日ストップします 。警察署へ行く際も、弁護士の同伴や意見書があると対応がスムーズになります 。
- 費用相場: 闇金1件あたり4万〜5万円程度が一般的です 。
ステップ②:家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを行う
弁護士に闇金の盾になってもらっている間に、速やかに相続放棄の手続きを進めます。 これにより、「そもそも私は親の借金とは無関係である」という法的地位を確定させます。
ステップ③:相続放棄完了後の「管理義務」と業者への通知方法
相続放棄が認められたら、「相続放棄申述受理通知書」のコピーを(弁護士を通じて)業者に送りつけます。これで法的な決着はつきます。 なお、相続人全員が放棄した場合でも、次の管理者が決まるまでは「管理義務」が残る場合がありますが、借金の返済義務は消滅しています 。
よくある質問(FAQ)
Q. 親のスマホを解約してしまいましたが、もう手遅れですか? A. 証拠保全の観点からは不利になりますが、解約したからといって直ちに「相続放棄できない」わけではありません。通帳の履歴や郵便物など、他の証拠を集めましょう。ただし、スマホ本体を「下取り」に出して利益を得てしまった場合は単純承認のリスクがあるため、すぐに弁護士へ相談してください。
Q. 業者が「会社にバラすぞ」と脅してきます。 A. これこそが闇金の典型的な手口です。絶対に支払わず、警察(#9110)へ相談し、弁護士から「受任通知」を送ってもらってください。弁護士が入ると、「これ以上やっても金は取れないし、逮捕リスクが高まる」と判断して手を引く業者がほとんどです。
まとめ:円満な相続と家族の未来を守るために

親のスマホから「個人間融資」の文字を見つけた時の絶望感は、計り知れません。しかし、正しく恐れ、正しく対処すれば、この「負の遺産」があなたの生活を破壊することはありません。
- 個人間融資は100%闇金であると認識する。
- スマホ(LINEブロックリスト、隠しアプリ)や通帳から証拠を保全し、絶対に1円も払わない。
- 3ヶ月以内に相続放棄を検討し、専門家(弁護士・司法書士)を介入させて「受任通知」を送る。
この3つを守ることで、あなたは故人との思い出を守りつつ、平穏な日常を取り戻すことができます。一人で抱え込まず、まずは専門家の無料相談を利用することから始めてください。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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