公正証書遺言の必要書類は?手続きや作成手順、効力について解説!

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遺産相続

公正証書遺言って何?公証人に作成してもらう遺言書

公正証書遺言とは、公証人が遺言の内容を公正証書に記載して作成する方式の遺言のことです。
公証人に作成してもらう遺言書ともいえます。

まず、公正証書遺言のメリット・デメリットを見てみましょう。

メリットは、以下の点です。

・公証人が関与するため、形式不備の理由で無効となることや遺言内容が曖昧であることによって後日紛争が生じることを回避することができます。
文字が書けなくても作成が可能です。
・原本は公証役場で保管するため、その存在が明瞭で、紛失や改変の恐れがありません。
・相続開始後、家庭裁判所での検認手続き不要で、遺言内容を実現することができます。
・公証人が自宅又は病院に出張して、公正証書を作成してもらうこともできます。

他方、デメリットとされるのは、以下の点です。

・公証人の関与が必要で、その方式が厳格です。
証人2名の立会いが必要です。
遺言書作成の費用がかかります。
遺言の存在と内容が外部に明らかとなる恐れがあります。

次に、自筆証書遺言のメリット・デメリットを見てみましょう。

メリットは、以下の点です。

誰にも知られずに遺言書を作成することができます。
証人の立会いが不要です。
遺言書作成の費用があまりかかりません。

他方、デメリットとされる点は、以下の点です。

・遺言者が作成するため、遺言が無効となる可能性があります(民法968条参照)。
・文字が書けない場合には、この方式を利用することができません。
家庭裁判所の検認手続きをとる必要があります。ただし、法務局における遺言書保管制度を利用した場合には、検認手続きは不要です。
・自宅で保管している場合には、紛失等の危険性があります。

このように自筆証書遺言と公正証書遺言を比べてみると、公正証書遺言は、令和2年7月から自筆証書遺言を法務局において保管する遺言書保管制度が始まった現在でも、メリットが多く、安全確実な遺言の方式であるといえます。

公正証書遺言であれ自筆証書遺言であれ、事前に弁護士や司法書士、行政書士などに相談すれば、的確なアドバイスを受けながら、法的な問題点についても検討してもらえるため、法律的に問題がなく有効で、内容的にも適切な遺言書を作成することができるといえます。

公正証書遺言の必要書類をチェック!

公正証書遺言の作成には、どのような書類が必要なのかチェックしてみましょう。

公証人に依頼する場合には、下記の資料を準備しておくと、打ち合わせがスムーズにいきます。また、遺言の内容によってはそれ以外にも公証人から資料を用意するように要望される場合もあります。

・遺言者の印鑑登録証明書(3か月以内に発行されたもの)又は運転免許証、パスポート等の顔写真付きの公的機関発行の身分証明書
・遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本・除籍謄本
・財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票
・財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書

公正証書遺言の手続き~証人や手数料も

公正証書遺言をしたいと思う人は、どうすればよいのか、その手続きはどのようなものなのか、その場合の証人や手数料についても、知りたいところです。

公正証書遺言の手続き

遺言をしたいと思う人は、自ら又は代理人を介して、公正証書遺言の作成を嘱託したい旨を公証役場の公証人に申し出ます。

公正証書遺言の手続きや方式については、公証人が指導・助言しますが、遺言の内容(自分の財産のどれを誰に与えるのかなど)は、遺言者が、自分の財産関係、家族関係その他あらゆる相続関係を勘案して、熟慮、決断します。

もとより、公証人から法律上の参考意見を聞くこともでき、それを聞いたうえで結論を改めても差し支えありませんが、大筋を固めてメモ書き等にしたうえで、公証役場を訪れるのがよいでしょう。

証人

公正証書遺言をするためには、遺言者の真意を確認し、手続きが適式に行われたことを担保するため、証人2名の立会いが義務づけられています(民法969条)。

この場合、証人はいずれも遺言者の方で準備することができます。なお、民法では「証人2名以上」と定められていますが、公証実務では証人が3名以上になることはないとされています。

もっとも、下記は証人になることができません(①~⑤は民法74条、⑥は民法969条4号)。

①未成年者
②推定相続人
③受遺者
④推定相続人及び受遺者の配偶者及び直系血族
⑤公証人の配偶者、4親等内の親族、書記及び使用人
⑥署名することができない者

なお、適当な証人が見当たらない場合には、公証役場で紹介してもらうこともできます。

手数料

公正証書遺言の作成費用は、公証人手数料令という政令で法定されています。
公正証書遺言の作成手数料は、遺言により相続させ又は遺贈する財産の価額を目的価額として計算します。
手数料は、遺言の目的である財産の価額に対応する形で、次のとおり定められています。

別表(9条、17条、19条関係)

法律行為の目的の価額金額
100万円以下5000円
100万円を超え200万円以下7000円
200万円を超え500万円以下1万1000円
500万円を超え1000万円以下1万7000円
1000万円を超え3000万円以下2万3000円
3000万円を超え5000万円以下2万9000円
5000万円を超え1億円以下4万3000円
1億円を超え3億円以下4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額
3億円を超え10億円以下9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額
10億円を超える場合 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額

遺言は、相続人・受遺者ごとに異なる法律行為になりますので、数人に対する贈与が1通の贈与契約公正証書に記載された場合と同じ扱いになります。

したがって、各相続人・各受遺者ごとに相続させ、又は遺贈する財産の価額により目的価額を算出し、これを上記基準表に当てはめて、その価額に対応する手数料額を求め、これらの手数料額を合算して、当該公正証書遺言全体の手数料を算出します。

全体の財産が1億円以下のときは、上記基準表額によって算出された手数料額に、1万1000円が加算されます。さらに、公正証書遺言は通常、原本・正本及び謄本を各1部作成し、原本は法律に基づき公証役場で保管し、正本及び謄本は遺言者に交付しますので、その手数料が必要になります。

すなわち、原本についてはその枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚(法務省令で定める横書きの公正証書にあっては3枚)を超えるときは、超えた枚数ごとに250円の手数料が加算されます。また、正本及び謄本の交付については1枚につき250円の割合の手数料が必要となります。

公正証書遺言の作成手順を解説!

公正証書遺言の作成手順は次のような流れになります(民法969条参照)。

①遺言内容のメモ及び必要書類の提出
遺言者又はその代理人は、事前に予約したうえで、遺言内容のメモ(遺言者がどのような財産を有し、その財産をどのような割合で誰に相続させ、どのように遺贈するのかなどを記載したメモ)及び必要書類を公証人役場に持参します。 

②公正証書遺言の原案の作成と修正
公証人は、提出された遺言内容のメモ及び必要書類に基づき、公正証書遺言の原案を作成し、ファックス・メール等により、それを遺言者に提示します。
遺言者は公正証書遺言の原案を確認・検討し、修正の箇所があればその旨を公証人に伝え、公証人は、それに従って公正証書遺言の原案を修正します。

③公正証書遺言の作成日時の調整
公証人は、公正証書遺言の原案が確定すると遺言者が公証役場に来訪または公証人が出張して、公正証書遺言を作成する日時を調整し確定します。その際に、手数料の金額も伝えます。

④公正証書遺言の作成当日
公証人は、遺言者本人から、証人2名の前で、遺言の趣旨を口頭で告げて、それが遺言者の真意であることを確認します。
公証人は、公正証書遺言の原本の記載内容を遺言者及び証人に読み聞かせるか閲覧させます。遺言者及び証人が、内容に間違いがないことを承認した後、各自署名押印し、公証人も署名押印して、公正証書遺言(その原本)が完成します。

公正証書遺言の効力は?あとで揉めることも

公正証書遺言の効力について検討する前に、公正証書遺言を作成する場合、特に注意すべき点を列挙しておきましょう。

・遺言者には遺言能力が必要で、満15際以上で(民法961条)意思能力がなければなりません(民法3条の2)。
・遺言をすることができる事項(いわゆる「遺言事項」)が、次のように法律で限定されています。

①認知(民法781条2項)

②未成年後見人・未成年後見監督人の指定(民法839条、848条)

③相続人の廃除や廃除の取消し(民法893条、894条)

④祭祀に関する権利承継者の指定(民法897条1項)

⑤相続分の指定や指定委託(民法902条)

⑥特別受益の持戻しの免除(民法903条)

⑦遺産分割方法の指定や指定委託、遺産分割の禁止(民法908条)

⑧相続人相互間での担保責任の分担(民法914条)

⑨相続財産の全部又は一部を処分すること(遺贈。民法964条)

⑩遺言執行者の指定や指定委託(民法1006条)

⑪一般財団法人の設立(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律152条2項)

⑫一般財団法人への財団の拠出(⑪の法律164条2項)

⑬遺言による信託の設定(遺言信託。信託法2条2項2号、3条2項、4条2項)

⑭生命保険及ぶ傷害疾病定額保険における、遺言による保険金受取人の変更(保険法44条、73条)

公正証書遺言の効力

公正証書遺言の作成は、公証人が行うため、一般的には、その効力が争われることは稀であるといわれています。
しかし、法律的には、次のような場合には、公正証書遺言の効力は認められません。

①遺言者が、遺言時に15歳未満であった場合(民法961条)。
②遺言者が、遺言時に意思能力を欠いていた場合(民法3条の2)。
③同一の公正証書遺言で、2人以上の者が遺言をしていた場合(民法975条)。
④法律で限定されている遺言事項以外の事項を遺言した場合(上記の遺言事項参照)。
⑤欠格事由のある証人が立ち会った場合(民法974条)。
⑥遺言者が口授を欠いた場合(民法969条2号)。

後になって揉めてしまうこと

公正証書遺言を作成した場合でも、遺言者が死亡した後、相続人間で揉めることもあります。

遺言による遺産処理と法定相続の定めとは、前者が後者に優先するという関係にあり、法定相続の定めは遺言がない場合に初めて適用されます。したがって、遺産処理は遺言に従って進められることになるので、公正証書遺言があれば揉めることを回避することができるとはいえます。

しかし、遺言による遺産処理が優先されるといっても、遺言による相続分又は遺産分割の指定が特定の相続人の遺留分を侵害した場合には、遺言者の死亡後に、遺留分権利者との間で揉めることも考えられます(なお、「ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない」とする旧民法902条1項ただし書の規定は、改正民法では削除されています)。

ただ、遺留分権利者の遺留分を侵害する相続分又は遺産分割の指定は、無効ではなく、侵害を受けた遺留分権利者からの遺留分侵害額請求に服するにとどまるものと解されます。
そのようにいっても、公正証書で遺留分を侵害する遺言を作成する場合には、遺言者の死亡後に、遺留分侵害額請求権を行使された場合には揉めることが予想されるので、遺留分を侵害しないように配慮することや、遺留分の放棄や遺留分侵害額請求権の放棄を依頼するなどの措置を講じておくことが望ましいといえます。

参考記事:遺産分割のための行方知れずの相続人探し
遺産分割には法定相続人全員の署名捺印が必要です。しかし、相続人の中に長年消息がわからない人がいる場合があります。探偵を使って探しだす方法とそのメリットを紹介している記事です。

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この記事を監修したのは…

上田 静香

行政書士

上田 静香(うえだ しずか)

行政書士上田静香上事務所代表
 2013年、相続業務をメインとした行政書士事務所開業、外国人の在留資格や帰化も扱うので日本人だけでなく在日外国人の相続も対応いたします。
 生前の相続対策の必要性をお伝えし、何もしないとどうなるかの問題を提起し、今だからできる対策と問題解決策を提案します。
 また、お一人様をお一人にしない繋がるプロジェクトも行っています。

サイトURL:https://www.facebook.com/office-fleurir-445524545829471/

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