贈与税の税金対策になる5つの控除や特例について詳しく解説!
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贈与税とは何?基本のおさらい
贈与者の贈り物を受贈者が受け取ったときに発生する税金を「贈与税」と呼びます。この贈与税が課せられるのには、次のような理由があります。
・課税せずに自由な贈与を許すと、贈与者の中に相続税を意図的に回避しようとする人が増加するおそれがある
・贈与を相続税を払いたくないがための抜け道にすると、税負担の公平性を図れなくなる
そのため、一定の贈与額の範囲内では贈与税がかからず、その範囲を超えた場合、しっかりと課税される仕組みがとられているのです。
贈与税はいくらから発生するの?
受贈者に贈与したからといって、全ての贈与物に贈与税が課せられるわけではありません。基本的に受贈者1人の場合、毎年110万円以内に収まれば贈与税は非課税です(これを暦年贈与という)。
つまり、贈与者はいくらでも贈与できますが、受贈者は受け取った贈与額が110万円を超えると、課税対象となってしまいます。
そのため、贈与する側も受贈者が課税されないよう、贈与額を毎年110万円の範囲内で贈るように配慮する必要があります。
しかし、毎年同じ時期に110万円を贈与していると一括贈与とみなされ、贈与税がかかる場合があるため注意が必要です。
贈与の手渡しは課税対象になる?贈与税を支払わないとどうなるの?
贈与の方法は、受贈者への手渡しや口座への送金などいろいろありますが全て課税対象です。1年間に110万円を超えた贈与の場合には、どのような方法で受け取ったとしても納税しなければいけません。
納税しないと次のようなペナルティが適用されるおそれもあります。
税金が上乗せされるペナルティ
贈与税は、贈与を受けた人が原則として贈与された年の翌年の2月1日〜3月15日までに申告します。
納税が遅れた場合の他、納税を隠ぺいしようと画策した場合、次のように税金が上乗せされてしまいます。
ペナルティ | 内容 | 上乗せされる税率 |
延滞税 | 納期限を経過して納税した | 2.4%~14.2% |
過少申告加算税 | 期限内に申告したものの計算を誤る等して、もう一度申告し直した | 10%~15% |
無申告加算税 | 申告を忘れる等して申告していなかった | 5%~30% |
重加算税 | 納税を隠ぺいしようと画策した | 35%~50% |
刑事罰を受ける可能性も
不正行為や正当な理由がないにもかかわらず贈与税を申告・納付しなかった場合、次の刑事罰を受けるおそれもあります。
ペナルティ | 内容 | 罰則 |
脱税に関する罪 | 不正行為を行い贈与税の納税を逃れた | ・5年以下の懲役・500万円以下の罰金・5年以下の懲役、500万円以下の罰金の併科 |
無申告に関する罪 | 正当な理由がなく申告しなかった | ・1年以下の懲役・20万円以下の罰金 |
そもそも贈与税が非課税となるケースもある?
主に次のような贈与は非課税です。
・扶養されている家族(親等)から生活費・教育費に使う仕送りを受け取った
・親族や友人・知人からお歳暮・お中元、お年玉や入院のお見舞いをもらったり、葬儀の際の香典・花輪代を受け取ったりした
・贈与税の非課税制度を利用した
ただし、常識的な生活費・教育費の仕送りの範疇を超えている多額の贈与(数百万・数千万単位の資金贈与等)や葬儀の香典の名目で多額の贈与が行われれば、やはり贈与税の対象となってしまいます。
また、贈与税の非課税制度はそれぞれ条件が設定され、制度の申請をすれば必ず認められるわけではないことに注意しましょう。
贈与税の賢い節税対策5つ!
贈与税の非課税制度は暦年贈与制度だけでなく、次のような控除制度が用意されています。
贈与税の配偶者控除
居住用の不動産を購入するための夫婦間での贈与ならば2,000万円まで非課税となる制度です。贈与は居住用の不動産そのもの、購入資金のいずれでも構いません。また、暦年贈与と合わせて利用でき、その場合は2,110万円まで贈与税がかかりません。
申請方法は、贈与税の申告の際に本制度の利用も申請します。ただし、同一の配偶者間で一生に一度しか適用されず、さらに次の3条件に全て合致する必要があります。
・婚姻期間が20年以上
・受贈する配偶者が住む不動産または資金である
・受贈した配偶者は受贈した翌年の3月15日までに居住し、継続して居住する見込みである
相続時精算課税制度
原則として60歳以上の親や祖父母から、18歳以上の子や孫に対し財産を贈与した場合、2,500万円まで非課税となる制度です。贈与税の申告書の提出期間内に「相続時精算課税選択届出書」を添付して申請します。
なお、贈与額が合計で2,500万円を超えた場合、超えた額に対して一律20%が課税されます。
暦年贈与よりも大幅な非課税制度といえますが、贈与額2,500万円分が免除されるというわけではありません。贈与税が課せられなかった金額分は、相続時に相続財産へ加算して納める必要があります。
また、一度この制度を利用した場合は撤回ができず、暦年贈与と併用できない点にも注意が必要です。
住宅取得資金贈与の控除
親や祖父母のような直系尊属から、住宅の新築・取得又は増改築等のため資金贈与を受けた場合に利用できる制度です。
省エネ等住宅の場合は最高1,000万円、それ以外の住宅の場合は最高500万円まで住宅取得等の資金贈与が非課税となります。贈与税の申告の際に、本制度の利用も申請します。
主な要件は次の通りです。
・2022年1月1日から2023年12月31日までに贈与した
・受贈者の合計所得金額が2,000万円以下
・(1)(2(3)のいずれかに該当
・(1)断熱性能等級4以上もしくは一次エネルギー消費量等級4以上
・(2)耐震等級2以上もしくは免震建築物
・(3)高齢者等配慮対策等級3以上
教育資金の一括贈与の控除
親や祖父母(贈与者)のような直系尊属が子・孫(受贈者)の教育資金に充てるため、金融機関等で教育資金口座開設をした場合、1,500万円まで非課税となる制度です(学校以外の塾や習い事の資金の場合は500万円)。
本制度の適用を受けたい人(受贈者)が、口座開設をした金融機関等の営業所等を経由し、教育資金非課税申告書を提出すれば非課税制度が利用できます。
要件は次の通りです。
・2013年4月1日から2023年12月31日までの期間の贈与
・受贈者が30歳未満
・(1)(2(3)のいずれかに該当
・(1)贈与者から信託受益権を取得した
・(2)贈与者から書面による贈与で取得した金銭を銀行等に預入へした
・(3)贈与者から書面による贈与で取得した金銭等で証券会社等から有価証券を購入した
結婚・子育て資金の一括贈与の控除
親や祖父母のような直系尊属が子・孫の結婚・子育て資金に充てるため、金融機関等で結婚・子育て資金口座開設をした場合、最大1,000万円まで非課税となる制度です(結婚に際しては300万円が限度)。
本制度の適用を受けたい人(受贈者)が、口座開設をした金融機関等の営業所等を経由し、結婚・子育て資金非課税申告書を提出すれば非課税制度が利用できます。
要件は次の通りです。
・2015年4月1日から2023年12月31日までの期間の贈与
・受贈者が20歳~50歳未満
・贈与者から(1)信託受益権を取得した、(2)書面による贈与で取得した金銭を銀行等に預入へした、(3)書面による贈与で取得した金銭等で証券会社等から有価証券を購入、いずれかに該当
できる限り贈与の節税をしたい!節税対策における注意点とは?
受贈者の贈与税負担が軽減されるように様々な控除制度を利用できます。しかし、それぞれ控除制度の適用される期間・条件が設定されているので、諸条件をよく確認する必要があります。
その点、暦年贈与ならば受贈者は誰でもよく、1年間で110万円を超えない贈与ならば非課税なので便利です。しかし、次の2点に注意しましょう。
計画的な贈与は控える
計画的な贈与は「あらかじめ多額の贈与を決めていたにもかかわらずわざと分割して受贈者に与えた」ということを税務署から疑われてしまう可能性があります。例えば毎年、同じ時期に同じ金額を贈与する場合が該当します。
このように疑われた場合、1年間に110万円までの非課税枠を越えた贈与とみなされ、贈与税が発生するおそれもあるのです。
疑われないようにするため、次のような方法を検討しましょう。
・贈与する金額を毎年変更
・贈与する時期を毎年変更
・途中で贈与しない年をはさむ
相続開始前3年以内の贈与は持ち戻し対象
暦年贈与でコツコツ受贈者に贈与し、贈与者の財産を減らしていけば、相続発生時に相続人の相続税の負担軽減が可能です。
しかし、贈与者が亡くなった場合、相続開始前3年以内の贈与は持ち戻し(相続税の課税対象)となります。暦年贈与で相続税対策を行いたいなら、なるべく早く贈与者が元気なうちから贈与を進めていきましょう。
現金を手渡ししても贈与はばれる!
贈与を現金で渡せば税務署にばれないのではと思う人もいるでしょう。しかし、税務署は申告漏れを見つけるための調査を様々な方法で行っています。
そのため、現金贈与をした場合でもばれる可能性が高いです。財産の贈与はしっかりと申告しましょう。
生前贈与する際は贈与契約書を作成しておこう
贈与契約書とは、財産を贈与する際に作成する契約書のことです。贈与契約書は、贈与契約の内容を記録するため、贈与の履行があったことを客観的に証明する書類になります。
そのため、贈与契約書を作成しておくことで被相続人から生前贈与があった金額を具体的に証明することができるため、遺産相続でのトラブルを防ぐことができます。
贈与契約書の作成手順
贈与契約書の作成手順は、次の通りです。
1.贈与者と受贈者が内容を確認する
まず、贈与契約書を作成する前に贈与する贈与者と贈与される受贈者で贈与の内容を確認しましょう。
具体的には、以下の項目を確認しましょう。
- 贈与する財産はなにか(例:現金、不動産、株式)
- 贈与する金額はどのくらいか
- 贈与の方法
- 贈与契約書を取り交わす日付
- 贈与を実行する日付
- 贈与税の特例が適用できるのか
贈与する内容に合意する
贈与者と受贈者で贈与内容を確認した後は、決定した贈与内容に合意します。
贈与契約書を作成する
贈与内容の確認と合意が終わった後は、合意した贈与内容をもとに贈与契約書を作成します。
贈与者と受贈者用の2通を作成し、それぞれに署名捺印します。
贈与契約書には、以下の事項を記載する必要があります。
- 贈与契約締結日・贈与履行日
- 贈与者の住所と氏名
- 受贈者の住所と氏名
- 贈与財産に関する内容:何を贈与するのか
- 贈与する方法
贈与契約書に決まった様式や書式はありません。手書きでもパソコンで作成しても構いません。しかし、上記に示した5つの事項は必ず記載しましょう。
作成した贈与契約書を大切に保管する
作成した贈与契約書は、贈与者と受贈者の双方で大切に保管しておきましょう。
贈与の税金対策に関する相談先は?
贈与税について不明な点がある、課税されるのか不安を感じる方々は、税に関して深い知識を有する「税理士」へ相談してみましょう。
税のプロの立場から、相談者のケースに応じた的確なアドバイスを行ってくれるはずです。いろいろな節税対策も知っているので、自分や家庭の事情に合った方法を話し合ってみましょう。
なお、相続税対策で贈与を利用したい場合、相続に関する専門知識を有する「相続診断士」へ相談してみても良いでしょう。相続診断士は、相続税対策のコツや注意点を指摘してくれるはずです。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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