相続税路線価とは?調べ方や土地評価額の計算方法、注意点を解説!
Contents
相続税路線価とは?どんなときに使われる?
相続税路線価とは、その道路に面する宅地1㎡あたりの価格のことです。路線価は相続税や贈与税を計算する際に相続税評価額を算出するために用いられ、その価格をもとに、土地の形状や状態を考慮して評価額を決定します。
価格は、国税庁が道路ごとに設定し、国土交通省が不動産売買の際の参考価格として公表している公示価格よりも20%ほど低くなっています。
土地の評価額の種類
土地の評価額には、相続評価額をはじめ、ほかにもいくつか種類があります。
以下のとおりです。
- 相続税評価額
- 固定資産税評価額
- 実勢価格
- 公示価格
- 基準価格
相続税評価額
国税庁が決定する価格で、相続税や贈与税の課税標準額を決めるために用いられます。一般的に、路線価といえば相続税評価額を指します。土地の評価方法には、路線価方式と倍率方式の2種類があります。
固定資産税評価額
固定資産税の算出に用いられる評価額のことで、固定資産評価基準をもとに市町村が算定し公表します。不動産取得税の算出の際の基準にもなる価格で、自動車や無形固定資産は対象になりません。
実勢価格
土地売買の際の取引価格のことです。売主と買主との交渉によって決定するため、変動するのが特徴です。過去の取引とその価格の一部は、国土交通省のWEBサイト「土地総合情報システム」で調べられます。
公示価格
相続税路線価を決定する際の基準となる価格です。2人以上の不動産鑑定士による鑑定と、土地鑑定委員会による審議を経て決定し、地価公示法に基づいて国土交通省が公表します。主に、都市計画区域内の土地が対象です。
基準価格
国土利用計画法施行令第9条に基づいて都道府県知事が公表する価格で、1人以上の不動産鑑定士による鑑定と、都道府県によって決定します。公示価格が主に都市計画区域内を対象としているのに対し、基準地価は都市計画区域外も対象とします。
相続税路線価と固定資産税路線価の違い
路線価には、固定資産税路線価も存在します。同じ路線価という文字が含まれているため、同じものと勘違いされる方もいるかもしれませんが、両者は利用目的や価格水準などが異なります。
ここでは、相続税路線価と固定資産税路線価の違いを解説します。
相続税路線価は、相続税と贈与税の算出根拠となる土地の相続税評価額を求めるために用います。固定資産税路線価は、固定資産税や都市計画税、登録免許税、不動産所得税を算出する証拠となる固定資産税評価額を求めるために用います。
他の違いについては、以下に表でまとめます。
比較項目 | 相続税路線価 | 固定資産税路線価 |
求められる評価額 | 相続税評価額 | 固定資産税評価額 |
根拠となる税金 | 相続税、贈与税 | 固定資産税、都市計画税、登録免許税、不動産所得税 |
評価主体 | 国税庁 | 市町村(東京23区は東京都) |
評価頻度 | 毎年 | 3年に1回 |
価格時点 | 1月1日 | 基準年の1月1日 |
公表時期 | 毎年7月ごろ | 基準年の4がつごろ |
価格水準 | 公示価格の80%程度 | 公示価格の70%程度 |
路線価が設定されていない土地の評価方式を解説
対象の土地が市街化調整区域の場合などは、路線価は設定されていません。その場合は、倍率方式によって相続税評価額を算出する必要があります。
倍率方式は、地域や地目ごとに定められている倍率を、固定資産税評価額に乗じて算出する評価方法で、路線価が設定されていない土地の相続税評価額を算出する際に用いられます。
計算式は、以下の通りです。
固定資産税評価額=固定資産税評価額×倍率
倍率は国税庁によって定められており、国税庁の公式サイト内の倍率表にて確認が可能です。
路線価はどこでわかる?節税に活かす方法とは
路線価は国税庁の管轄です。ここでは路線価の調べ方や節税に活かす方法、相続税にどのように関連してくるのかなど解説します。
路線価は国税庁の公式サイトで調べられる
路線価は、国税庁の公式サイト内にある「路線価図・評価倍率表」で誰でも無料で確認でき、過去6年分であれば遡って調べられます。
それ以前のものとなるとネット上では調べられませんが、国会図書館であれば昭和48年以降のものが冊子で保管されており、閲覧が可能です。なお、路線価は毎年7月1日に国税庁から公表されます。
他にも全国地価マップまたは税務署で確認する事ができます。
一般財団法人資産評価システム研究センターの「全国地価マップ」は、市区町村または郵便番号を入力する事で相続税路線価を確認することができます。
全国地価マップでは相続税路線価だけでなく、固定資産税評価額や公示価格も調べることができます。
インターネットでの閲覧が難しい方には、最寄りの税務署にて路線価図を確認する方法があります。
相続税路線価はいつの年度を使う?
相続税路線価は相続が発生した年度の相続税路線価を使用します。
相続税や贈与税の申告をする年度の相続税路線価ではないので、申告の際は注意しましょう。
もし、相続が発生した時期が相続税路線価が公表される7月初旬より前の場合は、最新年度の路線価が公表されるのを待つ必要があります。
減額できる土地であれば価格補正によって相続税を節税できる
土地にはさまざまな形状や状況があり、その状態によって評価額や相続税を減額できることがあります。減額できる可能性があるのは、たとえば以下のようなケースです。
- 形状がいびつ
- 間口と奥行のバランスが悪い
- 間口が狭い
- 敷地内に高低差があり、その部分が有効利用できない
- 道路に接していない
- 土地が道路の突き当たりにある
このような理由から土地利用しづらい、利用価値が低いと判断される土地の場合、それぞれのケースによって定められている補正率を路線価に乗じて評価額を算出します。
たとえば、評価額や相続税の減額がない場合と30%減額できる場合とで比較してみましょう。
路線価が30万円、土地面積が100㎡の場合
減額がない場合の評価額:路線価30万円×土地面積100㎡=3,000万円
減額できる場合の評価額:路線価30万円×(1-0.3)×土地面積100㎡=2,100万円
※(1-0.3)の0.3は30%補正を表しています。
相続税の税率が20%の場合
減額がない場合の相続税:3,000万円×20%=600万円
減額できる場合の相続税:2,100万円×20%=420万円
評価額は900万円下がり、相続税は180万円の節税に繋がりました。ただし、評価額や相続税は計算どおりにいかない場合があることに注意しなければなりません。国税庁に認められないケースもあり、低く評価してしまった場合、後から追徴課税を請求される可能性もあります。
なお、補正率は国税庁の公式サイトにて確認が可能です。土地の状況により、補正率は異なります。
ほかにも、路線価以外に相続税を節税する方法として、土地を分筆する方法があります。1筆の土地を2筆以上に分ければ土地の形状や面積が変わるため、土地の割り方によっては評価額を下げられることも。
- 角地を2筆以上に分筆する場合
- 旗竿地になるよう分筆する場合
以上のケースでは評価額が下がり、結果、節税に繋がる可能性があります。
相続税評価額が上がれば相続税もその分上がる
路線価は、土地や敷地権を相続した際に必要です。相続財産が動産や金銭、建物である場合はその価額が相続税評価額になりますが、土地の場合は路線価を用いて税額を計算します。
そのため、相続税評価額は路線価に左右されます。路線価が上がれば翌年の相続税評価額も上がり、その分相続税も上がります。
相続税路線価の計算方法を実際にシミュレーション!近年の価格変動についても解説
相続税路線価の計算方法を実際にシミュレーションしてみましょう。近年路線価がどのように価格変動しているかについても解説します。
近年の路線価の価格の推移
2021年以前は5年連続で路線価の価格の全国平均が上昇し、高い上昇率で推移していました。2020年は12都道府県が前年よりも10%以上上昇しており、地域によっては前年よりも40%以上上昇したところもあるほどでした。
しかし、2021年は新型コロナウイルス感染症の影響により経済が低迷し、6年ぶりに下落しました。とくに、商業地域の下落が目立ち、7年連続で上昇していた東京都や大阪府も下落を免れられませんでした。
今年発表された路線価の全国平均は、昨年よりも0.5%上回り、2年ぶりの上昇です。ただ、20都道府県が昨年より上昇した一方で、ほかの27都道府県は昨年よりも下落しています。
とはいえ、前年よりも下落したのが39都道府県であった昨年と比べると、やはり全体的に上昇傾向にあることが見てとれます。
計算方法と計算例
路線価は、道路ごとに設定されています。金額は千円単位で表示されており、たとえば200と記載されていた場合は、その道路に面する宅地は1㎡あたり20万円ということです。
また、数字の後ろにはアルファベットがついていることがあり、これは借地権が設定されている土地の評価に使用します。評価対象の土地に借地権が設定されている場合は、借地権割合も考慮しなくてはなりません。
借地権割合は、路線価の数字の後ろについているアルファベットによって割合が変わってくるため、アルファベットも重要です。
借地権割合は以下のとおりです。
- A=90%
- B=80%
- C=70%
- D=60%
- E=50%
- F=40%
- G=30%
以上を踏まえて、実際にシミュレーションします。
路線価方式 路線価×補正率×土地面積 |
路線価250、土地面積100㎡、奥行価格補正率1.00の場合
路線価は千円単位で記載されているため、路線価250×1,000=1㎡あたり25万円
路線価25万円×奥行価格補正率1.00×土地面積100㎡=2,500万円
つまり、この土地の評価額は2,500万円です。
奥行価格補正率は、基本的にすべてのケースで必要です。土地の状態によっては、ほかの補正率をあわせて用いることもあります。
続いては、数字の後ろにアルファベットがついている場合です。その場合、土地の評価額×借地権割合で算出します。
路線価250C、土地面積100㎡、奥行価格補正率1.00の場合
路線価250×1,000=1㎡あたり25万円
路線価25万円×奥行価格補正率1.00×補正率70%×土地面積100㎡=1,750万円
つまり、この土地の評価額は1,750万円です。
倍率方式 固定資産税評価額×評価倍率=評価額 |
固定資産税評価額2,000万円、評価倍率1.1の場合
固定資産評価額2,000万円×評価倍率1.1=2,200万円
つまり、この土地の評価額は2,200万円です。
評価倍率は国税庁の公式サイトの評価倍率表で確認します。宅地の場合、1.1であることがほとんどです。
路線価を使用して相続税を計算する時の注意点
注意しなければならないのは、路線価で求めた評価額は、必ずしも認められるとは限らないという点です。
実際に、路線価に基づく評価は不適当とされ、評価額が否定されたケースもあります。評価が著しく不適当と国税庁が判断した場合、国税庁長官が評価方法を指示できることが財産評価基本通達に定められているため、その場合は国税庁長官の指示に従わなければなりません。
相続税を申告する際は、申告する時点ではなく、被相続人が亡くなった年度の路線価を見る必要があります。また、申告のタイミングにも注意が必要です。路線価は、年度のはじめではなく毎年7月に公表されるため、7月以前に亡くなった場合は、路線価が公表されるまで待つ必要があります。
相続税路線価の計算に関する相談先はこちら
相続税は申告制です。相続が発生した場合、納税義務者自ら相続した土地の評価額を計算し、相続税を申告しなければなりません。相続税の計算に慣れている人というのはなかなかいないでしょう。ほとんどの人にとっては、重い負担としてのし掛かります。
そのため、専門家を頼るのも一つの方法です。相続税路線価の計算に関する相談は、相続の専門家である相続診断士や相続税を専門に扱う税理士または不動産の適正な価値を評価する専門家である不動産鑑定士に相談することをおすすめします。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください
この記事を監修したのは…
あかね不動産鑑定 代表
宮川 あかね(みやかわ あかね)
東京都不動産鑑定士協会所属(総務財務推進委員・広報委員を兼務)。
東京・多摩を中心に、相続や終活にまつわる不動産に関する問題解決のご提案及び、高齢の方の生活サポートを行っております。
「近所のお姉さんみたいで、とても話やすい」と評判で、お悩みごとの円満解決につながっています。
資格:不動産鑑定士・宅地建物取引士・相続診断士
サイトURL:https://miyakawaakane.com/