相続財産が少ない場合|申告の必要性の有無や揉めるケースを解説!
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相続財産又は遺産が少ない場合でも相続税の申告などの手続きは必要?判断の基準をチェック!
相続が発生し、被相続人の遺産を相続人が引き継いだ場合、必ず相続税を申告・納税しなければいけないわけではありません。
まず被相続人の遺産から、被相続人が負っていた債務(借金・未払金等)や葬式費用等、各種控除を控除し、基礎控除を上回るかどうかで申告・納税の有無を判断します。
そのためには被相続人の財産調査を行い、どのような財産を保有し金額はどのくらいになるか、債務額はいくら残っているのかを確認しましょう。また、用意されている基礎控除の金額も把握しておくことが大切です。
相続税の申告基準については次章以降で詳しく解説します。
基礎控除の計算方法を解説!
相続税が課せられる基準は、被相続人の遺産から債務等を差し引いた課税価格の合計額が、基礎控除額を上回るか否かで決まります。
基礎控除は「3,000万円+(600万円×法定相続人)」で算定します。具体例をあげて計算してみましょう。
(例)法定相続人が4人の場合
- 遺産総額:5,000万円
- 債務・葬儀費用:500万円
- 相続開始前3年以内に被相続人から法定相続人が暦年贈与で取得した財産価額:800万円
まずは遺産総額から債務・葬儀費用を差し引きます。
5,000万円-500万=4,500万円
純資産価額は4,500万円です。ただし、相続開始前3年以内に暦年贈与で得た財産価額があるので、純資産価額へ上乗せします。
4,500万円+800万円=5,300万円
5,300万円が課税価格の合計額です。
次に基礎控除を算定します。法定相続人が4人なので
3,000万円+(600万円×4人)=5,400万円
課税価格の合計額から基礎控除額を比較します。
課税価格:5,300万円 < 基礎控除額:5,400万円
課税価格が、基礎控除額を下回るので、相続税の申告も納税も不要です。
相続税の申告が不要な様々なケースをご紹介!
基礎控除額以下ならば、相続税の申告・納税は必要ありません。その他、次のようなケースに合致すれば基礎控除額を超えても申告は不要となる場合があります。
障害者控除
遺産を取得したとき日本国内に住所があり、ハンディキャップのある法定相続人がいた場合に適用される控除です。
控除額は次の通りです。
- 一般障害者(特別障害者以外):(85歳-相続発生時の年齢)×10万円
- 特別障害者(重度の知的障害者等):(85歳-相続発生時の年齢)×20万円
具体例をあげて控除額を算定してみます。
法定相続人1名:一般障害者
相続発生時の年齢:60歳1ヵ月
85歳-60歳1ヵ月=24年11ヵ月
端数切り上げで25年となります。
25年×10万円=250万円
よって、250万円が控除対象となります。この控除額を差し引き、納税額が0円になれば申告不要です。
なお、ハンディキャップのある法定相続人が控除額を使い切れない場合、他の相続人(扶養義務者)も残りの控除額を利用できます。
未成年者控除
遺産を取得したとき日本国内に住所があり、法定相続人が未成年者の場合に適用される控除です。民法改正による成年年齢の引下げで、控除額は次のように異なります。
- 2022年4月1日以後の相続:(18歳-相続発生時の年齢)×10万円
- 2022年3月31日以前の相続:(20歳-相続発生時の年齢)×10万円
具体例をあげて控除額を算定してみます。
- 相続発生:2022年5月1日
- 相続発生時の年齢:10歳9ヵ月
こちらの場合は10歳9ヵ月ですが、9ヵ月分を切り捨て10歳で計算します。
(18歳-10歳)×10万円=80万円
よって80万円が控除対象となります。この控除額を差し引き、納税額が0円になれば申告不要です。
なお、未成年者が控除額を使い切れない場合、障害者控除と同様に他の相続人(扶養義務者)が残りの控除額を利用できます。
相次相続控除
相次相続控除は1回目の相続(一次相続)から10年以内に、2回目の相続(二次相続)が発生したとき、相続人の税負担の軽減を目的に、相続税額から一定の金額を控除する特例です。
控除方法は一次相続で課された相続税額のうち、1年あたり10%の割合で次第に減少させた金額を、二次相続で課される相続税額から差し引きます。差し引いた後、納税額が0円になれば申告不要です。
計算方法は次の通りです。
A×{C/(B-A)[求めた割合が100/100を超える場合、100/100とする]}×(D/C)×{(10-E)/10}=各相続人の相次相続控除額
- A:二次相続の被相続人が一次相続の際に課せられた相続税額
- B:被相続人が一次相続時に取得した純資産価額(取得財産の価額+相続時精算課税適用財産の価額-債務・葬式費用の金額)
- C:二次相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与で財産を取得した全ての人の純資産価額の合計額
- D:二次相続時の相続人の純資産価額
- E:一次相続から二次相続までの期間(1年未満の期間は切り捨て)
具体例をあげて控除額を算定してみます。
祖父が2020年3月10日に死亡し、相続税を納付していた父が2022年10月20日に死亡、下記の条件で、相続人である子供1名が相続税を納付する。
- A:父に課された相続税額:1,000万円
- B:父が相続した財産価額:1億1,000万円
- C:父の遺産を引き継いだ全ての人の純資産価額の合計額:6,000万円
- D:子供1名が相続した純資産価額:6,000万円
- E:経過期間:1年未満の期間は切り捨てなので2年
1,000万円×{6,000万円/(1億1,000万円-1,000万円)}×(6,000万円/6,000万円)×{(10-2)/10}=480万円
よって480万円が控除対象となります。この控除額を差し引き、納税額が0円になれば申告不要です。
相続税が0円の場合でも申告が必要なケースとは?申告しなかった場合どうなるの?
控除や特例を使い相続税額が0円になっても、申告しなかった場合、特例が受けられない等の理由で相続税を納めなければならなくなるケースが存在します。
次の制度を利用する場合、申告をしなければ控除が適用されないので注意しましょう。
配偶者控除
被相続人の配偶者に限定されますが、課税対象となる価額が1億6,000万円または自分の法定相続分(1/2)までなら、相続税が課されない控除制度です。
この制度を利用し、たとえ相続税額が0円になったとしても、被相続人が死亡した事実を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告をしなければ、控除を受けることができず相続税を納めることになります。
小規模宅地等の特例
宅地等について、被相続人や生計を一にしていた親族の居住用・事業用として使用している場合、一定の要件に合致すれば、宅地等評価額を50%~80%まで減額可能な特例です。
この特例でたとえ課税遺産総額が基礎控除額以下となっても、期限内に相続税申告をしなければ、特例の適用を受けることができず相続税を納めることになります。
相続税申告が不要か判断するときの注意点を解説!
相続税申告が不要かどうかは、被相続人の遺産総額や生前贈与加算の有無を冷静に確認したうえで、判断する必要があります。
遺産の把握は慎重に
被相続人の遺産は故人の不動産資産・預金だけと思って、相続人が相続税の申告をせず、しばらくたってから株券や国債等の財産を保有していた事実に気付く場合があります。
また、相続または遺贈(遺言書による贈与)で遺産を引き継いだ人が、相続開始前3年以内に被相続人から財産を贈与されていた場合、その贈与財産も相続税の課税価格にカウントされてしまいます。
新たな財産の発見や相続税の課税価額に含めなかった財産を加えた場合、相続税の申告が必要だったというケースも想定されます。
期限内に相続税を申告しないと税額が上乗せされる
新たな財産の発見等があったとしても、被相続人が死亡した事実を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告すれば相続税の納付だけで済みます。
しかし、期限を経過した後に申告する場合は、利息にあたる延滞税が上乗せされます。税額は期限の翌日から2ヶ月を経過する日までなら原則年7.3%、2ヶ月経過以降は原則年14.6%です。
その他、無申告加算税も課せられてしまいます。原則として納付すべき税額に対し50万円までなら15%、50万円を超える部分には20%の割合を乗じて計算した金額が上乗せされます。
被相続人の遺産で把握していていなかった部分があれば算定をやり直し、相続税がかかると判断したら隠さず速やかに申告しましょう。
財産調査は専門家に任せた方が無難
被相続人の遺産はどれだけあるのか把握が難しいと感じたら、士業専門家へ調査を依頼しましょう。財産調査は行政書士等が専門に行える業務であり、遺産目録として一覧にまとめて報告してもらえます。
目録等を参考にして、相続税が課されるかどうかを算定、申告・納税の有無を判断しましょう。
相続財産が少なくても揉める!よくあるケースや注意点
こちらでは相続財産が少なく、どのように分割するべきか相続人が悩んでしまうケース、相続人同士で揉めそうな事態を回避する方法について解説します。
遺産が不動産だけだと分割しにくい
現金や預金等の金融資産がほとんどなく、引き継ぐ遺産といえば土地や建物しかないと、相続人が非常に分割しにくい事態となります。
複数の相続人がいて不動産資産を1人だけが引き継ぐ場合、他の相続人から不平不満が出るのはやむを得ないことです。
そのため、分割しやすい金融資産がほとんどないなら、土地や建物を売却して現金化し平等に分ける等、工夫が必要となるでしょう。
相続財産が少ないのに借金だけ多く残した
相続財産はわずかながら被相続人の借金だけ多額になっている場合も、相続人で揉める原因となります。この場合は相続人全員の同意により「限定承認」の手続きを検討してみましょう。
相続の開始があった事実を知ったときから3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述し認められれば、相続財産の範囲内で借金の負担を相続人が引き継ぎます。
まとまった相続財産がなく、負債の多い場合に利用した方が良い方法です。
相続人同士で揉めそうなら
相続財産の分割に関して相続人間で揉めそうな場合、事前に相続全般の知識を有する「相続診断士」へ相談してみましょう。
相続診断士は相続に関する専門資格者なので、相談者に的確なアドバイスを行い、更に弁護士や司法書士、行政書士等の士業専門家も紹介してくれます。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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この記事を監修したのは…
税理士法人マインライフ 代表社員:門倉 誉士希、伊藤 千尋、久保 佑介、川崎 朝輝
相続税専門の税理士法人として、東京都新宿区新宿、千葉県習志野市津田沼に事務所を展開しております。
少数精鋭の税理士法人を目指しており、申告には必ず100件以上の申告関与数のある税理士が担当することで、
二次相続や将来的な譲渡もふまえた分割のアドバイスなどお客様に寄り添った相続税申告を行うことを法人の理念としております。
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