相続手続きは代理人に依頼できる!相続人に未成年がいる際の特別代理人についても解説
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相続手続きは代理人でも可能~法定代理人と任意代理人~
相続手続きは誰かにお願いして代理人を通じて進めていくことも可能です。この代理人には、「法定代理人」と「任意代理人」という2種類の考え方が存在し、それぞれ要件が異なります。
ここでは、法定代理人と任意代理人について解説します。
法定代理人とは
法定代理人とは、法律によって定められた代理権を持つ人のことをいいます。本人の意思とは関係なく代理権が発生します。
法定代理人には、主に以下の者が挙げられます。
・親権者
・未成年後見人
・成年後見人、代理権が付与された保佐人、補助人
親権者は、親権を行う者、つまり未成年の父母です。親権者に定められているのがどちらか片方である場合は、定められている方が法定代理人です。
未成年後見人は、未成年者に親権者がいないとき、親権者に代わって法律行為をします。
成年後見人、保佐人、補助人は、本人の事理の弁識能力(判断能力)がどの程度あるかによって類型が分かれており、後見制度によって保護されます。
後見 | 精神上の障害により事理弁識能力を欠く |
保佐 | 精神上の障害により事理弁識能力が著しく不十分 |
補助 | 精神上の障害により事理弁識能力が不十分 |
任意代理人とは
本人の意思に基づかずに法律に定められた代理権が発生する法定代理人に対して、本人の意思に基づいて代理権が発生するのが任意代理人です。
任意代理人になるためには特に資格は必要なく、未成年者や破産者などの欠格事由に該当しなければ、家族や友人でもなれます。
また、相続手続きを専門家に依頼する場合も、実は任意代理にあたります。この場合には、法律で定められた範囲内で各専門家が専門業務として依頼を受任することになり、各専門家は専門業務として報酬を得ることができます。相続手続きにおける専門家の例は、以下のとおりです。
・相続全般が対応可能だが、特に争いがある場合は弁護士へ
・スムーズに登記(不動産の名義変更)を行いたいなら司法書士へ
・戸籍収集や遺産分割協議書の作成など気軽な相談なら行政書士へ
・相続税の申告など税金に関する相談は税理士へ
それぞれの特徴については、次項にて解説します。
相続手続きの内容によって依頼すべき代理人は異なる!
相続手続きの内容によって、依頼すべき専門家は弁護士や司法書士、行政書士、税理士など多岐に渡ります。手続きの内容と依頼すべき専門家について、それぞれ解説します。
弁護士
弁護士は、相続手続きを含む法律全般を対応可能なオールラウンダーです。その中で、特に、トラブルに発展し、紛争性のある交渉や裁判所での手続きが必要になった場合にもっとも頼りになります。なぜなら、裁判に関して代理人となれるのは弁護士のみであるためです。遺産分割の交渉なども、本人の代理人として行えるのは弁護士にしかできません。
すでにトラブルが生じているケースはもちろんのこと、揉めてしまうことが予想される場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
ただし、裁判の代理や交渉の代理など、責任の重い業務を伴うため、他の専門家に比べて報酬が高額になることが多い傾向になります。相続人同士でトラブルなく揉めずに相続手続きを進められる場合には弁護士を頼るよりも、相談したい内容によって他の専門家に依頼することを検討してみても良いでしょう。
司法書士
司法書士は不動産登記や会社登記といった法務局への登記手続きのプロフェッショナルです。弁護士は相続手続き全般を行えますが、不動産登記を得意としている弁護士はそう多くはありません。弁護士に依頼しても、登記に関しては司法書士を紹介される場合もあります。
裁判に発展するようなケースではなく、不動産の名義変更が必要となる相続手続きの場合には、司法書士に依頼することがもっともスムーズでしょう。
ただし、あくまでも相続人同士で争いがない場合であることが前提であるため、トラブルに発展している場合は弁護士に頼るのがいいでしょう。
裁判の代理人にはなれませんが、家庭裁判所に提出する書類の作成であれば司法書士も可能です。(例)相続放棄の申述、特別代理人の選任の申立て、後見人の申立てなど
行政書士
行政書士は、官公署に提出する書類、権利義務に関する書類、事実証明に関する書類の作成や提出手続きを行う専門家です。具体的には、遺産分割協議書の作成や相続関係図の作成(戸籍収集を行い、法定相続を確定する業務)や遺言書の作成などの業務がそれにあたります。職権で相続手続きにおける法定相続人の確定のために、戸籍や住民票などを取得できるため相続人確定調査が可能です。
行政書士は各専門家と連携して仕事を進めていくことが多いことから、相続のことで何から相談していいのかが分からない場合には、うまく交通整理しながら必要な場合には他の専門家を紹介してもらえることもありますので気軽に相談できるというメリットもあります。
税理士
相続税に関しては、税理士以外の専門家が具体的な相談に乗ることはできません。また、税務申告の代理人となれるのも税理士だけです。
税理士は、確定申告や個人事業主・会社の顧問をしているイメージも強いですが、相続(資産税)を専門に取り扱う相続専門税理士が存在します。相続税(資産税)の業務は専門性が求められることも多く、相続税の申告が必要な場合や相続税に関して相談したいことがある場合などは、相続が得意、もしくは相続専門の税理士にご相談することをおすすめします。
相続手続きで委任状が必要なケースとは?
相続に関する手続きを代理人が行う場合、基本的には依頼人からの委任状が必要です。
相続に関する手続きで委任状が必要となるのは、以下のケースです。
・戸籍謄本などの証明書の取得
・名寄せ台帳の取得
・遺言書の検認手続き
・相続放棄の申し立て
・預金口座の名義変更や引き出し
・残高証明書の発行
・相続税の申告
・不動産の所有権移転登記(相続)の申請
未成年の特別代理人とは?役割をご紹介!
相続人の中に、未成年者がいる場合には、通常であれば親権者である父もしくは母の法定代理人が代わって法律行為をするところ、法定代理人も同時に相続人となる場合などに関しては、未成年者との利益相反が発生することとなり特別代理人を立てて遺産分割協議を行う必要があります。
特別代理人は指定された手続き以外の代理行為ができず、手続きが完了すればそこで代理関係は終了です。
特別代理人の役割には、以下のようなものがあります。
・遺産分割協議への参加
・遺産分割協議書への署名および捺印
・不動産の所有権移転登記(相続)の申請書類への署名および捺印
・預金口座の解約、預金の払い戻しの申請書類への署名および捺印
特別代理人になるための資格は特に必要なく、未成年者と利益相反とならない人であれば特別代理人となることが可能です。そのため、法定相続人ではない祖父母や叔父・叔母にあたる方が特別代理人となることができます。
ただし、あくまでも選任するのは家庭裁判所であり、適任ではないと判断された場合、その者は特別代理人になることはできません。
特別代理人には、弁護士や司法書士などの専門家が就任することも可能です。
特別代理人が必要なケースとそうでないケースを解説!
相続人の中に未成年者がいれば、どのような場合でも特別代理人が必要になるというわけではありません。特別代理人が必要なケースと不要なケースをそれぞれ紹介します。
特別代理人が必要なケース
遺産相続において、特別代理人が必要となる主なケースは、以下の2つです。
・未成年者とその親権者が同時に相続人となる場合
・法定相続人のなかに認知症の方がおり、その成年後見人を共同相続人が行っている状態で、お互いが法定相続人となった場合。(父が亡くなり、母が認知症、息子が母の成年後見人)←※未成年の場合の特別代理人の話とは少し違いますが、記載あってOKですか?
以上のケースでは、特別代理人を選任しなければ遺産分割協議ができません。しかし、特別代理人が選任されれば、適法に遺産分割協議を進められます。
特別代理人が不要なケース
一方、特別代理人が不要なケースは以下です。
・法定相続分どおりに相続する場合
・遺言書で相続分が指定されており、それに従って相続する場合
・親権者が相続人でない場合
・親権者が子より先、または子と同時に相続放棄をした場合
以上のケースでは、特別代理人が不要です。利益相反が生じず、親権者が法定代理人として未成年者に代わって法律行為ができるためです。
相続手続きにおける代理人選びで困ったら専門家へ!
相続手続きが代理人に依頼できることや、未成年の特別代理人について解説しました。記事の中でも述べたように、相続手続きの代理人は、ケースに合わせて選ぶ必要があります。
トラブルの可能性がある場合は弁護士、そうでなければ司法書士、気軽に相談をしたいという場合は行政書士がおすすめです。また、相続税のことが気になる場合は、税理士に相談するのがよいでしょう。
相続は多くの人にとって身近な問題ですが、その手続きは慣れていない人にとって複雑で労力も時間も要します。
すんなり法定相続分どおりに相続する場合であればよいですが、そうでない場合やトラブルが生じた場合などは特に厄介な問題として当事者にのし掛かります。自力で頑張ろうとせず、専門家に依頼することも検討してみてください。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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この記事を監修したのは…
行政書士事務所Terroir 代表行政書士
鎌田 昂伺(かまた こうじ)
シニアのための法務サポートを展開しており、相続・成年後見をメイン業務とし、遺言・家族信託、超高齢化社会における、より手厚い「終活」サービスとして死後事務・身元保証業務も手掛ける。
グループ内の(一社)いきいきライフ協会南青山では、高齢者に対する死後事務・身元保証サービスに中心的に関与している。
サイトURL:https://www.terroir-aoyama.com/ https://ikiiki-life-minamiaoyama.com/