家族信託®は自分でできる?手続きの流れや費用・注意点を解説!

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家族信託

家族信託®とは?自分の財産を家族に託して管理してもらうことです!

家族信託®は自分の老後や介護が必要になった場合を想定し、前もって保有不動産・預貯金等を信頼できる家族の誰かに託し、適切に管理・運用・処分してもらう方法です。

家族信託®は次の3者間でおこなわれます。

・委託者:財産の所有者で信頼できる家族の誰かに託す人

・受託者:委託者から財産を託され管理・運用・処分する人

・受益者:受益権を有し、財産から利益を受ける人

委託者は受託者に財産を託す人で、財産の管理・運用・処分の指定や受託者の選任・解任の権利を持っています。一方、受託者は委託者から財産の管理・運用・処分を任せられた人で、適正に管理・運用・処分する義務を負います。

その他に、財産の管理・運用・処分で発生する利益を得る受益者がいます。基本的に委託者が受益者となるものの、受益者を家族複数人(例:自分・妻が利益を得る等)や、委託者以外の特定の家族(例:孫に利益を与える等)に決めても構いません。

家族信託®を行う前後において、委託者と受益者が同じ場合には、利益を受ける人が変わっておりませんので、相続税や贈与税はかかりません。利益を受ける人とは、賃貸不動産の場合、家賃を受け取る人になります。

一方で、委託者と受益者が異なる場合には、利益を受ける人が変わりますので、相続税や贈与税がかかる場合がありますから、ご注意ください。

なお、税金について気になる方は、税理士にご確認ください。

家族信託®が必要なケースと不要なケースとは?

ここでは、家族信託®が必要なケースと不要なケースを紹介します。ご自身が家族信託が必要なケースなのかを判断する参考にしてみてください。

家族信託®が必要なケース

1. 資産保護:家族信託®は、収入が多い方や事業家にとって重要なツールです。資産を信託に委託することで、法的保護を受けつつ、相続税や債務のリスクから資産を保護することができます。 

2. 相続計画:相続財産の簡略化や遺産分割の円滑化が必要な場合、家族信託®が有用です。相続税の節税効果を最大化し、家族の間での財産分配をコントロールすることができます。

 3. 短期および長期のサポート:家族信託®は、未成年の子供や身体的・精神的な制約のある家族向けのサポートを提供するために使用されることがあります。信託の収益を利用して、教育、医療、住宅、日常生活の費用などを賄うことができます。

家族信託®が不要なケース

1. 資産が限られている場合:家族の資産が限られている場合、家族信託®を設立する必要性は低いかもしれません。信託の手続きや管理にはコストと時間がかかるため、資産の規模が小さければ、他の方法で適切に財産を管理できる場合もあります。

 2. 信頼できる相続人がいる場合:相続人間の信頼関係が非常に強く、財産管理に関する問題が予測されない場合、家族信託®は不要となることがあります。相続人が遺産分割について合意し、財産を効果的に管理できる場合、信託を設定する必要性は低いです。

 3. 法的保護が必要ない場合:資産が特に法的な脅威にさらされるわけではなく、家族の財産や財産分配に関して問題が発生する可能性が低い場合、家族信託®は不要です。

家族信託®手続きの流れ・費用相場・必要書類をチェック!

家族信託®は財産の管理・運用・処分を家族の誰かに託す方法ですが、託す相手と合意して手続きを進める必要があります。ここでは家族信託®の手順と必要となる書類、かかる費用について解説します。

家族信託®の手順

家族信託®を利用するには、家族と信託契約を締結する必要があります。次のような流れで手続きを進めます。

1.どのような目的で家族信託®を利用するのか考える。(例:認知症や病気で自分の意思判断能力が低下した場合、信頼できる家族から自分の財産を管理・運用・処分してもらいたい等)

2.家族信託®の内容を自分(委託者)、財産を管理・運用・処分してもらいたい家族と話し合い、合意を得る。なお、信託契約を締結する前に、委託者、受託者のみならず、家族全員と家族会議を行うことが望ましいです。

3.決定内容を契約書に記載する。

4.契約書作成後、委託者の財産名義を受託者へ移す。

5.財産管理の専用口座をつくる。

家族信託®に関する必要書類

家族信託®を行う財産にもよりますが、主に次の書類が必要です。

印鑑登録証明書

印鑑登録証明書とは、市区町村役場に登録された印鑑(実印)であることを、公的に認める書類です。委託者、受託者が用意します。

信託契約書を公正証書(公証人が作成し内容を証明する書類)とする場合は公証役場に提出し、信託財産で指定した土地・建物の登記をする場合に法務局へ提出します。

市区町村役場の窓口で取得できます。印鑑登録証を提示し、発行手数料(1通300円)の支払いが必要です。

戸籍謄本および住民票

戸籍謄本とは戸籍に記載された全ての事項が書かれた証明書で、住民票とは住民に関する氏名、住所等の事項を記載する帳票です。いずれも信託契約の当事者を確定するために必要な書類です。

委託者、受託者、受益者の家族信託®に関わる全ての人が用意します。戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で取得(発行手数料:1通450円)し、住民票は住所地の市区町村役場で取得(発行手数料:1通300円)します。

不動産に関する書類

不動産を対象とした家族信託®の場合、不動産の正確な特定が必要です。信託契約書を公正証書とする場合等で、不動産登記簿謄本と固定資産評価証明書を用意します。それぞれ取得する窓口が異なります。

・不動産登記簿謄本(登記事項証明書):法務局や地方法務局・支所等で取得、手数料1通600円。

・固定資産評価証明書:対象不動産の所在地を管轄する市区町村役場で取得、手数料1通300円。

家族信託®の費用

家族信託®を専門家に依頼したり、契約書を公正証書とする必要はありません。しかし、家族だけで契約締結し手続きを進める場合でも、契約書作成のための書類の手数料はかかります。

また、不動産を対象とした家族信託®の場合、不動産を受託者名義に変更する登記が必要です。移転登記の場合には、現在のところ土地は固定資産税評価額の0.4%、建物は固定資産税評価額の0.3%が登録免許税額です。

つまり、固定資産税評価額が土地2,000万円・建物1,000万円の場合、登録免許税額は次の通りです。

・土地2,000万円×0.4%=税額8万円

・建物1,000万円×0.3%=税額3万円

家族信託®は自分でできる?メリットとデメリットをご紹介

家族信託®は委託者の意思が強く反映された財産管理・運用・処分ができる反面、気を付けるべき点もあります。

家族信託®のメリット

家族信託®は柔軟な財産管理・運用・処分、財産の引き継ぎを考慮した取り決め等が可能です。

柔軟な財産管理・運用・処分が可能

家族信託®は委託者の判断能力が十分にある場合でも、受託者に財産管理を任せられます。判断能力の高いうちに、委託者が受託者の財産管理・運用・処分について指示等を行っても良いでしょう。

委託者が判断能力を失った場合でも、受託者は契約に従い財産管理・運用・処分をスムーズに実行できます。

柔軟な財産の引き継ぎ、委託者の死後の対策も可能

家族信託®は委託者の生きている間の財産管理・運用・処分の他、委託者の死後に財産を承継する人を指定できます。つまり、遺言書と同様の機能を持たせることが可能です。

家族信託®において、多くの場合、委託者が生きている間は、委託者ご自身が1番目の受益者となります。委託者の死後に発生した財産の承継人は、2番目の受益者となります。2番目の受益者が亡くなれば、3番目の受益者の方が財産の承継人となるわけです。

遺言書の場合には、財産を承継する人は、1回しか指定することができません。例えば、財産の所有者が亡くなり、配偶者にすべてを承継させることを遺言書に記載して、遺言書の通りに相続した後に配偶者が亡くなった場合に、長男に財産を承継すると遺言書に記載しても、「長男に財産を承継する」という部分は、無効になってしまいます。

倒産隔離機能

家族信託®の対象となる財産は受託者名義になり受託者が管理・運用・処分します。しかし、信託財産は委託者・受益者双方から独立した財産です。この特徴は「信託財産の独立性」と呼ばれています。

つまり、委託者は倒産・破産の影響を受けないばかりか、受託者の責任財産(強制執行の直接対象となる財産)にはならないので、受託者の倒産や破産の影響も受けません。

委託者・受託者いずれの債権者も強制執行ができない機能は「倒産隔離機能」と呼ばれ、万が一の場合でも、信託財産を保全することができます。

家族信託®のデメリット

家族信託®に節税対策や身上監護の機能のない点はデメリットです。

節税効果は期待できない

家族信託®の対象財産でマンションやアパートのように他人へ貸し、収益を得ている不動産がある場合、たとえ損失が発生しても信託財産以外の所得との損益通算(利益と損失を合算し申告利益を抑える制度)や純損失の繰り越しはできません。

損失をうまく利用した節税対策が期待できないのは家族信託®の短所です。

身上監護の権利はない

判断能力が衰えた委託者のため、代わって住居の確保・介護契約等の手続きができる「身上監護」の権利は受託者にありません。

ただし、家族信託®は身上監護の権利がある成年後見制度(成年後見人が判断能力の衰えた本人の代わりに財産管理・契約行為を行う制度)との併用が認められています。

身上監護も考えている場合には、成年後見制度の利用を検討しておきましょう。

家族信託®の手続きを自分でした場合に起こりうる失敗例

自分で家族信託®手続きを行う際には、注意が必要ないくつかのポイントがあります。以下には、いくつかの失敗例が挙げられます。

書類の不備

家族信託®手続きには、必要な書類や文書があります。自分ですべての手続きを行う場合、書類の不備や不正確な情報入力などが発生する可能性があります。これにより、手続きが遅延したり、無効になる恐れもあります。

法的要件の無視

家族信託®は複雑な法的手続きであり、特定の要件を満たす必要があります。自分で手続きを行う際には、これらの要件を誤解したり、無視したりする可能性があります。そうした場合、信託の効力が失われたり、信託資産が帰属する予定の相手に財産が渡らないなどの問題が発生する可能性があります。

目的や目標の不適切な設定

家族信託®は、信託目的や目標を適切に設定することが重要です。しかし、自分で手続きを行う際には、目的や目標の正確な設定が困難な場合があります。その結果、信託の意図が曖昧になり、目的達成が困難になる可能性があります。

相続人の権利の侵害

家族信託®の手続きは、相続人の利益と関係が深いものです。自分で手続きを行うことにより、相続人の権利が侵害される可能性があります。適切な相続人への財産移転や、争いが起こらないような手続きを行う必要があります。

家族信託®の手続きを自分でする際の注意点を解説!

家族信託®は、委託者の意向、財産状況、受託者の管理・運用・処分の依頼範囲など、各家庭によって、状況が大きく異なります。そのため、オーダーメイドにて、信託契約書を作成することが多い理由です。

インターネット上で、家族信託®の雛形などがアップロードされているようですが、家族信託®の雛形に記載されている管理・運用・処分の内容が委託者の意向等が満たされているとは限りません。家族信託®を利用する場合は、金融機関のサービスや専門知識がある程度必要な部分がある点に注意しましょう。

信託口口座がつくれない金融機関もある

信託口口座とは家族信託®契約に基づき、受託者が信託財産である金銭を自身の固有財産と分別し管理する目的で利用できる預金口座です。

信託口口座は、受託者が死亡した場合、差し押さえを受けた場合でも口座は凍結されないので安心です。しかし、信託口口座はどんな銀行でも扱っているわけではありません。また、信託口口座という名称であったとしても、倒産隔離機能を有していない場合があります。実際に倒産隔離機能を有していることを確認する必要があります。利用したい銀行に対して口座について、確認しましょう。

ご不明なことは、専門家にお問い合わせいただくことをおすすめします。

専門知識を要する場合も

家族信託®を利用する場合、委託者の不動産を受託者に管理・運用・処分を任せるためには、登記の手続きを行うことによって、委託者・受託者・受益者を明確に示す必要があります。登記手続きの際には様々な提出書類(不動産登記簿謄本・固定資産評価証明書・戸籍謄本等)を準備します。

書類の不備があれば、もちろん手続きは進められません。受託者だけで作業をした場合、書類集めに慣れていないと、手続きの過程で予想外に手間を取る可能性があります。

家族信託®を自分でする場合と専門家に依頼する場合の費用を比較!

こちらでは、家族信託®を自分で行う場合、弁護士・司法書士・行政書士に依頼した場合の費用相場を比較してみます。下表をご覧ください。

費用(目安)自分で作成弁護士司法書士行政書士
コンサルティング30万円~100万円30万円~80万円30万円~50万円
公正証書の諸手続き3万円~10万円程度13万円~25万円
※手続き代行費用含む
13万円~25万円
※手続き代行費用含む
13万円~25万円
※手続き代行費用含む
不動産登記登録免許税等を除けば0円8万円~12万円8万円~12万円
合計3万円~10万円51万円~137万円51万円~117万円43万円~75万円

専門家に頼めば面倒な書類の収集や、窓口での手続きを任せられるだけでなく、あらゆる視点から信託契約書の作成、内容に漏れがないことのチェックなどを行ってくれますので、大変便利です。

なお、行政書士には登記の変更を行う権限はありませんので、登記の変更も専門家に行ってもらう場合には、別途、司法書士に依頼することが必要となります。

家族信託®を行っている行政書士は、登記の変更を行う司法書士と提携関係があることが多いですので、行政書士にご確認いただいても良いでしょう。

(弁護士は、登記の変更を行う権限を有しておりますが、弁護士自らが登記の変更を行うことは稀です。多くの場合、司法書士が行います。)

その他、登録免許税の納付額、集める必要書類の枚数でも費用に大きな差が出てきます。

専門家に依頼する際のポイントとは?

弁護士・司法書士・行政書士は法律の専門職ですが、家族信託®のコンサルティング・諸手続きの経験の無い方々もいます。まずは各事務所のホームページをチェックし、家族信託®についての詳しい言及や実績が明記されていれば、家族信託®に深い知識と経験のある方々とみて良いでしょう。

また、家族信託®を依頼する前に、1度は依頼を考えている専門家と相談も兼ねて、話してみることをおすすめいたします。

家族信託®に深い知識と経験のあることだけでなく、あなたとの相性も考えてみると良いでしょう。

相続において、よくあることとしては、家族関係でやや不安がある場合が考えらえます。その場合には、事前に家族全員において、家族会議を行うことが望ましいですが、家族会議を行うことが難しい場合も考えられます。弁護士は、揉め事を解決するプロですから、事前に弁護士に相談することを検討しても良いでしょう。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください

この記事を監修したのは…

岡田 文徳

認知症大家対策アドバイザー

岡田 文徳(おかだ ふみのり)

人生100年時代を生き抜くために大家さんの認知症対策を行なう専門家である。
コンサルティングだけでなく、実際に家族信託を実施し、賃貸経営を行う現役大家でもある。
学歴:東京大学大学院 修士(工学)
資格:宅地建物取引士、相続診断士、家族信託コーディネーター®他

サイトURL:https://dimetel.jp

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