遺言書とは何か？種類と役割について解説

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の３つの形式があります。それぞれの特徴やメリットとデメリットなどについて解説します。

遺言書の重要性と役割

遺言書があると、記載された内容が法定相続分に優先し、スムーズに遺産分割が行われます。このため、遺言書は相続において非常に重要な役割を果たします。一方で、遺言書がない場合は、相続人全員で話し合って遺産の分け方を決める必要があり、被相続人の意思が十分に反映されない可能性もあります。

遺言書を事前に作成しておくことで、被相続人の希望通りに財産を分けることができ、さらに相続人以外の人にも遺産を残すことができます。例えば、長年介護をしてくれた子どもの配偶者など、法定相続人ではない人に財産を譲りたい場合には、遺言書を用意することが非常に重要です。特定の人に財産を残したいと考えている場合は、遺言書の作成が欠かせない重要なステップとなります。

遺言書の種類は3つ

遺言書には大きく分けて「普通方式遺言」と「特別方式遺言」という2つの形式があります。日常的に利用されるのは「普通方式遺言」で、これには「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

一方で、特殊な状況下では「特別方式遺言」が適用されます。この形式は、通常の遺言書作成が難しい状況において、要件が緩和された方法です。特別方式は、緊急時や特別な事情がある場合に利用されることが多く、柔軟な対応が可能です。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は、遺言者自身が遺言書の内容をすべて手書きで記す形式の遺言書です。この形式は、特別な準備や道具を必要とせず、紙とペン、印鑑があればすぐに作成できる手軽さのため重宝されています。

財産目録を添付する際は、目録部分は手書きでなくても構いません。遺言書の本文に「別紙の財産目録に記載された財産をAに譲る」と記載し、財産目録をパソコンで作成したものを添付することが認められています。

自筆証書遺言の特徴

自筆証書遺言は、作成に費用がかからないという利点がありますが、遺言者が自ら保管するため、紛失や偽造といったリスクも伴います。本文や日付、氏名は全て手書きで記載しなければなりませんが、財産目録についてはパソコンなどで作成することが可能です。

財産目録の各ページに署名・捺印をすれば、不動産登記事項証明書や銀行通帳のコピーなどを添付資料として使用することも認められます。ただし、法律の要件を満たしていないと遺言書が無効になる可能性があるため、細心の注意が必要です。

さらに、自筆証書遺言が効力を持つためには、遺言者が亡くなった後に相続人が家庭裁判所で検認手続きを行わなければならないという手続きもあります。

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言には、以下のメリットがあります。

• 手軽に作成できる

自筆証書遺言は、専門家に依頼する必要がなく、自宅で気軽に作成できるのが大きな魅力です。特別な準備が不要で、思い立ったらすぐに書き始めることができます。

• 費用がかからない

公正証書遺言などとは異なり、自筆証書遺言は費用がかからない点が大きなメリットです。公証人や弁護士への依頼が不要で、紙とペンさえあれば完了するため、費用を抑えたい人にとっては非常に経済的です。

自筆証書遺言のデメリット

自筆証書遺言は手軽で利用しやすい方法ですが、次のようなデメリットもあります。

• 無効になる可能性がある

手書きで作成する際、法律の要件を満たしていないと遺言書が無効になることがあります。形式や内容に不備があると、せっかくの遺言が法的に認められない場合があるため、慎重に作成する必要があります。

• 相続争いの原因になりやすい

自筆証書遺言は、書き方や内容の曖昧さが原因で、相続人同士のトラブルや争いの火種になりやすいといわれています。具体的で明確な内容を記載しなければ、解釈をめぐって相続人の間で対立が生まれる可能性があります。

• 紛失するリスクがある

遺言書を自分で保管する場合、誤って紛失してしまう危険性があります。遺言書がなくなれば、当然その内容も実行されることはありません。

• 発見されない可能性がある

自筆証書遺言は家族や関係者がすぐに見つけられないこともあります。遺言書が発見されなければ、その存在を知ることができず、遺言者の意志が尊重されない恐れがあります。

• 隠蔽・破棄・改ざんされるリスクがある

自筆証書遺言は、特定の人によって隠されたり、破棄されたり、内容を変造されるリスクもあります。特に、相続に関わる利害関係者が遺言書を発見した場合には危険が高まります。

• 法務局に預けない場合、検認が必要

自筆証書遺言を法務局に預けなかった場合、遺言者が亡くなった後、家庭裁判所で「検認」手続きを行う必要があります。この手続きには時間と手間がかかるため、後述する「法務局保管制度」の利用をお勧めします。

自筆証書遺言が無効になりやすい理由

自筆証書遺言は、特定の形式に厳密に従う必要があり、その要件を満たさないと無効になることがあります。法律では、遺言書は全文を遺言者自身が手書きで記し、さらに日付と名前を書いた上で印鑑を押す必要があります（民法第９６８条）。たとえば、パソコンで作成した遺言書や、捺印がないものは法律上無効とされる可能性があります。

また、この形式の遺言書は、作成時に第三者の関与がないため、遺言者の判断力に問題がある場合でも、そのまま作成されてしまうことがあります。特に認知症などで適切な判断ができない状態で書かれた遺言書は、後に相続人の間でトラブルや争いの原因になることもあります。

法務局の「遺言書保管制度」とは

法務局の「遺言書保管制度」は、自筆証書遺言を安全に保管するための制度で、2020年7月にスタートしました。法務局が遺言書の原本を預かることで、紛失や改ざん、隠蔽のリスクを防ぎ、遺言書が確実に発見される環境を整えることができます。この制度を利用する際には３，９００円の手数料がかかりますが、安心して遺言書を保管できる点が大きなメリットです。

従来、自筆証書遺言は自宅で保管するケースがほとんどでしたが、自宅保管にはいくつかのリスクがあります。例えば、遺言書が見つからずに放置されたり、誰かに隠されたり破棄される可能性があります。また、遺言書が発見されなければ、遺言者の意思が実行されない事態にもなりかねません。

この「遺言書保管制度」を活用すれば、こうしたリスクを回避できるため、自筆証書遺言のデメリットを大きく改善できます。

自筆証書遺言の書き方と注意点

自筆証書遺言を作成する際には、法律で定められた厳格なルールに従う必要があります。これらのルールを守らないと遺言書が無効になる可能性があるため、以下の点に注意しましょう。

• 全文を手書きで書くこと

自筆証書遺言では、遺言書の本文、日付、氏名をすべて自分で手書きする必要があります。パソコンやワープロを使用した場合は無効となるので注意が必要です。また、録音やビデオメッセージも遺言としては無効です。

• 日付を正確に記載する

日付は「令和○年○月○日」と具体的に書く必要があります。「○○年○月吉日」など曖昧な日付表記は無効とされます。日付が特定できる表記であれば、誕生日や退職日なども認められることがあります。

• 氏名と捺印

遺言者本人の名前を手書きで記入し、捺印も必要です。認印でも有効ですが、実印の使用を推奨します。

• 紙や筆記具に制限はなし

遺言書の作成に使用する紙やペンには特に制限はありませんが、消えるインクのペンや鉛筆は避け、長期保存に適したものを使う方が良いでしょう。

• 内容の正確さに注意

遺言書には、相続する財産や遺贈する対象を正確に記載することが求められます。不動産については登記簿謄本と一致した表記を、預金については口座番号など具体的に書くことが推奨されます。相続人が誰であるかを明確にするため、続柄や生年月日を併記するのも有用です。

• 遺言執行者の指定

遺言の内容を確実に実行するためには、遺言執行者を指定することが重要です。遺言執行者は銀行口座の解約手続きや不動産の名義変更などを行う責任者です。

• 封印と保管場所の注意

遺言書を作成したら、信頼できる人にその存在を伝えておくか、法務局の「遺言書保管制度」を利用するのが安心です。また、遺言書を封筒に入れ、開封禁止の旨を明記しておくと安全です。

• 予備的遺言の記載

万が一、遺言者より先に相続人が亡くなった場合に備えて、別の人に相続させる旨の「予備的遺言事項」を記載しておくと、相続手続きがスムーズに進みます。

自筆証書遺言は手軽に作成できる反面、要件を満たさないと無効になるリスクもあります。作成の際は、これらの点に十分注意し、遺言が確実に実行されるよう配慮しましょう。

公正証書遺言とは

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。作成には、遺言者の意思を証明するために２名以上の証人が必要で、遺言者、公証人、証人全員の署名・捺印も求められます。

遺言書の原本は公証役場に保管され、遺言者は正本を受け取ります。財産の額に応じて手数料がかかります。

公正証書遺言の特徴

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する公文書であり、信頼性の高い遺言書として認められます。一般的な契約書と比べて、法的な効力が強く、遺言内容の確実な執行が期待できます。

公正証書が作成される際には、遺言者本人であることを公証人が確認するため、後から「自分はこんなこと書いていない！」といったトラブルが起きる心配がありません。また、裁判などで争いが生じた場合、公正証書は強力な証拠として扱われます。

さらに、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されており、万が一遺言書を紛失しても再発行が可能です。公証人が法的なチェックを行うため、無効な内容が含まれることもなく、安心して契約内容を記載できます。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言には、以下のようなメリットがあります。

• 法的に確実な証明力

公正証書は、法律の専門家である公証人が作成するため、遺言内容が法的に明確で、非常に高い証明力を持ちます。後から争われる可能性が低く、信頼性が高い遺言書になります。

• 強制執行が可能

公正証書遺言には「強制執行認諾条項」を追加することで、一定の条件を満たせば、裁判を経ずに強制執行ができる力（執行力）が与えられます。これにより、支払いが滞った場合などでも迅速に対応が可能です。

• 安全な保管

公正証書の原本は公証役場に保管されるため、遺言書が偽造されたり、紛失したりする心配がありません。万が一、正本を紛失しても、原本が保管されているため安心です。

公正証書遺言のデメリット

証拠力が高く、安心な公正証書遺言ですが、以下のようなデメリットもあります。

• 費用がかかる

公正証書遺言を作成する際には、公証人の手数料がかかります。費用は遺言内容や財産額によって異なり、遺言者にとって経済的な負担となる場合もあります。

• 作成に手間がかかる

公正証書遺言は、作成にあたって公証役場を訪れる必要があり、事前準備も必要です。また、遺言者と証人、そして公証人がそろって手続きを進めるため、自筆証書遺言より手間がかかります。

• 証人2人が必要

公正証書遺言の作成には、遺言内容を確認するための証人が2人必要です。証人には親族や相続に関与する人物はなれないため、注意が必要です。

公正証書遺言の作成にかかる費用

公正証書遺言を作成する際の手数料は、遺言で相続させる財産や遺贈する財産の価額に基づいて計算されます。遺言は、相続人や受遺者ごとに別々の法律行為として扱われるため、それぞれの財産価額に応じて手数料が算定され、その合計額が公正証書作成の手数料となります。

例えば、複数の相続人や受遺者に遺産を分配する場合、それぞれの対象者に渡す財産の価額に基づき個別に手数料が計算され、その合計額が最終的な手数料になります。

具体的な手数料の計算は以下の通りです。

このように、遺言に含まれる財産の総額に応じて手数料が段階的に増加します。

証人の依頼方法

公正証書遺言を作成する際には、立会人として2人の証人が必要です。証人になるための特別な資格はありませんが、以下の人々は証人になれないため注意が必要です。

• 未成年者
• 相続人となる可能性のある人（推定相続人）
• 遺贈を受ける予定の人（受遺者）
• 推定相続人や受遺者の配偶者、直系血族

次に、証人を依頼する際の選択肢と費用について説明します。

１．士業に依頼する場合

行政書士、司法書士、弁護士などの専門家に依頼するのが、最も安心できる方法です。これらの専門家は守秘義務を持っているため、遺言の内容が外部に漏れる心配がありません。また、専門家ならではの知識もあるため、手続きがスムーズに進みます。ただし、費用は他の方法より高めです。遺言書作成と証人の費用を合わせて依頼することが多く、料金は事務所によって異なりますが、１０万円程度が一般的です。

費用目安: １人あたり約１万円

２．公証役場で紹介を受ける場合

証人を頼める知人が見つからない場合、公証役場で証人を紹介してもらうことができます。公証役場によって費用が異なるため、事前に問い合わせておくと安心です。比較的手軽な方法です。

費用目安: １人あたり６，０００から７，０００円

３．信頼できる知人に依頼する場合

遺言の内容を知られても問題がなく、信頼できる知人に証人をお願いする方法もあります。この場合、特別な費用は発生しませんが、感謝の気持ちとしてお礼を渡すのが一般的です。金額は特に決まっていませんが、相場としては５，０００円から１万円程度が妥当でしょう。

費用目安: １人あたり５，０００円から１万円

秘密証書遺言とは

秘密証書遺言は、遺言書の内容を他人に知られたくない場合に利用できる形式の遺言です。この遺言書は、公証役場で遺言書が存在することだけを認証してもらい、内容は一切公開されません。そのため、遺言の内容を秘密に保ちながら、遺言書が確かに存在するという証明だけを行う仕組みです。

ただし、現実的にはこの形式はほとんど使われていません。主な理由として、遺言書が無効になるリスクや、作成後に家庭裁判所での検認手続きが必要になるなどの手間が挙げられます。

秘密証書遺言の特徴

秘密証書遺言の大きな特徴は、遺言者以外の誰にも遺言書の内容が知られない点です。遺言書の存在だけを公証役場で認証してもらい、遺言書の具体的な内容は遺言執行まで第三者に知られることがありません。これにより、遺言者は内容を完全に秘密に保つことができます。

また、秘密証書遺言ではパソコンや代筆での作成が認められており、自筆証書遺言のように全てを手書きで作成する必要はありません。このため、遺言者にとって作成の負担が軽減されます。

ただし、遺言書の原本は公証役場で保管されず、遺言者本人が保管することになります。遺言書の紛失や破損のリスクを考えると、保管方法には十分な注意が必要です。

秘密証書遺言のメリット

秘密証書遺言には、以下のようなメリットがあります。

• 遺言書の内容を完全に秘密にできる

遺言書の内容は遺言者のみが把握し、公証人や証人にも公開されません。内容が外部に漏れることを防ぎ、プライバシーを守ることができます。

• 偽造や改ざんを防止できる

公証人が遺言書の存在を認証するため、偽造や改ざんのリスクを軽減できます。ただし、内容自体の保証はありません。

• 公証人の手数料が比較的安価

公正証書遺言に比べて、公証人に支払う手数料が安価で済みます。コストを抑えながら、遺言書の存在を確保することが可能です。

• 自筆が難しい場合でも作成できる

秘密証書遺言では、パソコンで作成したり、代筆を依頼したりすることができるため、手書きが難しい場合でも対応可能です。

秘密証書遺言のデメリット

秘密証書遺言には、以下のような注意点やデメリットがあります。

• ２人の証人が必要

作成時に公証人の立ち会いだけでなく、２名の証人が必要です。この証人を確保する手間がかかります。

• 作成コストがかかる

公証役場で認証を受ける際には費用が発生します。公正証書遺言よりは安価ですが、完全に無料で作成できるわけではありません。

• 手続きに時間がかかる

公証役場での手続きに加え、証人を手配するため、作成に時間がかかる場合があります。迅速に進めたい場合には不向きです。

• 紛失リスクがある

遺言書の原本は遺言者本人が保管するため、紛失や破損のリスクが伴います。保管場所に十分な注意が必要です。

• 家庭裁判所の検認が必要

遺言者が亡くなった後、家庭裁判所で遺言書の「検認手続き」が必要になります。これにより遺言が執行されるまでに時間がかかることがあります。

特別方式遺言とは

予期せぬ事態に備えて、急いで遺言書を作成しなければならない状況が訪れることもあります。命の危険が差し迫ったときなど、通常の手続きが困難な状況で作成する遺言書は「特別方式遺言」と呼ばれます。緊急時に対応できるよう、特別な形式で遺言を残すことが認められているのです。

特別方式遺言の種類

特別方式遺言は、通常の遺言書作成が難しい特殊な状況で使用されるものです。これは、緊急時に限られた手続きで遺言を作成できる特別な方法を指します。では、どのような状況が「特殊な状態」とされ、それに応じた遺言の種類にはどのようなものがあるのでしょうか？

一般臨終遺言とは

一般臨終遺言は、生命の危機が迫る状態、例えば病気や怪我で余命がわずかとなった場合に作成される特別な遺言です。遺言者が自ら書けない場合、証人の一人が口述された内容を代筆し、他の証人が署名を行うことで遺言が成立します。

この遺言を作成するためには、３名以上の証人が立ち会う必要があります。証人は、相続に関係のない第三者でなければならず、推定相続人など利害関係者は証人になれません。また、遺言が成立した後は、20日以内に遺言書を作成した証人が家庭裁判所で確認手続きを行うことが求められます。

この形式の遺言は「死亡危急者遺言」、「一般危急時遺言」とも呼ばれることがあります。

難船臨終遺言とは

難船臨終遺言は、船や飛行機などに乗っている際、突如として命に危険が迫った状況で作成される特別な遺言です。遺言者が自ら書けない場合、口頭で証人に遺言内容を伝え、代筆してもらうことも可能です。

遺言の作成においては、証人２名による署名と捺印が必要です。証人の選定に関しては、相続人などの利害関係者は含まれないよう注意が必要です。また、この遺言が有効になるためには、作成後に家庭裁判所で検認手続きを受ける必要があります。

難船臨終遺言は、一般の危急時遺言と同様に、遺言の内容が裁判所で確認されて初めて効力が発生しますが、特に日数の制限は設けられていません。

この形式の遺言は、「難船危急時遺言」とも呼ばれます。

一般隔絶地遺言とは

一般隔絶地遺言は、隔離された状況にある人や、特殊な環境で生活を送っている人が作成する特別な遺言です。例えば、伝染病で隔離されている人や、刑務所に服役中の人、災害で避難生活を送っている人などが該当します。

この遺言を作成する際には、警察官１名と証人１名の立会が必要です。遺言書には、遺言者自身と立会人全員が署名し、捺印することで正式に成立します。

船舶隔絶地遺言とは

船舶隔絶地遺言は、航海中や長期間船上で仕事をしているなど、陸地から離れた環境にいる人が作成する遺言です。飛行機のように短時間の移動ではこの形式に該当しません。

この遺言を作成するためには、船長または船の事務員１名と、２名以上の証人の立会いが必要です。遺言書には、遺言者と全ての立会人が署名し、捺印することで正式に成立します。

自筆証書遺言と公正証書遺言の効力の違い

自筆証書遺言と公正証書遺言は、形式は違っても、どちらも法的な効力に違いはありません。どちらも法律の要件を満たしていれば、同じように有効です。

もし自筆証書遺言と公正証書遺言の両方が見つかり、内容が矛盾している場合は、作成日が新しい方が優先され、その内容が有効になります。

どの遺言書が最適か？公正証書遺言を推奨する理由

遺言書を作成する際、公正証書遺言が最も信頼性が高く、おすすめです。

遺言書の目的は、家族間の争いや混乱を防ぎ、残された人たちに負担をかけないことにあります。しかし、自筆証書遺言や秘密証書遺言は、形式不備や内容の解釈を巡って争いが生じるリスクが高く、結果的に家族に面倒をかけてしまう可能性もあります。

一方、公正証書遺言は、公証人の立会いのもとで作成されるため、無効になるリスクが極めて低く、後から内容が争われる心配もほとんどありません。こうした点から、遺言書を確実に残したい場合、公正証書遺言が最適な選択といえます。

遺言執行者とは何か

遺言執行者とは、遺言に記載された内容を確実に実行するために選ばれる人物です。遺言の執行とは、遺言者の意思を実現するために必要な手続きを行うことを指し、通常は相続人全員がその役割を担います。しかし、相続人が多い場合や、手続きが複雑になる場合、相続人全員で協力して進めるのは大変です。

そこで、遺言執行者を事前に指定しておくことで、手続きを円滑に進めることができます。遺言執行者になるには特別な資格などは必要ないので、誰でもなることができます。 ただし、民法 第１００９条により、未成年者と破産者はなることができません。

遺言執行者は、遺言に基づいて不動産の名義変更や銀行口座の解約など、遺産分割に関する具体的な手続きを進める役割を担い、遺言者の意思が正しく実行されるようにサポートします。

公正証書遺言の注意点

公正証書遺言は信頼性が高く、法的に有効とされる方式ですが、それでもいくつか注意が必要です。たとえば、遺言を作成する際に、遺言者が認知症などで判断能力が著しく低下していた場合、遺言そのものが無効となる可能性があります。遺言を作成する時点で、遺言者が意思能力をしっかりと持っていることが求められます。

また、遺言の内容を確実に実行し、後のトラブルを避けるためには、弁護士などの専門家を遺言執行者として選任しておくことも有効です。遺言執行者は、遺言書の内容をスムーズに実現し、相続手続きを円滑に進める役割を果たします。専門家が関わることで、遺産分割や相続手続きがより確実に行われ、相続人間の争いを未然に防ぐことができます。

遺言作成に迷ったら専門家に相談を

遺言書を作成する際は、単に形式を選ぶだけではなく、その内容も非常に重要です。どの財産を誰に相続させるのか、どのように記載すればトラブルを防げるのかなど、専門的な判断が求められる場合もあります。弁護士に相談すれば、遺言書の種類や書き方について、的確なアドバイスを受けることができ、安心して進められます。

さらに、弁護士に遺言執行者を依頼することで、遺言が確実に実行されるようサポートしてもらうことも可能です。遺言の内容や手続きに不安がある場合は、専門家の意見を取り入れることで、家族にとっても安心できる遺言書を作成できます。

「円満相続ラボ」では、相続に関する基礎知識や、遺言書の適切な作成方法を分かりやすく提供し、専門家によるサポートを行っています。相続や遺言に関して不安がある方は、ぜひ円満相続ラボを活用してください。

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この記事を書いたのは…

弁護士・ライター

中澤　泉（なかざわ　いずみ）

弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。
事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。
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