不動産取得税とは?相続や贈与で課税されるケースや計算方法、他の税金も解説
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不動産取得税とは?その基本概要と特性
住宅の購入や贈与、遺言により不動産を取得した場合、不動産取得税が発生する可能性があります。ただし、不動産を相続した場合には、通常この税金は課されません。しかし、相続以外の方法で不動産を受け取る際、例えば遺言や贈与を通じて取得した場合は、課税対象となります。
不動産取得税とは何か
不動産取得税は、土地や建物などの不動産の所有権を取得した際に一度だけ課される税金です。取得方法に関わらず、売買、贈与、交換、さらには新築や増築などによって不動産の権利を得た場合、この税金が課されます。重要な点として、登記の有無や取引の有償・無償は関係なく、不動産を取得した人が対象となります。
過去には、不動産取得後、各都道府県に対して申告する必要がありました。しかし、2023年4月以降、登記の手続きが行われることで自動的に不動産取得税の情報が反映されるようになり、原則として個別の申告手続きは不要となりました。この変更により、手続きが簡略化され、取得者にとって負担が軽減されています。
不動産取得税は、所有権の取得が確定した際に一度のみ発生し、その後の所有期間には課税されません。また、一定の条件下では軽減措置が適用される場合もあるため、取得時には条件を確認することが重要です。
相続時に不動産取得税がかからない理由
相続により不動産を取得した場合、不動産取得税が発生しない理由は、売買や贈与などの財産の移動とは異なり、相続が『法律上の義務による所有権の移転』と解釈されるためです。相続による不動産の取得は、所有権が自動的に移動する性質を持っており、これが課税の対象とされる不動産取引のような「対価を伴う財産の取得」とは異なると考えられています。
相続は、亡くなった方(被相続人)の財産を相続人が引き継ぐ自然なプロセスと認識されており、取引や贈与のように市場で財産のやり取りを目的とした行為ではないため、課税対象とはならないのです。これは、国が相続による財産の移転を特定の税負担から除外し、相続人が過度な負担を強いられないように配慮しているともいえます。
ただし、相続に関連したすべての不動産取得が免税されるわけではありません。たとえば、遺言による不動産の取得や、事実上の贈与とみなされるケースでは、不動産取得税が課されることがあります。これは、通常の相続と異なり、相続人が特定の意図を持って不動産を取得したと見なされるためです。このような場合、贈与や売買と同様に「所有権の新しい取得」として扱われ、課税対象になります。
不動産取得税が課税される主なケース
以下のケースのように、相続に関連して不動産を取得した場合には、不動産取得税が課税されます。
特定遺贈による不動産取得時
不動産取得税がかかる代表的なケースの一つは、特定遺贈による不動産取得です。遺言によって特定の財産が譲渡される場合、その受け取り方によって課税の有無が異なります。遺贈には大きく分けて2種類あります。
- 特定遺贈: 遺言書で特定の財産を指定して譲渡する方法
- 包括遺贈: 財産全体の一定割合を譲渡する方法
特定遺贈の場合、以下のような課税ルールがあります。
- 相続人が不動産を特定遺贈で取得した場合は、不動産取得税はかからない。
- 相続人以外が特定遺贈で不動産を取得した場合は、不動産取得税が課税される。
一方、包括遺贈で不動産を取得する場合は、次の通りです。
- 相続人が包括遺贈で不動産を取得した場合は、不動産取得税はかからない。
- 相続人以外が包括遺贈で不動産を取得した場合も、不動産取得税はかからない。
つまり、相続人以外の人が特定遺贈で不動産を取得する場合に限り、不動産取得税が課されます。それ以外の遺贈では、基本的に課税されない仕組みです。
死因贈与による不動産取得時
不動産取得税が発生するケースとして、死因贈与による不動産取得があります。死因贈与とは、贈与者が亡くなった際に効力が発生する贈与契約です。この契約は、贈与者の生前に合意が成立しており、贈与者の死亡によってその内容が実行される形となります。
例えば、祖父が孫に「私が亡くなったらこの家を譲る」と伝え、孫がその申し出を承諾することで死因贈与契約が成立します。このような契約では、不動産を受け取った側は不動産取得税の対象となります。
死因贈与は、相続の一種とみなされますが、贈与税ではなく相続税の対象となります。そのため、死因贈与によって不動産を取得した場合、贈与税はかかりませんが、不動産取得税が課されることに留意が必要です。
死因贈与と遺贈には共通点がありますが、贈与契約としての側面があるため、不動産取得税の課税対象となる点で異なります。
生前贈与による不動産取得時
相続の準備として、生前に不動産を譲る生前贈与が行われることがありますが、この場合も不動産取得税が発生します。たとえ生前贈与が相続税の対策として行われた場合であっても、贈与として取り扱われるため、通常の贈与と同様に不動産取得税の課税対象となります。
生前贈与は、贈与者が存命中に財産を譲渡するため、相続とは異なり贈与税も別途発生することがあり、さらに不動産の取得に伴う税負担として不動産取得税も課されることになります。したがって、生前贈与で不動産を受け取る際には、相続税だけでなく、不動産取得税や贈与税の負担も考慮する必要があります。
生前贈与を検討する際は、これらの税負担を総合的に理解しておくことが重要です。
相続時精算課税制度を利用した場合
相続時精算課税制度を利用して不動産を受け取った場合でも、不動産取得税が課されます。この制度は、贈与時に発生する贈与税を一時的に軽減し、最終的に贈与者が亡くなった際に相続税を課すというものですが、不動産取得税は贈与のタイミングで適用されます。
つまり、相続時精算課税制度を通じて贈与された不動産は、贈与者の死亡時に相続税の対象にはなるものの、不動産取得税に関しては贈与時に納税義務が生じます。このため、不動産取得税は相続税の有無にかかわらず、贈与が行われた時点で課税されるため、注意が必要です。
この制度を利用して不動産を取得する際には、相続税や贈与税だけでなく、取得時点での不動産取得税の負担も念頭に置いて計画を立てることが重要です。
不動産取得税の計算方法と軽減措置
ここでは、不動産取得税の計算方法と、利用できる軽減措置を紹介します。
不動産取得税の計算式
不動産取得税が課される場合、その税額は以下の計算式を用いて求められます。
不動産取得税=課税標準(固定資産税評価額)×税率
ここで使われる「課税標準」は、不動産の実際の売買価格ではなく、固定資産税の評価額を基にしています。そのため、たとえ不動産が無償で譲渡された場合でも、評価額に基づいて税が発生する点に留意が必要です。
適用される税率は、不動産の種類によって次のように異なります。
- 土地および住宅用建物: 3%(特例措置として2027年3月31日まで適用)
- 住宅以外の建物(店舗や事務所など): 4%
この税率を基に、対象不動産の種類や用途に応じて正確な税額が決定されます。
新築住宅でこの軽減措置を適用する延べ床面積の条件は次のとおりです。
延べ床面積には、マンションの共用部分や物置、車庫なども含まれます。
新築住宅の場合の軽減措置
新築住宅を取得した場合、不動産取得税の軽減措置が適用され、一定額が控除される制度があります。この軽減措置により、建物の固定資産税評価額から最大1,200万円(評価額が1,200万円未満の場合はその額まで)が控除されます。さらに、認定長期優良住宅に該当する場合は、控除額が1,300万円に引き上げられます。
軽減措置が適用される場合、不動産取得税の計算式は次の通りです。
(建物の固定資産税評価額-1,200万円)×3%
例えば、評価額が3,000万円の新築住宅を取得した場合、軽減措置なしでは不動産取得税は90万円になりますが、1,200万円の控除が適用されると、課税評価額は1,800万円となり、税額は54万円になります。この結果、36万円の税負担軽減となります。
軽減措置を活用することで、新築住宅の取得時にかかる税負担を大きく減らすことが可能ですので、適用条件を確認し、計画的に利用することをお勧めします。
中古物件の場合の軽減措置
中古住宅や中古マンションを購入する際に、不動産取得税の軽減措置が適用されることがあります。軽減される税額は、物件の築年数によって異なり、それに基づいて一定の控除が受けられます。
不動産取得税の計算方法は以下の通りです。
(建物の固定資産税評価額-築年ごとに定められた控除額)×3%
築年ごとの控除額は地域ごとに異なりますが、東京都の例では、次の表の通りに設定されています。
中古住宅で不動産取得税の軽減措置を受けるためには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
- 個人が居住用として取得した住宅であること。
住宅でない建物を住宅用に改装する場合、取得前にリフォームが完了していることが必要です。
- 延べ床面積が50㎡以上240㎡以下であること。
この面積には、新築物件と同様に共有部分や車庫なども含まれます。
- 耐震基準に適合していること。
具体的には、1982年1月1日以降に新築された建物であるか、1981年12月31日以前に新築された建物でも、新耐震基準に適合していると証明された場合に限られます。適合証明は取得前2年以内に行われている必要があります。
このように、中古物件でも適用条件を満たせば不動産取得税の軽減が受けられ、節税につながります。適用可能かどうか、取得時にしっかり確認しておくことが重要です。
宅地を取得した場合の軽減措置
2027年(令和9年)3月31日までに取得した宅地に対しては、固定資産税評価額の半分が課税標準として適用されます。これにより、通常の評価額に基づく課税額が大幅に軽減される仕組みです。
さらに、住宅用の土地を取得した場合、その土地に建てる住宅が軽減措置の対象となる条件を満たしていれば、不動産取得税の税額も減額されます。
この減額の額は、以下のどちらか大きい方の金額となります。
- 4万5,000円
- 土地1㎡あたりの価格×1/2×住宅の床面積の2倍(最大200㎡まで)×3%
これにより、宅地や住宅の購入にかかる税負担が抑えられるため、取得時には条件を確認して適用を受けることが重要です。
不動産を相続した際にかかるその他の税金
不動産を含む遺産を相続すると、最もよく知られているのが相続税です。しかし、相続に関わる税金はこれだけではなく、不動産を取得する際には他にも支払うべき税金が発生します。
ここでは、相続税以外に不動産相続時に負担する可能性がある税金について解説します。相続に伴う税負担をしっかり把握することは、予期せぬトラブルを避けるために重要です。
相続税の概要
相続税は、遺産の総額から一定の基礎控除額を差し引いた後の金額に対して課されます。この基礎控除額を計算することで、どの程度の遺産に対して相続税が発生するかを把握することができます。
基礎控除額の最低ラインは3,600万円です。つまり、相続財産の総額が3,600万円を超えた場合、相続税が発生する仕組みです。また、この基礎控除額は相続人の数に応じて増加します。法定相続人が多いほど、控除額が大きくなるため、税負担を軽減することができます。
具体的な基礎控除額は以下の計算式で求められます:
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
この計算式に基づき、相続財産が基礎控除額を超えるかどうかを確認することで、相続税が発生するかどうかが判断できます。相続人が多い場合、その分基礎控除額も増えるため、実際に課税される遺産額が減る可能性があります。
登録免許税とその免税の可能性
登録免許税は、不動産の所有権移転に際して発生する税金で、その金額は次の計算式に基づいて算出されます。
登録免許税額=課税標準×税率
相続による不動産の所有権を登記する場合、課税標準は不動産の固定資産税評価額であり、税率は0.4%です。これにより、相続による不動産の所有権移転には一定の税金が課されることになります。
- 数次相続が発生している土地の免税措置
長期間相続登記が行われていない土地の問題を解決するために、数次相続が発生している土地に対して免税措置が設けられています。
この措置では、相続による土地の所有者が登記を行う前に死亡し、次の相続が発生した場合、2025年(令和7年)3月31日までにその土地の所有権登記を完了すれば、登録免許税が免除されます。これは、相続登記を促進し、所有者不明土地の増加を防ぐための施策です。
- 価格が100万円以下の土地に対する免税措置
相続した土地の価格が100万円以下である場合、その土地の所有権移転登記にかかる登録免許税も免税となります。この土地の価格は、市町村の固定資産課税台帳に基づいて評価されます。
この免税制度は、2022年の税制改正により、対象となる土地の条件が緩和され、全国の土地が適用対象となりました。また、免税対象となる土地の価格上限も従来の10万円から100万円に引き上げられたため、より多くの相続者がこの制度を利用できるようになっています。
これらの免税措置は、所有者不明土地の問題を解消し、相続登記をスムーズに進めるために導入された重要な制度です。相続時には、該当する土地が免税対象であるか確認し、手続きを適切に進めましょう。
固定資産税・都市計画税
不動産を相続した後、その不動産を自分で保有する場合、固定資産税が課されます。さらに、その不動産が市街化区域に位置している場合は、都市計画税も追加で発生します。
これらの税金の計算は以下のように行われますが、状況に応じて軽減措置が適用されることもあります。
固定資産税=課税標準(固定資産税評価額)×1.4%(※)
都市計画税=課税標準(固定資産税評価額)×0.3%(※)
(※税率は自治体によって異なる場合があるため、居住地域の税率を確認する必要があります。)
固定資産税と都市計画税は、毎年1月1日時点の不動産所有者に課税されます。通常、税額の支払いは複数回に分けて行うことが一般的です。また、被相続人が亡くなった時点で未納の税金がある場合、その支払い義務は相続人が引き継ぐことになります。
翌年以降は、相続登記を行った相続人に対して納税通知書が送られますが、もし相続登記が完了していない場合は、全相続人が連帯して納税義務を負うことになります。相続登記を早めに済ませることで、税金の管理をスムーズに行いましょう。
賃貸収入にかかる所得税
賃貸マンションなどの不動産を相続した場合、相続人が新たに家主となり、賃貸収入を得ることになります。この賃貸収入から管理費や修繕費などの必要経費を差し引いた金額が不動産所得として計上され、所得税および住民税の課税対象となります。
不動産所得は、他の所得と合算され、一定の条件下で確定申告が必要となります。特に、賃貸収入が一定額を超える場合や、不動産所得が他の所得と合算されて税額に影響する場合は、確定申告を行わなければなりません。
所得税の税率は累進課税であり、所得額に応じて5%から45%の範囲で課税されます。住民税は全国一律で10%です。
また、復興特別所得税として、2013年1月1日から2037年12月31日までの期間に発生した所得に対して、所得税額の2.1%が追加で課税されます。この特別税も合わせて考慮し、賃貸収入がどの程度の税負担になるかを事前に確認することが重要です。
不動産売却時の譲渡所得税
相続した不動産を売却し、利益が出た場合、その利益は譲渡所得とみなされ、所得税と住民税が課されます。売却によって得た利益(売却益)は、売却金額から、相続で引き継いだ不動産の取得費を差し引いた金額で計算されます。
さらに、相続した不動産を相続から3年以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算することが可能です。この加算制度を利用することで、課税対象となる譲渡所得が減り、結果的に税負担が軽減されます。
不動産を売却して利益が出た場合は、翌年に確定申告が必要です。この譲渡所得は他の所得と分離して計算され、独立した税率が適用されます。
税率については、売却益に対して所得税・復興特別所得税と住民税を合わせた合計税率が適用されます。相続した不動産を取得した日から売却するまでに5年超経過している場合は、税率は20.315%です。しかし、相続後に5年以内で売却した場合は、税率が39.63%と高くなります。
これらの条件を考慮し、不動産の売却時期や取得費の確認をしっかりと行うことで、税負担を最適化することが可能です。
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この記事を書いたのは…
弁護士・ライター
中澤 泉(なかざわ いずみ)
弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。
事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。
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