代償分割とは?メリット・デメリットや相続税の計算方法をご紹介!
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相続における遺産の分割方法には何がある?代償分割って一体何??
遺産分割の方法には次の4つがあり、遺産の特徴や相続人同士の協議内容に応じて分割方法を考慮する必要があります。
・現物分割:遺産を相続人の間でそのまま相続分に応じて分けること。例えば土地・家屋は配偶者が取得するものの、土地・家屋の評価額と同等の金融資産は子に譲るという方法が挙げられる。
・換価分割:遺産を売却してお金に換え、換えたお金を相続分に応じて分割する方法。被相続人の住居や土地を相続人の誰もが希望しなかった場合、売却して分けやすいようにする例が挙げられる。
・共有分割:相続人間で持分を決めて、各相続人が共有する形で行う分割方法。土地・家屋のような不動産を持分に応じて、相続人間で公平に利用することができる。
・代償分割:遺産を得る代わりに、他の相続人にその相続分に応じたお金を支払ったり、所有している資産を譲ったりする方法。
代償分割はどのような場合に行われる?代償分割が必要なケースをご紹介!
代償分割は、故人(被相続人)の遺産が土地・建物だけで分割困難であり、特定の相続人にその遺産を相続させる必要があるなどのケースに用いられる方法です。
代償分割により分割がなされるケースとしてよくあるのは、次の3つです。
・被相続人の自宅に同居していた相続人の一人(例:配偶者)が、これまで通り住み続ける
・被相続人が農業・事業等に利用していた事業用不動産を、相続人の一人が相続する
・被相続人の法人経営を引き継ぐため、後継者が非上場株式を相続する
いずれのケースでも、他の相続人へ公平に分割できる遺産(預金や株券等)が他にもあれば、もちろん現物分割を行って構いません。
しかし、特定の相続人が相続した遺産以外にめぼしい遺産がない場合や、他の遺産はあっても特定の相続人が引き継いだ遺産の額を大幅に下回る遺産だった場合、相続人間で不公平となり、遺産分割協議がまとまらないおそれがあります。
そのような場合、代償分割は相続人間の公平性を確保することができるのです。
代償分割のメリット・デメリットとは
代償分割を行うメリット、そしてデメリットは次の通りです。
代償分割のメリット
下記で紹介するメリットにより、相続人間の争いの回避、あるいは相続税の軽減が期待できます。
遺産分割で不満が起きるリスクを軽減
代償分割であれば、分割困難な遺産(土地・建物)の相続人はその遺産をそのままの形で取得できます。例えば被相続人の農業・事業の継続を考えているならば、スムーズに引き継ぎができることでしょう。
それ以外の人は分割困難な遺産を引き継ぐ代わりに代償財産をもらえるので、相続トラブルに発展する事態を回避できます。
相続税の軽減ができる可能性も
分割困難な建物や土地を引き継いだ相続人は「小規模宅地等の特例」の適用を受ける可能性があります。この特例が適用されれば、相続税の課税価格に算入すべき価額を50%~80%減額することができます。
被相続人等の住居の宅地等なら330㎡まで、貸付事業以外の事業用の宅地等なら400㎡までなど、非課税額の限度面積の制約はありますが、条件に合致すれば相続税の軽減が期待できます。
代償分割のデメリット
代償財産の内容によっては不満が出たり、下記のような想定外の税金を課せられたりするおそれもあります。
代償財産の内容によって揉める可能性がある
基本的に代償財産の内容は、他の相続人へ相当額の金銭を渡すことで遺産分割協議がまとまるはずです。しかし、その相続人に代償金の支払能力がないと、代償分割の方法では遺産分割協議がまとまらないことになります。
代償金の支払いは一回払いの他、他の相続人が合意すれば分割払いも可能です。しかし、支払いが滞ると相続人間で争いが生じるリスクもあります。
また、代償金をいくらにするかで相続人間で揉め、双方の溝が埋まらず、協議が進まないことも想定されます。
税金が発生するケースも
手続きに不備があると、代償金を受け取る側に贈与税が課せられることもあります。例えば、遺産分割協議書を作成したものの代償分割の記載がない場合、渡した代償金全額について税務署から贈与と疑われてしまうことがあります。
代償財産として現金以外の財物(例:相続人が所有する不動産資産等)を渡すことも可能です。しかし、この場合には譲渡所得税が発生することがあります。
代償分割する際の代償金額の決め方を解説!
代償金の額の算定方法については、特に民法等で定められているわけではありません。ただし、この金額を決めておかないと遺産分割協議が進まないことになります。
代償金の額は概ね次のような評価を中心に算定されます。
・遺産の相続税評価額
・代償分割時の時価
相続税評価額とは、相続税法によって定められた評価方法に従って計算した財産の価額のことです。例えば土地を評価したい場合、次の2種類の評価方法があります。
・路線価方式:路線価が定められている地域で、道路に面する土地1㎡あたりの評価額に基づき評価する場合には、「路線価×各種補正率×土地面積」で算定
・倍率方式:路線価が定められていない地域の土地を評価する場合には「固定資産税評価額×倍率」で算定
代償分割時に発生しうる税金の種類とその計算方法を解説!
ここでは代償分割についての相続税の計算方法や、負担する可能性がある税金について解説します。
代償分割についての相続税の計算方法
代償分割についての各相続人についての相続税の計算方法は、以下の2通りがあります。土地を代償分割の対象とした場合を例に以下に説明します。
(例)土地を相続したAが相続人Bに代償金1,500万円を支払ったケース
・相続税評価額(土地):3,000万円
・代償分割時の時価:4,500万円
・Bへの代償金:1,500万円
(1)相続税評価額を基準に土地を評価して代償金が定められた場合
・相続人A:3,000万円-1,500万円=課税価格1,500万円
・相続人B:課税価格1,500万円
(2)代償分割時の時価を基準に土地を評価して代償金が定められた場合
・相続人A:3,000万円-{1,500万円×(3,000万円÷4,500万円)}=課税価格2,000万円
・相続人B:1,500万円×(3,000万円÷4,500万円)=課税価格1,000万円
負担する可能性がある税金
故人の遺産額について、課税価格の合計額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合、相続税が課されます。
また、遺産分割協議書に代償分割の事実を明記しないと、代償金を受け取った相続人に贈与税が課される可能性もあります。
その他に分割困難な遺産を引き継いだ相続人が、以前から自己の所有していた不動産資産を代償として他の相続人に譲渡した場合、譲渡所得税が発生する可能性があります。
代償分割を行う際の遺産分割協議書の書き方をチェック!
遺産分割協議書の作成は、複数の相続人がいる場合、基本的に被相続人の口座の解約(故人の死亡が確認されると金融機関から口座を凍結されるため)、被相続人の不動産資産の所有権移転登記等を行う際に必須です。
また、代償金を支払う旨が未記載だと、代償金を受け取る人に税務署から贈与税が課せられるおそれもあります。
そのため代償分割を伴う遺産分割協議書には、次の内容を必ず明記しましょう。
・被相続人の最後の住所や氏名・死亡日
・相続人全員が合意した内容
・引き継ぐ相続財産の詳細
・代償金を支払う旨
・相続人全員の氏名と住所、実印の押印
代償金を支払う旨の記載は、例えば「代償金として相続人〇〇に、金〇〇〇〇円を支払う」という内容となります。
代償分割時の注意点を解説!
代償分割を行う場合、以下の注意点があります。
・ 代償金の金額決定に際して、相続人間で協議がまとまらない可能性があること
・ 代償金の支払が滞ると、相続人間で争いが生じる可能性があること
・ 相続財産及び代償財産の評価によって、課税価格が異なること
・ 遺産分割協議書の記載に不備があると、贈与税が課される可能性があること
・ 金銭以外の資産を代償とする場合に譲渡所得税が課される可能性があること
もし、相続人間の話し合いだけではまとまらない、手続きや税金について心配などと感じたら、まずは相続診断士に相談してみましょう。相続診断士は一定の相続に関する知識を有し、いろいろな相続の悩みに助言を行う有資格者です。
相続診断士は弁護士をはじめとした士業資格を有している場合もあります。また、様々な士業専門職の方々への橋渡しをしてくれます。
相続診断士に相談すればアドバイスの他に、相続診断士自身または紹介を受けた弁護士が、代償分割の内容に納得しない相続人を説得してくれる等、何かと頼もしい活躍が期待できます。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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この記事を監修したのは…
東京丸の内法律事務所 パートナー弁護士
清水 豊(しみず ゆたか)
行政書士、司法書士、税理士、FPと連携して相続相談会を20か所以上で開催し多くのご相談をお受けして参りました。
その経験から相続のトラブルを回避するには遺言の準備が大切であり、遺言を正しく作成するには専門家のアドバイスが不可欠だと感じています。遺言の書き方セミナーも開催しておりますのでお問い合わせください。
経営者の相続については、株式の扱い、相続後のガバナンス体制の構築が重要です。こうした経営者の相続についてもご相談をお受けしております。