亡くなった人の定期預金をおろすには?損しない最新手続きと注意点
亡くなった人の定期預金をおろすには、どのような手続きが必要なのでしょうか。「普通預金と手続きは同じ?」「経過利息はどう計算するの?」「名義預金と疑われたらどうなる?」——そんな疑問を持つ方は少なくありません。
定期預金の相続には、普通預金にはない「経過利息計算書の取得」や「相続税評価額の計算」といった固有の手続きがあります。正しく対応しないと、申告漏れによる追徴課税や相続人間のトラブルに発展するリスクがあります。
本記事では、亡くなった人の定期預金をおろすための正しい手順・必要書類・注意点を、最新データを交えながらわかりやすく解説します。
Contents
【記事内容を動画で解説】
亡くなった人の定期預金はどうなる?口座凍結と放置のリスク
銀行が名義人の死亡を確認すると定期預金口座は凍結される
金融機関は、口座名義人の死亡を確認した時点で、普通預金・定期預金を問わずすべての口座を凍結します。凍結されると、ATMによる入出金はもちろん、自動継続設定の定期預金も含め、一切の取引が停止されます。
口座が凍結される主な理由は、遺言書の確認や遺産分割協議が行われていない段階で特定の相続人が勝手に預金を引き出し、他の相続人との紛争に発展するのを防ぐためです。
ただし、相続人などから連絡がない限り、銀行側が名義人の死亡を把握する手段は限られています。そのため、遺族が申し出るまで凍結されないケースもありますが、凍結前に無断で引き出すと、他の相続人とのトラブルや法的問題に発展する可能性があります(詳しくは「定期預金の相続における注意点とトラブル事例」をご参照ください)。
死後に定期預金口座を長期間放置した場合のリスク
定期預金口座を長期間放置することは、適切なタイミングで相続手続きを行わないことを意味します。主に3つのリスクがあります。
①相続関係の複雑化
相続手続きが数年放置されたまま、相続人の誰かが亡くなると、その人の相続人も手続きに加わる必要が生じ、関係者が大幅に増えます。専門家でなければ対処が難しい状況に陥ることがあります。
②休眠口座への移行
銀行口座を10年間放置すると休眠口座となり、払い戻し手続きが複雑化するうえ、口座残高が民間の公益活動に活用される場合があります。
③定期預金の自動継続による利率リセット
定期預金が自動継続設定になっている場合、満期のたびにその時点の金利で自動的に再設定されます。過去に高金利で契約していた定期預金も、放置することで低金利に切り替わってしまう可能性があります。
亡くなった人の定期預金は、できるだけ早めに相続手続きを開始することが賢明です。
定期預金の相続方法は2つ!「解約」か「名義変更(継続)」か
亡くなった人の定期預金をおろすには、大きく分けて①解約して現金で受け取るか、②名義変更して満期まで継続するかの2つの方法があります。どちらを選ぶかは、現在の金利水準と元の契約金利を比較したうえで判断するのが基本です。
金利で決める!解約と名義変更の判断基準
| 状況 | 推奨される方法 |
| 契約時と現在の金利水準が近い(低金利同士) | 解約して現金で遺産分割 |
| 契約時の金利が現在より大幅に高い | 名義変更して満期まで継続 |
| 急ぎで現金が必要 | 解約(または仮払制度を活用) |
| 相続人全員が継続に同意している | 名義変更 |
パターン1:金利が低ければ「解約」して現金で遺産分割する
現在の定期預金金利が契約時と大差ない場合(または現在のほうが高い場合)は、解約して現金で受け取り、遺産分割協議に基づいて分配する方法が一般的です。
解約の場合は、元本に「税引き後の経過利息」を加えた金額が支払われます(計算方法は「定期預金の相続税評価額の計算シミュレーション」をご参照ください)。
なお、満期前に中途解約すると約定利率より低い中途解約利率が適用される点に注意が必要です。解約のタイミングはよく検討しましょう。
パターン2:過去の高金利なら「名義変更」で満期まで継続する
バブル期など、過去に高金利(例:年3〜5%台)で契約した定期預金が残っている場合は、解約してしまうと高い利率の恩恵を失います。このような場合は、相続人の名義に変更して満期まで継続することを検討しましょう。
名義変更(継続)の場合も、遺産分割協議などの相続手続きは必要です。金融機関に「解約ではなく名義変更で継続したい」と伝えながら手続きを進めてください。
亡くなった人の定期預金をおろすには?正しい手続きと必要書類

亡くなった人の定期預金をおろすためには、正しい相続手続きを経て払い戻しを受ける必要があります。まず、通帳の裏に記載されている支店の電話番号、または金融機関の公式サイトで相続専用窓口を調べ、「口座名義人が亡くなったので相続手続きをしたい」と連絡するところから始めましょう。
郵送のやり取りで手続きが完結する金融機関と、窓口への来店が必要な金融機関があるため、事前に確認しておくと安心です。
遺言書がある場合の定期預金相続に必要な書類
■ 相続人に「相続させる」旨の遺言がある場合
遺言書で指定された相続人のみで手続きができるケースがほとんどです。主に以下の書類が必要です。
- 遺言書
- 検認済証明書(公正証書遺言・法務局保管遺言を除く)
- 遺言者の死亡が記載された戸籍謄本
- 預貯金を相続する相続人または遺言執行者の印鑑証明書
■ 遺贈(相続人以外への財産移転)の場合
遺言執行者がいない場合は、受遺者と相続人全員での手続きが必要です。主に以下の書類が求められます。
- 遺言書
- 検認済証明書(公正証書遺言・法務局保管遺言を除く)
- 遺言者の死亡が記載された戸籍謄本
- 受遺者と遺言執行者それぞれの印鑑証明書
実際に必要な書類は金融機関によって異なります。必ず事前に確認のうえ準備してください。
遺言書がない場合(遺産分割協議を行う場合)に必要な書類
遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行い、その結果に基づいて手続きを進めます。
■ 遺産分割協議書がない場合
- 相続関係を証明できる戸籍謄本一式(相続人の構成により異なる)
- すべての法定相続人の印鑑証明書
■ 遺産分割協議書がある場合
- 遺産分割協議書
- 戸籍謄本一式(遺産分割協議書がない場合と同様)
- すべての法定相続人の印鑑証明書
こちらも金融機関ごとに必要書類が異なりますので、事前確認が重要です。
【重要】定期預金特有の必須書類「経過利息計算書」と「残高証明書」
普通預金の相続と大きく異なるのが、「残高証明書(経過利息計算書付き)」の取得が必要になる点です。これは、相続税申告において定期預金を正確に評価するために不可欠な書類です。
| 経過利息計算書とは | 相続開始日(死亡日)時点で定期預金を解約したと仮定した場合に、元本に加算される「既経過利息(税引き後)」を示す書類です。この書類がなければ、定期預金の相続税評価額を正確に算出できません。 |
手数料と発行期間の目安
主要メガバンクやゆうちょ銀行の場合、「残高証明書(経過利息計算書付き)」の発行手数料は1口座あたり880円〜1,100円(税込)が一般的です。発行依頼から手元に届くまでの期間は、概ね1〜2週間程度です(三菱UFJ銀行・三井住友銀行・ゆうちょ銀行等の相続手続き規定、2024〜2025年時点)。
複数の金融機関に口座がある場合は、それぞれへの依頼が必要です。相続手続きの早い段階で請求しておくことをおすすめします。
【2024年3月開始】「戸籍証明書等の広域交付制度」で書類集めを時短
2024年3月1日より「戸籍証明書等の広域交付制度」がスタートし、戸籍謄本の収集にかかる手間が大幅に軽減されました。
広域交付制度のメリット
- 一括取得が可能:本籍地が全国どこにあっても、最寄りの市区町村役場で被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式をまとめて請求できます。
- 手続きの短縮:複数の役場へ順番に郵送請求する必要がなくなり、即日〜数日で書類が揃います。
利用できる人・注意点
- 対象者は本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母)・直系卑属(子・孫)のみです。
- 兄弟姉妹が相続人となる場合はこの制度を利用できません。その場合は従来通り、各本籍地の役場への個別請求が必要です。
- 窓口での本人申請のみ対応(顔写真付き本人確認書類が必要)。委任状による代理請求・郵送請求は利用できません。
従来の方法(広域交付が使えない場合)
各本籍地の役場へ郵送で請求します。申請書と定額小為替等を送付し、取得まで1〜2週間程度かかります。費用の目安は戸籍謄本1通450円、除籍謄本・改製原戸籍1通750円です。
遺産分割前に定期預金をおろす方法(預貯金の仮払制度)
葬儀費用などで急ぎで現金が必要な場合の対処法
口座凍結後、遺産分割協議がまとまる前でも、葬儀費用や当面の生活費を急いで用意しなければならない場面は少なくありません。そのような場合に活用できるのが「預貯金の仮払制度」です。
利用する場合は、金融機関に電話して「預金名義人が亡くなったので、遺産分割前に相続人の一人から預金の一部を払い戻したい」と伝え、郵送対応か来店が必要かを確認しましょう。
預貯金の仮払制度で引き出せる金額の計算方法
| 計算式 | 引き出せる金額 = 相続開始時の預金額 × 1/3 × 払い戻しを行う相続人の法定相続分(同一金融機関からの上限:150万円) |
【計算例】
- 定期預金の残高:600万円
- 相続人:配偶者(法定相続分1/2)と子2人(各1/4)
- 配偶者が仮払いできる金額:6,000,000円 × 1/3 × 1/2 = 100万円
払い戻し請求に必要な書類は次の2点です。
- 相続関係を証明できる戸籍謄本一式
- 払い戻しを請求する相続人の印鑑証明書
定期預金の相続税評価額の計算シミュレーション
普通預金との違い!元本に「既経過利息(解約利息)」を含めて計算する
普通預金の場合、相続税評価額は相続開始日の残高そのもので計算します。
一方、定期預金の場合は元本だけでなく「既経過利息(解約利息)」を加算して評価額を算出しなければなりません。この既経過利息は「税引き後」の金額を使う点がポイントです。
申告でよくある2つのミスと、それぞれの問題点を押さえておきましょう。
- 元本のみで申告した場合:既経過利息が漏れるため「過少申告」となり、後から過少申告加算税や延滞税が課されるリスクがあります。
- 税引き前の利息をそのまま加算した場合:実際に受け取れる額より高い評価になるため、必要以上の相続税を支払うことになります。
正確な計算で適正申告を行うことが重要です。
税引き後(所得税等20.315%控除)の具体的な計算例
定期預金の相続税評価額を求める具体的な計算手順を示します。
前提条件
| 項目 | 条件 |
| 元本 | 1,000万円 |
| 適用金利(年率) | 0.2% |
| 相続発生時点での預入経過日数 | 180日 |
計算プロセス
| Step | 計算式 | 内容 | 金額 |
| ① | 10,000,000円 × 0.2% × (180日 ÷ 365日) | 税引き前の経過利息 | 9,863円 |
| ② | 9,863円 × 20.315% | 差し引かれる税額 | 2,003円(小数点以下切り捨て) |
| ③ | 9,863円 − 2,003円 | 税引き後の経過利息 | 7,860円 |
| ④ | 10,000,000円 + 7,860円 | 相続税評価額(元本+③) | 10,007,860円 |
※税率20.315%の内訳:所得税15% + 復興特別所得税0.315% + 住民税5%
実際の手続きでは、「残高証明書(経過利息計算書付き)」に税引き後の既経過利息額が記載されているため、その数字をそのまま使用できます。自分で計算する必要はありませんが、内容を確認するうえで計算の仕組みを理解しておくと役立ちます。
定期預金の相続における注意点とトラブル事例
要注意!子供や孫名義の「名義預金」は税務調査での追徴課税リスクあり
「子供や孫の名義で定期預金を作っていたから、相続財産には含まれない」と考えている方は要注意です。
国税庁の「令和5事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査が行われた件数のうち約85%で申告漏れ等の非違が指摘されています。また、申告漏れ財産の内訳では「現金・預貯金等」が常に第1位で約33%を占めており、その多くが家族名義の「名義預金」とされています。1件あたりの平均追徴課税額(加算税を含む)は約600万〜900万円にのぼります(国税庁「令和4〜5事務年度における相続税の調査等の状況」)。
【追徴課税事例:孫名義の定期預金が名義預金と認定されたケース】
- 状況:祖父が孫2人の名義で毎年100万円ずつ15年間にわたって定期預金を作成(計3,000万円)。相続人は「孫の財産(生前贈与)」と認識し、相続財産から除外して申告した。
- 税務署の指摘:①口座の届出印が祖父のメインバンクと同じ印鑑だった、②通帳と印鑑を祖父の金庫で保管しており、孫自身は口座の存在を知らなかった。この2点から「実質的な管理者は祖父であり、贈与は成立していない」と判断され、否認された。
- 結果:3,000万円が相続財産に加算され、本来の相続税額に加えて「過少申告加算税(10〜15%)」と「延滞税」が課された。
税務調査では「名義が誰か」ではなく、「誰が原資を出したか」「誰が通帳・印鑑を管理していたか」が重視されます。心当たりのある定期預金がある場合は、相続税申告前に専門家へ相談することを強くおすすめします。
死亡直前・直後に定期預金を無断で引き出すリスク
死亡直前・直後に定期預金を引き出す場合には、以下の3点に注意が必要です。
①他の相続人へ必ず報告する
引き出した金額や使い道を他の相続人に知らせておかないと、不信感が生じ、遺産分割協議でのトラブルに発展します。いくら引き出したかを記録として残しておくことも重要です。
②自分の相続分を超えた引き出しは避ける
他の相続人の相続権を侵害することになり、不当利得返還責任(民法703条)や不法行為の損害賠償責任(民法709条)を問われる可能性があります。
③相続放棄を検討している場合は特に注意
亡くなった人の定期預金を解約・引き出して使用した場合、「法定単純承認」したとみなされ(民法921条)、相続放棄ができなくなる可能性があります。
相続人の一人が定期預金を使い込んだ場合の法的な対処法
相続人の一人が故人の定期預金を無断で引き出していた場合、まずは相続人間での話し合いを試みましょう。合意が得られれば、遺産分割手続きの中で使い込み額を反映した協議を行うことが可能です。
任意での話し合いが難しい場合は、遺産分割手続きとは別に、裁判所での手続き(不当利得返還請求訴訟または不法行為に基づく損害賠償請求訴訟)が必要になることもあります。いずれの場合も、取引明細など証拠を早めに確保したうえで、弁護士へ相談することをおすすめします。
【銀行別】亡くなった人の定期預金を引き出す具体的な相談窓口一覧
ゆうちょ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行などの手続き先
各金融機関の相続専用窓口・手続きページをご確認ください。
| 金融機関 | 相続手続きの確認方法 |
| 三菱UFJ銀行 | 公式サイト「相続のお手続き」ページ、または最寄り支店へお問い合わせ |
| 三井住友銀行 | 公式サイト「相続・名義変更」ページ、または相続相談専用ダイヤル |
| みずほ銀行 | 公式サイト「相続手続き」ページ、または相続手続きセンターへお問い合わせ |
| りそな銀行 | 公式サイト「相続手続きのご案内」ページ |
| ゆうちょ銀行 | 公式サイト「相続のWeb案内」ページ、または最寄りの郵便局窓口 |
その他の金融機関については、「○○銀行 相続」で検索すると、公式サイトで手続きの詳細が確認できることが多いです。どの金融機関でも、まずは電話で「口座名義人が亡くなったので相続手続きをしたい」と伝えるところから始めましょう。
まとめ:定期預金の相続手続きやトラブルで悩んだら専門家へ
亡くなった人の定期預金を引き出す際の注意点おさらい
- 口座凍結:金融機関が死亡を確認した時点で、定期預金を含む全口座が凍結される
- 相続方法の選択:「解約(現金払い戻し)」か「名義変更(継続)」かを金利水準で判断する
- 必要書類:定期預金特有の「残高証明書(経過利息計算書付き)」の取得が必要(手数料880〜1,100円、発行まで1〜2週間)
- 広域交付制度:2024年3月より戸籍謄本の一括取得が可能(兄弟姉妹相続の場合は対象外)
- 仮払制度:急ぎで資金が必要な場合は「預貯金の仮払制度」を活用(同一金融機関からの上限150万円)
- 相続税評価額:元本に「税引き後の既経過利息」を加算して計算(控除税率20.315%)
- 名義預金リスク:子供・孫名義の定期預金は税務調査で「名義預金」と認定されるリスクがある
- 無断引き出し:法定単純承認(民法921条)とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があるため注意
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
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この記事を書いたのは…
弁護士・ライター
中澤 泉(なかざわ いずみ)
弁護士事務所にて債務整理、交通事故、離婚、相続といった幅広い分野の案件を担当した後、メーカーの法務部で企業法務の経験を積んでまいりました。
事務所勤務時にはウェブサイトの立ち上げにも従事し、現在は法律分野を中心にフリーランスのライター・編集者として活動しています。
法律をはじめ、記事執筆やコンテンツ制作のご依頼がございましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。
この記事を監修したのは…
ナカミチ行政書士事務所 代表行政書士 一般社団法人ハーモニー後見センター代表
中道 基樹(なかみち もとき)
東京都新宿区のファインテックビルで行政書士をしています中道基樹(なかみちもとき)と申します。
2009年7月に29歳で何の経験もないところから事務所を開業し、11年となります。
「遺言」「相続」「成年後見」の分野を通じて、老後のことから、亡くなられた後のことまで、一貫したサポートが可能なのも当事務所の特徴です。
皆様おひとりおひとりに寄り添い親身になってサポートさせていただくことを理念としていますので、どうぞよろしくお願いいたします。