共同相続と登記を分かりやすく解説!共同相続のメリットや手続き
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共同相続とは?
共同相続とは、被相続人の財産が複数の相続人で共有されている状態を指します。
遺言書がないとき被相続人の全ての遺産は、相続開始時にいったん相続人全員の共有となります(民法第898条)。相続人が遺産分割を行うまで共同相続は継続します。
被相続人の預貯金のような金融資産は相続人間で分割し易いのですが、不動産の場合は容易に分割できないので、共同所有を続けるケースがあります。
被相続人の所有していた不動産を共有し続けるならば、共同相続人はそれぞれ共有持分(相続不動産の所有権割合)を有し、当該不動産を売却する際に共同相続人全員の同意が必要となります。
共同相続と単独相続や法定相続人の違いは?
共同相続は複数の相続人が遺産を共有している状態で、単独相続は遺産を1人で承継する状態です。
単独相続は相続発生時から相続人が1人である他、被相続人の作成した遺言書や、相続人の遺産分割協議で、相続人1人で遺産全部を相続するような状態も含まれます。
共同相続人は遺産を共同で相続する人が2人以上いる場合に呼ばれます。一方、法定相続人とは民法で定められた相続権を有する人(例:被相続人の配偶者・子ども等)です。
そのため、法定相続人は1人だけしかいない場合もあります。
遺産分割をすると共同相続人と呼ばれなくなりますが、法定相続人は遺産分割をしても・しなくても法定相続人と呼ばれます。
共同相続人の調べ方とは?
法定相続人の調べ方と全く同じです。 被相続人の出生〜死亡までの戸籍謄本や、除籍謄本、改製原戸籍を確認していきます。それぞれの戸籍の写しには次のような特徴があります。
- 戸籍謄本:出生や結婚、死亡等、個人の一生が記録された戸籍の写し
- 除籍謄本:戸籍から誰もいなくなった事実を証明する戸籍の写し
- 改製原戸籍:戸籍法改正で戸籍の様式等が変更された場合、その変更前の戸籍の写し
なお、それぞれの戸籍の写しは本籍地の市区町村役場で取得します。取得の際に戸籍謄本は1通450円、除籍謄本・改製原戸籍は1通750円が必要です。
共同相続のメリット・デメリットを解説!
不動産の共同相続は相続人が不公平感を持たない反面、管理・売却の際にトラブルが発生する場合もあります。
共同相続のメリット
相続人が平等に不動産資産を引き継げる点は大きなメリットです。
相続不動産は遺産分割で分け難く、無理に分割しようとすると相続人の誰かに分与されない可能性が高いです。そのため、相続人間で不公平感が募りトラブルに発展するおそれもあります。
不動産を共同相続すれば共同相続人全員が所有者なので、遺産分割で揉めそうな場合に有効な方法と言えるでしょう。
また、共同相続した不動産が収益不動産(賃貸マンション・アパート)ならば、賃料収入も平等に分けられます。
共同相続のデメリット
不動産を共同相続すると管理や売却の際に、相続人間でトラブルが発生し易い点がデメリットです。
もちろん、不動産の軽微な修繕ならば相続人の1人が単独で行えます。しかし、収益不動産で賃貸借契約の解除する場合は、共有持分の過半数の同意が必要です。
更に不動産の売却や建て替え等では共有者全員の同意が求められます。そのため、意見の対立により、管理や売却をするときに大きな支障が出るおそれもあります。
また、当該不動産の共有者が亡くなれば、共有者の法定相続人の相続財産となる点に注意しましょう。
新たな相続が発生する度に、所有者は増加し、相続人が誰なのかすらわからなくなってしまうかもしれません。
単独相続や売却等の対策をとっていないと、世代交代により権利関係が複雑化する可能性も高くなります。
共同相続における税務処理について!節税対策など
共同相続の場合、相続税申告手続きは原則として共同相続人の連名で行う必要があります。共同相続人全員で協力し、申告準備を進めていきましょう。
もちろん、単独相続と同様に相続税の基礎控除が受けられ、遺産総額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」以内に収まるならば、申告・納税は不要です。
節税対策としては小規模宅地等の特例の適用が考えられます。本特例は、一定の要件に合致すれば相続土地の評価額が最大で80%減額される制度です。
被相続人の単独相続だった土地を、相続発生後に配偶者、そして被相続人と別居していた子どもの共有不動産となるケースを検討してみましょう。
配偶者は被相続人と同居しても・別居していても特例が適用され、配偶者が取得した分の土地面積の評価額が80%減額されます。
なお、被相続人と別居していた子どもは、同居要件を満たさず特例の適用外となります。
共同相続人間の担保責任とは?
共同相続人の担保責任とは、遺産分割を行い、相続人の得た遺産に問題があったとき、他の相続人もそれぞれの相続分に応じて責任を負うという決まりです(民法第911条)。
担保責任が問題となるのは、被相続人の自宅を相続したが壊れていた、分割取得した土地の面積が少なかった場合等です。
問題のある遺産を引き継いだ相続人は、他の相続人全員に、それぞれの相続分に応じた金額を請求できます。
ただし、請求期限があり、遺産に問題がある事実を知ってから1年以内に請求しなければいけません。
共同相続の手続きの流れを解説!
複数の法定相続人がいる場合、基本的に遺産分割協議を行う必要があります。
手続きの流れは以下の通りです。
- 共同相続人を調査する
- 共同相続人と連絡を取り合い、遺産分割協議の日時を決める
- 遺産分割協議を行い、分割内容を取り決める
- 遺産分割協議書を作成する
- 相続手続きを開始する
遺産分割協議はいつでも構いません。
ただし、相続税が発生する場合、被相続人が死亡した事実を知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の住所地を管轄する税務署へ申告・納付が必要です。
そのため、相続が開始されたら速やかに協議を行いましょう。
また、遺産分割協議書には取り決めた分割内容、日付、相続人全員の署名・捺印(実印)をします。作成の際は、忘れずに「印鑑登録証明書」も準備します。
印鑑登録証明書は、地方自治体に登録された印鑑(実印)と相違ない旨を証明する書類です。市区町村役場で取得します(手数料:1通200円程度)。
なお、相続登記や被相続の預金口座を解約する等、相続手続きを進める際も遺産分割協議書の他に、印鑑登録証明書の添付が必要です。
共同相続人同士で意見の相違がある場合の対処法!
遺産分割協議で話し合っても意見の相違が埋まらない場合は、家庭裁判所に協議の場を移し、遺産分割調停で話し合いが継続できます。
調停では裁判官(家事審判官)・調停委員で組織される調停委員会が、意見が対立する相続人の主張・希望をよく聴き、助言や解決策を提案し、双方の合意を目指します。
調停でも合意に達しない場合、遺産分割審判による解決も可能です。審判では調停委員の関与は無く、裁判官が分割内容等を審理し、分割方法の決定を下します。
更に不服があれば、上級審(高等裁判所)に再度審理してもらう「即時抗告」ができます。ただし、即時抗告をする場合は、審判書の送達を受けた翌日から起算して2週間以内に行わなければいけません。
いろいろな解決方法はありますが、即時抗告にまで至ってしまうと、感情的な溝は大きくなり、当事者間の信頼関係が失われる可能性もあります。
なるべく調停の段階でお互いが歩みより、和解をした方が良いでしょう。
共同相続と登記の判例を紹介!
こちらでは不動産を共同相続した際、登記手続きでトラブルが発生した事案を紹介しましょう。
【経緯】
不動産を所有していた被相続人が亡くなり、妻Aと子Bが共同相続人になりました。
しかし、子Bは相続不動産を、遺産分割協議前に勝手に手続きを行い、子B単独の不動産として登記を済ませてしまいます。さらに、子Bは当該不動産を第三者に所有権移転登記しました。
納得ができない妻Aは第三者に対し、移転登記の抹消登記手続を求めて裁判所に提訴しました。
【裁判所の判断】
裁判所は次の点に着目し、第三者との取引よりも妻Aの立場を保護すべきであると判示します。
- 共同相続人である子Bが単独で手続きを行ったので、妻Aが持っている権利に対しては、妻Aに権利のない状態で行われた登記となる
- 相続財産としての価格が大きい不動産である
つまり、妻Aは登記を済ませていなくとも、自分の持ち分を第三者に対抗できる、と裁判所が判断したのです。
共同相続を行う際の注意点を解説!
こちらでは、共同相続の際に気を付けるべき点、共同相続で悩みや質問がある場合の相談先について説明します。
柔軟に分割できる方法を考える
不動産のように複数の相続人で分けるのが難しい財産の場合は、売却し現金化する等、柔軟に公平な分割方法を検討しましょう。
不動産を分ける場合は次の方法があります。
- 代償分割:相続人の誰かが不動産を継ぎ、他の相続人達へそれに見合うお金を渡す方法
- 換価分割:不動産を売却し、そのお金を相続人が分割する方法
可能な分割方法を見つけたら、他の相続人と話し合った上で手続きを進めていきましょう。
共同相続で悩んだら専門家に相談しよう
共同相続の問題に悩んだら、相続に詳しい弁護士へ相談してみましょう。意見の対立する相続人がいたら、弁護士が間に立って交渉するよう依頼もできます。
また、相続全般の専門知識を有する「相続診断士」に相談するのも良い方法です。相続診断士は有資格者なので、共同相続に関する悩みや不明点へ的確なアドバイスを行います。
相続診断士の助言を受けつつ、どのように問題解決を図れば良いのか、冷静に検討しましょう。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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