海外不動産を相続する方法とは?国内不動産との違いや注意点を解説!

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遺産相続

海外不動産の相続税評価の方法を解説!

相続が発生すれば、被相続人が海外に所有していた財産も相続税の課税対象となります。

国内の不動産の場合は次のような方法で評価額を算定します。

  • 土地:路線価方式「路線価×各種補正率×土地面積」または倍率方式「固定資産税評価額×倍率」で評価
  • 建物:固定資産税課税明細等で固定資産税評価額を確認

ただし、海外の不動産の場合、国内の評価方法で算定はできません。基本的には時価で評価します。

評価の際は現地の不動産会社や専門家に査定を依頼しましょう。

  • 現地の不動産会社:対象不動産の売却額(市場での売買価格)を算定する
  • 現地の専門家:不動産鑑定士等に当たる専門家へ評価(精通者意見価格)を依頼する

不動産会社に査定を依頼する場合、1社だけではなく複数の会社からの査定を得られれば、より適正な評価額を国税庁に提示できます。

一方、現地の専門家への依頼は、不動産会社から評価額を査定してもらえるのであれば基本的に必要ありません。

ただし、不動産会社に査定を断られた場合や特殊な不動産(かなり広大な豪邸、歴史的価値が高い等)の場合は、専門家へ査定を頼んだ方が良いでしょう。

二重課税防止条約の役割とは?

二重課税防止条約(租税条約)とは、二重課税の排除・軽減や脱税の防止等を目的に、国家間で締結された条約です。現在、日本では150近くの国・地域と本条約を締結しています。

例えばアメリカに資産がある場合、市民権の有無や居住しているかどうかで、基礎控除額が異なります。

  • アメリカ市民権を持つ人・アメリカ居住者:基礎控除額500万ドル
  • 非居住者:6万ドル

しかし、日本とアメリカでは本条約を締結しているので、特例計算が適用され、相続税で二重課税にならない仕組みがとられているのです。

つまり、日本の相続税・アメリカの連邦遺産税が課されたなら、日本の相続税の控除を受けられます。

いずれか少ない方の額から控除が可能です。

  • アメリカで課税された税額
  • 日本の相続税額×(アメリカの財産価額÷相続人の相続財産額)

海外不動産の名義変更の方法・相続方法を解説!

相続人が被相続人の海外不動産を引き継いだ場合、日本国内の不動産と同様に登記を行い、権利関係を明確にしなければいけません。

法律では不動産に関する物件や、その他の登記をすべき権利は、その目的物の所在地法によると規定しています(法の適用に関する通則法第13条1項)。

例えばイギリスにある不動産はイギリスの登記法で、アメリカに不動産があればアメリカの登記法で登記をする必要があります。

また、相続手続きでは、プロベート(検認裁判)のある国・無い国で、手続きに大きな違いがある点も注意しましょう。

海外の相続で採用されている「プロベート」とは?

プロベートとは裁判による手続きを経て、遺産分割を行う相続方法です。

プロベート行う国は、アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア等があり、一般的に英米法系の国が採用している方法です。

一方、ドイツ・イタリア・フランス・日本のような大陸法系の国は、裁判手続きを経ずに遺産分割が可能です。

プロベートを採用している国の相続手続きでは、現地の弁護士等に依頼し手続きを進める必要があります。弁護士費用は日本円で200〜300万円程度かかってしまいます。

また、裁判所を介した手続きなので、完了までに1年〜2年程度を要するのが一般的です。

プロベートを行う国と行わない国とで、相続手続きを比較してみましょう。

プロベートを行う国(英米法系)プロベートを行わない国(大陸法系)
裁判所の関与必要
・弁護士費用(着手金・報酬含む):200〜300万円
・手続き完了まで:1年〜2年程度
裁判所の関与は基本的に不要
・相続手続きに関する費用:30~50万円程度
・手続き完了まで:1ヶ月〜半年程度

英米法系の国の相続手続きは大陸法系と比較して、金銭的な負担が大きく、さらに時間もかかってしまいます。

プロベート手続きを避ける方法を解説!

面倒な手続きであるプロベートを避ける方法も存在します。

アメリカの場合は「死亡時譲渡証書」を利用した相続手続きがあります。

死亡時譲渡証書は「TODD」とも呼ばれ、被相続人の死亡時にプロベートを経ず、事前に指定した受取人へ不動産を譲渡できる制度です。

この制度を利用するには、被相続人が死亡時譲渡証書の登記手続きを生前に行わなければいけません。ただし、登記方法は簡単で日本国内の手続きだけで完了します。

日本国内に被相続人がいる場合、死亡時譲渡証書の登記手続きは次の手順で行います。

  1. 申請書に必要事項を記入
  2. 書類を提出、アメリカ大使館・領事館で公証
  3. 不動産の所在地を管轄する郡の書記官に、郵送で申請書等提出・費用支払(2~3万円程度)
  4. 登記完了後、郡から郵送で通知書が届く

海外不動産と国内不動産との相続の違いとは?

日本の場合は相続した土地の評価額は、路線価が明記されていれば路線価方式で、路線価が明記されていなければ倍率方式で算定します。

一方、海外の不動産は基本的に時価で算定するので注意が必要です。

また、日本では相続手続きを行うとき、基本的に裁判所の関与は不要ですが、海外の場合はプロベートが必要な場合もあります。

海外不動産の購入は相続税の節税になる?

日本の場合、不動産の購入が節税につながるケースは多いものの、海外不動産の購入で相続税を節税するのは難しいケースがほとんどです。

日本にある不動産の購入が節税につながる理由は、主に次の2つです。

  • 土地の路線価と時価に乖離がある
  • 建物の固定資産税評価と時価に乖離がある

ただし、海外の不動産については原則として時価で評価されます。

つまり、海外の不動産を時価1億円で購入した場合、そのまま相続税評価額は時価1億円となり、全く評価が下がりません。

購入時から相続発生までに時間が経てば、確かに時価が下落している可能性もあるでしょう。

逆に、不動産所在地が人気のある場所ならば、購入時より時価が上昇する場合もあり、相続税の負担はますます重くなります。

海外不動産の具体的な事例を解説!各国の違いを解説!

こちらでは英米法系・大陸法系に分けて、不動産に関する相続手続きを説明しましょう。

英米法系の場合

アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア等では、プロベートが行われます。

  1. 裁判所が遺産管理人の選任する:海外の不動産等は遺産管理人の管理下となる
  2. 遺産管理人が調査を開始する
  3. 相続税の申告・納付する
  4. 裁判所から被相続人の不動産の分配許可が下る
  5. 相続人が相続不動産を引き継ぐ

手続きの際は、「宣誓供述書」を現地の言語に翻訳し、被相続人の「死亡証明書」等を用意しなければいけません。

手続きが完了するまで、1年〜2年程度かかる場合があります。

大陸法系の場合

ドイツ・イタリア・フランス・日本では、基本的に裁判所の関与もなく相続手続きが進められます。

  1. 相続人が遺産分割協議で遺産分与を取り決める
  2. 相続人全員で遺産分割協議書を作成する
  3. 不動産の名義変更等の手続きをする

相続手続きの際は遺産分割協議後は、協議書の作成、相続人全員の実印・印鑑登録証明書、住民票等の添付が必要です。

もしも外国籍の相続人や海外居住の相続人がいたら、領事館や日本大使館から「在留証明書」「サイン証明書」を取得し、印鑑登録証明書や住民票の代用とします。

海外不動産を相続する際の注意点

こちらでは、海外不動産を相続人が引き継ぐ際に注意しなければいけない点、海外不動産の相続で困った場合の相談先について説明します。

円安か円高かで相続税の額に差が出る

海外不動産の評価は、原則として日本円で算定されます。

つまり、円安ならば評価が高くなり相続税を多く納めなければいけません。逆に、円高ならば相続税は低く抑えられます。

ただし、相続はいつ発生するか誰もわかりません。

そのため、円安傾向が続いていており、所有する海外不動産の必要性をあまり感じない場合、被相続人が存命中に現地で売却するのも良い方法です。

得られた外貨(ドルやポンド等)は日本円に交換し、日本にいる相続人達へ生前贈与すると、相続税の節税につながります。

海外不動産を相続で困ったら専門家に相談しよう

海外不動産をどうするかで被相続人や相続人が悩んでいるなら、海外の手続き等に詳しい士業専門家(弁護士等)へ相談してみましょう。

海外不動産をどのように相続したり処分したりするか、わかりやすく教えてもらえます。

また、相続全般の専門知識を有する「相続診断士」に相談するのも良いでしょう。

相続診断士は有資格者であり、海外不動産の相続手続きに関する有益なアドバイスが期待できます。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

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