相続財産管理人の権限とは?申立方法や権限外行為についても解説!
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相続財産管理人とは?
相続財産管理人は、相続人の代わりに財産管理の役割を担う人です。
相続財産管理人を選ぶには、被相続人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所で、選任申立の手続きを行う必要があります。
相続財産管理人は、相続財産や相続人の調査を行う他、財産が使い果たされないように管理し、被相続人の債権者がいれば債権額の割合に応じて弁済します。
相続財産管理人が選任される条件とは?
相続財産管理人の選任は法律上の利害関係人(例:被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者等)や検察官が、家庭裁判所に申し立てを行います。
選任される条件は次の2つです。
- 誰も相続人がいない
- 全員相続放棄した
被相続人に法定相続人が全くいない場合はもちろん、たとえ遺産を引き継げる人がいたとしても、その人たちが全員相続放棄をしたら、相続財産を管理する人がいなくなります。
上記のようなケースが発生したら、相続財産管理人を選任しなければいけません。
相続財産管理人の選任申立てをすべきケースを解説!
こちらでは相続財産管理人の選任申立てが必要なケースを3つ取り上げましょう。
相続放棄した人が財産管理をしている
そもそも遺産を引き継げたはずの人が相続放棄をした場合は、相続権を失うので、遺産を取得する権利も、被相続人の負債を弁済する義務も無くなります。
ただし、相続放棄した人は相続財産が適切に管理されるまでの間、自己の財産と同一の注意義務を持ち、遺産を管理しなければなりません(民法第940条)。
この義務に反した場合、債権者等から損害賠償を請求される可能性があるので、相続財産管理人の選任を速やかに行う必要があります。
被相続人の債権者となっている
被相続人の生存中にお金を貸していた人(会社)がいる場合、相続財産管理人の選任を行う必要があります。
なぜなら、相続人がいなければ誰も被相続人の借金を返済しませんし、債権者が勝手に遺産の中から回収する方法は認められないからです。
そのため、相続財産管理人から財産の管理および借金の支払いを行ってもらいます。
特別縁故者となっている
被相続人と特別な関係にあった人(例:被相続人と生計を共にしていた内縁の配偶者、被相続人を献身的に介護していた人等)がいた場合に選任します。
特別縁故者は一定限度で被相続人の遺産を受け取れます。ただし、遺産を受け取るためには遺産の管理、遺産分与の手続きを行う相続財産管理人が必要です。
相続財産管理人の申立てが却下されるケースもある?
家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てても、必ず選任されるわけではありません。
次のようなケースに該当すれば、選任の申し立てが却下されてしまいます。
- 相続人がいたのに申し立てを行った
- 相続財産全部の包括受遺者がいる(被相続人が遺言書で全財産を包括遺贈した人)
- 相続財産が無い
- 事実上の利害関係者が申し立てた(例:相続発生後に被相続人の不動産購入を希望する人等)
- 予納金を払わない
予納金とは裁判所に支払う費用ですが、家庭裁判所から指示されなければ納付の必要はありません。
ただし、指示されたときに予納金額を納付しないと、相続財産管理人は選任されないので注意しましょう。
相続財産管理人が選任されるまでの流れ
こちらでは相続財産管理人選任の手順、必要書類を説明します。
相続財産管理人選任の手順
相続財産管理人を選任するには、法律上の利害関係人や検察官が家庭裁判所に申し立てを行います。
- 申し立て:書類を収集し、被相続人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立て
- 審理開始:家庭裁判所が受理し、相続財産管理人を選任するかどうか決める
- 審判書送付:家庭裁判所が相続財産管理人を選任したかどうか、相続財産管理人の氏名・住所を記載した書類が申立人に届く
相続財産管理人が選任されたら、相続財産の管理や債権者へ借金の返済等を行います。なお、相続財産管理人の任期は法定されておらず、基本的に管理業務が終わるまで継続します。
必要書類
申し立てる場合は、主に次のような書類を作成・収集し、家庭裁判所に提出しなければいけません。
- 家事審判書・財産目録:家庭裁判所窓口またはホームページで取得可能
- 被相続人の住民票除票または戸籍附票:住民票除票は住所地の市区町村役場で取得(1通約200円)、戸籍附票は本籍地の市区町村役場で取得(1通約300円)
- 財産を証する資料:不動産登記事項証明書、通帳写し、残高証明書等
- 利害関係を証する資料:利害関係人からの申し立ての際に必要、金銭消費貸借契約書写し等
- その他:収入印紙800円分、連絡用の郵便切手、官報公告料5,075円、予納金
それに加え被相続人、その親族にあたる方々の戸籍謄本(除籍、改製原戸籍)も必要です。戸籍謄本戸は、本籍地の市区町村役場で1通450円〜750円で取得可能です。
それぞれケースに応じた被相続人・親族にあたる方々の戸籍謄本等を収集します。
- 被相続人の出生時~死亡時までのもの
- 被相続人の父母の出生時~死亡時までのもの
- 被相続人の子(代襲者含む)で死亡した人がいる場合:子(代襲者)の出生時~死亡時までのもの
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のあるもの
- 被相続人の兄弟姉妹で死亡した人がいる場合:兄弟姉妹の出生時~死亡時までのもの
- 代襲者としてのおい・めいで死亡した人がいる場合:おい・めいの死亡の記載があるもの
相続財産管理人への報酬は誰が払う?
相続財産管理人には報酬を支払う必要があります。この報酬は基本的に相続財産から支払われます。
ただし、相続財産が少なく報酬が支払えないと見込まれる場合、申立人は家庭裁判所から指示された予納金(報酬相当額)を納めなければいけません。
この予納金は事案により異なりますが、20万円〜100万円程度かかる可能性があります。
相続財産管理人の権限はどこまで?
相続財産管理人の権限は次の通りです。
(1)保存行為・管理行為
相続財産の状態を変えない範囲で財産の維持や利用する権限で、家庭裁判所の許可は不要です。次のような行為が該当します。
- 不動産相続登記
- 建物の修繕工事
- 預金の払い戻し等
(2)処分行為
相続財産の状態を変える行為で家庭裁判所の許可が必要です。次のような行為が該当します。
- 不動産の売却
- 株式の売却
- 定期預金の満期前の解約
- 家具・家電の処分
- 訴訟の提起等
相続財産管理人の権限外行為とは?権限外行為には許可が必要!
相続財産管理人は相続財産の処分行為に関して単独では行えず、家庭裁判所の許可が必要です。
例えば訴訟提起の処分行為が必要な場合は、家事審判申立書用紙の事件名に「訴訟提起の権限外行為許可」と記載し、申立人の氏名・住所・連絡先、申立ての趣旨・理由等を記入します。
家庭裁判所は申立てに理由があると判断した場合は「許可審判書」を相続財産管理人に交付します。
相続財産管理人が直面するトラブルやその解決策!
被相続人の債権者が、債権を回収するため相続財産管理人の選任を申し立てたものの、被相続人が「遺言執行者」を遺言書で指定していた、というケースでトラブルが発生する可能性はあります。
なぜなら、相続財産管理人も遺言執行者も相続財産を管理する権限が与えられているからです。
このケースに関して裁判所は次のような審判を下しています(東京家審昭和47年4月19日)。
- 遺言執行者は相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務がある
- これに対し、相続財産管理人は相続財産の管理だけでなく、相続債務(借金等)の清算をなす権限も有している
- また、受遺者(遺言で被相続人からの贈与を受け取る人)は被相続人の債権者に劣後する
よって、相続財産全体の管理は相続財産管理人が優先する。
被相続人の遺言執行者の指定は無効になるわけではありませんが、遺言執行者としての職務は相続財産管理人の清算事務終了まで停止されます。
相続財産管理人の交代・辞任する際の手続き方法
こちらでは、相続財産管理人の交代・辞任の方法、相続財産管理人の選任に関する相談先を説明します。
相続財産管理人の交代・辞任の方法
相続財産管理人が選任された場合、家庭裁判所はいつでも解任できます。解任後、家庭裁判所は新しい相続財産管理人を選任します。
また、相続財産管理人側から家庭裁判所に届け出て辞任が可能です。こちらのケースでも、家庭裁判所により新たな相続財産管理人が選ばれます。
もしも相続財産管理人が選ばれた直後に、実は相続人がいたことが発覚した場合、その選任が取り消される場合もあります。
相続財産管理人を選任したいなら専門家に相談しよう
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