成年後見人の報酬はいくら?支払えない場合の対処法を解説!
Contents
成年後見人とは?仕事内容をチェック
成年後見人とはどういう人で、その仕事の内容にはどのようなものがあるのでしょうか。
成年後見人とは?
成年後見人とは、家庭裁判所によって選任された後、認知症、知的障害、精神障害、発達障害などによって物事を判断する能力が十分でない人(以下「本人」という)の意思を尊重し、かつ本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人に代わって、財産を管理したり必要な契約を結んだりすることによって、本人を保護・支援する人のことです。
家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族などから後見開始の審判の申立てがあると、申立人、成年後見人候補者、本人から事情を聞くなどして、後見開始の審判をすると同時に、最も適任と思われる人を成年後見人に選任します。
仕事内容をチェック
成年後見人の仕事の内容にはどのようなものがあるかチェックしてみましょう。
成年後見人の仕事は、本人の財産管理や契約などの法律行為に関するものに限られており、食事の世話や実際の介護などは、一般に成年後見人の仕事ではありません。
成年後見人は、具体的に以下のような仕事を行います。
①成年後見人は、選任後速やかに、本人の財産の状況などを明らかにして、家庭裁判所に財産目録を提出します。
②成年後見人は、本人にふさわしい暮らし方や支援の仕方を考えて、財産管理や介護、入院などの契約について、今後の計画と収支予定を立てます。
③成年後見人は、本人の預金通帳などを管理し、収入や支出の記録を残します。
④成年後見人は、介護サービスの利用契約や施設への入所契約などを、本人に代わって行います。
⑤成年後見人は、家庭裁判所に対して本人の生活や財産の状況などを報告し、必要な指示等を受けます。
成年後見人の報酬はどのように決まる?成年後見人の報酬相場をご紹介!
成年後見人の報酬はどのように決まり、成年後見人の報酬相場はどのくらいかについて解説します。
成年後見人の報酬はどのように決まる?
成年後見人の報酬はどのように決まるか見てみましょう。
民法862条は「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる」としています。
そして、成年後見人に対する報酬は、報酬付与の審判立てがあったときに審判で決定されます(家事事件手続法39条、117条2項・別表第1の13項)。
報酬額の基準は、法律で決まっているわけではありません。
成年後見人の報酬は、後払い方式とされています。
家庭裁判所の裁判官は、後見事務が始まってから1年強を経過した時点で、成年後見人からの報酬付与の審判申立てを受け、対象期間中の後見等の事務内容(財産管理及び身上監護)、成年後見人が管理する本人の財産の内容等を総合考慮して、裁量により、各事案における適正妥当な金額を算定し、審判を行います。
その後も、家庭裁判所の裁判官は、1年が経過するごとに、後払い方式で金額を算定し、審判を行います。
成年後見人は、家庭裁判所の審判で認められた金額について、本人の財産から支払いを受けます。
成年後見人の報酬相場をご紹介!
成年後見人の報酬相場はどのくらいか紹介しましょう。
成年後見人の報酬額については、上述したように、家庭裁判所の裁判官が裁量で決定する性質のものですが、標準的な報酬額の目安を策定して公表している家庭裁判所もあります(各家庭裁判所のウェブサイト参照)。
東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部は平成25年1月1日付けで、大阪家庭裁判所・大阪家庭裁判所堺支部・大阪家庭裁判所岸和田支部は同年11月付けで、横浜家庭裁判所は平成23年4月1日付けで、それぞれ「成年後見人等の報酬額のめやす」を策定し、以下のような報酬額を公表しています。
専門職が成年後見人に選任された場合について、これまでの報酬付与の審判例等、実務の算定実例を踏まえた標準的な報酬額の目安は、以下のとおりとしています。
親族の成年後見人は、親族であることから申立てがないことが多いが、申立てがあった場合は、これを参考に事案に応じて減額されることがあるとしています。
なお、付加報酬の具体例は、横浜家庭裁判所が公表している報酬額の目安によっています。
基本報酬
基本報酬は、成年後見人が通常の後見事務を行った場合の報酬です。
管理財産額は、預貯金及び有価証券等の流動資産の合計額です。
管理財産額によって、財産管理事務が複雑で困難になる場合が多いので、管理財産額の金額に応じて基本報酬額を決めます。
基本報酬額 | |
通常の後見事務を行った場合 | 月額2万円 |
管理財産額が1,000万円を超え5,000万円以下の場合 | 月額3万円~4万円 |
管理財産額が5,000万円を超える場合 | 月額5万円~6万円 |
付加報酬
成年後見人の後見等事務において、身上監護等に特別困難な事情があった場合には、上記基本報酬額の50%の範囲内で相当額の報酬を付加するものとします。
また、成年後見人が、例えば次の具体例に示すような特別の行為をした場合には(具体例に限定されない)、相当額の報酬を付加することがあります。これらを「付加報酬」と呼びます。
(具体例)
①訴訟
本人が不法行為による被害を受けたことを原因として、加害者に対する1,000万円の損害賠償請求訴訟を提起し、勝訴判決を得て管理財産額を1,000万円増額させた場合
⇒約80万円~約150万円
②遺産分割調停
本人の配偶者が死亡したことによる遺産分割の調停を申し立て、相手方の子らとの間で調停が成立したことにより、総額約4,000万円の遺産のうち約2,000万円相当の遺産を取得させた場合
⇒約55万円~約100万円
③居住用不動産の任意売却
本人の療養看護費用を捻出する目的で、その居住用不動産を、家庭裁判所の許可を得て3,000万円で任意売却した場合
⇒約40万円~約70万円
複数成年後見人
成年後見人が複数の場合には、基本報酬及び付加報酬の報酬額を、分掌事務(割り振りしている事務権限)の内容に応じて、適宜の割合で按分します。
成年後見人の報酬が無償となるケース
専門職の成年後見人であれ親族の成年後見人であれ、法律上、家庭裁判所に報酬付与の審判申立てをしなければ報酬の支払いを受けられないので、無償ということになります。
なお、親族の成年後見人は、親族であることから報酬付与の審判申立てをしないことが多いとされています。
成年後見人の報酬以外にかかる費用について
成年後見人を利用する場合、報酬以外にも費用がかかることがあります。具体的には、以下のような費用が考えられます。
成年後見人の交通費や通信費などの経費
成年後見人は、被後見人の自宅や医療機関などに出向いたり、被後見人や家族と連絡を取ったりすることがあります。そのため、交通費や通信費が発生する場合があります。
被後見人の生活費や医療費などの支払い
成年後見人は、被後見人の生活費や医療費などを管理することがあります。そのため、これらの支払いにかかる費用が発生する場合があります。
裁判所への申請費用
成年後見人になるためには、裁判所に申請する必要があります。その際には、申請費用が発生する場合があります。また、後見人に任命された後にも、裁判所に対して報告書を提出する必要があり、その際にも申請費用が発生する場合があります。
弁護士費用
成年後見人になるためには、弁護士の助言を仰ぐことが必要な場合があります。その際には、弁護士費用が発生する場合があります。
これらの費用は、全て被後見人の財産から支払われます。被後見人が十分な財産を持っていない場合には、支払いが困難になる場合があります。この場合には、成年後見制度を利用することで財産を守ることができます。
任意後見人の報酬
任意後見人の報酬についても見てみましょう。
身内の方が任意後見人となる場合は無報酬のことが多く、弁護士・司法書士等の専門家に任意後見人を委任する場合には、本人(委任者)が有する財産や管理事務の内容等に応じて相当な報酬を毎月一定額支払うのが一般的です。
任意後見人の報酬は、任意後見契約公正証書で定められますが、その一例を示すと以下のようになります。
(報酬)
第7条
1 委任者(甲)は、本契約の効力発生後、受任者(乙)に対し、本件後見事務処理に対する報酬として毎月末日限り金1万円を支払うものとし、乙は、その管理する甲の財産からその支払いを受けることができる。
2 前項の報酬額が次の事由により不相当になった場合には、甲及び乙は、任意後見監督人と協議の上、これを変更することができる。
① 甲の生活状況又は健康状態の変化
② 経済情勢の変動
③ その他現行報酬額を不相当とする特段の事情の発生
3 前項の場合において、甲がその意思を表示することができない状況にあるときは、乙は、任意後見監督人の書面による同意を得てこれを変更することができる。
4 第2項の変更契約は、公正証書によってしなければならない。
成年後見人の報酬が支払えない!対処法や制度、支払えないときでも成年後見制度は利用できるのか解説!
成年後見人の報酬が支払えない場合の事例や対処法や制度、支払えないときでも成年後見制度は利用できるのかについて解説します。
成年後見人の報酬が支払えない場合の理由やよくある事例は?
成年後見人に支払う報酬は、成年後見人の仕事内容や時間、経費、責任などに応じて決められます。しかし、依頼人や成年後見人自身の経済的な事情などにより、成年後見人の報酬が支払えない場合があります。
成年後見人の報酬が支払えない理由や事例としては次のようなものがあります。
- 依頼人の財産が不足しており、成年後見人の報酬を支払う余裕がない場合
- 依頼人の生活費や介護費が高額になったため、成年後見人の報酬を払う余裕がなくなった場合
- 依頼人とのトラブルが生じたため、成年後見人の報酬を支払わないという選択をした場合
成年後見人の報酬が支払えない場合には、依頼人や家族と話し合いをすることがまず必要です。話し合いによって、成年後見人と依頼人との問題点を解決し、報酬の支払いについても再度協議することができます。また、依頼人の財産状況に応じて、社会福祉協議会や国民生活センターなどに相談することもできます。これらの機関に相談することで、成年後見人の報酬に関する問題についてアドバイスを受けることができます。
成年後見人の報酬が支払えない!対処法や制度
成年後見人の報酬が支払えない場合の対処法や制度について見てみましょう。
成年後見に要する費用としては、申立費用と後見事務を遂行する際の後見事務費用、成年後見人の報酬があります。
成年後見人への報酬は、上述したように、成年後見人からの報酬付与の審判申立てにより、審判が行われた上、本人の財産から支払われます。
しかし、成年後見人の報酬が、本人にこれを負担する資力がない場合もあります。
そこで、成年後見人の報酬を支払えない場合に、成年後見人の報酬を補助する制度として、各自治体で行われている「成年後見制度利用支援事業」があります。
「成年後見制度利用支援事業」は、経済的な理由から成年後見制度を利用できない人を支援するための助成制度で、成年後見人への報酬の全部又は一部の助成を自治体から受けることができます。
各自治体によって助成対象者は異なるとはいえ、生活保護を受けている方、本人の資産から成年後見人への報酬の支払いが困難と認められる方は共通に助成対象者になっています。
成年後見制度利用支援事業については、平成13年度の創設当初は市町村長の後見開始の申立てに限られていました。
しかし、この支援事業の趣旨についての理解が十分でなかったため、厚生労働省老健局計画課長が平成20年10月24日付けで「成年後見制度利用支援事業に関する照会について」という通知を発出し、市町村長の申立てに限らず、本人申立て、親族申立て等についても当該支援事業の対象となりうるとしています。
助成対象者や助成金額は、各自治体によって異なるため、本人の住む地域を管轄する市区町村役場の福祉担当窓口に相談する必要があります。
さらに、総合法律支援法に基づく日本司法支援センター(通称:法テラス)による民事法律扶助の制度もあります。
この制度は、申立費用と申立代理人の弁護士や司法書士に支払う報酬を扶助するだけで、成年後見人の報酬については扶助の対象となっていません。
成年後見人の報酬の支払いを助成で!手続き方法とは
成年後見人に支払う報酬の助成を受けるための手続き方法について解説します。
成年後見人に支払う報酬の助成を受ける場合、申請者は本人又は成年後見人になります。
報酬助成の申請の流れは、以下のようになります。
①成年後見人が家庭裁判所に報酬付与の審判申立てを行います。
②申請者は、報酬付与の審判があった後「成年後見制度利用助成事業報酬助成申請書」に以下の必要書類を添付して申請します。
❶申請者の身分証明書の写し
❷本人の住民票の写し
❸生活保護を受けている方は生活保護受給証明書
❹登記事項証明書の写し
❺成年後見開始審判書の写し
❻報酬付与審判書の写し
❼本人の属する世帯の所得の状況及び必要経費を明らかにする書類(報酬付与対象期間の収支・資産状況報告書の写し又は預貯金通帳・有価証券・保険証券等の写し)
❽報酬付与審判申立時に家庭裁判所に提出した書類の写し(報酬付与申立事情説明書、成年後見等事務報告書、財産目録)
③自治体は、申請書等の審査を行い「成年後見制度利用助成事業助成決定通知書」とともに、助成決定者に対し「成年後見制度利用助成事業助成金交付請求書」を送付します。
④申請書は「成年後見制度利用助成事業助成金交付請求書」に必要事項を記入した上、自治体に返送します(助成金の振込口座は、本人の口座又は成年後見人の口座を指定します)。
⑤自治体は、上記請求書を確認後、指定された口座に助成金を振り込みます。
なお、申請書等の名称や添付して提出する書類については、各自治体によって違いがあるので、事前に自治体のホームページなどで確認してから提出するようにしましょう。
さいごに:成年後見人を選ぶ際には、以下のようなポイントに注意しましょう
ここまで、成年後見人の報酬に関して解説してきました。最後に、トラブルにならないために成年後見人を選ぶ際のポイントを紹介します。
信頼できる人物を選ぶ
成年後見人は、被後見人の代理人として多大な権限を持ちます。そのため、被後見人に代わって法的手続きや契約を行うためには、信頼できる人物を選ぶことが大切です。家族や友人、専門家など、被後見人にとって信頼できる人物を選ぶようにしましょう。
専門家に相談する
成年後見人には、専門知識が必要とされる場合があります。例えば、被後見人の財産管理や法的手続きを行う場合には、税理士や弁護士などの専門家の協力が必要となることがあります。成年後見人を選ぶ際には、専門家に相談することをおすすめします。
事前に評価や面談を行う
成年後見人を選ぶ際には、事前に評価や面談を行うことが大切です。被後見人との相性や信頼性、専門知識の有無など、様々な観点から評価することができます。また、面談を通じて被後見人の要望や希望を確認することで、被後見人の意思を尊重した選択をすることができます。
紹介などの口コミ情報を参考にする
成年後見人を選ぶ際には、紹介などの口コミ情報を参考にすることも有効です。実際に利用した人の意見や評価を知ることで、成年後見人を選ぶ際の判断材料にすることができます。
契約書をしっかりと作成する
成年後見人を選ぶ際には、契約書をしっかりと作成することが大切です。契約書には、成年後見人の権限や報酬、契約期間などを明確に記載することが必要です。また、契約書を作成する際には、専門家の協力を得ることもおすすめします。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
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