相続税申告でマイナンバー拒否は可能?未記入のリスクと対処法
相続税申告の手続きを進める中で、「マイナンバーの記載は本当に必要なのか」「他の相続人に番号を教えたくない」という疑問や不安を持つ方は少なくありません。
結論から言えば、マイナンバーの記載には法的義務がありますが、未記入でも申告書は受理されます。ただし、状況によっては税務調査のリスクを高める可能性があるため、正しい知識と対処法を押さえておくことが重要です。
この記事では、相続税申告におけるマイナンバーの記載拒否・未記入のリスク、他の相続人との共有トラブルへの対応、実際の記載方法まで、実務の観点からわかりやすく解説します。
Contents
相続税申告でマイナンバーの記載は拒否できる?未記入のリスク
結論:国税通則法などで定められた「記載の義務」がある
相続税申告書へのマイナンバー記載は、2016年施行の改正国税通則法によって義務付けられています。
マイナンバーの記載が求められる背景には、税務行政の効率化があります。個人を迅速・正確に特定できることで、申告内容の照合や調査がスムーズになり、公平な課税の実現に役立てられています。
ただし、「義務はあるが、罰則はない」というのが現状です。何らかの事情でどうしても記載できない場合でも、申告書の提出自体は可能です。
未記入で提出した場合の税務署の対応(※不審な詐欺電話には注意)
国税庁のFAQ(番号制度概要に関するFAQ Q2-2、Q2-3)によると、税務署はマイナンバーの記載がない申告書であっても、受理を拒否することはありません。未記入に対する罰則規定は現時点では設けられていないため、未記入のまま提出しても申告書は受け付けてもらえます。
ただし、後日税務署から記載を求める連絡が来る場合があります。その際は速やかに対応することが、無用なトラブルを避けるうえで賢明です。
⚠️ 詐欺電話への注意:国税庁は「税務職員が電話でマイナンバーを聞き出すことはない」と明確に警告しています(出典:国税庁「不審な電話や振り込め詐欺にご注意ください」)。マイナンバーの確認を装った不審な電話には絶対に応じないでください。税務署からの正規の連絡は、書面(通知書)によって行われます。
📎 参考:国税庁「番号制度概要に関するFAQ」 https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/mynumberinfo/FAQ/index.htm
記載を拒否し続けると「税務調査」のリスクが高まる?
マイナンバーの未記載そのものが、即座に税務調査につながるわけではありません。しかし後述するように、「相続人が別々に申告する」ケースでは、財産内容の不一致が税務署のシステムでエラーとして検知されやすくなります。
国税庁の「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」によると、実地調査を受けた申告のうち、約86%で申告漏れが指摘されています。マイナンバーの未記載が調査の直接原因でなくても、申告の不整合が重なると調査リスクが高まるため、注意が必要です。
他の相続人にマイナンバーを教えたくない(共有を拒否したい)場合の対処法
相続人が複数いる場合、代表相続人や依頼した税理士が各相続人にマイナンバーの提供を求めることになります。しかし「他人に番号を知られたくない」と感じる方も多く、これが相続手続き上のトラブルに発展するケースがあります。
相続人間でのマイナンバー共有は「特定個人情報の提供」に該当しない
相続税申告を連名(共同)で行う場合、申告書には共同申告する全員のマイナンバーを記載する必要があります。代表相続人が他の相続人のマイナンバーを申告書に記載する行為は、税務申告という法律に定められた手続きの範囲内であり、マイナンバー法上の「提供」(第三者への情報移転)とは区別されます。
一方で、申告書の控えに他の相続人のマイナンバーが記載されたコピーをそのまま保管することは、番号法第20条に違反する可能性があります。個人情報保護委員会のガイドラインでは、法律で定められた手続き以外の目的で他人のマイナンバーを収集・保管することを禁じており、家族・親族間でも例外はありません。
控えを保管する際は、他の相続人のマイナンバー部分を必ず黒塗り(マスキング)してください。
📎 参考:個人情報保護委員会「マイナンバー関連情報」 https://www.ppc.go.jp/mynumber/
代替案:別々で申告書を作成・提出する方法
どうしてもマイナンバーを他の相続人に開示したくない場合、各相続人が個別(別々)に相続税申告書を提出する方法を選択することは法律上認められています。この場合、申告書にはそれぞれ自分自身のマイナンバーのみを記載します。
ただし、この選択には重大なリスクが伴います。
別々に申告した場合のリスク(税務調査に発展するケースと注意点)
相続税申告を別々に行うこと自体は合法ですが、実務上、税務調査のターゲットになりやすいというリスクがあります。
別々に申告すると、各相続人が把握している財産内容にズレが生じやすくなります。たとえば「長男は知っているが次男は知らない預金口座」が存在する場合、税務署のシステム上で「財産総額の不一致」としてエラー検知される可能性があります。
国税庁の「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」では、実地調査に入られた相続税申告の約86%で申告漏れが指摘されています。マイナンバーの提供を拒んで別々の申告を選ぶことで、かえって税務署に目をつけられるリスクが高まる——これが実務上の現実です。
📎 参考:国税庁「令和4事務年度における相続税の調査等の状況」 https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2023/sozoku_chosa/index.htm
他の相続人から提供を拒否された際の実務対応(求めた履歴を残す)
代表相続人や税理士がマイナンバーの提供を求めたにもかかわらず「教えたくない」と拒否された場合、無理に聞き出すことはできず、その部分を未記載のまま申告書を提出するほかありません。
このような場合、税理士の実務では「提供を求めたが拒否された」という事実を記録として残すことが強く推奨されています。具体的には以下の対応が有効です。
- マイナンバーの提供を求めた日付・手段(メール・電話など)をメモに残す
- メールで依頼した場合は、そのやり取りの履歴を保存しておく
- 相手に拒否された旨と日付を備忘録として文書化する
税務署から未記載の理由を問われた際にこの記録を提示することで、「提出義務を怠ったわけではなく、やむを得ない事情があった」と説明でき、代表相続人や税理士側の責任を回避できます。
最も安全な解決策:同じ税理士に依頼して提出を統一する
相続人間のマイナンバーをめぐるトラブルを最小化するための最善策は、全員が同じ税理士に申告を依頼し、申告書の作成・提出を一本化することです。
税理士事務所は、個人情報保護委員会が定める「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」に基づく安全管理措置を講じることが義務付けられています。各相続人が税理士に直接マイナンバーを提供することで、相続人同士がマイナンバーを共有せずに連名申告を完了できます。相続人間に感情的な対立がある場合でも、この方法が最もリスクの少ない選択肢です。
相続税申告書へのマイナンバー記載に関する基本ルール
誰のマイナンバーが必要?(被相続人のマイナンバーは不要)
相続税申告書には、相続人のマイナンバーを記載する必要があります。なお、被相続人(亡くなった方)のマイナンバーの記載は不要です。
複数の相続人がいる場合の取り扱いは次のとおりです。
- 各相続人が個別に申告する場合:それぞれの申告書に、申告者本人のマイナンバーのみを記載する
- 相続人が連名(共同)で申告する場合:「相続税の申告書」「相続税の申告書(続)」のそれぞれに、共同申告する全員のマイナンバーを記載する
自身のマイナンバーを確認する3つの方法(カード・通知カード・住民票)

マイナンバーを確認する方法は、主に以下の3つです。
- マイナンバーカード 本人が申請・取得するカードで、裏面に12桁の個人番号が記載されています。
- 通知カード 2015年10月以降、各市区町村から簡易書留で送付されたカードです。カード上部に記載されている12桁の番号を確認できます。なお、通知カードは2020年5月以降、新規発行が廃止されています。手元にある場合は引き続き番号確認に使用できます。
- 住民票の写し 住所地の市区町村役場で、マイナンバーが記載された住民票を取得できます(手数料:1通300円程度)。マイナンバーカードも通知カードも手元にない場合は、こちらで番号を確認しましょう。
相続税申告書への具体的な記載方法と、書き間違えた場合の訂正方法
申告書の「個人番号又は法人番号」欄に、12桁のマイナンバーを記載します。記載の際は以下の点に注意してください。
- 黒ボールペンを使用する
- 数字は枠内に正確に収め、左端の枠を空欄にして記載する
書き間違えた場合の訂正方法:誤った数字を二重線で消し、上部の余白などに正しい数字を記載して矢印で示します。修正テープや修正液の使用は避けてください。
相続税申告書を提出する際のマイナンバーの取り扱いと注意点
申告書の控えを保管する際の注意点(他人のマイナンバーのコピー・保管禁止)
申告書の控えを各相続人が保管する際には注意が必要です。マイナンバー法(番号法第20条)は、法律で定められた手続き以外の目的で他人のマイナンバーを収集・保管することを禁じています。家族・親族間でも例外はありません。
連名申告の場合、申告書の控えには他の相続人のマイナンバーが記載されています。このコピーをそのまま保管することは法律違反になる可能性があります。
控えを保管する前に、他の相続人のマイナンバー部分を必ず黒塗り(マスキング)してから保管してください。
提出時に必要な本人確認書類(マイナンバーカードがある場合・ない場合)
税務署の窓口で申告書を提出する際は、番号確認書類と本人確認書類の両方が必要です。
マイナンバーカードがある場合:
マイナンバーカードの写し(表面・裏面の両面)を添付するか、カードを窓口で提示するだけで番号確認・本人確認が一括で完了します。
マイナンバーカードがない場合:
通知カードや、マイナンバーが記載された住民票の写しを番号確認書類として用意したうえで、以下のいずれかの身元確認書類を添付します。
- 運転免許証
- パスポート
- 在留カード
- 公的医療保険の被保険者証
- 身体障害者手帳
e-Tax(電子申告)を利用すれば身元確認書類の提出が不要に
相続税申告は「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」を利用したオンライン申告も可能です。e-Taxを利用すると、身元確認書類の添付・提示が不要になり、手続きを大幅に簡略化できます。
e-Taxは、税務署でIDとパスワードを発行する「ID・パスワード方式」でも利用できます。ただし、国外居住者が相続人の場合はe-Taxの利用に制限があります(詳細は次章)。
特殊なケース:国外居住者やマイナンバーを持たない相続人はどうする?
海外在住でマイナンバーがない場合の対応と提出書類
相続人が海外在住で日本のマイナンバーを持っていない場合、e-Taxを利用した申告には制限があります。この場合、税理士を納税管理人として選任し、相続税申告を行う方法が一般的です。
e-Taxで申告する際は、以下の点に留意する必要があります。
- 利用者識別番号は、納税管理人である税理士のものを使用する
- 申告書の氏名・フリガナ欄に「納税管理人〇〇〇〇(税理士名)」と記入する
- 申告書の氏名欄・住所欄に、相続人本人の氏名と海外の住所を記入する
なお、相続登記の申請書(法務局への提出書類)にはマイナンバーを記載する欄はありません。相続登記の申請自体は、運転免許証やパスポートなど他の本人確認書類で対応できます。
相続税申告を税理士に依頼する際のマイナンバーの扱い
税理士への提出は安全?(特定個人情報の適正な取扱いによる情報保護)
「税理士にマイナンバーカードの写しを渡して大丈夫なのか」と不安に感じる方もいますが、税理士事務所は個人情報保護委員会が定める「特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン」に基づく安全管理措置を講じることが義務付けられています。情報漏洩防止のための適切な管理措置が取られているため、安心してマイナンバーカードの写しを預けることができます。
税理士に依頼する際に必要なマイナンバー関連書類(税務代理権限証書等)
相続税申告を税理士に依頼する場合、税理士は以下の書類を用意・提出します。
- 税務代理権限証書 税理士が納税者(相続人)に代わって税務代理を行う際に、税務署へ提出する書類です。この書類がない場合、税務調査の事前通知が税理士ではなく相続人本人に直接届きます。税務署との連絡窓口を税理士に一本化したい場合は、必ず提出してもらいましょう。
- マイナンバー関連書類 相続人(依頼者)のマイナンバーカードの写し、または通知カードの写しが必要です。
まとめ:マイナンバーの不安や相続税申告のトラブルは専門家へ!
この記事の内容を整理すると、以下のポイントが重要です。
- マイナンバーの記載は法的義務だが、未記入でも申告書は受理される(ただし後日連絡が来る可能性あり)
- 税務職員が電話でマイナンバーを聞くことはない——不審な電話には絶対に応じない
- 申告書の控えは、他の相続人のマイナンバー部分を必ず黒塗りしてから保管する
- 提供を拒否された場合は、求めた日時・経緯の記録を残すことで代表相続人・税理士の免責につながる
- 別々の申告は合法だが、税務調査リスクが高まるため慎重に判断する
- 全員が同じ税理士に依頼して申告を一本化するのが最も安全な解決策
相続が発生してから申告期限までは10ヶ月しかありません。マイナンバーの問題に加え、財産の評価・遺産分割協議・各種相続手続きと並行して対応が必要です。一人で抱え込まず、早めに専門家へ相談することが、スムーズな相続への第一歩です。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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