特別受益とは?遺留分侵害額請求の対象になるのか解説!

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遺産相続

相続の特別受益とは~故人から生前に贈与されたもの~

特別受益は一部の相続人(故人の遺産を引き継ぐ人)が被相続人(遺産を引き継いでもらう人)から受け取った特別な利益のことです。

この特別受益を無視して遺産分割が行われると、特別受益を受けていない相続人との間で不公平が生じるため、不公平の是正が図られることとなります。

特別受益に当たるもの

特別受益に当たるケースとしては、被相続人から遺贈を受けた場合、または生計の資本等の贈与を受けた場合が該当します。

(1)一部の相続人が遺贈を受けた

遺贈とは遺言によって遺産を承継することです。遺贈が常に特別受益となるわけではなく、相続人が複数いるにもかかわらず、一部の相続人が遺贈を受けたケースに該当します。

(2)一部の相続人が特定の生前贈与を受けた

特定の生前贈与とは主に次のようなケースです。

・事業用資産の贈与:被相続人の家業を継ぐ相続人への事業用資産(中小企業の会社運営は株式、農家の場合は農地)の贈与
・不動産の贈与:土地・建物等の居住用不動産の贈与
・多額の金融資産の贈与:多額の金銭等の贈与
・高等教育への資金贈与:基本的に大学進学や留学等の費用
・婚姻・養子縁組のための費用:多額の持参金、支度金等の相続財産の前渡しとみなされる贈与

特別受益に当たらないもの

特別受益に当たらないケースは、主に次の通りです。

・お小遣いや扶養義務の範囲内と考えられる金銭の贈与
・義務教育等の費用:小・中学校の義務教育や高校までの学費が該当
・生命保険金:原則として受取人固有の財産と認められるもの

ただし、生命保険金(死亡保険金)の場合は遺産に占める割合が非常に多いと、特別受益に準じて不公平の是正が図られることがあります。

特別受益の持ち戻しとは~計算方法やどのような改正がされたのか解説~

特別受益があれば不公平の是正を図ることになります。ここでは特別受益の持ち戻しとは何か?2019年の改正点もあわせて解説します。

特別受益の持ち戻しについて

相続が開始されたとき、特別受益分を実際に残されている相続財産の額に合算し、遺産分割時に、特別受益を受けた相続人から特別受益分を差し引くという考え方です。

特別受益の持ち戻しの計算方法は次の通りです。

(例)被相続人が死亡し、長男A・次男B・三男Cが相続人となった

・被相続人の相続開始時の遺産総額:1億2,000万円
・特別受益:不動産購入資金3,000万円を三男Cに贈与

まず三男Cに贈与された不動産購入資金3,000万円分を相続開始時の遺産総額へ加えます。

遺産総額1億2,000万円+不動産購入資金3,000万円=1億5,000万円

この1億5,000万円は「みなし相続財産」と呼ばれます。このみなし相続財産を3等分にします。

1億5,000万円÷3人=5,000万円

三男Cの場合は特別受益として3,000万円を得ているため、この金額分を差し引きます。

5,000万円-3,000万円=2,000万円

そのため取得金額は長男A5,000万円、次男B5,000万円、三男C2,000万円となります。

特別受益の持ち戻しに関する2019年の改正点

2019年7月1日施行の民法改正では遺留分を算定する際、特別受益に該当する贈与の範囲が変更されました。この遺留分とは、一定範囲の法定相続人に最低限認められる遺産取得割合のことです。

主に次の2つが改正されています。

持ち戻し期間が10年と定められる

以前は持ち戻し期間が法定されていませんでしたが、2019年の改正では贈与に関して、原則として被相続人が亡くなる前の10年以内の贈与が、その対象となり得ると定められました。

特別受益とみなされる贈与の持ち戻しも、原則として被相続人が亡くなる前の「10年以内」の贈与に関して、対象となる可能性があります。

配偶者への持ち戻し免除

結婚20年以上となる配偶者へ自宅を生前贈与することは、原則として特別受益の対象外と改正されました。以前は遺産の先渡しとして特別受益とみなされていましたが、被相続人の死後、その配偶者の住居確保を重視した内容に改正されました。

これは「持ち戻しの免除」と呼ばれ、贈与した人が相続財産に持ち戻ししなくても良い、と意思表示することで行えるものです。持ち戻し免除は口頭でも成立しますが、遺言書等へその旨明記しておくのが一般的です。

しかし、法改正によって、夫婦間で自宅贈与を行う場合は持ち戻し免除の意思表示があったものとみなされ、書面に残す必要がなくなっています

特別受益で受けた財産も遺留分侵害額請求の対象になる?遺留分についても解説

遺留分とは、一定の範囲(兄弟姉妹を除く)の法定相続人に最低限保障されている、一定の遺産を取得できる割合のことです。

ここでは、特別受益で受けた財産も遺留分侵害額請求の対象となり得るのかを解説します。

遺留分の考え方と計算

遺産を相続される人たちは、当然、遺産を受け取れるものだと思っていることでしょう。しかし、遺産を受け取れない事態となれば、相続争いが勃発するおそれもあります。

そんな事態を避けるため、一定の範囲の法定相続人に遺留分の主張を認め、遺産を受け取れるようにする配慮がなされています。

遺留分が認められる割合は、直系尊属(被相続人の親・祖父母等)のみが相続人になる場合は相続財産の1/3、その他(配偶者・子)の場合には相続財産の1/2になります。

具体例を挙げて遺留分について計算してみます。

(例)被相続人が亡くなり、配偶者A・子Bの計2人が相続人となる

・被相続人の財産:5,000万円相当
・被相続人の遺言内容:配偶者Aに全財産を付与

配偶者A・子Bの遺留分は1/2(A1/4、B1/4)となるので

5,000万円×1/4=1,250万円

子Bは配偶者Aに、遺留分の侵害額である1,250万円を請求することができます。この請求が遺留分侵害額請求と呼ばれています。

特別受益・相続利益が遺留分侵害にあたるケース

原則として相続開始前の10年間に行われた特別受益と認められる贈与は、遺留分を算定するための財産に算入されます。つまり、その算定された財産価格が遺留分を侵害する額だった場合、遺留分侵害額請求の対象となります。

ただし、10年以前になされた贈与は、いかなる場合も対象外になるわけではありません。

贈与の当事者である被相続人・相続人が、遺留分を持つ他の相続人へ、損害を加えることを知りつつ贈与したケースでは、10年以前になされた贈与でも、遺留分を算定するための財産に算入されます。

一方、相続利益の場合は遺言書の財産分与割合について、特定の相続人に偏っていたというケースも挙げられます。

被相続人は基本的に遺言内容を自由に定めることができ、たとえ相続人の遺留分を侵害するような内容であっても、直ちに無効とはなりません

しかし、相続人たちが遺言に明記された財産分与の内容を確認し、遺留分を算定後、明らかに自己の遺留分を侵害していることがわかった場合、遺留分侵害額請求ができます。

特別受益を受けた相続人に遺留分を請求する場合の流れとは?遺留分侵害額請求権は10年?

遺留分を侵害された相続人は遺留分侵害額請求という手続きで、自己遺留分を金銭で取り戻すことが可能です。手順は次の通りです。

1、一部の相続人に特別受益があった事実を確認
2、遺留分を算定し、自己の遺留分が侵害されていることを確認
3、侵害している相続人との話し合いでは結論を出せない場合には手順4以降を実施
4、家庭裁判所へ申し立てるための書類を収集
5、遺留分を侵害された相続人等が、相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立て

ただし、この請求権は下記のいずれかがあった事実を知った時から1年が経過、あるいはその事実を知らなくても相続開始時から10年が経過すると時効により消滅します。

・相続の開始
・遺留分を侵害する贈与または遺贈

主に次の書類を準備し、速やかに申し立てを行いましょう。

・申立書および写し(相手方の数の通数)
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・遺言書写し等
・固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し等をはじめとした遺産に関する証明書

請求内容によっては裁判所側から追加の書類を要求されることもあります。

相続時に揉めないためには弁護士に相談を!

相続の際に遺産分割で揉めてしまうと、家庭裁判所で調停・審判を行い、解決を図ることになります。解決までに長期間を要することも十分に考えられます。

そのため、相続人同士で揉める前に法律の専門家である弁護士へ相談したほうが良いでしょう。

遺留分を侵害された相続人が弁護士に相談・依頼をする場合は侵害している相続人と話し合う際のアドバイスをしてくれたり双方に解決案を提示してくれたりするはずです。

一方、他の相続人の遺留分を侵害する形となってしまった相続人が、弁護士に相談・依頼をする場合は、侵害されたと主張している相続人に、どのように歩み寄るか等のコツを教えてくれることでしょう。

ただし、弁護士にも得意分野があるので、できれば相続に関する知識・経験を有している弁護士へ相談したいものです。弁護士を選ぶ際は、各弁護士事務所のホームページをチェックしてみましょう。

相続関連に注力していたり、解決事例を豊富に持っていたりするところであれば、相続に関する法律問題を得意とする弁護士であることがわかるはずです。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

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