海外不動産などの遺産を相続する手続き方法!評価方法や海外の違いを解説!
Contents
国際相続はどのような場合に発生する?
海外に被相続人が不動産や預金、動産等を保有している場合、被相続人の死亡後に国際相続が発生します。
海外に相続財産を所有していると、日本での相続税の他に、相続財産のある外国から相続税が課されるケースもあるので注意しましょう。
ただし、海外に相続財産がある場合は控除制度を利用し、日本と外国で二重に納税する事態を回避できます。
日本と海外での相続制度の違い
海外には日本と相続税制度の異なる国がたくさんあります。
日本では「包括承継主義」が採用され、被相続人の全ての財産や債務(借金等)は直ちに相続人へ承継されると考えます。他に包括承継主義を採るのは、ドイツやフランス等の大陸法系の国となります。
一方「管理清算主義」が採用されているのは英米法系の国(アメリカ、イギリス等)です。
管理清算主義とは、遺産は一度「遺産管理人(人格代表者とも呼ばれ、相続人等からの申請で裁判所が任命した人)」の管理下に入り、清算手続きを経て相続人に分配される相続制度です。
清算手続きはプロベイト(検認裁判)と称され、一種の裁判手続として進められます。
海外資産を相続する場合はどの国の法律に則るべき?準拠法の考え方
国際相続で日本法または外国法を適用するかについて、法の適用に関する通則法第36条では「相続は、被相続人の本国法による」と明記されています。この考え方は「相続統一主義」とも呼ばれています。
原則として被相続人が有している国籍により、どの国の法律を適用するかが決まるわけです。
例えば、被相続人が日本国籍を有しているなら日本の法律が適用され、外国籍ならばその外国の法律が適用されます。
一方、相続分割主義とは準拠法を動産と不動産に分け、動産なら被相続人の本国法が準拠法となり、不動産ならばその所在地の法律を準拠法とする考え方です。
相続分割主義はアメリカやイギリス等が採用しています。そのため、例えばアメリカに被相続人の不動産がある場合、アメリカの法律に従う必要があります。
海外の不動産を相続する際の手続き方法を解説!
こちらでは、プロベイト(検認裁判)のある国と無い国に分け、不動産の相続手続きの流れをみていきましょう。
プロベイトのある国の手続き
被相続人の海外資産に関する手続きでは、プロベイト(検認裁判)が適用されます。
- 遺産管理人の選任:裁判所から選任され、海外の不動産等は遺産管理人の管理下に置かれる
- 遺産管理人が調査開始
- 相続税の申告・納付
- 裁判所から不動産の分配許可を得る
- 相続人が海外不動産を取得
必要書類は不動産所在地の国の言語に翻訳した「宣誓供述書」や、被相続人「死亡証明書」等を用意する必要があり、手続きは非常に煩雑です。
相続人が海外不動産を取得するまで、1年〜3年程度かかってしまう可能性があります。
プロベイトの無い国の手続き
プロベートが適用されない分、迅速に手続きを進められます。
- 相続人が遺産分割協議を行う
- 相続人それぞれが引き継ぐ遺産を取り決める
- 遺産分割協議書を作成する
- 不動産の名義変更等の手続きを行う
相続手続きの際は遺産分割協議書、相続人全員の実印、印鑑登録証明書、住民票等の添付が必要です。
外国籍の相続人や海外居住の相続人がいる場合、相続手続きの際に必要な住民票・印鑑登録証明書の代用として、領事館または日本大使館から「在留証明書」「サイン証明書」が取得可能です。
海外不動産の評価方法とは?
海外不動産には、日本国内の不動産評価に利用される路線価、固定資産税評価額に相当するものが存在しません。
この場合、海外不動産でも日本の評価方法で評価できるならそれで算定します。
評価できないならば、現地の不動産会社に査定を依頼する、海外の不動産事情に詳しい不動産鑑定の専門家へ評価を依頼する、という方法をとります。
海外不動産については為替も関係し、円安ならば不動産評価は高くなり、円高ならば評価は低くなります。
海外不動産などの資産を相続する際に注意すべき点!
まずは被相続人の所有している不動産がどこの国にあるのか、調査する必要があります。
英米法系の国(アメリカ、イギリス等)に不動産があれば、プロベイト(検認裁判)が必要となるので、それに向けた手続きをしなければいけません。
また、海外の不動産には小規模宅地等の特例も可能です。この特例では、一定の条件に合致すると相続税評価額が8割も軽減できます。
ただし、被相続人と同居していない相続人が不動産を取得したならば、その相続人が日本国籍を有し、かつ、日本に住所を持っている場合でないと、本特例は適用されません。
海外不動産などの資産の相続に日本の相続税申告は不要?
次の納税義務者に該当するならば、国内資産の他に海外資産も相続税の申告・納付が必要です。
(1)居住無制限納税義務者
日本国内に住所を有する相続人が該当します。
たとえ相続人が一時居住者でも、被相続人が次のケースに当たれば居住無制限納税義務者です。
- 日本国内に住所を有している
- 相続開始前10年以内に日本国内の住所があった
(2)非居住無制限納税義務者
相続時に日本国内に住所がないものの、日本国籍を有し、相続開始前10年以内に日本国内の住所を有していた相続人です。
この条件に該当しなくとも、被相続人が次のケースに当たれば非居住無制限納税義務者です。
- 日本国内に住所を有している
- 相続開始前10年以内に日本国内の住所があった
なお、被相続人・相続人双方が10年を超えて外国に住んでいるならば、相続税の申告・納付は不要です。
相続により取得した海外資産の登記方法や不動産の名義変更の方法を解説!
こちらではハワイに不動産資産がある場合の手続きと流れをみてみましょう。
ハワイではプロベイト(検認裁判)が適用されます。
- 遺産管理人の選任:不動産資産は遺産管理人下におかれる
- ハワイでの不動産資産の鑑定評価を行う
- 現地の法律の専門家に依頼し、プロベイト手続きを進める
- 遺産税の申告・納付をする:原則9か月以内
日本国内の手続きと異なり、プロベイト(検認裁判)を経た後でなければ相続手続きは進められません。
相続税の外国税額控除とは?適用条件や計算方法を解説!
日本の相続税では、原則として日本国内の相続財産の他、外国にある相続財産にも課税されます。これでは二重課税となり、相続人は重い税負担に苦しめられるかもしれません。
そこで設けられたのが「外国税額控除」制度です。本制度が利用できるならば、相続税を外国で既に納付した場合、日本で納付する相続税のうち外国の財産部分の割合を控除できます。
外国税額控除の計算式
外国税額控除の控除額は次のいずれかの低い方の金額となります。
- 外国で納付した相続税額
- 日本の相続税額 ×(外国の相続財産額の合計/相続人の相続財産額の合計)
具体例をあげて計算してみましょう。
(例)被相続人には、外国に1.5億円分の財産があった
- 為替相場(対顧客電信売相場):TTS120円
- 外国の相続税:合計60万ドル(7,200万円)
- 相続人子ども1名の相続分:国内財産3億円・外国財産3億円→日本の相続税1.2億円
外国で納付した相続税額7,200万円ですが
1.2億円×3億円/6億円=6,000万円
6,000万円の方が7,200万円より低いため、控除額は6,000万円を選びます。
外国税額控除の適用条件・手続き方法
本控除制度の適用条件は次の2つです。
- 相続や遺贈で、海外にある財産を取得した
- 海外の財産について、財産のある外国で相続税が課されている
外国税額控除の適用を受けるには確定申告が必要です。
- 相続税申告書第8表の外国税額控除枠に氏名、国名や税の名称、税額等を記載
- 相続税申告書第1表の「(17)外国税額控除額」欄に転記
忘れずに外国の相続税申告書等を添付し、納税地の税務署へ提出しましょう。
海外資産の相続で困ったら相談すべき専門家は?
被相続人に海外資産があると気付いたら、海外資産の相続手続きに詳しい弁護士へ相談した方が良いでしょう。
弁護士事務所によっては、当地の法律の専門家と連携して手続きを進めてくれます。
まずは、手続きの際に集める書類や、手続きが完了する期間の目安等、不明な点について尋ねてみましょう。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください