【相続トラブル】兄弟間で土地・不動産売却する場合の鑑定方法を解説!
Contents
土地や不動産の相続は揉めることが多い?
遺産の中には被相続人の預金や現金等の金融資産の他、被相続人の所有する土地や建物のような不動産という資産も含まれます。土地や不動産は金融資産のように簡単に相続する人間で分割できる財産とは異なり、分割することが難しく土地や不動産の価値も大きいことが一般的です。
そのため、土地や不動産は金融資産のように簡単に価値に応じて公平に分けることができない資産であるため、相続する人間同士で揉めることが多く見られます。
こちらでは、土地や建物のような不動産資産の相続で揉めるケースを三つ解説します。
揉めるケース①遺書がない
遺言書は被相続人が自分の財産を誰へ引き継がせるのかについて指定した書類です。例えば土地・建物は長男、現金は次男に引き継がせると遺言書で指定することができます。
遺言書がないと、誰が引き継ぐか兄弟間で決めることになり、兄弟で不動産資産を取り合いになる場合があります。
逆に、相続する土地・建物が山奥にあって、相続しても使い道が見当たらないこともあるでしょう。この場合、引き継ぎたい兄弟があらわれないまま、不動産の押し付け合いになって揉めるケースもあります。
そのため、遺言書で相続人を指定しておけば、このような兄弟間の揉め事も防止することが期待できます。
一方、遺言書があっても、兄弟の中で遺言書の内容に不満を持つ人はいるかもしれません。この場合は、相続人全員の合意が得られれば遺産分割協議をして、改めて遺産を誰が引き継ぐのか決め直すことはできます。
しかし、相続人全員の合意が得られなければ、遺言書通りに遺産は分割されるので、遺言書があると兄弟間で相続について長期間揉めることは避けられます。
揉めるケース②現金が少なく、不動産の占める割合が多い
被相続人の遺産のなかで不動産の占める割合が多いと、兄弟間で揉めるリスクが高くなります。主に遺産が現金や預金のような場合なら、相続人間で公平に分けることが可能です。
しかし、不動産の場合は各相続人間で等分にすることが難しい一面もあります。
例えば相続人が兄弟2人で、被相続人の遺産は住居・土地(合わせて固定資産税評価額(または路線価評価額)2,000万円)、預金200万円しかなかった場合、兄が被相続人と同居していた住居・土地をそのまま引き継ぎ、既に独立し別居している弟は被相続人が遺した預金200万円しか受け取れない事態もあり得ます。
弟は不動産を引き継ぐ気がなくても、金額的な開きが大きく不公平です。弟は兄に引き継いだ土地を売却し現金で分割するよう要求し、相続トラブルに発展することが想定されます。
なお、建物については、固定資産税評価額や路線価評価額の中に、建物の修繕の有無や劣化状況の有無が反映されておりません。
また、土地については、無道路地で市場価値の半値以下になる可能性や高低差があるところでは新たに擁壁を設置し直さなければならない場合の費用負担分の減額要素が加味されておりません。
このような場合には、のちのち争いが起きないようにするためにも、鑑定士へのご依頼を推奨致します。
揉めるケース③土地を共有したまま放置
相続人が兄弟の場合、土地の相続に関して、遺言書が作成されていなかったり、相続人間で話し合っても誰の単独所有にするか決まらなかったりすれば、その土地は兄弟が共有状態で引き継ぎます。
共有とは、所有権等ある一定の権利が複数の主体によって支配・利用されている状態を指します。共有になれば、相続人が兄弟2人の場合、1/2ずつの共有持分割合で土地全体を管理・使用できます。
しかし、この共有となった土地を処分売却する場合には、共有者全員の同意が必要です。また、共有のまま2次相続、3次相続と土地の相続が進むと、共有者がどんどん増えていく可能性がありさらに相続の手間を増やします。
その上、将来、土地を相続した方々との間で、土地の使用や売却等に関する深刻なトラブルが起きるケースも想定されます。
相続したらまずは土地の価値を調べる
相続人の一人であるご自分が土地を相続した場合は、引き継いだ土地の価値を知っておくことが大切です。土地の価値がわかれば、他の相続人との遺産分割で有利な分割割合となっていないか、逆に分与された遺産額は少ないのかがわかります。
土地の価値を把握していれば、もし他の相続人の間から分割内容に不満が出た場合、事前の対策をとりやすくなります。
そこで、土地の価値を知る方法としては、不動産鑑定士の立場からですと、原則「不動産鑑定評価に関する法律」により、第三者へ不動産の経済価値を提示する場合には、不動産鑑定士による不動産鑑定評価が必要になります。
しかし、現実的には、鑑定士への費用負担も考えられますので、一般的に行われている土地の価値を調べるための次の2つの方法を紹介します。
不動産会社・業者さんに査定を頼む
知り合いの不動産会社・業者さんがいれば、そこに直接出向き査定を依頼します。付き合いのある不動産会社・業者さんならば、相続に関する相談もしやすく、兄弟で揉めることなく分割できる方法(例えば不動産を売却し現金で等分する等)をアドバイスしてくれる場合もあります。
ただし、無料で査定してもらえる分、その後営業の電話等があることもあるので、その点ご留意下さい。
不動産一括査定サイトで査定する
最近ではパソコンやスマートフォンを使用し、相続した不動産の住所・坪数等の数項目の情報を入力し、複数の不動産会社に査定の依頼ができる一括査定サイトも登場しています。
一括査定サイトの利用は完全無料の場合が多く、気軽に各不動産会社の査定を比較することができます。このようなサイトを利用すれば、相続した土地の価値について大まかな金額が把握できます。
ただし、こちらも上記同様無料で査定してもらえる分、その後営業の電話等があるかと思われますので、その点ご留意下さい。
上記2つは、あくまで一般的な数値から割り出したものが多い為、標準的な土地・建物の状態であればあまり査定金額と実際の金額に変動はありません。
もし、個別事情が大きな場合にはその額を反映させる必要があります。
例えば、修繕したばかりの建物、リノベーションを施した建物等の増価要因、逆に雨漏りしている建物、施工不良による劣化状況が早い建物等の減価要因は、住宅(建物)診断ができる不動産鑑定士などへのご依頼を推奨致します。
土地を相続したときに兄弟で上手に分ける5つの方法
土地の価値が把握できたら、相続時、兄弟で揉めることなく分割できる方法を見つけやすくなります。こちらでは兄弟で上手に分ける方法を取り上げます。
遺産分割協議書
遺言書がない場合や、遺言書はあっても相続人の間から不満が出た場合、相続人間で遺産分割協議を行い遺産分割ができます。
被相続人の財産を調査後、土地の価格や現金の残額等を把握し、不動産資産や金融資産が均等に分割できそうだったら、相続人と話し合いつつ分割内容を決めていきます。
一方、遺産に不動産の占める割合が多い場合は、不動産を相続した人が売却してお金に変えて分割したり、不動産はそのまま相続するが他の相続人へ不動産の相続人からお金を渡して解決したり等、自由に内容を協議して決めることができます。
ただし、協議内容を文書化しないと話し合った記憶が曖昧になることもあるので「遺産分割協議書」を作成しましょう。
遺産分割協議を行う期間は法定されていません。しかし、相続税の納税期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内となっています。納税義務のある場合は、10ヶ月以内に協議を終えた方が良いです。
この期限に間に合わないと、相続人全員が法定相続分で相続税を納めることになったり、配偶者控除等の節税措置が受けられなくなったりします。
相続放棄
相続放棄は被相続人から引き継ぐ遺産より、被相続人の借金等のような負債が明らかに大きい場合、被相続人の権利・義務を一切引き継がない方法です。
ただし、この相続方法はたとえプラスの遺産であっても、遺産が分割し難い場合に利用されることもあります。
例えば、兄弟2人が相続人に該当した場合、被相続人の遺した預貯金がわずかで、土地・建物に2,000万円の価値があったなら、兄弟で不動産を分割する方法が考えられます。
しかし、兄弟は被相続人の遺した住居や土地に愛着があり、お金にかえることが忍びない場合もあります。弟が既に独立していて遺産も不要なら、兄に被相続人の不動産を引き継いでもらうため、弟が相続放棄をしても構いません。
相続放棄をすれば不動産が兄の単独所有となり、共有状態は解消されます。もちろん、この場合も兄弟間でよく話し合うことが大切です。
代償分割
代償分割とは、相続人の誰かがその不動産資産を継ぐものの、他の相続人達にはそれに見合ったお金を渡すという方法です。
例えば相続人が兄弟2人で、被相続人の相続財産が2,500万円の土地、500万円の現金というケースを考えましょう。
兄が土地を相続し、現金は弟が相続すれば明らかに不公平です。そのため、兄が代償金として1,000万円を渡し弟に納得してもらう方法が代償分割です。
ただし、代償金を支払う側にそれなりの支払い能力が無いと、なかなか難しい分割方法と言えます。
換価分割
換価分割は不動産資産を売却して、そのお金を相続人が分割する方法のことです。兄弟それぞれが既に土地を所有しており、共有したり、どちらかが単独所有したりしても、利用する予定の無い土地を相続するならば、売却して換価分割した方が公平に分割できることでしょう。
ただし、売却を希望してもなかなか買い手が現れず(隣地境界が未確認等の理由により)、すぐに現金化できない場合もあります。
また納税資金確保を理由としての売却の場合、不動産会社の方は、どうしても売却しなければならないというこちらの事情を鑑みて、市場価値の▲10%~▲20%で購入されることも十分考えられます。
文筆による現価分割
分筆による現物分割とは、土地を物理的に分割する方法です。例えば兄弟2人で分ける場合は、被相続人の遺した土地が300㎡なら、150㎡ずつに分割できます。
分割するので土地は小さくなりますが、兄弟それぞれが自由に使用し処分することも可能になります。
ただし、被相続人から引き継ぐ土地が十分広い面積でないと、分割後に狭くて住み難い土地となってしまい、土地の価値を落とす原因にもなります。
例えば、現在建物の利用状況を前提にして土地を区切ると、道路に対し約4.5mの間口が確保できない場合や、土地の面積が50㎡未満の時には市場価値が落ちてしまう場合などが考えられます。
兄弟などの相続人に勝手に土地や不動産を売却された場合の対処法
土地を相続し兄弟の共有となった場合、その土地自体は勝手に売却ができないものの、それぞれの共有持分は自由に売却できます。
しかし、兄弟の誰かの共有持分を買い取った者(不動産業者が多い)から、共有持分を有している他の兄弟へ、持分の売却を持ちかけられトラブルに発展するケースが考えられます。
そんな場合の対処法についてご紹介します。
共同持分買取業者と交渉する
兄弟の誰かが勝手に共有持分を売却しても、共有持分を依然として有している側が、売却を無効と主張するわけにはいきません。
売却自体は各共有者が自由に行える権利を持ち、法的な問題もありません。この共有持分を買い取った相手方は、共有持分買取業者の場合が多いです。
共有持分買取業者と話し合いを進め、納得できる売却金額が提示されたら、ご自分の共有持分を売却しても構いません。
そもそも共有持分の売却の際には、全体の土地の価値に持分割合を掛けるだけではなく、上記理由により購入者も同じ制約を受けますので、共有減価が▲10%~▲20%ほど発生します。
さらに、その他の共有者の人数や属性によりさらに権利の調整が大変になりますので、減価率がさらに高まる可能性が有ります。
また、買取業者はそれを前提にして事業としての生業をなさっている以上、そこが利益の源泉になりますことにご留意下さい。
共有物持分割起訴
共有持分の売却に関する話し合いがなかなか進まない場合、共有持分買取業者側が「共有物分割請求」をして、持分割合に応じた分割手続きが行われます。
この場合も共有持分を有する当事者同士が協議します。しかし、話し合いで解決できないと「共有物分割訴訟」を起こされ裁判による解決が図られます。
裁判所が問題となった共有物の分割方法を指定し、大概は当事者の一方が代償金を支払い取得する方法か、紛争となった物件を強制売却しお金で分ける方法がとられます。裁判を起こされてしまうと、多大な時間や労力をそちらへ費やすことになります。
そのため、なるべく早く弁護士のような法律の専門家へ業者との交渉を依頼し、当事者同士の交渉の段階で解決できるような対策をとる必要があります。
相続した土地や不動産を兄弟間で売買する時の鑑定方法
相続した土地や不動産を兄弟で売買する場合は、親族であることを理由にかなり低額で売買されるケースもあります。しかし、時価と売却額の差額があまりにかけ離れていると、税務署から「みなし贈与」として扱われ、通常の相場との差額に対し贈与税が課されることもあります。
そのため、兄弟間の売買でも相場価格からかけ離れていない、適正な価格設定が必要です。その査定方法としては次の方法があります。
前記理由により、第三者へ不動産の価格を提示できるのは不動産鑑定士のみですので、不動産鑑定士への依頼が大前提となります。
不動産鑑定の場合は、不動産鑑定士という鑑定の専門家へ依頼して行います。正確な鑑定が期待できますが、有料の鑑定となります。
鑑定費用を負担してでも効果があるとご判断される場合にはよろしいかと思われます。
ただし、標準的な土地の規模形状や築年数に応じた標準的な建物の状況であれば、不動産鑑定士に依頼せずに、以下の2つが一般的に考えられています。
・路線価で求める
路線価を用いて不動産価格を求める方法もあります。路線価とは、道路に面した土地の1㎡あたりの評価額のことです。路線価は、国税庁のホームページ「路線価図・評価倍率表」で確認することができます。
ご自身で計算される場合には、否認される可能性もありますので、税理士先生にお願いすることが必須です。
・不動産会社・業者さんの査定
不動産会社・業者さんの査定は、前記記載したように実際に不動産会社・業者さんへ出向いて依頼してもらう方法と、一括査定サイトを利用し査定してもらう方法です。
この方法は、不動産鑑定士の立場からですと、正直お控えいただいた方がよろしいかと存じます。現実的には鑑定費用が割高でということもあろうかと思われますが、前記記載の通り、「不動産鑑定評価に関する法律」により、不動産鑑定士以外の者が、不動産の経済価値を判定することは禁止されています。
そのため、まずは、路線価評価をご自身でなさってから、不動産会社さんへどれくらいの相場か聞かれた上で、税理士先生へご相談されるとよろしいかと思われます。
ただし、お尋ねされた不動産会社より、その後の営業の電話等があることにどうぞご留意下さい。
信頼できる不動産会社・業者さんへの御問い合わせがよろしいかと思われます。
なお、不動産鑑定士にご依頼される場合にも、最終的に税務申告をされる場合には、税理士先生を介して申告されることを推奨します。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください
この記事を監修したのは…
不動産鑑定士・住宅診断士・相続診断士
皆川 聡(みなかわ さとし)
大学数学科卒業後銀座四丁目の懐石料理店にて板前修業等(板前歴7年で挫折)
前職大手不動産鑑定会社に約8年間従事(担当件数は約2,500件)
大手企業のM&Aを含む財務諸表関連評価等、多種多様な物的・権利的にも複雑な案件のさまざまな依頼目的に応じた評価を担当
平成27年4月法人設立後 住宅(建物)診断を反映した鑑定評価を得意とし、赤外線カメラなどの建物診断の機器を活用した鑑定評価
また、2020年10月には、相続税の還付請求で、東京地裁において国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。