共有物分割協議の必要性や手続き方法を解説!協議書の書き方や注意点も!
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共有物分割とは?遺産分割との違いは?
共有物分割とは、現在所有している不動産の共有状態を解消する方法です。
不動産を共有するようになった理由は、主に次の2つです。
- 不動産を所有する被相続人が亡くなり、遺産分割を行なうまで、各相続人の相続分に応じ不動産を共有するよう決めた
- 遺産相続による理由以外で不動産を共有した
「遺産相続による理由以外」とは、例えば友人と一緒に住みたくて、不動産の共有したという場合が考えられます。
つまり、共有物分割は遺産分割を行う他に、共有状態を解消したい場合にもとられる方法と言えます。
共有物分割の方法3つを解説!
こちらでは、共有物分割の方法である協議・調停・訴訟の3つを取り上げましょう。
共有物分割を協議する
共有する所有者同士の話し合いで共有不動産をどうするのかを決めていきます。共有者間で納得できるならば、自由に取り決めて構いません。
共有不動産が土地なのか建物なのかで、次のような解決方法が考えられます。
(1)土地の場合
- 土地を分筆し等分に分けて解決する(現物分割)
- 土地を所有者の1人が所有するが、土地を手放す所有者には持ち分に応じた金銭を提供する(代償分割)
- 土地を第三者に売却し、それで得たお金を、持ち分に応じて各共有者に分配する(換価分割)
(2)建物の場合
- 建物を所有者の1人が所有し、建物を手放す所有者には持ち分に応じた金銭を提供する
- 建物を第三者に売却し、それで得たお金を、持ち分に応じて各共有者に分配する
調停で解決する
分割の理由が遺産相続に関するものか、遺産相続以外かで調停方法は異なります。
- 複数の相続人で共有していた不動産を分割する場合→家庭裁判所で「遺産分割調停」
- 遺産相続以外の理由で共有していた不動産を分割する場合→簡易裁判所で「共有物分割調停」
いずれの場合も、裁判所が関与するものの、最終的には当事者の合意で問題解決を図る方法です。
調停では、まず申立人と相手方をそれぞれ別の待合室で待機しなければいけません。
その後、主に調停委員2名が会議室のような部屋で、申立人と相手方の主張を個別に聞きます(一方の当事者の主張が終わるまで他方は別室で待つ)。
そのうえで、調停委員は当事者の溝を埋めるアドバイスや、解決案を提案し、当事者の合意を目指します。
審判・訴訟で解決する
調停がうまくいかなかった場合は、審判や訴訟を提起し解決を図ります。
- 複数の相続人で共有していた不動産を分割する場合→家庭裁判所で「遺産分割審判」
- 遺産相続以外の理由で共有していた不動産を分割する場合→地方裁判所で「共有物分割訴訟」
遺産分割審判の場合、調停委員の意見や当事者の主張等、一切の事情を考慮し裁判官が決定を下します。
共有物分割訴訟の場合は、当事者は原告と被告に分かれ、裁判所で各自の主張・証拠の提出を行い、裁判官が一切の事情を考慮し、判決を言い渡します。
共有物分割の手続き方法を流れに沿って解説!
こちらでは、遺産相続の理由以外で不動産の共有物分割を目指す手続きの流れについて解説します。
共有物分割調停
共有物分割調停の流れは次の通りです。
- 原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に調停申し立てを行う
- 調停期日にそれぞれの言い分を主張する
- 調停委員とアドバイスや解決案を受け入れ当事者が合意する
- 調停調書作成する
申立てから調停成立までは3ヶ月〜半年くらいかかります。
申立ての際は主に次の書類が必要です。
- 申立書
- 収入印紙・郵便切手
- 証拠書類の写し:共有不動産に関する書類
共有物分割訴訟
共有物分割訴訟の流れは次の通りです。
- 原則として相手方の住所地を管轄する地方裁判所に訴訟提起
- 当事者が原告と被告に分かれ主張・証拠を提示
- 裁判官が和解を提示、双方が納得すれば和解成立
- 和解が成立しなければ裁判官が判決を下す
- 裁判官が適切であると考える分割方法(現物分割、換価分割、代償分割)を判決で命じる
訴訟提起から判決までは半年〜1年くらいかかります。
申立ての際は主に次の書類が必要です。
- 訴状
- 収入印紙・郵便切手
- 不動産の固定資産税評価証明書
- 不動産の全部事項証明書
共有物分割協議の必要性とは?
共有不動産の所有者間で調停や訴訟という形で解決を図ると、数ヶ月〜1年も解決までに時間を要します。
しかし、当事者で話し合い、納得して合意ができるのなら、分割のための作業をすぐに開始できます。なるべく調停や訴訟をする前に協議で解決した方が良いでしょう。
もちろん口約束で合意するのではなく、取り決めた内容を忘れないように、書面にしっかりと残す必要があります。
共有物分割の協議で取り決めた内容を書面化したものは「共有物分割協議書(合意書)」と呼ばれています。
共有物分割協議書の書き方をケース別に解説!
こちらでは、共有物分割協議書に記載する共通の内容、ケースごとに記載するべき内容等を説明します。
共有物分割協議書に記載する共通の内容
(1)合意した結論、(2)何を共有分割するのか、(3)お金を支払う際の方法、(4)支払いの引き換えに何をするのか等を明記します。
それぞれの具体例(代償分割)は次の通りです。
(1)合意した結論
「山田〇〇と小林〇〇は、共有物の分割について下記の通り合意した。」
(2)何を共有分割するのか
「第1条 山田〇〇と小林〇〇は、両者が共有する下記の土地(または建物)を山田〇〇の単独所有にすることとし、小林〇〇に対する償金を〇〇〇〇万円と定める。」
(3)お金を支払う際の方法
「第2条 山田〇〇は小林〇〇に対し、令和5年10月1日限り、第3条に定める所有権移転登記を受けるのと引き換えに、前条の金員を小林〇〇方に送金する方法で支払う。」
(4)支払いの引き換えに何をするのか
「第3条 小林〇〇は山田〇〇に対し、令和5年10月1日限り、第2条に定める代金の支払いを受けるのと引き換えに、本件土地(または建物)につき第1条の共有物分割を原因とする所有権移転登記を行う。」
ケースごとに記載するべき内容
共有分割が土地か建物かで、それぞれ次のように記載します。
(1)土地の場合
次のように所在・地番・地目・地積を明記します。
(例)
土地
所在 神奈川県○○市○○町
地番 〇番〇号
地目 宅地
地積 〇〇平方メートル
(2)建物の場合
次のように所在・家屋番号・種類・構造・床面積を明記します。
(例)
建物
所在 神奈川県○○市○○町
家屋番号 〇〇番
種類 居宅
構造 木造2階建
床面積 1階〇〇平方メートル
2階〇〇平方メートル
なお、共有分割する土地か建物の情報は、第1条のすぐ下に記載した方がわかりやすいです。
共有物分割協議書は必ず作成すべき?不要なケースとは
共有不動産を手放す代わりに代償金を受け取る代償分割ならば、代償金額を明示し、代償金の支払いと持分移転登記を同時に行うのが通常です。
もしも、共有者の一方が約束を忘れたり、約束を破ったりすれば、共有物分割の手続きに支障が出てしまいます。そのため、共有物分割協議書を作成し、双方とも内容をよく確認する必要があります。
一方、共有不動産を売却し、持分割合に応じて代金を分配する方法(換価分割)ならば、お金を分けるだけなので協議書は必要ありません。
その他、現物分割の場合には分筆登記を行い、それぞれ分けるだけなので、こちらも協議書は不要です。
共有物分割協議書を作成する際の注意すべき点とは?
代償分割や換価分割を行う場合は、協議書の作成前に、共有不動産の現在の価値を確認しておく必要があります。
土地の場合は固定資産評価証明書(不動産が所在する市町村役場で取得可能)や、国税庁のホームページ「財産評価基準書」を参考に、売却価格を決めた方が良いでしょう。
また、建物の場合は不動産会社に相談し、見積もりをしてもらえば正確な評価額がわかります。
共有物分割協議を行う上での留意点!
共有物分割協議は話し合いである以上、話し合いが不成立に終わる可能性もあります。更に調停での話し合いの継続は可能ですが、共有物分割訴訟を提起しても構いません。
ただし、協議が調わなかった事実を残しておかないと、訴訟の際に相手側から「協議など行われていなかった。」と反論される可能性があります。
そこで、共有者全員に対し、事前に共有物分割協議を申し入れる内容証明郵便を送付しておいた方が無難です。
共有分割は相続時にトラブルが起きやすい?
こちらでは、相続不動産を共有していた相続人と連絡がとれなくなった事例について取り上げます。
【経緯】
被相続人である親が単独で不動産を所有していたものの、遺言を残さなかったため子A・子B2人による共有となります。
【問題】
子Aは遺産分割協議で不動産をどうするか話し合おうとしましたが、もともと疎遠だった子Bと連絡がつかなくなってしまいました。
結局、子Bと話し合えない状態が続き、10年間も放置する状態となります。
このままだと子A・子Bが亡くなった場合、更に共有不動産を相続する相続人(例:子A・子Bそれぞれの配偶者や子供たち等)が増加し、不動産にかかわる権利関係が複雑化する可能性もあります。
【対処法】
2023年4月1日に開始された「所在等不明共有者持分取得制度」を利用しましょう。
本制度は、裁判所での手続で直接不動産の共有持分を取得できます(民法第262条2第1項)。
まずは地方裁判所への申立て、異議届出期間等の公告、裁判所が決めた金額を一定期間内に供託後、行方不明となった共有者の共有持分を取得できます。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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