死亡退職金に相続税はかかる?非課税枠の計算方法や受取人を解説!
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死亡退職金とは何?遺族年金との関係は?
死亡退職金とは、事業所(会社等)に長年勤務してきた故人へ支給されるはずの退職金を、遺族等が受け取る制度です。
本支給制度は、事業所のすべてで導入しているわけではないものの、勤務先に退職金制度がある場合支払われ、支給金額も勤務先によって異なります。
一方、遺族厚生年金は故人の受給するはずだった老齢厚生年金を遺族が受け取る制度です。故人が厚生年金保険へ加入していた場合等に受け取れます。
死亡退職金と老齢厚生年金の大きな違いは次の通りです。
- 死亡退職金の支給:退職金制度のある事業所のみに限定
- 遺族厚生年金の支給:被保険者となるべき従業員を使用している事業所では、必ず厚生年金保険に加入しなければいけないので、ほとんどの事業所で遺族厚生年金が支給される
つまり、退職金制度は事業所が任意で設定するものなので、死亡退職金を受け取れるかどうかは事業所次第といえます。
死亡退職金はみなし相続財産に該当する!その理由や範囲は?
「みなし相続財産」とは、被相続人が亡くなったとき受け取る財産を指します。このような財産も基本的に相続税の課税対象です。
死亡退職金も被相続人が亡くなったとき受け取れるお金なので、みなし相続財産に該当します。
支給されても必ず相続税が課されるわけではなく、みなし相続財産に該当するのは次のようなケースです。
- 死亡退職金で支給金額は被相続人の死亡後3年以内に確定している
- 生前に退職し支給金額は被相続人の死亡後3年以内に確定した
つまり、被相続人が死亡し、3年経過後に遺族が受け取った死亡退職金はみなし相続財産の範囲外となり、所得税(一時所得)が課されます。
死亡退職金を受け取ることができる人とは?
死亡退職金の受取人が指定されていない場合、基本的には法定相続人が受取可能です。配偶者(内縁の配偶者は除く)は確実に死亡退職金を受け取れます。
その他にも、被相続人の子(子が相続時に死亡していれば孫)が第1順位、次いで被相続人の親が第2順位、被相続人の兄弟姉妹が第3順位として法定相続人となります。
なお、死亡退職金の受取人を確認する際は「退職給与規定」をみてみましょう。
事業所が設けている「退職給与規定」に「遺言で死亡退職金の受取人指定が可能」と明記されていれば、遺言で指定された人に死亡退職金が支給されます。
死亡退職金の受け取り方を解説!手続きの有効期限や必要書類
請求期限は故人の勤務先の規定で決められているので、勤務先に問い合わせる等して確認してみましょう。
請求する際に必要な書類は次の通りです。
- 退職金請求書:故人の勤め先で取得可能
- 医師の死亡診断書
- 故人の戸籍謄本等:故人の死亡記載のある戸籍謄本、本籍地の市区町村役場で取得(手数料450円~750円)
- 受取人の戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得(手数料450円)
なお、事業所側は受取人から請求のあった場合、請求日から7日以内(土日・祝日を含む)に、死亡退職金を支払う必要があります(労働基準法第23条)。
死亡退職金には相続税の非課税枠がある!非課税限度額の計算方法を解説!
死亡退職金が支給された場合、そのまま被相続人の遺産総額へ加えられるわけではありません。
死亡退職金には「非課税限度額」があり、非課税限度額から控除された金額だけが相続税の対象となります。
非課税限度額は「500万円×法定相続人の数」で算定します。
例えば、死亡退職金1,200万円で法定相続人に配偶者と子2人がいる場合は
500万円×3人=非課税限度額1,500万円
死亡退職金1,200万円-非課税限度額1,500万円=-300万円
こちらの例では支給された死亡退職金は相続税の課税対象となりません。
死亡退職金を受け取った場合の相続税課税対象額の計算方法を解説!
こちらでは、死亡退職金等の遺産相続があった場合の相続税課税対象額について、例をあげて計算してみましょう。
(例)死亡退職金2,000万円、預金2,000万円、不動産3,000万円が相続財産となった
- 法定相続人:配偶者・子A(長男)・子B(次男)の3人
- 葬儀費用:400万円
まず死亡退職金額から非課税限度額を控除します。
死亡退職金2,000万円-非課税限度額(500万円×3人)=500万円
死亡退職金500万円分と預金2,000万円、不動産3,000万円を合算します。
死亡退職金500万円+預金2,000万円+不動産3,000万円=5,500万円
合算した5,500万円から葬儀費用400万円を控除します。
5,500万円-葬儀費用400万円=5,100万円
課税価格の合計額は5,100万円となりますが、相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)から更に控除が可能です。
5,100万円-基礎控除4,800万円=300万円
相続税課税対象額は300万円となります。
死亡退職金で相続税の節税対策をする方法
被相続人が会社経営者だった場合、被相続人の保有する自社株も相続財産として相続税の課税対象です。
その際、死亡退職金を「未払い退職金」(負債)として計上すれば、会社の純資産が減少し、自社株の評価額は下がります。
自社株の評価額が下がれば、相続税の負担も軽減される可能性があります。被相続人が会社経営者であっても、死亡退職金の支給を検討してみましょう。
海外赴任者の死亡退職金は課税対象になる?
海外赴任者の場合は、勤務先の会社との指揮命令関係は継続しているので、会社の規定が適用されます。会社に退職金制度が設けられているなら死亡退職金も支給されます。
海外赴任者が海外で亡くなっても、遺族が死亡退職金を受け取っている以上、相続税の対象となります。
死亡退職金に関する疑問に回答!
こちらでは、よくある質問について回答しましょう。
相続放棄をしても死亡退職金を受け取れるのか?
死亡退職金はあくまで受取人固有の財産なので、たとえ受取人が「相続放棄」をしていても、問題なく受け取れます。
相続放棄とは、例えば被相続人の借金・負債がプラスの財産(不動産資産・金融資産)より上回る場合、相続権の全てを放棄する方法です。
死亡退職金は本来の相続財産に該当せず、税法上相続財産となり相続税の課税対象となるものの、相続放棄の対象財産とはなりません。
弔慰金と死亡退職金の違い?
弔慰金は基本的に相続税を課せられない点が死亡退職金と異なる点です。
弔慰金とは、勤務先が職務に尽力してくれた故人を弔い、遺族を慰めるために送られるお金です。そのため、相続人等が弔慰金として花輪代や葬祭料の支給を受けても、非課税財産となります。
ただし、次のいずれかのケースに該当すると死亡退職金として扱われ、相続税の課税対象になってしまいます。
- 業務上の死亡ならば、死亡時の賞与以外の普通給与(給料、俸給等)3年分に相当する額を超えた金額
- 業務上の死亡を除き、死亡時の賞与以外の普通給与半年分に相当する額を超えた金額
生前退職金と死亡退職金はどちらが得なのか?
生前退職金の場合も、退職金全額が所得税の課税対象となるわけではありません。
下表のように退職所得控除額から差し引くことができます。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
20年以下 | 40万円×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数ー20年) |
例えば勤続年数25年・退職金2,000万円の場合、所得税の金額は次の通りです。
20年超なので800万円+70万円×(25年ー20年)=退職所得控除額1,150万円
計算式は「(退職金-退職所得控除額)×1/2」なので、
(退職金2,000万円-退職所得控除額1,150万円)×1/2=425万円
課税退職所得金額は425万円となり、所得税率20%・控除額427,500円なので
課税退職所得金額4,250,000円×所得税率20%-控除額427,500円=422,500円
復興特別所得税(422,500円×税率2.1%)も含めると、所得税は431,372円となります。
一方、死亡退職金2,000万円で他の資産1,000万円、法定相続人が2人いた場合の相続税の金額は次の通りです。
2,000万円-非課税限度額(500万円×2人)=1,000万円
死亡退職金1,000万円+他の資産1,000万円=課税価格の合計額2,000万円
課税価格の合計額2,000万円から相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×2人)を差し引きます。
課税価格の合計額2,000万円-4,200万円=-2,200万円
相続税は0円となります。
事例で見ると、死亡退職金の方が税負担の軽減を図れる可能性は高いです。
相続診断士に相談を
死亡退職金の税負担に関して不安がある場合は、相続全般の専門知識を有する「相続診断士」へまず相談してみましょう。
相続診断士は有資格者なので、相談者の悩みや不明点へ的確なアドバイスを行います。相続診断士の助言を受けつつ、円滑に相続手続きを進められるはずです。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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