現金での相続はお得?メリット・デメリット、計算方法や注意点を紹介!
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現金で相続する場合の課税金額は?計算方法も!
遺産相続の際に課される税金が相続税です。この相続税の税額計算は、土地・建物のような不動産と、現金や預金・債券等の金融資産に分け、別々に算定するというわけではありません。
被相続人が所有していたあらゆる財産の合計から、基礎控除額等を差し引き、税額を計算します。
現金を含めた遺産の計算方法
計算方法は次の手順で行われます。
1.相続人が取得する財産の評価額を全て合算(死亡保険金などのみなし相続財産がある場合や、相続時精算2.課税を利用した場合、その分も加算)
3.合算した金額から被相続人の債務(借金)や葬儀費用を差し引く
4.被相続人が亡くなる3年以内に行った生前贈与の総額を加える
5.課税価格(1-2+3)から基礎控除額を差し引く
相続税で利用できる基礎控除額の計算式は次の通りです。
「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
基礎控除額以内に遺産総額が収まれば、相続税はかかりません。
ある事例をもとに計算
ここでは例をあげ、遺産総額の計算をしてみます。
(例)相続人3人(配偶子・子2人)で、被相続人の遺産が現金・不動産(土地)の場合
・現金:2,500万円
・不動産評価額:3,000万円
・被相続人の借金:200万円
・葬儀費用:500万円
・その他:相続時精算課税を利用なし・3年以内に行った生前贈与なし
最初に、相続人が取得する全財産の価格を計算してみましょう。
現金2,500万円+不動産評価額3,000万円=5,500万円
次に被相続人の債務や葬儀費用を差し引き、課税価格を計算します。
5,500万円-(200万円+500万円)=4,800万円
さらに基礎控除額を計算します。相続人は3人なので
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
課税価格から基礎控除額を差し引きます。
4,800万円-4,800万円=0円
基礎控除額の枠内に課税価格が収まるので相続税はかかりません。このように、ご自身でも相続税がかかる・かからないを大まかに判断することができます。
現金で相続するメリット・デメリットを紹介
現金の相続は相続人にとって利点もあれば、気を付けなければいけない点もあります。
現金で相続するメリット
メリットは主に次の3つです。
(1)現金なので平等に分けられる
現金の相続の場合、遺産分割を相続人間で平等かつスムーズに終えられることが多いです。遺産分割協議で遺産を分ける場合は、相続人全員で現金がいくらあるかを確認し、公平に分割することが可能です。
被相続人が遺言書で分与する相続人を指定する場合も、生前に不動産を売却し現金化しておいて、残った現金を遺言で平等に分割するよう明記すれば、相続する人の間で揉めることも回避できます。
(2)現金なので使途が自由
相続人にとっては現金で相続した方が、使い道が自分で選べるので便利になる場合もあります。取得した現金を生活費やローンに充てたり、そのまま使用せず貯金したりしても構いません。
(3)取得した現金で相続税を支払える
相続した現金で相続税を支払える点もメリットです。相続税が課される場合でも、相続人の預貯金等から出費をする必要がありません。納税で家計が圧迫されることを回避できます。
現金で相続するデメリット
デメリットは主に次の2つです。
(1)課税価格に額面のままカウントされる
現金相続の場合、額面が相続税の計算のもととなる課税価格になります。例えば1,000万円の現金がある場合は、同額の1,000万円で評価されます。評価減などはされません。
一方、土地ならば時価1,000万円である場合、相続税評価額は約800万円にとどまります。つまり、評価額が時価の8割程度に抑えられるのです。
(2)すぐに収益化が難しい
現金を相続した場合、そのままの状態で収益化することはできません。
土地の場合なら、そのまま他人に賃貸すれば賃料が受け取れます。現金は、株や債券等へ投資して利益をあげる、新たに不動産を買い他人へ賃貸として賃料を得る等、収益化するには手間がかかります。
現金で相続する際の注意点&手続きとは
現金を相続する場合、分割しやすいため気を付けるべき点もあります。こちらでは、現金で相続する場合の注意点と手続きを解説します。
現金を相続する場合の注意点
現金は各相続人間で分けやすいですが、相続人の一部が他の相続人に黙って隠匿しやすい財物でもあります。ある相続人が被相続人の自宅で多額の現金を発見した場合、その相続人が着服する事態も考えられるのです。
その後、隠匿した事実が発覚して、相続人間でトラブルとなるケースも想定されます。被相続人となる予定の方は、このようなトラブルを避けるため、ご自宅に多額の現金を保管しておくことは避けた方が無難です。
預金口座に入金しておけば、金融機関側が被相続人の亡くなったことを把握した場合、すぐさま被相続人の口座を凍結します。これは、相続人による対象口座からの勝手なお金の引き出しを防止するためです。
このような対策を金融機関側が行ってくれるので、現金はなるべく銀行に預けておきましょう。
相続する際の手続き
手続きは現金を含めた遺産の調査や確定、相続人間での遺産分割協議等を経て進められます。被相続人が亡くなった後の手順は次の通りです。
1.遺言書の確認、財産調査、相続人の確定
2.遺言書があればそれに従い遺産分与、または、遺言書が無い場合・もしくは遺言書があってもそれと異なる内容で遺産を分割する場合は遺産分割協議を行う
3.手続きを進める(預金は金融機関に口座凍結解除の手続き、不動産は名義変更手続き等)
4.課税価格が基礎控除額を超える場合、相続税申告を行い納税する(被相続人が死亡したことを知った翌日から10か月以内)
相続税申告の際は主に次の書類を、被相続人の住所地を所轄する税務署へ提出します。
・相続税の申告書
・被相続人の戸籍謄本と改製原戸籍
・被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票
・相続人全員の戸籍謄本・住民票
・相続人全員のマイナンバー確認書類
・遺産分割協議を行った場合は、相続人全員の印鑑登録証明書
・土地・建物が相続財産の場合、登記簿謄本・固定資産評価証明書等
・預貯金が相続財産の場合、残高証明書・通帳の写し等
タンス預金に注意!現金相続で申告しないとどうなるの?
被相続人の遺産を公平に相続人間で分割し、相続税の申告・納付を行ったつもりでも、被相続人の所有していた家屋から、申告した遺産とは別に多額の現金が見つかることもあります。
いわゆる「タンス預金」が見つかった場合、速やかに税務署へ修正申告をしなければ、財産を隠蔽したと疑われる可能性があります。
加算税・延滞税
もし、税務職員の調査にて、タンス預金が発見された場合、申告も納付もしなかったということになります。そのため、基本的に追徴課税として加算税・延滞税の両方が課せられます。
(1)加算税
相続人が適切に申告しなかったときに加算される税金です。加算税は次の3種類です。
・無申告加算税:無申告の場合、納付すべき税額50万円まで15%加算(50万円超:20%)される。
・過少申告加算税:申告した税額が過少であった場合、新たに納める税額が50万円までは10%加算(50万円超:15%)される。
・重加算税:相続財産を意図的に隠そうとした場合、追加される相続税に無申告なら40%加算、過少申告なら35%加算される。
(2)延滞税
相続人が納付の期限内に納付しなかったとき課される税金です。納付期限の翌日~納付日まで課せられ、納付期限から2か月以内7.3%、それ以降14.6%が延滞税の税率の上限とされています。
刑罰が科される場合
課税されるのが嫌で、このタンス預金の事実を秘密にして申告しなければ、最悪の場合、刑事罰を受けることもあります。
偽りなどその他不正な行為で納税を免れていたならば、脱税犯が成立し、10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこれを併科されます(相続税法第68条第1項)。
また、わざと期限内申告書を提出期限までに提出せず、相続税を免れた場合は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金またはこれを併科されます(同法第68条第3項)。
その他、正当な理由がないのに期限内に申告しなかったり、修正申告をしなかったりすれば、1年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処されます(同法第69条)。
現金で生前贈与する場合、隠すことは可能?賢い相続方法もご紹介!
現金を被相続人から生前贈与で相続開始前に受け取り、隠すような方法も行うべきではありません。税務署の調査で多額の生前贈与が発覚すれば、贈与税を申告しなかったペナルティとして、無申告加算税・延滞税等が賦課されることになります。
贈与税を抑えつつ、適法に生前贈与を受ける方法として次の2つをご紹介します。
(1)暦年贈与
基礎控除額の110万円を超えない範囲で毎年贈与する方法です。1月1日~12月31日までの1年間にもらった財産の合計額が受贈者1人につき110万円以内なら、申告も納税も不要です。
(2)相続時精算課税制度
贈与された財産の合計額が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができる制度です。ただし、この制度を利用した場合、贈与を受けた財産は、相続税の申告時に、遺産の評価額に合算しなくてはなりません。
相続を現金と不動産でするのはどちらがお得?
相続を現金で行うと、その金額がそのまま評価額となります。例えば、土地の評価額のように時価の8割まで軽減されるような措置はありません。
相続税を抑えたいなら、生前に現金で不動産を購入し、相続開始時その不動産を相続人に引き継いでもらった方がお得です。
しかし、現金のままでも相続税の基礎控除額の枠内に遺産総額が収まるときは、評価減できない現金でも問題はありません。
また、不動産は分割しにくく、相続人間で揉める可能性があります。トラブルを回避したい場合は、資産をなるべく売却するなどして、現金で相続させた方が良いと言えるでしょう。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
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