成年後見制度の問題点とは|現状やデメリットも解説!

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終活

成年後見制度の利用者数や選任される人とは?現状を把握!

判断能力が不十分な方々を法的に保護・支援するために利用されている成年後見制度。この制度を利用するには、家庭裁判所に成年後見人等選任の申立てを行い、裁判所に成年後見人等を選んでもらう必要があります。こちらでは成年後見制度の現状を解説します。

成年後見制度の現状

令和2年12月末日時点における成年後見制度利用者数は合計で232,287人で、近年では対前年比で3%前後の増加が毎年続いています。その中で令和2年に成年後見を申し立てた件数は37,235件、そのうち令和2年中に終局した36,804件の中で認容されたケースは35,132件となっています。つまり、約95.5%の割合で制度利用が認められているのです。

成年後見人等に選任された者の種別とその件数は次の通りです。

成年後見人等に選任された者の種別件数
親族7,242件
弁護士7,731件
司法書士11,184件
社会福祉士5,437件
市民後見人311件
その他4,859件
合計36,764件

表の通り、後見を必要とする本人の親族が必ずしも選ばれるわけではありません。親族以外の「専門職後見人」の件数が29,522件と、全体の8割以上を占めています。

(参照:最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 ―令和2年1月~12月―」)(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2020/20210312koukengaikyou-r2.pdf)

成年後見人等は親族と専門家のどちらが良いのか

成年後見人等の選任は家庭裁判所の判断に委ねられます。前述したように親族が就任できる割合は2割以下となっています。そのため、家族が就任を希望したとしても、必ず実現するわけではありません。

また、成年後見制度は法的なサポートとなるので、親族に法律の知識があまりない場合、いろいろな法的手続きに不慣れである場合も多く、この場合にはやはり専門家の就任が最適と言えます。

成年後見制度が必要なケースをご紹介!

成年後見制度の中の法定後見とされる分野には、判断能力の程度に応じて「補助」 「保佐」 「後見」の3つの種類があります。こちらでは、成年後見人等(補助人・保佐人・成年後見人)がどのようなケースで必要となったかを紹介します。

ケース1:補助開始事例

主婦であるAは最近家事のミスが増え、また、貸金業者から借金を繰り返すようになりました。このままでは、Aの行った不要な借金を家族が代わって取り消すことはできません。

その後、Aには次の事実が判明し、家族は成年後見制度を利用することになります。

・A:軽度の認知症と診断される
・B:Aの長男で、補助開始の申立て+借金に関する同意権付与の審判の申立てを行う

→家庭裁判所の審判を経てAの「補助」が開始され、Bが補助人に選任されて同意権が与えられました。

[結果]

AがBの同意を得ずに貸金業者から借金をした場合、Bはその契約を取り消すことができるようになりました。

ケース2:保佐開始事例

Aは夫が亡くなってから一人暮らしをしていましたが、最近では物忘れがひどくなっています。日常生活に支障をきたす場面が増えたため、Aがそれまで住んでいた自宅を売却して長男Bと同居することになりました。しかし、Aが売却手続きを進めることは難しく、かといってBが売却を行うわけにもいきません。

その後、Aには次の事実が判明し、Bは成年後見制度を利用することになります。

・A:中程度の認知症と診断される
・B:保佐開始の申立て+持ち家売却代理権付与の審判の申立てを行う
・B:居住用不動産の処分についての家庭裁判所の許可を得る

→家庭裁判所の審判を経てAの「保佐」が開始され、Bが保佐人に選任されて代理権が与えられました。自宅の売却については、本人の生活や心身の状態に大きな影響を与える可能性があるため、家庭裁判所の許可を得る必要もあります。

[結果]

BはAの代理人として、Aの自宅を売却できるようになりました。

ケース3:後見開始事例

Aは統合失調症を発症し長期間入院しています。Aの母親が亡くなり、Aが唯一の相続人となりました。Aの親族は叔父Bだけです。しかし、Aでは被相続人である母親の残した財産を管理することが困難です。

その後、適切な相続財産の管理を行うため、Bは成年後見制度を利用することになります。

・A:既に統合失調症と診断され入院中
・B:後見開始の審判の申立てを行う

→家庭裁判所の審判を経てAの「後見」が開始されました。裁判所はBが高齢で後見人への就任は困難、また相続手続きには高度な専門知識を要すると判断しました。そこで、成年後見人として司法書士を選任、成年後見監督人として専門職団体が設立した公益社団法人を選びました。

[結果]

今後は成年後見人となった司法書士が、Aのために相続手続き・相続財産の管理を行なっていきます。

成年後見制度の問題点を解説!

成年後見制度は法的なサポートを行える反面、次のような問題点も指摘されています。

後見の取下げや選任された後見人の変更等は基本的に不可

成年後見に関する申立て手続きには費用がかかり、実費は15,000円程度です。医師による鑑定が必要な場合や、申立て手続きを専門家に依頼する場合には、その報酬も必要です。

また、親族以外の第三者である専門家が成年後見人に就任する場合、年間で24万円~60万円程度の報酬が発生します。家族が成年後見人になる場合は報酬を取らないとすることも多いです。

特に次のようなケースでは、専門職後見人(弁護士・司法書士等)を選任する可能性が高いです。

・被後見人の財産が多額
・遺産分割協議をはじめ相続に関する手続きが控えている

希望通りの後見人が選任されなかったことを理由に、後見人選任申立ての取下げをすることは非常に困難です。また、一度選任された後見人については、たとえ多少不満が生じたとしても、正当な理由のない限り、安易に解任することはできません。

財産の処分や権利の放棄に制限がかかることも

被後見人となった本人の財産は、本人の利益を「守る」ために支出する必要があります。仮に本人の利益となる可能性があると思っても、その本人の財産を株式投資などの資産減少のリスクがある運用に回すことはできません。

また、相続の場面では相続財産がプラスでありながら相続放棄をする、遺留分侵害額請求権の放棄をするというような、本来持っている権利の放棄も認められません。

相続税対策がうまくいかないことも

被後見人となった本人といえども、一定の相続財産を取得すれば相続税が発生します。しかし、本人の財産の積極的な資産運用、権利放棄は難しく相続税対策がとり辛い面もあります。

課税財産を減らすことが目的だとしても、生前贈与等の財産を減らす行為と客観的に判断される対策は、なかなか認められないことでしょう。

成年後見制度にまつわるトラブルも

成年後見制度の利用に関しては、大きく分けてお金に関するトラブル・成年後見人が職務を十分に果たさないトラブルが想定されます。

(1)お金に関するトラブル

最も問題視されるトラブルは財産の使い込みです。成年後見人は被後見人の銀行預金を引き出せる等、被後見人の財産へ簡単に手が届く立場です。使い込みのトラブルは家族が後見人となった場合にも、第三者が後見人となった場合にも発生しています。

(2)成年後見人が職務を十分に果たさないトラブル

成年後見人となった者が、本来取り組むべき職務を十分に果たしていないケースがあげられます。家族が後見人の場合は適切な財産の管理等を放置している、第三者後見人の場合は被後見人の親族に任せきりにしているケースが問題となっています。

(3)不正報告件数の推移

不正報告件数
平成26年831件
平成27年521件
平成28年502件
平成29年294件
平成30年250件
令和1年201件
令和2年186件

(参照:厚生労働省「成年後見制度の現状」)

成年後見制度における不正報告件数については、平成26年までは増加傾向にありましたが、平成27年以降は減少が続いています。成年後見監督人を積極的に選任したり、後見制度支援信託の制度を新設するなどの対策を施した効果が出てきているようです。

令和3年の現状!成年後見制度の問題点は解消されつつある?

成年後見制度には前述したように、親族が成年後見人に就任し難い、不満があっても一度就任した後見人を変更し難いという問題点があります。

しかし、尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加の推進を目指すべく、最高裁判所が次の考えを明らかにしています。(2019年3月18日の厚生労働省の第2回成年後見制度利用促進専門家会議)

・親族等の身近な支援者がいる場合、これらの支援者を後見人に選任することが望ましい
・後見人支援機能が不十分ならば、専門職後見監督人による支援を検討
・後見人選任後、選任形態等を定期的に見直し、状況の変化に応じ後見人の交代等も行う

現在はこれらの考え方を踏まえた柔軟な運用が行われるよう、制度を改善しようと活発な議論が行われています。

上記の成年後見制度以外にも家族信託や任意後見という選択肢もあり!

本人の判断能力が減退・欠如する前であれば、家族信託や任意後見の手続きを行う方法も選択できます。

家族信託

家族信託は信頼できる親族に財産を適切に管理してもらう方法です。認知症等になる前の本人と親族が信託契約を締結します。双方が合意して行う契約であり、家庭裁判所が関与しない点が成年後見制度との大きな違いです。

契約した内容に従い、親族は本人の財産の管理・運用・処分を行います。契約内容は比較的自由に設定することができ、積極的な資産運用を行うことも可能です。ただし、身上監護を契約の目的にすることはできません。

任意後見

成年後見制度の中に、法定後見とは別に任意後見という制度があります。まだ判断能力に問題のない本人が、将来的に判断能力が低下したときを想定し、信頼できる人間を後見人にあらかじめ指定しておく方法です。代理行為の内容はやはり契約を締結し決定されます。

任意後見契約を締結後、本人の判断能力の低下に伴い家庭裁判所へ任意後見監督人の選任の申立てをすることで後見が開始します。後見開始後、任意後見人は契約に従い、財産の維持管理(積極的運用は不可)や身上監護等を行えるようになります。

任意後見は自分の希望を反映しやすく、任意後見監督人が必ず選任されますので一定の安心も担保される制度です。ただし、法定後見とは違い、取消権はありません。

成年後見やその他の手段との違いを理解し、自分に合った準備を早めにしておくことが大切!

成年後見(法定後見、任意後見)や家族信託などのさまざまな制度がありますが、どの制度にも一長一短があります。後見分野に詳しい専門家に相談するなどし、早い段階であなたの希望に沿った方法を見つけることが大切です。

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この記事を監修したのは…

鈴木 章宏

司法書士 相続診断士

鈴木 章宏(すずき あきひろ)

都内の事務所にて4年間の修行ののち、令和3年10月に池袋にて司法書士事務所を開設。相続業務を中心に、不動産登記、商業登記も行っており、遺言書・家族信託などの生前対策から相続登記や事業承継のご相談にも対応が可能です。
相続対策は早めの準備が大切です。「ほとんど何も分からないので…」を理由にご相談を思いとどまる必要はございません。まずはお気軽にお問合せください。

サイトURL:https://www.js-suzuki.com/

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