贈与登記とは?必要書類や費用、手続きについて詳しく解説!
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贈与登記って何?不動産の贈与を受けたら登記が必要です
贈与登記とは不動産について贈与契約があった場合にする不動産の名義変更手続です。父が死んで息子が不動産を相続すると相続登記をしますよね。同じく父が息子に不動産を贈与した場合には「贈与登記」をします。
登記手続自体は法的な義務ではありません。そのため、登記をしてもしなくても契約は有効です。
しかし、不動産におこる権利の変動を表すという登記の目的からすると、登記しないというのは望ましくありませんし、登記をしておかないと時間の問題でトラブルに発展するのは間違いありません。義務ではないとはいえ、できるかぎり贈与契約と同じタイミングで登記を完了させることをおすすめします。
贈与登記の手続きは自分でできる?難易度を紹介!
登記手続は司法書士に依頼することが多いですが、贈与を原因とする贈与登記は、登記のなかでは自分で行う上で難易度が高くない部類に入ります。そのため司法書士に頼まず自分で登記をすることも可能です。もちろん一口に贈与登記と言っても状況により登記の内容は変わってきます。すべての贈与登記が簡単だと考えるのは早計です。
贈与者の住所や名前が変わっている、贈与した人間がすでに死亡しているなどの事情があれば、登記の難易度はぐっと上がります。その場合は司法書士に依頼するのが無難です。
贈与登記の手続きってどうやるの?流れを解説!
贈与登記の流れはシンプルです。登記簿で現在の不動産の状況を確認したうえで、添付書類を揃えて申請書を作成、あとは管轄の法務局に申請書類を提出するだけです。なお、登記簿は法務局に問い合わせることで閲覧可能ですが、インターネット上の「登記情報提供サービス」を活用したり、「登記事項証明書」を取り寄せて確認することをオススメします。
1.贈与契約を締結
2.不動産登記簿を確認
3.登記申請書や添付書類を準備
4.管轄の法務局に登記申請書類一式を提出
不動産登記簿を確認
不動産登記簿を確認するまえに、贈与契約を締結することが大前提ですが、その後は、登記簿を閲覧して現在の不動産の権利関係を確認することが重要です。
贈与したい不動産がどのように表示されているか、抵当権がついていないか、現在の登記名義人は誰か、登記名義人の現住所が登記内容と一致するかなど、現在の登記簿の状況をチェックしましょう。
登記簿の乙区(所有権以外の権利について記載された部分)に目を通し、抵当権がついて、それがローン完済等により権利として消滅しているものであれば、抹消登記を行う必要がありますし、あるいは甲区(所有権について記載された部分)に記載されている登記名義人の住所と現在の住所が不一致だと、贈与登記のまえに住所変更の登記を挟む必要があります。
贈与登記をするのだから贈与登記1件だけ申請すればいいと思われることが多いですが、現在の登記簿の状況によって申請する登記の数や書類の内容も違ってきます。それゆえ、いきなり登記の申請書を作成するのではなく、前段階として登記簿の確認を怠ってはいけないのです。
登記簿の確認段階でどこか引っかかる部分があれば、個人で判断せずに法務局や司法書士への相談をおすすめします。
登記申請書や添付書類を準備
登記簿を確認してイレギュラーな箇所がなければ、次は贈与登記の登記申請書の作成です。登記申請書にはいくつかの必要書類を添付します(詳細は後述)。
管轄の法務局に登記申請書類一式を提出
不動産の所在地を管轄する法務局に作成した登記申請書と添付書類を提出します。申請方法には窓口申請、郵送申請、インターネット申請がありますが、司法書士に依頼せず自分で申請する場合は、窓口申請が一般的です。不明な箇所があれば窓口の法務局員に質問できる点でも窓口申請はおすすめです。なお、法務局への相談は予約制になっているところもあるので、事前に管轄の法務局に電話して確認した方がよいでしょう。
贈与登記の必要書類とは~「登記原因証明情報」の書き方をチェック
贈与登記の基本的な申請書類は次のとおりです。
・登記申請書
・登記原因証明情報
・贈与者の登記識別情報(または登記済証)
・贈与者の印鑑証明書(登記申請の3か月以内のもの)
・受贈者の住民票の写し
・不動産の固定資産評価証明書
登記識別情報(登記済証)は贈与者が不動産の名義人になったときに本人に通知された(交付された)書類です。たいていは、司法書士事務所の名前の入った表紙がついています。失くしてしまった人は特別な本人確認手段が必要です。見当たらない場合は司法書士に相談しましょう。
登記原因証明情報は「登記原因となる事実または法律行為の存在を証明する書面」などと説明されます。ややこしい表現ですが、要件を満たせば贈与契約書を利用しても構いません。
贈与契約書でなくても、報告形式の登記原因証明情報を作成して提出することもできます。契約内容の詳細を第三者に閲覧されたくない状況下では、契約書の添付は避け、報告形式の登記原因証明情報を提出することもあります。報告形式である場合には、登記原因を証明する必要最低限の情報のみ載せれば済むためです。
報告形式の登記原因証明情報の作成例
一 登記申請情報の要項
(1)登記の目的 所有権移転
(2)登記原因 令和◯年◯月○日贈与
(3)当事者
(権利者=受贈者と義務者=贈与者の氏名と住所を記載します)
権利者 住所 A
義務者 住所 B
(4)不動産の表示
(登記簿をみて不動産の表示を正確に書き写します)
所 在 ◯◯
地 番 ◯◯
地 目 ◯◯
地 積 ◯◯
二 登記の原因となる事実または法律行為
(1)BはAに対して、令和◯年◯月◯日、本件不動産を贈与する意思表示をし、Aはこれを受諾した。
(2)よって、本件不動産の所有権は、同日、BからAに移転した。
三 提出先
令和◯年◯月◯日 ◯◯法務局御中
(登記申請書の提出先と贈与契約の締結日を記載します)
四 当事者の署名および押印
上記の登記原因のとおり相違ありません。
(上記のような文言の記載と、権利者と義務者の氏名および住所並びに押印が必要です)
権利者 住所 A 押印
義務者 住所 B 押印
※義務者の押印は必ず実印で行う必要があります。贈与契約書を登記識別情報として使用する場合も同様です。
贈与登記の費用はいくらかかる?負担者は?司法書士への報酬と登録免許税
登記をするには国に登録免許税という税金をおさめる必要があります。税率は登記の種類によって変わり、贈与登記の場合は固定資産評価額に1,000分の20(2%)を掛けた金額です。土地と建物の固定資産評価額の合計が1,000万円なら20万円が登録免許税です。
固定資産評価額は、役所で固定資産評価証明書を取得するか、固定資産税の納税通知の明細に記載されています。
登録免許税はあくまで登記手続に伴う実費です。司法書士に登記を依頼した場合は別途報酬が発生します。司法書士の報酬は事務所によってまちまちですので個別に確認する必要があるでしょう。
贈与する者と贈与を受ける者、どちらが登記費用を負担するかですが、一般的には贈与を受ける側が負担します。
なお、登録免許税は登記手続そのものにかかる税金です。不動産贈与があるとほかに贈与税、不動産取得税も課税されます。注意しましょう。
贈与登記はなぜ必要?行わないとトラブルのもとに!
登記は義務ではありません。贈与契約はしたけれども登記はしない、していなくてもそれ自体は違法でもありません。契約が有効で違法でもないなら登記をする意味はなんなのか? そう疑問に感じるひともいるでしょう。
登記をする意味は「第三者に対抗するため」と説明されるのが一般的です。不動産の権利を主張をするにあたり、契約の当事者間では契約書があれば証拠として充分です。しかし当事者以外の第三者に対して不動産の権利を主張するとなると、契約書のみでは不十分で、登記まで備える必要があるのです。
登記をすると二重譲渡のリスクを回避できる
登記の必要性は二重譲渡の場面を想像すると分かりやすいです。あなたが父親から実家の土地と建物の贈与を受けたと仮定しましょう。贈与契約書も作成済みです。この時点で父親に対して実家の所有権を主張できるのは間違いありません。契約の当事者間では契約書があれば足りるわけです。
ところが、父から贈与を受けた後で他の第三者が登場し、僕もあなたの父親に当たる人から実家の贈与を受けたんだ、と主張してきました。さて実家の所有権は誰のものになるでしょう? 答えは登記の名義人であり、契約の前後は無関係です。契約の早いもの勝ちではなく、登記の早いもの勝ちになるのです。
先に不動産の贈与の契約を交わしていたとしても、登記の名義を自分に移していないかぎり、権利を主張できないのです。契約書の存在は当事者である父親を拘束しますが、父親以外の人までは力が及びません。他の第三者が先に登記を備えてしまえば所有権はその人のものとして確定します。あなたは負けてしまうのです。
放置しているあいだに相続が発生すると面倒
もう一つ、贈与の登記をしておかないとまずいことがあります。贈与者の死亡リスクです。同じく、父親から実家の土地と建物の贈与を受けたとしましょう。その後、登記をしないで放置しているあいだに父親が死亡しました。
贈与者である父親が死亡してしまっても、贈与契約そのものは有効ですし、登記手続を行って名義を自分へと移すのは可能です。しかし相続発生後の登記においては、登記名義人である父親が死亡している以上、その相続人全員の協力が必要になります。
父親の相続人があなたのほかに弟と妹の二人いたとして、彼らが登記手続きに非協力的だったり、贈与契約の成立そのものに異議を唱えてきたりしたらどうなるでしょうか。
最終的に贈与登記が完了できたとしても、そこに至るまでに時間と費用と手間が2倍、3倍に膨れ上がり、兄弟仲も良好とは言えなくなるかも知れません。それらはすべて、父親が存命のあいだに登記を済ませておけば必要のなかった苦労なのです。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
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この記事を監修したのは…
司法書士
徳武 聡子(とくたけ さとこ)
とくたけ司法書士事務所が得意としているのは遺産承継手続。相続にまつわる煩雑な手続きを一手に引受させていただきます。
相続・成年後見・債務整理の三本柱で10数年。傾聴力、社会保障(とくに生活保護)に関する知識と経験で、高齢者の生活サポート力が高いです。