子供への生前贈与|住宅の贈与方法や住宅取得等資金贈与のしくみ

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遺産相続

親から子供に住宅を名義変更するケースとは?住宅を生前贈与する方法も解説!

親が所有する住宅を子へ名義変更するのは、主に生前贈与で親から名義を譲ってもらった場合や、親が亡くなり遺言や遺産分割協議で住宅を引き継いだ場合です。

生前贈与は財産を所有している親が生きている内に、自分の意思で資産を渡したい人へ確実に贈与できる利点があります。ただし、子に生前贈与を行い、子が所有する住宅として第三者へ対抗するためには、名義変更手続きが必要です。

贈与する住宅の所在地を管轄する法務局で、名義変更の手続きを行います。親と子で協力して手続きを行うことになりますが、司法書士に手続きを依頼することもできます。

法務局に提出する書類は次の通りです。

・登記事項証明書:法務局で取得、1物件につき手数料600円
・固定資産評価証明書:住宅の所在地の市区町村役場で取得、1物件につき手数料300円
・印鑑登録証明書:親が準備、親の住所地の市区町村役場で取得、1通500円
・住民票:子が準備、子の住所地の市区町村役場で取得、1通300円
・親が保管している登記済権利証または登記識別情報通知

生前贈与する住宅の名義変更にかかる税金をチェック!

親が所有する住宅を子へ名義変更した場合、次の3つの税金が課されます。

(1)登録免許税

名義変更手続きの際に納税します。税額は固定資産評価額の2%です。住宅の固定資産評価額が3,000万円の場合、

3,000万円×2%=60万円

60万円の登録免許税を支払います。この税金は親と子いずれが支払っても構いません

(2)不動産取得税

贈与を受けた子が納税します。名義変更して約2ヶ月〜半年後に不動産取得税の納税通知書が届きます。納税額は住宅が固定資産評価額の4%、土地が固定資産評価額の3%となります。

(3)贈与税

贈与を受けた子が納税することになります。住宅の他、毎年1月1日から12月31日までに贈与された財産全てが対象です。贈与された財産価格を基礎控除(110万円)から差し引いた金額に課税されます。

親から子供への贈与税を抑える方法とは?

贈与税は贈与された財産価格から基礎控除の110万円を差し引けますが、差し引いた後の金額が大きいと、その分だけ重い課税負担となります。こちらでは、贈与税を抑える2つの方法について解説します。

20歳以上の子へ住宅を贈与する

住宅を生前贈与する際に子の年齢が20歳以上であれば、特例贈与財産に該当します。特例贈与財産ならば、一般贈与財産より税率は低く抑えられ控除額が大きくなります。

※2022年4月1日以降の贈与については18歳以上となります。(民法4条)

(1)特定贈与財産(特例税率):子が20歳以上の場合

課税価格(基礎控除後)税率(%)控除額(万円)
~200万円10%
~400万円15%10万円
~600万円20%30万円
~1,000万円30%90万円
~1,500万円40%190万円
~3,000万円45%265万円
~4,500万円50%415万円
4,500万円超55%640万円

(2)一般贈与財産(一般税率):子が20歳未満の場合

課税価格(基礎控除後)税率(%)控除額(万円)
~200万円10%
~300万円15%10万円
~400万円20%25万円
~600万円30%65万円
~1,000万円40%125万円
~1,500万円45%175万円
~3,000万円50%250万円
3,000万円超55%400万円

(国税庁ホームページ「贈与税の計算と税率(暦年課税)」を参考に作成)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4408.htm

基礎控除後の課税価格が1,000万円だった場合、特定贈与財産と一般贈与財産では次のように税額の差が出ます

・特定贈与財産:1,000万円×30%-90万円=210万円
・一般贈与財産:1,000万円×40%-125万円=275万円

特定贈与財産の方が65万円分、贈与税が安くなります。

相続時精算課税制度の活用

こちらは子に渡す財産の価格が2,500万円までなら、贈与税が課税されないという制度です。2,500万円を超えた部分には20%の贈与税が課されます。

ただし、本制度を選択したら撤回ができず、110万円の基礎控除の利用は認められません。相続が開始された時に相続財産の他、生前贈与された財産も遺産総額に加算されます。

この場合でも相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)以下に収まるなら、相続税の申告や納付は必要ありません

こちらの制度を利用する場合も条件があり、贈与する親は60歳以上、贈与を受ける子は20歳以上である必要があります。

子は贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日までに、贈与税の申告書に本制度の利用を明記し、相続時精算課税選択届出書、受贈者の戸籍謄本等を添付して、納税地の所轄税務署へ提出します。

生前贈与の節税には「住宅取得等資金贈与」もあり!限度額もご紹介

親が子に住宅購入する際の資金援助のため、生前贈与を行いたい方も多いのではないでしょうか。この生前贈与には「住宅取得等資金贈与の非課税」の特例が利用できます。

「住宅取得等資金贈与の非課税」の特例の非課税限度額

こちらは年間110万円の基礎控除の他、多額の資金を贈与しても贈与税が課税されない特例です。なお、2023年12月31日まで延長が決定されています。

2020年1月1日~2022年12月31日が新築住宅の契約締結日ならば、非課税限度額は次の通りです。

(1)新築住宅の購入費の消費税等が税率10%の場合

新築住宅非課税限度額
省エネ等住宅1,500万円
それ以外1,000万円

(2)新築住宅の購入費の消費税等が税率10%以外の場合

新築住宅非課税限度額
省エネ等住宅1,000万円
それ以外500万円

(国税庁ホームページ「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」を参考に作成)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm

省エネ等住宅とは

・断熱等性能等級4か一次エネルギー消費量等級4以上のいずれか
・耐震等級2以上か免震建築物である、または高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上

に適合する住宅のことです。

特例の要件について

住宅取得等資金贈与の非課税の特例を利用するには、贈与者・受贈者・贈与財産・住宅の床面積・住宅取得期限に至るまで、細かい要件が設定されています。全ての要件に合致していなければ、特例は適用できません

(1)贈与者
父母、祖父母等の直系尊属であることが必要です。

(2)受贈者
贈与を受ける方は次の要件に該当する必要があります。

・20歳以上の子(贈与年の1月1日現在)、孫等の直系卑属
※2022年4月1日以降の贈与については18歳以上となります。(民法4条)
・贈与年分の合計所得金額が2,000万円以下(1,000万円以下:床面積40m²以上50m²未満の住宅も控除対象)

(3)贈与財産
住宅の新築または取得、増改築のための資金が対象です。

(4)住宅の床面積
次の要件に該当した住宅が対象です。

・原則として床面積が50m²~240m²
・1/2以上に相当する部分が居住用

(5)住宅取得期限
原則、贈与年の翌年3月15日までに住宅の新築等をして、居住または遅滞なく居住が見込まれる場合です。
つまり、2021年に贈与を受けたなら、2022年の3月15日までに居住するか、たとえ居住時期が遅れても、確実に住む見込みであれば対象となります。

「住宅取得等資金贈与の非課税」の特例に必要な手続き

特例を利用したい受贈者は、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日までに納税地の所轄税務署で手続きを行う必要があります。

主に次のような提出書類が必要です。
・贈与税の申告書:税務署で取得、非課税の特例の利用を明記
・戸籍謄本:本籍地の市区町村役場で取得、1通450円
・登記事項証明書:法務局で取得、1物件につき手数料600円
・新築や取得の契約書の写し
・源泉徴収票
・本人確認書類:個人番号カード(マイナンバーカード)、運転免許証等を提示
・証明書:住宅性能証明書(国土交通大臣登録機関で取得)、建設住宅性能評価書の写し(登録住宅性能評価機関で取得)等が該当

「住宅取得等資金贈与の非課税」の特例を利用する際の注意点

住宅取得等資金贈与の非課税の特例を利用するには、贈与を受け、特例の手続きを行うだけではなく、基本的に居住していなければいけません

例え贈与年の翌年3月15日までに居住していなくとも、後日、遅滞なく居住することが確実ならば、特例の適用は受けられます。
ただし、贈与年の翌年12月31日までに依然として居住していない場合は特例の適用外となり、修正申告をしなければいけません。
なお、新築の場合は翌年3月15日までに工事が棟上げの状態まで進んでいる場合、特例の適用を受けることができます。

一方、建売住宅・分譲マンション等を取得するケースなら、同日までに引渡しを受けておかないと、特例の適用外となってしまいます。住宅を取得するケースによって、適用を受けられる要件が変わってくるので注意が必要です。

住宅生前贈与を行う際の注意点を解説!

住宅を生前贈与する場合の注意点とその対策を解説します。

特別受益について

特定の相続人に生前贈与を行った場合、他の相続人から見たその贈与は「相続財産の前渡し」であり、相続時に相続財産とみなして相続分の中からその遺贈又は贈与の価格を控除した残額をもってその者の相続分とするとあります。そのことを特別受益(民法903条)と言います。

評価額と時価の違い

贈与税の計算に用いる評価額と、実際に売却する時価にはある程度の差があります。特別受益の話(遺産分割)で用いる不動産の価格は時価で検討しますので、そこの認識が違うだけで「得をしようとしている!」「騙そうとしたのか!」などと、争族の火種になる可能性が出てきます。

また特別受益の持ち戻し免除(民法903条3項)も出来ますが、他の相続人があとでその話を聴かされたりすると「そんなことは言わない!」「言わされたに違いない!」と争いに発展することも充分に考えられます。

考えられる対策

親の生前に、家族全員とコミュニケーションを取り、どうして住宅生前贈与をするのか?理解を得ておくことが望ましいのは言うまでもありませんが、相続人が行方不明であったり、家族が不仲で話し合いが出来ない等の事情があって、それが叶わない場合もあります。

そのような場合、法的にも、実質的にもしっかり対策をするならば、住宅生前贈与について遺言により特別受益の持ち戻し免除の意思表示をしましょう。遺留分侵害が生じる場合には、その支払いに困らないよう資金の準備を検討すると良いでしょう。

元来贈与は諾成契約であり、譲渡人と譲受人との「意思の合致」で成立するものですが、配慮のない贈与は思いもよらない争いに発展する可能性がありますので、特に慎重に行うべきと言えます。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

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この記事を監修したのは…

小林 幸生

宅地建物取引士・上級相続診断士・笑顔相続道正会員・関西相続診断士会副会長 、(一社)離婚準備支援協会関西準備室副室長、夫婦問題診断士1期生 、 終活カウンセラー2級・2級ファイナンシャルプランニング技能士 、 令和2年度行政書士資格試験合格 ※行政書士ではありません。

小林 幸生(こばやし ゆきお)

大阪市西区の不動産会社、アイムス株式会社に勤務する傍ら、賃貸不動産管理、
相続・離婚相談を展開しております小林です。不動産の現場では相続や離婚の
相談をちょうだいする機会が多くあります。そんな方々の力になるべく日々自
己研鑽を重ねております。相続や離婚、不動産のことならアイムス株式会社の小
林にどうぞお任せください。

サイトURL:https://aims-kansai.jp

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