同居していると相続は有利?別居していた場合や遺産を多く相続する方法!
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被相続人と同居していたら相続は有利になる?別居は不利?
同居とは、家族が一つの家で一緒に生活を送るという意味です。
生計を同じくする状態(同じ財布で生活費を共有する)まで必要であるわけではなく、住民票上同一世帯で、かつ生活の実態も同じ住居ならば同居といえます。
なお、民法の規定には「被相続人と同居している相続人は相続で優位に立つ」とは法律で定められていません。
法律的には被相続人と同居していても、別居していても、相続人の範囲や法定相続分には全く影響がありません。
ただし、被相続人が遺言書を作成する場合は、同居している相続人に多くの遺産を引き継いでもらいたい、と思うかもしれません。
そのため、被相続人が遺言書で同居している相続人を優遇する可能性はあります。
同居している場合の相続権はどうなる?
被相続人と同居していても、別居していても、法定相続人の範囲や法定相続分は同じ条件です。
法定相続人の優先順位は次の通りです(被相続人の配偶者は常に相続人)。
- 第1順位:直系卑属(子、または子が亡くなっている場合は孫)
- 第2順位:直系尊属(父母、祖父母)
- 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥姪)
相続割合は下表の通りです。
法定相続人の例 | 相続割合 |
配偶者のみ・子供のみ・親のみ・兄弟姉妹のみ | 全部 |
配偶者と子供 | 配偶者:1/2、子供:1/2 ※子供が複数いる場合は1/2の枠内で更に等分 |
配偶者と親 | 配偶者:2/3、親:1/3 ※両親とも存命の場合は1/3の枠内で更に等分 |
配偶者と兄弟姉妹 | 配偶者:3/4、兄弟姉妹:1/4 ※兄弟姉妹が複数いる場合1/4の枠内で更に等分 |
なお、同居していても内縁のパートナーや配偶者の連れ子に相続権はありません。
相続権を付与するには、内縁のパートナーの場合なら市区町村役場へ婚姻届の提出、配偶者の連れ子の場合は養子縁組を成立させるため市区町村役場へ養子縁組届の提出が必要です。
なお、相続権の無い内縁のパートナーや配偶者の連れ子であっても、遺言書で受遺者(遺言によって遺産を受け取る人)に指定可能です。
被相続人と同居することで相続税は減る?
被相続人と同居していた相続人であっても、相続税が特別に優遇されるわけではありません。
ただし、被相続人の家に同居していた相続人が、その家を相続する場合は「小規模宅地等の特例」を利用し減税ができる可能性もあります。
本特例は、被相続人が自宅として使用していた土地(限度面積330㎡)等を相続する際に適用され、相続税を算出する際に、当該土地の評価額を最大80%減額可能です。
事例を用いてどのくらい減税されるのか見てみましょう。
(例)被相続人の唯一の財産である4,000万円の宅地を、同居していた法定相続人Aが相続した。法定相続人はA1名のみである。
特例を利用しない場合:(相続財産4,000万円ー基礎控除額3,600万円)×相続税率10%=相続税40万円
特例を利用した場合:4000万円ー(4000万円×80%)=土地の評価額800万円、(相続財産800万円ー基礎控除額3,600万円)=相続税0円
事例では特例を利用した場合に相続税0円となり、特例を利用しない場合より40万円も相続税が軽減されました。
被相続人と同居することでの遺留分は?
遺留分とは法定相続人に最低限保証された相続分です。ただし、被相続人の兄弟姉妹には遺留分が認められないので注意しましょう。
遺留分は被相続人と同居・別居にかかわらず、被相続人の兄弟姉妹を除き、法定相続人に誰がいるのかや、何人いるかによって遺留分割合が変化します。下表をご覧ください。
法定相続人の例 | 代襲相続人の遺留分割合 |
配偶者のみ・子供のみ | 1/2 |
親のみ | 1/3 |
配偶者と子供 | 配偶者:1/4、子供:1/4 ※子供が複数いる場合は1/4の枠内で更に等分 |
配偶者と親 | 配偶者:2/6、親:1/6 |
被相続人と同居していた家の相続はどうなる?
被相続人と共に暮らした住宅は、自動的に同居していた相続人が引き継ぐわけではありません。
被相続人が遺言書を残していれば遺言書の内容によって、遺言書を残していなければ他の相続人との遺産分割協議で決定されます。
とはいえ、同居していた相続人に配慮し、遺言書による内容であっても、他の相続人との遺産分割協議であっても、基本的に同居していた当人が引き継ぐ形となるはずです。
なお、被相続人の配偶者が同居していた場合は「配偶者居住権」が認められます。
配偶者居住権は夫婦の一方が亡くなったとき、残された配偶者が故人の所有していた建物に亡くなるまで、または一定の期間にわたり無償で居住できる権利です。
この権利は、残された配偶者の居住権を保護するために令和2年4月1日以降に発生した相続から新たに認められた権利です。
ただし、この権利を成立させるには以下の要件をすべて満たしている必要があります。
- 残された配偶者が、亡くなった人の法律上の配偶者である
- 配偶者が被相続人の所有していた建物に亡くなったときに居住していた
- 遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判のいずれかにより配偶者居住権を所得した
配偶者所有権を利用すれば被相続人が死亡後も住まいを追われる心配はありませんが、配偶者所有権はあくまでも「家に住む権利」であり所有権ではないため、家を譲渡したり売却したりすることはできません。
配偶者居住権の利用は強制ではないため、権利を取得するには遺言書により権利を与えることを明記してもらうか、遺産分割で権利を獲得する必要があります。
同居していたから遺産を多く欲しいという主張はトラブルを引き起こしやすい!
同居していた相続人は、これまで被相続人を支えてきたという理由で、多くの遺産を取得したいと思うかもしれません。
こちらでは、被相続人と同居していた相続人と、別居していた相続人との間で起こりえるトラブルを取り上げます。
遺産分割協議でもめてしまい手続きが進まない
同居していた相続人が、これまで被相続人の世話や介護をしてきた場合、別居してきた相続人よりも、多くの遺産を受け取りたい気持ちはわかります。
しかし、あまりに多くの遺産の取得を要求すれば、他の相続人とのトラブルが発生し、相続手続きが全く進まなくなります。
遺産分割に合意し遺産分割協議書をとりまとめなければ、被相続人の銀行口座の解約や、相続登記等も難しくなります。
争いは家庭裁判所での遺産分割調停に持ち越される可能性があります。その場合、相続人との信頼関係に大きな亀裂が生じる場合もあるので、相続人相互の歩み寄りが求められます。
遺言内容によっては大きなトラブルへと発展することも
被相続人が同居していた相続人に感謝し、遺言書で「遺産の大部分または全部を同居していた相続人に与える。」という遺言内容を残す可能性があります。
同居していた相続人には嬉しい内容ですが、当然、他の相続人からは不満が噴出するはずです。
この場合、他の相続人から「遺留分侵害額請求権」を行使されるおそれがあります。こちらは遺留分が侵害されたと他の相続人が感じた場合に、遺留分を侵害した人(同居していた相続人)に、侵害された分のお金を請求できる権利です。
遺留分は遺言内容よりも優先され、当該請求権は法定相続人(被相続人の兄弟姉妹除く)の当然の権利とされています。
遺留分侵害額請求の調停や訴訟にまで発展すれば、解決まで時間がかかり相続手続きに大きな支障も出てしまいます。
遺産分割でトラブルが起きた時の対処法!
遺産分割でトラブルが起きた場合、またはトラブルの起きる可能性が高い場合、弁護士を立てて、他の相続人の説得や調整を依頼する方法があります。
弁護士ならば法律の専門家としての見地から、様々な解決策を提案し、相続人間の和解に尽力してくれるはずです。
もしも、話し合いがうまくいかなければ、家庭裁判所に遺産分割調停等の申立てを行い、依頼者の立場を主張してくれるはずです。
より多くの遺産を相続する方法を解説!
こちらでは同居していた相続人がより多く遺産を相続したいとき、試してみるべき方法、遺産相続の相談先について取り上げます。
寄与分を主張してみる
寄与分は被相続人の財産維持に貢献した人がいた場合、その貢献度に応じて相続財産を増額するという方法です。貢献した人には、被相続人と同居し療養看護に努めた人が該当します。
寄与分は、療養看護等で被相続人から対価を受け取っていないかそれに近い状態だった、被相続人と相続人との関係(夫婦や親)で通常期待される療養看護を超える行為だった、療養看護に専念していた、長期間継続していた、等が考慮の要素です。
もちろん、遺産分割協議で他の相続人全員が納得すれば、このような要件に該当しなくとも、寄与分が認められ多く遺産を取得できます。
ただし、寄与分に関して他の相続人と話し合いがまとまらなければ、やはり家庭裁判所で遺産分割調停を行う必要があります。
小規模宅地等の特例を利用する
被相続人と同居していた家を相続する場合は、「小規模宅地等の特例」を利用することで相続税を軽減することができます。
小規模宅地等の特例とは、被相続人の住宅や事業に利用していた宅地を相続した際に、評価額を最大80%減額できる制度です。
本特例が適用される宅地は、住居用に使用していた宅地である「特定居住用宅地等」と事業用として使用していた「特定事業用宅地等」、不動産貸付用として使用していた「貸付事業用宅地等」の3つです。
また、本特例を受けるには、財産額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えている必要があります。
被相続人の財産額が基礎控除を超える場合には、相続人の申告書を提出し、手続きを行うことで特例を利用できます。
しかし、特例を利用するために被相続人が亡くなる直前に同居を始めても同居親族と認められず、特例を受けることはできません。
遺産相続で悩みがあれば専門家に相談しよう
被相続人と同居していた相続人として、より多くの遺産を取得したいならば、事前に弁護士へ相談しアドバイスを受けた方が良いでしょう。寄与分はもちろん、トラブルになった場合の対応策もわかりやすく教えてくれるはずです。
なお、遺産相続全般の疑問点・不明点があれば「円満相続ラボ」を利用しましょう。円満相続ラボでは「相続診断士」の紹介を無料でサポートしてくれます。
相続診断士は相続全般に深い知識を有する専門資格者なので、相談者の悩みへ適切なアドバイスが期待できます。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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この記事を監修したのは…
合同会社RunSmile 代表社員 笑顔相続サロン®愛媛 代表 愛媛相続診断士協会会長
浜田 政子(はまだ まさこ)
長年保険業に携わっている経験を生かしい、生命保険、相続、終活などコンサル及びライフプラン作成を通じお客様へ常に寄り添い、悩みや相談、希望をお聞きし士業とともに解決へ導く道先案内人として愛媛より全国へ笑顔をお届けする活動しております。
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