相続税路線価の計算方法や調べ方を解説!公示価格との違いは?
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土地の価格の1つである相続税路線価とは?
相続税路線価は相続税評価の際に使用される、その道路に面する宅地の値段を指します。この値段を参考として、宅地の形状・状況を考慮しつつ評価額が計算されます。
相続税路線価は、国税庁が毎年7月初旬(1月1日を基準)に「財産評価基準書」で公表しています。
相続税路線価の計算方法
相続税路線価の計算は、まず財産評価基準書の路線価図を閲覧し、所有する土地がどうなっているかをチェックします。
所有する土地に面した道路ごとに「100A」や「500C」といった、数字とアルファベットの組み合わせの記号が記載されているはずです。
この内、数字部分が評価額となり道路に面する土地の1㎡あたりの千円単位の金額を示します。
例をあげて計算してみましょう。
- 自分の土地に隣接する道路:路線価表示300C
- 土地の広さ:100㎡
路線価表示300Cなので、この道路に面する土地は1㎡当たり300千円=300,000円の価値になります。宅地の広さは100㎡なので
300,000円×100㎡=30,000,000円
宅地の値段は3,000万円と評価されます。
なお、この宅地が自分で使用している土地ではなく借地権・貸付地の場合、この借地権割合も確認しなければいけません。その際に参考となるのが数字の横に付いているアルファベットです。
アルファベットごとに借地割合は下表のように表記されます。
アルファベット | A | B | C | D | E | F | G |
借地権割合 | 90% | 80% | 70% | 60% | 50% | 40% | 30% |
例の場合は「C=70%」なので
3,000万円×70%=2,100万円
普通借地権の価額は2,100万円となります。
相続税路線価の変動
地価上昇の影響で相続税路線価が変動する可能性もあります。例えば観光地なら多くの観光客の訪問により、その地域の経済活動は活発化し相続税路線価が引き上げられます。
一方、観光地の人気がなくなったり、新型コロナ感染症等の影響があったりして、観光客が来なくなれば、その地域の経済活動は停滞し相続税路線価が引き下げられます。
相続税路線価の変動に関しては、国税庁が毎年7月初旬に「財産評価基準書」で公表するので、相続税路線価の計算を行う場合は、必ず最新の財産評価基準書を確認しましょう。
その他の土地の公的価格
相続税路線価以外の土地の公的価格は次の4つです。
公的価格 | 内容 | 公表日 |
実勢価格 | 実際に不動産売買が成立する価格 | なし ※売主・買主の当事者同士で決定 |
公示地価 | 土地売買の指標となる価格 | 国土交通省が毎年1月1日時点の全国の標準地の1㎡あたりの価格調査を行い、毎年3月下旬に公表 |
基準地価 | 土地売買の指標となる価格 | 各都道府県が毎年7月1日時点の全国の標準地の1㎡あたりの正常な価格を調査し、毎年9月下旬に公表 |
固定資産税評価額 | 固定資産税・都市計画税等の税額を算出する基礎となる価格 | 各市区町村が3年に1回4月~6月に公表 |
相続税路線価と公示価格との違い
公示価格とは公示地価・基準地価2つの指標をまとめた価格です。土地取引の公正を図るために国土交通省が公表しています。
一方、相続税路線価は、相続税等の申告のため、そして課税の公平を図るために、国税庁が定めて公表しています。つまり、公表の目的はそれぞれ異なっています。
土地売買等は任意に取り引きをするわけですが、相続で宅地を取得する場合は相続人の意図していなかった取得となるのが一般的です。
そのため、納税者に過剰な負担にならないよう、相続税路線価は公示価格の80%を目安に設定されます。
相続税路線価と基準地価との違い
基準地価とは都道府県知事が選定した基準地の価格です。あくまで基準地価を決めるのは地方自治体(都道府県)となります。
毎年1回、1人以上の不動産鑑定士が価格を審査・判定し、各都道府県は毎年7月1日時点の基準地の正常価格を9月に公表します。一方、相続税路線価は国税庁が定めて公表します。
基準地価は公示地価を補足する役割を担い、この公示地価・基準地価2つの指標をまとめた公示価格が、相続税路線価を決める参考とされます。
相続税路線価と固定資産税評価額との違い
固定資産税評価額は固定資産税・都市計画税・登録免許税・不動産取得税等の税額を算出する基礎となる価格で、各市区町村で3年に1回4月〜6月に公表されます。基準年度の前年(1月1日時点)の公示価格の7割程度が水準です。
固定資産税は市区町村が、相続税は税務署(国税庁)が、それぞれの目的と制度に基づき路線価を算定しています。
相続税路線価が設定されていない場合の計算方法とは?
相続税路線価が設定されていないときは「倍率方式」で計算します。倍率方式の計算式は「固定資産税評価額×評価倍率」です。
固定資産税評価額がどれくらいかについては、市区町村から送付される「固定資産税課税明細(納税通知書)」で確認できます。また、評価倍率がどうなっているかは「財産評価基準書」を参考にしましょう。
例をあげて計算してみます。
- 固定資産税評価額:3,500万円
- 評価倍率:2.0
固定資産税評価額3,500万円×評価倍率2.0=7,000万円
相続した宅地の値段は7,000万円となります。
相続税路線価はどのようなタイミングで使う?
相続税の申告の際に相続税路線価を使用します。国税庁が相続税路線価を公表した年の1月1日〜12月31日の間に相続が発生した場合、必ずその年に公表された相続税路線価で算定しましょう。
例えば、2023年1月〜6月の間に相続が発生した場合、前年の路線価ではなく2023年7月に発表された路線価を使用します。相続税路線価の公表前に被相続人が亡くなった場合でも、その年の7月の発表を待って、相続税の申告準備をしなければいけません。
相続税路線価の見方・調べ方を解説!
こちらでは相続税路線価の見方・調べ方の手順をみていきましょう。
ステップ1:土地の所在地・路線価を確認する
「財産評価基準書」で街区番号・路線価を確認する。路線価は地域の経済事情・道路状況等で、地域ごとに大きな差があります。
評価する土地が自分で使用している土地なのか、それとも借地権・貸付地なのか等も確認します。また、財産評価基準書には地区区分(普通住宅地区・ビル街地区等)も設定されており、補正率の計算をするときに参考とします。
ステップ2:相続税路線価を基に計算する
評価する土地を計算します。評価したい土地は、1つの道路だけに面しているとは限りません。土地が2つの道路に挟まれているときはそれぞれの路線価を反映する必要があります。
例をあげ、土地が2つの道路に挟まれている場合の算定方法を取り上げます。
(例)A・B路線に挟まれた土地(二方路線影響加算)
- 地区区分:普通住宅地区(加算率:0.02)
- A路線:路線価200,000円
- B路線:路線価250,000円
- 奥行価格補正率1.00
- 地積400㎡
(1)まずは正面路線を決定します。
いずれも奥行価格補正率1.00なので
- A路線→路線価200,000円×奥行価格補正率1.00=200,000円
- B路線→路線価250,000円×奥行価格補正率1.00=250,000円
B路線の金額が高いのでメイン「正面路線」、A路線を「裏面路線」とします。
(2)裏面路線はAなので、A路線の路線価に二方路線影響加算率をかけて補正します。普通住宅地区なので加算(補正)率は0.02となります。
裏面路線価200,000円×奥行価格補正率1.00×加算率0.02=4,000円
(3)正面路線であるBの1㎡あたりの路線価に、1㎡あたりの裏面路線の影響である先ほどの4,000円を加えましょう。
250,000円+4,000円=254,000円
1㎡あたりの評価額は254,000円です。
(4)1㎡あたりの評価額と地積400㎡をかけます。
1㎡あたりの評価額254,000円×地積400㎡=101,600,000円
土地の評価額は約1億となります。
土地の形など状況に合わせた路線価補正の種類をご紹介!
路線価で土地の価格を算定する際、土地の形状が四角い形状でない場合に気付くはずです。また、土地が1つの道路だけに接しているとは限りません。角地や2つの道路に接しているケースもあるはずです。
様々な土地の状況により、路線価を減額したり増額したりする補正が必要です。この補正率を路線価にかけて補正します。それぞれの補正に関しては国税庁ホームページで詳しく説明されています。
こちらでは「土地の形状に関する補正」「接道に関する補正」に分けて解説します。
土地の形状に関する補正
形状がいびつな土地、道路に面する間口が非常に狭い土地等の場合に補正が行われます。下表を参考にしてください。
土地の形状に関する補正 | 補正対象 | 補正率(普通住宅地区) |
奥行価格補正 | 標準的な土地と比較して、奥行が長いまたは短いときに補正 | 奥行4m~44m未満の場合、0.90~1.00で補正 |
不整形地補正 | 形状がいびつな土地の場合に補正 | 0.60~0.99で補正 |
間口狭小補正・奥行長大補正 | 狭小地に建てられる狭小住宅の場合に補正 | ・間口狭小(4m未満~28m未満)の場合:0.90~1.00で補正 ・奥行長大(2m~8m未満)の場合:0.90~0.98で補正 |
がけ地補正 | 通常の用途での利用は不可能な斜面・崖がある場合に補正 | 0.53~0.96で補正 |
接道状況に関する補正
利用価値の高さから路線価を増額補正するケースもあります。下表を参考にしてください。
増額補正 |
側方路線影響加算 | 二方路線影響加算 | |
加算対象 |
交差点の角・道路の曲がり角にある土地が対象 | 土地が2つの道路に挟まれているとき対象 | |
地区区分 |
角地加算率 | (※)準角地加算率 | 加算率 |
ビル街地区 |
0.07 |
0.03 |
0.03 |
高度商業・繁華街地区 | 0.10 | 0.05 | 0.07 |
普通商業・併用住宅地区 | 0.08 | 0.04 | 0.05 |
普通住宅・中小工場地区 | 0.03 | 0.02 | 0.02 |
大工場地区 | 0.02 | 0.01 | 0.02 |
(※)準角地とは、いわゆる道路の曲がり角に位置する土地です。
正確な算定には専門のサポートを受けよう
相続税路線価は毎年その路線価に変動があり、かつ計算の際は補正率も算定に反映させるなど、なかなか手間がかかります。
そのため、不明な点があれば税の専門家である「税理士」に相談してみましょう。税理士に依頼すれば相続税申告の際、正確な土地価額の算定が期待できます。
また、相続した土地の価額をはじめ相続に関する悩みがあるなら「円満相続ラボ」を利用しましょう。円満相続ラボでは「相続診断士」の紹介を無料でサポートしてくれます。
相続診断士は相続全般に深い知識を有する専門資格者なので、相談者の悩みへ適切なアドバイスを行ってくれるはずです。
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相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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