寄与分を請求するのに時効はある?特別寄与料との違いも解説!!
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寄与分に時効はある?遺産分割協議後に主張できる?
寄与分とは、被相続人の財産を保全し増加させるために尽力した相続人が、その度合いによって本来の相続分よりも多く遺産を分けてもらえる制度をいいます。例えば、長年被相続人の介護をしていた場合や、無償で家業を手伝うことなどが寄与分の対象にあたります。
寄与分に時効はありませんが、遺産分割協議後は寄与分を主張できません。なぜなら、すべての相続人や包括受遺者の合意のうえ遺産分割協議が行われた場合は、遺産分割協議書の内容を原則覆せないためです。
ここで注意したいのは主張のタイミングです。例えば遺産分割協議がまとまりかけた段階で寄与分を主張しはじめると、他の相続人から反発される可能性があります。
寄与分を主張するのであれば相続開始後、遺産分割協議の前から準備をするのがもっともよいタイミングといえるでしょう。
また、古い寄与分は認められにくい傾向にあります。いくら時効がないとはいえ、何十年も前に亡くなった人の相続となると相続人の寄与を証明する資料が残っていない可能性が高く、家庭裁判所を納得させられるだけの材料がないためです。
その他、寄与分と似た制度に「特別寄与料」というものがあります。寄与分を請求できるのが法定相続人にのみであるのに対し、特別寄与料は相続人以外の親族が利用できる制度です。
寄与分と異なり、特別寄与料には時効と除斥期間が存在します。特別寄与者が相続の開始および相続人を知ったときから6か月で消滅時効にかかり、相続開始から1年で特別寄与料請求権の除斥期間が経過するとされています。
寄与分が認められる要件とは?寄与分に当てはまるケースとは?
ここでは寄与分の要件と、寄与分に当てはまるケースを紹介します。
寄与分が認められる要件
寄与分にあたると判断してもらうためには、以下の要件を満たさなければなりません。
- 被相続人から見て相続人に該当すること
- 被相続人の財産の保全や増加に尽力したこと
- 特別の寄与といえる行いをしたこと
- 無償または無償に近い行いであること
- 継続して行為が行われていたこと
寄与分を請求できるのは、被相続人の財産の保全と増加に尽力した相続人のみです。その行いは「特別の寄与」といえるものでなければならず、配偶者や子が家族として行った多少の世話程度では特別の寄与とはいえません。
また、寄与と判断してもらうには無償でなければなりません。ただし、報酬が発生していた場合でも、その報酬額が従業員として労働した場合の報酬に比べて少なければ認められる可能性があります。
逆に、受け取った報酬が労働で得られる報酬と同等、またはそれ以上である場合は無償に近いとはいえません。
さらに、行為には継続性が必要です。たった数日間だけ家業を手伝ったというような行為は対象になりません。
寄与分に当てはまるケース
寄与分には以下のようなケースが当てはまります。
- 家業に携わっていたケース|家事従事型
- 金銭を与えていたケース|金銭出資型
- 介護していたケース|療養介護型
- 生活費を負担していたケース|扶養型
- 財産を管理していたケース|財産管理型
寄与と判断してもらうためには、前述した「寄与分が認められるための要件」を満たしたうえで、以上のケースに該当する必要があります。それぞれ解説します。
家業に携わっていたケース|家事従事型
被相続人の家業に携わっていた場合は、家事従事型に該当します。例えば、被相続人の経営する会社を被相続人の子どもが手伝っていた場合が挙げられます。
ただし、ただ家業を手伝っていればすべて該当するわけではありません。他の従業員と同等の報酬を得ていた場合や十分な報酬を得ていると判断された場合は、該当しないため注意が必要です。
金銭を与えていたケース|金銭出資型
被相続人に対して金銭を与えていた場合は、金銭出資型に当てはまります。例えば、被相続人が購入した不動産の支払いを家庭の収入から支払っていた場合や、被相続人が家を新築するにあたって、土地購入資金を与えていた場合などが該当します。
しかし、被相続人が営む会社に出資した場合は会社に対する貢献とみなされるため、寄与にはあたりません。
介護していたケース|療養介護型
被相続人を介護していた場合は療養介護型にあたります。しかし、介護を理由に寄与分を請求する場合に問題となるのが「特別の貢献」にあたる行為といえるかどうかです。
単に通院の付き添いや入院中の世話をしていた程度であるなど、相互扶助の範囲内であると判断される場合は特別の貢献にあたりません。
必要なのは、寝たきりの被相続人を何年にもわたって自宅で介護をしたために、介護職員を雇っていれば生じたであろう支出を150万円削減できた、というような事実です。
特別の貢献といえる内容の介護を行ったうえ、それによって本来介護職員に支払うべき費用をいくら削減できたかを明確にする必要があります。
生活費を負担していたケース|扶養型
被相続人の生活費をほぼ全て負担していた場合は扶養型に該当します。例えば、被相続人が病気で入院しており収入がない場合に、生活費のほとんどを負担していた場合などが挙げられます。
ただし、被相続人に十分自力で生活できるだけの収入や資力があり、体が健康である場合は認められません。また、同居の場合は互いに扶養の義務があるため、扶養型と認められにくいです。
財産を管理していたケース|財産管理型
被相続人の財産を管理し、財産の保全と増加に尽力していた場合は財産管理型に当てはまります。しかし、寄与にあたると判断してもらうためには要件を満たすことに加え、財産管理の必要性がなければなりません。
例えば、被相続人の不動産を売却するにあたって、買い手探しや手続きに尽力した場合などが該当します。
寄与分はどのように決まる?計算方法をケース別に解説!
寄与分は、相続人全員の話し合いによって決まります。協議ができない場合やまとまらない場合などは家庭裁判所が定めますが、算定方法に明確な基準はありません。
ここでは、家庭裁判所が寄与分の算定に使用する可能性のある計算方法と、相続税の計算方法を紹介します。寄与分についてはこのとおりになるとはかぎりませんが、ひとつの目安になるでしょう。
寄与分の計算方法
寄与分の計算方法は以下のとおりです。
家業に携わっていたケース(家事従事型)の計算方法 |
本来得られる年間給与額×(1ー生活費控除割合)×寄与年数 |
金銭を与えていたケース(金銭出資型)の計算方法 |
渡した金額(贈与額)×貨幣価格変動率×裁量的割合 |
介護していたケース(療養介護型)の計算方法 |
介護の日当相当額×療養看護日数×裁量的割合 |
生活費を負担していたケース(扶養型)の計算方法 |
扶養のために負担した費用×期間×(1ー寄与相続人の法定相続割合) |
財産を管理していたケース(財産管理型)の計算方法 |
財産の管理や売却を第三者に依頼した場合に支払う報酬額×裁量的割合 |
相続人に寄与分がある場合の相続分の計算方法
相続人に寄与分がある場合の相続分の計算方法は以下のとおりです。
(遺産の総額ー寄与分)×法定相続分+寄与分 |
遺産の総額から寄与分を引き、法定相続分をかけるところまでは寄与分があってもなくても変わりません。
寄与分を請求する流れ!寄与分を証明する証拠資料とは?
寄与分の請求は、寄与分を主張したい相続人が自ら行います。申立先は、申立ての相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または相続人全員で合意した家庭裁判所です。寄与分を請求する際の流れは以下のとおりです。
- 遺産分割協議をする
- 遺産分割調停を申立てる
- 遺産分割審判を行う
それぞれ解説します。
1.遺産分割協議をする
はじめに行うのは、相続人全員での遺産分割協議です。寄与分を請求したい場合は、遺産分割協議の場で寄与分を主張します。話がうまくまとまれば寄与分を加味した金額で遺産分割協議書を作成しますが、まとまらなければ家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。
2.遺産分割調停を申し立てる
遺産分割調停を申し立てると、調停委員との話し合いによって遺産分割の方法を決めることになります。遺産分割調停でも、相続人全員が同意しなければ遺産分割は成立しません。遺産分割が成立しない場合は遺産分割審判へと進みます。
3.遺産分割審判を行う
遺産分割調停が成立しなかった場合は、遺産分割審判の手続きに移行します。遺産分割審判では法的な根拠に基づいた主張や立証が必要となるため、寄与分が認められるのは困難です。
審判確定後は、遺産分割方法が記載された審判書の内容どおりに遺産を分割します。従わない場合は差し押さえられる可能性があります。
請求の際に必要な資料について
寄与分が認められるには、寄与分を証明できる資料が必要です。証拠として使用できる資料は寄与の種類によって異なります。ケース別の必要資料は以下のとおりです。
家事従事型の場合 | ・寄与した相続人の出勤の記録 ・家業に無償で従事する旨記載された契約書 ・被相続人の確定申告書 ・寄与した相続人の給料明細 |
金銭出資型の場合 | ・不動産の売買契約書 ・寄与した相続人の通帳 ・被相続人の通帳 ・クレジットカードの利用明細 |
療養看護型の場合 | ・被相続人のカルテ、診断書 ・被相続人の要介護認定通知書 ・介護内容の記録 |
扶養型の場合 | ・寄与した相続人の通帳 ・被相続人の通帳 ・クレジットカードの利用明細 ・家計状況のわかるもの |
財産管理型の場合 | ・預貯金の残高記録 ・財産を管理するうえで生じた支出に関する領収書 |
寄与分を主張するときに注意すべきポイント
寄与分を主張する際に注意すべきポイントは以下のとおりです。
- 要件を満たしているか
- 寄与分を証明する証拠が残っているか
- 遺留分を侵害していないか
要件を満たしていない場合、寄与分は認められません。自分が寄与分が認められるための要件を満たしているかどうかをよく確認しましょう。
また、寄与分を証明する証拠がきちんと残っているかも重要です。どれほど寄与分を主張しても、何も証明できなければ寄与分は認められません。
そのほか、遺留分についても考慮したほうがよいでしょう。遺留分とは、被相続人の財産について、一定の相続人が最低限保障されている取り分のことです。
主張が他の相続人の遺留分を侵害する場合でも、その相続人が同意していれば寄与分は認められます。しかし、同意を得られず審判に移行した場合、家庭裁判所が遺留分を侵害する主張を認めるケースはほとんどありません。
遺留分を無視するような寄与分は、はじめから主張しないほうが賢明でしょう。
寄与分が認められるのは稀!その理由と代わりとなる対策とは?
実際、寄与分が認められるケースはそれほど多くありません。
その理由は以下の3つです。
- 厳しい要件が設けられている
- 相続人間でトラブルが起きやすい
- 証拠となる資料を揃えられない
寄与分が認められるには、厳しい要件をクリアしなければなりません。特に「特別の寄与」といえる行為であると裁判官を認めさせることは非常に困難であり、どれだけ献身的に介護をしているつもりでも、同居している親子であれば当たり前であると判断されてしまえば主張は通りません。
相続人間でもめやすいというのも理由のひとつです。ただでさえ遺産分割についてもめるケースは多く、特定の相続人の主張に対して全員が何の異議も唱えずすんなり同意するケースはあまりありません。そのことをきっかけに、関係性が悪くなってしまう可能性もあります。
また、証拠となる資料を揃えるのが難しいという問題もあります。実際に介護や家業の手伝いなどをしているときから寄与分について考えて行動している人はあまりいないためです。
特別の寄与と呼べるほど貢献していても、そのことを裏付ける資料がないために寄与分が認められないケースはよくあります。
以上のことから、生前贈与や遺言書を作成するなど、寄与分の代わりとなる対策を検討することをおすすめします。
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