おひとりさま必見!安心の老後に向けて生前契約(死後事務委任契約)を解説!
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おひとりさまがやっておくべき生前準備とは?
「おひとりさま」とは、同居する人がいない状態にある方々を指します。
おひとりさまの場合、自分の財産をどうするのか、どんなお葬式の内容にするか・どんな場所に埋葬をしてもらうか等を、家族がいない分、慎重に検討する必要があります。
また、事前に不要な家財道具・衣類等を処分し、身の回りの整理はしておくべきです。
その他に、自分の財産の情報や葬儀・埋葬の希望、親戚や友人・知人への感謝等を伝えるエンディングノートの作成、自分に配偶者・子供がいなくても、離れて暮らす法定相続人(例:兄弟姉妹・おいめい)がいた場合は遺産分与のため遺言書の準備をしておきましょう。
そして、準備しておくべきものの一つに「生前契約」があります。生前契約とは自分に判断能力が十分あるうちに、次のような契約を受任者(契約を引き受けてくれる人)と締結する方法です。
- 死後事務委任契約:自分の死後の事務手続きや遺品整理等を受任者にしてもらう契約
- 生前事務委任契約:自分の生活支援や、生きているうち必要な事務手続きを受任者にしてもらう契約
- 任意後見契約:自分の判断能力が著しく低下したら、任意後見人から身上監護や財産管理を行ってもらう契約
自分の生存中〜死亡後もサポートを受けられる方法がいろいろと用意されています。
生前準備の1つである死後事務委任契約とは一体?
生前契約の一つである「死後事務委任契約」は、自分の死後に受任者から行ってもらう事務手続きを委任する契約です。本契約では、死後の手続き(死亡届、年金受給停止手続き等)、お葬式・埋葬の手配等を取り決めます。
契約である以上、受任者となってくれる人の同意が必要です。契約が締結されると、受任者は契約で設定した内容を誠実に実行しなければなりません。
受任者は親戚や友人・知人、士業専門家(弁護士、行政書士等)、事業者(死後事務サービスを提供する法人等)から選任できます。
ただし、死後事務委任契約では遺贈(遺言書による贈与)について記載しても、法的な効果はありません。なぜなら、遺言は遺言者の遺産の分与に関する一方的な意思表示であり、所定の手続きを経なければ効力が発生しないからです。
逆に、遺言書で死後事務委任契約について定めても、受贈者と契約しているわけではないので、死後事務委任の法的効果はありません。遺言書に死後事務委任を明記しても、遺言者から受贈者への「お願い」にとどまり、死後事務委任を行うかどうかは受贈者の自由です。
おひとりさまが死後事務委任契約を活用するメリット・デメリット
死後事務委任契約は自分の死後の事務を事前に委任しておけるので、契約後は安心して余生を送れるはずです。ただし、契約の際に確認しておくべき点もあります。
死後事務委任契約のメリット
本契約では、相続に関する遺贈以外の死後対応を委任できます。委任者(おひとりさま)が希望する葬儀・埋葬方法、どんな葬儀社に手配をするべきか等を契約内容で細かく指定できます。
また、病院等の医療費支払いや介護施設等の施設利用料の支払い、緊急連絡先、遺品の引き取り等も任せられます。そのため、自分の亡くなった後、利用していた病院・介護施設側が誰に連絡をとればわからない、といったトラブルも回避できます。
死後事務委任契約のデメリット
本契約を士業専門家や事業者に依頼すれば、基本的に有償となってしまうのがデメリットです。
契約締結の際は入会費や手数料、預託金も発生します。特に預託金は契約するとき受任者が預かるお金で、預託金額は百数十万円に上る可能性があります。
一方、預託金不要または預託金額をかなり抑えている事業者等では、委任者である利用申込者に生命保険へ加入させ、死亡保険金受取人を事業者等に指定するのが条件となっているところもあります。
このように事業者等を受任者として契約する場合、大きな金銭的負担や煩雑な手続きに手間取ってしまうかもしれません。
死後事務委任契約の手続きの流れを解説!
死後事務委任契約は口頭でも構いませんが、契約書に契約事項をまとめておかないと、どんな契約だったかを受任者が忘れてしまう可能性もあります。
こちらでは死後事務委任契約を契約書で締結するまでの流れをみてみましょう。
- 死後事務委任契約の契約内容を考える
- 受任者となってくれる人の同意を得る
- 契約書の作成を開始:士業専門家や事業者を受任者とする場合、基本的に公正証書での作成を要求される
- 契約書(公正証書の場合は死後事務委任契約公正証書)が完成
- 契約書の内容をチェックし、署名押印
公正証書とは公証役場にて公証人が作成してくれる書類です。死後事務委任契約公正証書は約14,000円〜15,000円で作成できます。
公証人は公証作用を担う公務員なので、公証人から作成してもらった公正証書は信頼性がある他、その原本を公証役場に保管するため、第三者等から偽造・変造されるリスクはありません。
自分の親戚や友人・知人と死後事務委任契約を締結する場合も公正証書で作成しておけば、将来のトラブルを大きく軽減できるはずです。
死後事務委任契約に記載しておくべき内容とは?
死後事務委任契約では主に下表の契約内容を締結できます。
死後事務委任契約 | 葬儀等に関する契約 | 行政や施設等への届出・手続き |
内容 | ・親類縁者、関係者への連絡 ・葬儀の手配 ・喪主代行 ・火葬の手配 ・希望の菩提寺や霊園等で納骨 ・法事・法要の開催 | ・行政機関への届出(死亡届、保険証返還等) ・家賃や医療・入院費用等の清算 ・電気や水道、ガス等の解約 ・携帯電話・プロバイダ契約の解除 |
なお、遺産分与の指定は本契約による取り決めが認められず、遺言書を作成する必要があります。
また、委任したい内容だけではなく事務手続きを進める場合、どの窓口にどんな書類を持って届け出るか等の説明も付記されていれば、受任者はスムーズに手続きを進められるはずです。
死後事務委任契約にかかる費用の相場をご紹介!
事業者ごとに料金は異なりますが、費用相場は概ね下表の通りです。
死後事務委任 | 費用相場 |
葬儀・埋葬の手続きや手配 | 約25万円 |
行政機関への届出・手続き | 約10万円 |
病院・介護施設・賃貸住宅の未払費用支払、退去手続き等 | 約5万円 |
公共料金精算や解約、税金の納税等 | 約6万円 |
遺品整理 | 約5万円 |
死後事務委任をサービスとして提供する士業専門家や事業者は、様々費用プランやオプション(追加料金で遺言の作成指南や、エンディングノートの作成サポート等が利用できる)を設定している場合があります。
ただし、その他に入会費や実費等も含めれば、費用負担は100万円を大きく超えるケースもあります。担当者とよく相談し、利用したいサービスと費用のバランスを考えて、契約内容を決めましょう。
死後事務委任契約によるトラブルの事例
死後事務委任契約を締結しても、ケースによってはトラブルとなってしまう場合があります。こちらでは2つのトラブル事例を取り上げます。
死後事務委任契約自体の有効性が争われた
法律では委任者が死亡すると、委任の終了事由になると定める規定があります(民法第653条1号)。
そのため、死後事務を実行しようとする受任者に対し、委任者の相続人が契約の有効性を疑い、裁判で争われた事例があります(最高裁平成4年9月22日判決)。
この有効性に関して、委任者の死亡を委任の終了事由と定める民法の規定があっても、ただちに委任契約が終了するわけではない、という裁判所の判断が下りました。
ただし、委任契約の有効性に関するトラブルを避けるため、「委任者が死亡しても、本委任契約は終了しない。」と契約書に明記した方が無難です。
契約を解約したら預託金の一部しか戻らなかった
死後事務委任契約を事業者と契約し、後に解約したが預託金(預けたお金)の一部しか戻らなかった、というケースも報告されています。
独立行政法人国民生活センターでは「身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意」にて、預託金トラブルの事例をホームページで掲載し、注意を喚起しています。
他に、預託金の詳細な説明がなく支払いだけを急かされている、等のトラブルも報告されています。
そのため、必ず契約前に担当者から預託金等の返還の有無を確認し「内容をはぐらかす」「明確な返答がない」といった場合、契約を拒否した方が良いでしょう。
おひとりさまが死後事務委任契約を活用する際の注意点
こちらでは死後事務委任契約に関する注意点や、相談先について解説しましょう。
死後事務委任契約に関する注意点
死後事務委任契約は自分の判断能力があるうちに、詳細な契約内容を決める必要があるので、認知症となってからでは契約は非常に難しくなります。
また、契約を締結したのに、受任者が遊興費へ使うため、勝手に自分(委任者)の預金を引き出したというトラブルも考えられます。そのため、特に親戚や友人・知人へ受任者をお願いする場合は、責任感があり最も信頼できる人を選びましょう。
不明点は専門家に相談しよう
死後事務委任契約の利用申込みを検討しているなら、士業専門家(弁護士、行政書士等)や、死後事務委任サービスを提供する事業者に相談してみましょう。不明な点を問い合わせれば、満足のいく回答が得られるはずです。
また、死後事務委任契約を利用しようか悩んでいるなら「円満相続ラボ」を利用しましょう。円満相続ラボでは「相続診断士」の紹介を無料でサポートしてくれます。
相続診断士は相続・死後事務等に深い知識を有する専門資格者なので、本契約に関する悩みへ適切なアドバイスを行ってくれるはずです。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
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