成年後見人の選任手続きの代行|相談先や費用について解説!
Contents
成年後見制度とは?法定後見制度と任意後見制度があります
成年後見制度とは、ある人の(基本的には高齢者)判断能力が衰えた場合に、本人の財産の管理や身の上の保護が適切になされるようにするための制度です。
認知症で適切な判断ができなくなったお年寄りを相手に、不要な商品を大量に購入契約させる訪問販売がかつて社会問題になりました。成年後見制度はそのような弊害に備えるために作られた制度でもあります。
成年後見制度には法定後見と任意後見の2種類があり、それぞれ内容が異なります。
法定後見制度
法定後見制度は特定の人の判断能力が衰えてしまった場合に利用されます。判断能力が衰えてしまうと、不動産を売却できなかったり、預貯金をおろすことができなかったり、詐欺被害にあう危険が高まったり、日常生活において様々な支障をきたします。
それらの不都合を解消するために、裁判所が後見人等を選任して、本人の財産の管理や身の上の保護を任せるのが法定後見制度の役割です。
不動産の売却は成年後見制度が活用される典型例です。不動産を売却する際に、本人の判断能力が低下していると売却手続きが進みません。本人の売却意思が確認できないためです。
親族と言えども法律上は他人なので勝手に売却の代理をすることはできません。親族であるという理由のみで安易に高価な財産の売却の代理を認めてしまえば、認知症になった人の財産が食い物にされる可能性があります。
このような場合、裁判所が選任した後見人等に代理させることで、不動産の安全な取引が可能になるのです。
任意後見制度
任意後見制度も法定後見制度と同じく、判断能力の衰えた人の財産の保護、身の上の保護を目的とします。しかし法定後見制度とは次のような違いがあります。
・本人が元気なうちに後見人が選ばれる
・後見人は裁判所ではなく本人が選任する
法定後見制度は本人の判断能力が低下した後に利用されますが、任意後見制度は違います。本人が元気なうちに裁判所ではなく本人が信頼できる後見人を選任するのです。
法定後見制度と任意後見制度には他にも細かな違いはたくさんありますが、本人の判断能力がしっかりしている間に本人自らが後見人を選ぶという点が、法定後見との決定的な違いです。
任意後見は『公正証書による契約』を必要とし、任意後見契約に関する法律第4条の定めに従い、本人、配偶者、四親等内の親族、任意後見受任者の請求により、『家庭裁判所が任意後見監督人を選任』して効力を有することになります。
任意後見制度は、法定後見制度と比較して、身寄りのいない一人暮らしの老人が利用しているケースが多い傾向にあります。
成年後見制度の申し立ては自分でできる?
成年後見制度の申し立てができるのは、ご本人、配偶者、4親等内の親族に限られています。
成年後見制度の申し立ては、ご本人の意思が尊重されるように、基本的にはご本人が申し立てることが望ましいです。
しかし、ご本人自らの申し立てが困難な場合には、配偶者や親、子、兄弟姉妹など4親等内の親族が代わりに申し立てることができます。
また、ご本人や家族が申し立てることが難しい場合や専門的なサポートが必要な場合には、弁護士や司法書士など専門家が申し立てを代行することも可能です。
成年後見制度の申し立て手続きを依頼した方が良い理由とは?
前述のとおり、成年後見制度の申し立て手続きは、ご本人自ら行うことが可能です。
ここでは、自身で成年後見制度の申し立て手続きを行う際に注意すべき点をご紹介します。
手続きが複雑であること
成年後見制度の手続きは法的なプロセスであり、複雑です。必要書類の量が多いため、その収集や申立書の作成、専門的な知識や経験が必要となる場面もあります。
自力で行う場合は、手続きの流れを把握し、正確に対処する必要があります。
トラブルが発生する可能性がある
成年後見制度の手続きにおける書類の記入ミスが問題になることがあります。適切な情報を正確に記入し、再確認を行うことでトラブルを回避しましょう。
成年後見制度の手続きを自力で行うことは可能ですが、ご自身の負担軽減やトラブル回避のために、実績や経験のある専門家に委託することがおすすめです。
成年後見人の手続きはどこに相談するのがよい?成年後見人の選任手続きの代行
成年後見制度を利用する際の相談先は複数あります。
・成年後見センター・リーガルサポート
・弁護士会
・社会福祉士会
・一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター
・社会福祉協議会
・障害者自立支援協議会
・地域包括支援センター
無料個別相談や無料セミナーの開催もありますので、気になる団体が見つかれば参加してみることをおすすめします。
成年後見センター・リーガルサポート
司法書士で構成されている団体で、成年後見制度に特化して取り組んでいる団体です。司法書士は早くから成年後見に力を入れている集団なので、成年後見に関する知識や経験が豊富です。特に不動産の売却が関わるのであれば司法書士は相談先の第一候補として適切です。
弁護士会
全国各地に設置されている、弁護士で構成される団体です。弁護士も成年後見制度にかかわっています。本人の財産をめぐって親族間で紛争が起こりそうならば、訴訟を扱える弁護士を第一候補にすべきです。
社会福祉士会
社会福祉士で構成する団体です。社会福祉会は成年後見に関する相談を受け付ける「ぱあとなあ」という組織を各地に置いています。司法書士、弁護に次いで社会福祉も後見人に選任される件数が多いです。
一般社団法人コスモス成年後見サポートセンター
日本行政書士連合会により行政書士を正会員として2010年に設立されました。
現在日本全国に42支部、約2,000人の会員からなる組織で、国の成年後見制度利用促進基本計画のもと、制度利用促進のため、地方自治体等へ専門職の後見の担い手として協力している団体です。
社会福祉協議会
各市町村に設置された、社会福祉の推進を目的とした非営利団体です。行政と連携を取り、福祉にまつわる様々な相談に応じています。
障害者自立支援協議会
行政を主体とする障害者の支援を目的とした団体で、各都道府県に設置されています。障害を理由とする成年後見の利用はこちらへの相談をおすすめします。
地域包括支援センター
介護保険法により設置されている団体です。介護を含む相談ならばこちらをおすすめします。各市町村に設置されていますのでアクセスしやすいのも利点です。
成年後見制度の相談先を選ぶ際に見るべきポイント!
成年後見制度に関する相談先を選ぶ際の見るべきポイントについて解説します。
専門性と経験
成年後見制度は法律や手続きが複雑であり、専門的な知識と豊富な経験が必要です。相談先が成年後見制度に関する専門的な知識を持ち、これまでの実績や経験を有しているのかを確認しましょう。
ご自身のケースに合っているか
相談先の団体により目的が異なります。例えば、障害者の支援を目的とした団体や、介護を専門とした団体などがあります。ご自身がどのような理由で成年後見制度を利用するのかを含めて相談先を検討することをおすすめします。
費用と料金
相談先の料金体系や費用についても明確に把握することが重要です。適切な料金設定であるかを確認し、追加費用などがある場合にも事前に確認することが大切です。
地理的なアクセス性
成年後見制度の手続きは、相談先との対面で行うことが多いです。そのため、地理的なアクセス性を考慮し、ご自身が通いやすい相談先を選ぶことで、相談や手続きがスムーズに進むでしょう。
成年後見の申し立て手続きの流れや必要書類とは?
ここでは「法定成年後見」の申し立ての流れと必要書類について解説します。
成年後見の申し立ての流れ
法定成年後見の流れは以下の通りです。
1、資料収集
2、電話予約
3、申し立て書類の提出及び面談
4、調査(必要に応じて鑑定も行う)
5、審判及び審判結果の通知
6、後見開始
面談には少なくとも成年後見の申立人と後見人候補者の出席が求められます。事案によりけりですが、申し立てから審判の結果が分かるまでの期間は2か月以内が通常です。
鑑定が行われるのを原則としつつも、実際には鑑定が必要とされるケースは少なく、申し立て件数のうち1割ほどに留まるとされています。鑑定を求められる場合は、5万円から15万円程度の鑑定費用の支払いが必要です。一旦、申し立てを行った後に申し立てを取り下げるには、家庭裁判所の許可が必要なため、注意が必要です。
成年後見の必要書類
管轄の家庭裁判所ごとに若干の違いはあるものの、一般的な成年後見申し立ての必要書類は次の通りです。
必要書類 | 入手できる場所 | その他・備考 |
成年後見の申し立て書 | 管轄の家庭裁判所窓口 | |
申し立て事情説明書 | 管轄の家庭裁判所窓口 | |
財産目録と付随する資料 | 管轄の家庭裁判所窓口 | |
収支状況報告書及び付随資料 | 管轄の家庭裁判所窓口 | |
親族関係図 | 管轄の家庭裁判所窓口 | |
候補者事情説明書 | 管轄の家庭裁判所窓口 | |
親族の同意書 | 管轄の家庭裁判所窓口 | |
診断書と診断書付表 | 管轄の家庭裁判所窓口 | |
戸籍謄本 | 本籍のある市区町村役場 | 本人(被後見人)と候補者のもの |
住民票の写し | 住所地の市区町村役場 | 本人(被後見人)と候補者のもの |
登記されていないことの証明書 | 法務局 | 本人のもの |
*家庭裁判所の窓口に行かずともホームページからひな形のダウンロードが可能です。
*戸籍謄本、住民票の写し、登記されていないことの証明は発行後3か月以内のものが必要です。
成年後見人の選任手続き~自分でやる場合と代行でやる場合のかかる費用の比較も!~
成年後見人を立てるまでにかかる費用について解説します。
成年後見申し立てにかかる最低限の費用
以下は成年後見の申し立てにかかる最低限の費用、つまり司法書士や弁護士に申し立て作業を代行依頼しない場合の費用です。
・申し立て費用 約800円
・登記費用 約3,000円
・郵便切手代 約3,000円
・鑑定費用 5万円から15万円程度
鑑定費用は高額ですが、必ずしも捻出が必要なわけではなく、裁判所が鑑定を求めた場合に限り支払い義務が生じます。鑑定が必要な割合は、全体の約1割程です。 費用は、申立人が負担することが原則です。
成年後見の申し立てを代行依頼した場合
成年後見の申し立てを司法書士や弁護士に代行依頼した場合、上記に挙げた最低限の費用に加えて専門家への報酬の支払いが生じます。報酬がいくらかかるかについては、事案や依頼する専門家によって異なります。気になる人は相談時に確認するか、あるいは各事務所のホームページをチェックしましょう。
申し立てにかかわる報酬の相場は10万円から25万円です。弁護士に依頼するほうが若干報酬相場が高くなる傾向にあるのは事実ですが、結局のところ事案や事務所の運営によって大いに異なります。報酬については個別で確認する他ありません。
なお、これらはあくまで申し立てにかかる費用です。後見開始後に、裁判所が指名した後見人に支払う月々の報酬(2万円から6万円が相場)とは別の話です。
成年後見人の選任費用を払えない場合は?
経済的事情により成年後見人を立てる費用を支払うのが難しい人もいます。そのような人を経済面からサポートするために、国は成年後見制度利用支援事業に取り組んでいます。
成年後見制度利用支援事業とは、身寄りがないなど親族による後見等開始の審判の申し立てが出来ない場合に、市長が代わりに申し立てを行う制度です。
一定の要件を満たすことを条件に、市から成年後見に係る費用の全部又は一部を出してもらうことができます。
援助に含まれる内容は、下記の費用が主となっています。
・申し立てにかかる費用
・後見開始後に後見に支払う毎月の報酬
生活保護を受けている方も、成年後見制度利用支援事業を活用することができます。
成年後見制度は生活保護受給者でも利用可能!報酬を払えない場合はどうなる?
適用要件など、詳細が気になる方はお近くの市役所等に確認してみてください。
【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ
相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。
本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。
本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください
この記事を監修したのは…
宅地建物取引士・上級相続診断士・笑顔相続道正会員・関西相続診断士会副会長 、(一社)離婚準備支援協会関西準備室副室長、夫婦問題診断士1期生 、 終活カウンセラー2級・2級ファイナンシャルプランニング技能士 、 令和2年度行政書士資格試験合格 ※行政書士ではありません。
小林 幸生(こばやし ゆきお)
大阪市西区の不動産会社、アイムス株式会社に勤務する傍ら、賃貸不動産管理、
相続・離婚相談を展開しております小林です。不動産の現場では相続や離婚の
相談をちょうだいする機会が多くあります。そんな方々の力になるべく日々自
己研鑽を重ねております。相続や離婚、不動産のことならアイムス株式会社の小
林にどうぞお任せください。
サイトURL:https://aims-kansai.jp