生前の預金の移動は認められる?生前贈与のやり方や注意点とは

公開日:
最終更新日:
終活

生前贈与とは?生きているうちに自分の財産を別の人に贈与することです

生前贈与は、ご自分の意思で財産を別の人に贈与する方法です。贈与する財産は現金・預貯金のような金融資産の他、土地や建物のような不動産資産等が対象となり、種類も問われません。贈与する人はいつでも、家族に限らず誰でも、何回でも行うことができます。

ただし、生前贈与は贈与する側が贈与の意思を示し、受け取る側もそれを承諾して、両者の合意を得ることが必要です。つまり、贈与の無理強いはできないことになります。また、贈与される側は、受け取る財産に応じ贈与税が課されます。贈与したい人も相手の税負担は考慮する必要があります。

生前贈与の手続きや必要なものをチェック!

生前贈与は、贈与する側・受け取る側の合意があれば成立します(諾成契約)。つまり、生前贈与はどのような手続きをとる必要があるのか、法律で明確に規定されていたり、厳しい制約があったりするわけではなく、双方の合意で成立します。

しかし、第三者から客観的に見て、贈与した事実の確認できる証拠を残していた方が、将来に想定されるトラブルを回避できます。こちらでは生前贈与の手続きの流れ、準備するべき書類等を解説します。

生前贈与の手続きの流れ

生前贈与の対象になるのは金融資産でも、不動産資産でも構いません。ただし、贈与する財産によっては手続きのプロセス、準備するべき書類が変わってきます。

1、贈与する側が贈与したい人、贈与したい財産を選ぶ
2、贈与したい人に贈与する旨を伝える
3、贈与の申し出を受けた人は承諾か拒否か選ぶ
4、贈与の申し出を受けた人が承諾した場合、贈与契約書等を作成する
5、贈与する側・受け取る側が贈与契約を締結する
6、財産を受け取る側へ贈与する

もしも、贈与する財産が建物・土地等のような場合は、更に法務局へ登記名義変更の申請をする等の手続きが必要です。

準備するべき書類

生前贈与では贈与した事実を確認できる証明書類の作成、収集が大切です。書類が無いからといって、直ちに無効の贈与となるわけではありません。

しかし、万一の事態を考え、主に次のような書類を揃えるべきです。

(1)贈与契約書(贈与証書)

贈与の事実を証明する書類です。2通を作成し、贈与する側・受け取る側が各1通を保有します。なお、日付・住所・氏名は必ず当事者が手書きします。

その他に下記2点も揃えて贈与契約を締結します。

・印鑑:実印が好ましい
・印鑑登録証明書:実印で押印する場合に準備が必要

その後、書類は大切にそれぞれが保管します。

(2)不動産資産を贈与する場合

建物・土地を贈与する場合は、更に次の書類を準備した方が良いです。

・贈与する側:対象不動産の「登記識別情報通知(登記済権利証)」
・受け取る側:住民票
・その他:固定資産評価証明書(名義変更する年度の証明書)

生前の預金の移動は税務署に指摘される?調査の対象になることも

銀行をはじめとした金融機関は、取引に関する履歴を10年間保管する必要があります。相続人は、その期間に渡り亡くなった親族(被相続人)の預金履歴をチェックできます。

また、税務署は金融機関を調査する権限が与えられているので、被相続人の生前の預金履歴も確認できます。つまり、生前の預金を別口座に移動させる事実が、税務署から把握されることもあります。

別口座に移動させた金額が多いと、贈与税の申告漏れが疑われ、調査の対象となる場合も考えられます。もちろん調査の際は、贈与を受け取った側の預金口座も調べられるのが一般的です。

現金の手渡しは認められる?生前贈与の注意点

現金の手渡しをすれば、生前贈与として認められないというわけではありません。しかし、生前贈与のために受け取る側へ現金を手渡したとしても、贈与である以上、贈与税の発生する可能性があります。

予想外の課税を受けたり、贈与税ではなく別の税金を課されないために、次の点に注意が必要です。

贈与額は110万円以下に抑える

1月1日~12月31日までの1年間に、贈与された財産の金額の合計が110万円以下ならば、受け取った側は基本的に贈与税が課されることはありません(暦年贈与)。贈与税には基礎控除枠があり、110万円以下までがその枠内となっています。

しかし、110万円以下の贈与が課税されないなら、贈与額を毎年110万円以下に抑えれば絶対安心という保証はありません。なぜなら、定期金給付契約と税務署から疑われる場合もあるからです。

定期金給付契約とは、ある期間にわたり定期的な金銭等の給付を受ける契約のことです。税務署からこの契約と判断されると、贈与税の基礎控除枠は適用されなくなります

贈与契約書の作成を工夫する

定期金給付契約と税務署から疑われないためにも、前述した贈与契約書の作成を行いましょう。この贈与契約書にも工夫が必要です。

例えば「20年間にわたり毎年110万円を贈与する」という契約内容にすると、税務署から「合計2,200万円を20年間にわたって贈与する」と判断されてしまう可能性があります。

そのため贈与の度に毎年贈与契約書を作成し、契約を締結することが大切です。なお、契約書に記入し贈与する額も毎年同額では無く、毎年違った金額を設定して贈与すれば、定期金給付契約と疑われるリスクは軽減されます。

相続発生前3年以内の贈与

贈与した人が死亡した場合、その死亡からさかのぼって3年以内の贈与は、贈与税ではなく相続した財産とみなされ相続税の課税対象になります。そのため、早めに生前贈与をスタートされるのがお薦めです。

ただし、各相続人の課税価格の合計が、相続税の基礎控除である「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」以内に収まるなら、相続税は課せられません。

税務調査へどのような対策ができる?

税務署の税務調査は様々な方法で行われます。その調査のやり方と、税務調査の対策としてとるべき方法について解説します。

税務調査のやり方

税務調査は前述した金融機関への調査だけではなく、次の2つの調査も行われます。

(1)確定申告書等の内容

財産の蓄積状況を把握するため、被相続人の所得税等の申告書も有力な情報源です。申告書から得られる情報として還付金の振込口座、株式取引をしていた証券会社等が挙げられます。先ほど述べたように金融機関名がわかれば、税務署はその金融機関を調査できます。

(2)法定調書で確認

たとえ海外資産を保有、国外送金をした場合でも調査の範囲外となるわけではありません。税務署は金融機関から海外への送受金の履歴を把握できます。なぜなら、金融機関は税務署に対し法定調書を提出しなければならないからです。

100万円を超える国外送受金の手続きが行われた場合、その内容を法定調書に記載、税務署へ提出します。税務署はこの法定調書も調査の資料に役立てます。

税務調査の対策

税務調査で指摘を受けても良いように、贈与契約書の作成や暦年贈与で対応することが大切です。しかし、それ以外にも次のような方法があります。

(1)生活費・教育費の贈与

これは子や孫が学生で授業料や、アパート等で一人暮らしする場合の生活費等の、いわゆる「仕送り」にあたります。そのため、贈与税が課されません。ただし必要な都度、贈与を行うケースに限定されます。例えば、親が毎月数万円程度の生活費を子に渡し、子もそのお金を使い切る場合は課税はされません。

その他、教育資金の一括贈与の特例制度を利用すれば、教育費の贈与に関して1,500万円まで非課税とされます。

(2)様々な贈与税の特例を利用

相続時精算課税制度は、生前贈与時に2,500万円まで贈与税を非課税としますが、贈与した人が亡くなった場合、生前贈与した財産も相続税を課されるという制度です。相続の際に、相続税の基礎控除で大幅な節税が見込める場合、この方法を利用しても構いません

その他、家族に障害者がおられる場合、将来の生活費等を贈与するならば最大6,000万円まで贈与税が非課税となります。ただし、信託銀行に専用口座を開設する等の条件があります。

このような贈与税の特例を利用するのも良い方法です。

(3)使用貸借を利用

ご自分の所有する不動産を贈与するのではなく、無償で貸すという方法もあります。これは使用貸借と呼ばれています。貸すことになるので贈与税は課されません。ただし、税務署に疑われないためには貸し借りの実態、証拠を用意した方が無難です。こちらの場合も契約書を作成しておきましょう。

以上、生前贈与のやり方と注意点についてご案内致しました。ぜひ有効に活用して相続税や贈与税の対策にご活用ください。

【無料相談】相続に関するお悩みは相続診断士へ

相続は十人十色、十家十色の事情や問題があるもので、その解決策は一通りではないものです。

本記事で抱えている問題が解決できているのであれば大変光栄なことですが、もしまだもやもやしていたり、具体的な解決方法を個別に相談したい、とのお考えがある場合には、ぜひ相続のプロフェッショナルである「相続診断士」にご相談することをおすすめします。

本サイト「円満相続ラボ」では、相続診断士に無料で相談できる窓口を用意しております。お気軽にご相談ください

この記事を監修したのは…

竹内 誠一

令和の渋沢栄一・FP社労士・相続診断士

竹内 誠一(たけうち せいいち)

竹内FP社労士事務所 代表  
笑顔相続サロン®︎京葉 代表
元厚生労働事務官、社会保険庁・日本年金機構23年間在職し年金行政職に従事。
現在は、社会保険労務士・FP・キャリアコンサルタントとして労務問題・助成金・健康経営コンサル等を通じた中小企業の経営支援や個人起業家のビジネス支援及びライフプラン・年金・相続・終活・遺言など人生100年時代に必要な様々なお悩み・課題解決をお手伝い。
また2019年1月より、毎週継続配信してきた「志ある起業家の応援番組 たけチャンネル」含めたFacebookライブの対談番組は200回以上配信し、これまで地方議員の先生やビジネススキルの専門家・ビジネス
書の著書など各方面でご活躍の方々をお招きして、様々な情報発信をしてきています。
今後も、地域・企業・個人が抱えるあらゆる社会課題解決に尽力していきます。
趣味は、フラメンコ・神社参拝・カラオケ

サイトURL:https://egaosouzoku-keiyo.com/

Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCUSQZ9s_Fx-aVTcCBMGcQPA

CONSULTATION

無料相談

SEARCH

キーワード検索

事例集検索

RANKING

アクセスランキング

SEARCH

目的別に記事を探す

相続相談画像

CONTACT

相続に関するお悩みは
私たちにお任せください

円満相続ラボでは、相続に関するお悩みを解決できる「相続診断士」を無料でご紹介しております。
相続診断士が必要かどうかの相談もできますので、お気軽に御連絡ください。

TOP
touch( get_stylesheet_directory() . '/achievement.php' );